─リーデア─
「マトリフ殿……すまんがアレを頼むわい……パワーで引けを取るワケにはいかんのでな……」
リーデアの命で更に力を増したゴライアスの凄まじい迫力にブロキーナはマトリフにある事を頼んだ。
「おうっアレだな任せろ!バイキルト!!」
マトリフはブロキーナの意を汲み取り、今度はバイキルトの呪文でブロキーナの攻撃力を倍増させる。
「ホホホ!!!力が漲って来るわい!!!てやぁぁぁーーー!!!」
ピオリムの上に更にバイキルトを受けたブロキーナは、ゴライアスの攻撃を巧みにかわしながら全身に爆裂拳や爆裂脚の乱れ打ちをこれでもかと炸裂させた。
ドガガガガァァァーーーー!!!
「グホッ!!ガボッ!!」
ゴライアスはなんとか耐えながらも呻き声を上げている。
「これで!!どうじゃっ!!!」
ドガァァァーーーーーン!!!!
ブロキーナの渾身の蹴りを受けたゴライアスは勢いよく吹っ飛び壁に叩きつけられた。
「グホッ……!!!」
「………」
しかし、リーデアはそんなゴライアスに手を借す事もせずに冷めた表情で告げる。
「85%だ……」
「グホッ……ゴホッ……はぁぁぁい」
ゴライアスは痛みに耐えながらもなんとか立ち上がり、気合いを入れ始める。
「ガァァァァァァァーーー!!!」
「おいおいおいっ!!!?」
「やれやれとんでもないのう……」
先程よりも全身に重苦しい暗黒闘気を漲らせてゴライアスはマトリフとブロキーナに向かって突進しながらその太い四本の腕で巨大な隕石の様な拳を放つ。
すると……!?
「マヒャド!!!」
マトリフはゴライアスに向かって渾身のマヒャドを放った。
「ゴオァァァァァーー!!!?」
マトリフの手から放たれた強烈なマヒャドの吹雪がゴライアスの全身を凍り付かせていく。
「ブロキーナ!!今だ!!!」
「ほいよ!!はぁぁーーー!!!」
ブロキーナは全身に闘気と回復系の魔法力を漲らせ、そして右拳に光輝く閃光を蓄えていく。
「ゴライアス!!100%だ!!!」
すると突如リーデアの声が響く。 しかし、ブロキーナは闘気を右拳に練り込みながら集中を切らさない。
(「頼むぜブロキーナなんとかここで決めてくれ!!」)
マトリフは祈る様な心境で戦況を見守っている。そして、同時にゴライアスの後方に控えるリーデアに対しても冷静に注視していた。
(「それにしても、あのリーデアって野郎…容赦なくあのデカブツをどんどんパワーアップしてやがるが……ヤツ自身の手の内が読めねぇだけに不気味だぜ……」)
「ゴウァァァァァーーー!!!」
ゴライアスはマトリフのマヒャドで凍りついた自身の身体の氷を吹き飛ばし、改めて四本の拳に暗黒闘気を集中させていく。
「くそっ!!?さっきまでの暗黒闘気よりも遥かに強烈だ……!!ブロキーナ……!!!」
「はぁぁぁぁぁーーーー!!!」
マトリフのその言葉に応えるかの様にブロキーナも右拳に更に闘気を集中させていく。
「ホホホ、よもやこの技を使うことになろうとはのう……」
「ヌゴォォォォォーーーー!!!」
奇妙な雄叫びを上げてゴライアスは全身の暗黒闘気を四本の腕から拳に掛けて集中させブロキーナ目掛けてその強烈な拳を振り下ろしてきた。
すると、ブロキーナもそのゴライアスの攻撃に合わせて強烈な閃光を放つ拳を繰り出す。
「武神流秘奥義!!閃華神烈拳!!!」
ドゴォォォォォーーーン!!!!
ブロキーナとゴライアスのそれぞれの渾身の技が炸裂し、周囲にとてつもない衝撃と炸裂音が響いた。
「ブロキーナ……」
マトリフは強烈な最強技の衝撃とその閃光による煽りを受けながらも、辛うじてその戦況を見守っていた。
そして、少しずつ周りの砂煙が晴れていくと……
「グガァァァァァーーー!!!!」
ズドォォォォーーーン!!!!
ゴライアスは断末魔の声を上げてその場に崩れ落ちた。やがて、その身体には至る所にヒビが入り灰と化していく。そう、あのロモス武術大会で自ら超魔生物となったザムザがダイ達に破れ去った時の様に……。
「ゴライアスは屍と化した魔族の灰に我が身から流れる血を与えて生み出した存在だ……故に滅びる時は再び元の灰と化していくのだ……」
リーデアはゴライアスの崩れ落ちる姿に感情を一切浮かべずに淡々と告げる。
「お主の部下なのでは……?」
ブロキーナは構えを解いてリーデアに訊ねる。
「いや、部下というより……子に近いか………」
しかし、その言葉とは裏腹にやはり、その瞳にはやはり表情がない。
「ブロキーナ大丈夫か……?」
マトリフもその場に駆け付けると、ブロキーナを労いながらも崩れ落ちるゴライアスに視線を向ける。
「とんでもないヤツだったが……お前の今の技もスゴかったな……似てはいるが閃華裂光拳とも違った今のは俺も知らねぇ技だぞ……」
「ホホ……若い頃に一度だけ使った事があっただけじゃからのう……しかし、それより……」
ブロキーナはリーデアの方に視線を向ける。
「リーデアとやら……先程の言葉はどういう意味じゃ……子に近い……と言っていたようじゃが……?」
しかし、リーデアはブロキーナの問い掛けになんの反応もせず、ただゆっくりと腰を落とすと灰と化していくゴライアスに何かを呟いている。
「……………」
「ん……!?なんだ?今、アイツ何か言ってなかったか?」
すると、リーデアはゆっくりと立ち上がり、マトリフとブロキーナに背を向けて歩いていく。
「おいっ!?どこ行くんだよっ!?負けを認めるのかっ!?」
「……!?」
リーデアはマトリフのその言葉に立ち止まると、ゆっくりと振り返り答えた。
「ククク……負ける事などあり得ない……私も……我が子も……」
ザザザザザ………
「……っ!!?」
その直後、ブロキーナの目にはゴライアスの灰と化した亡骸が動いた様に見えた。
「なっ……!?なんだこりゃ!?」
マトリフもその瞬間を目にしていたらしく、驚いている。
「マトリフ殿、これは!?」
「いや……!?こいつは俺にもわからねぇ!!なんで死んだヤツの灰が……!?」
すると、ゴライアスの灰はみるみる元の巨体を形作っていく。
「ウソだろ……!?」
「こりゃあ参ったのう……」
「ククク……だから言っただろう?我々が負ける事は絶対にないと」
リーデアは不敵な笑みを浮かべてマトリフとブロキーナに告げる。
「おめぇ……あの時に何か呪法を掛けやがったな……」
「何か呟いていたのう?」
「これも言っただろう?ゴライアスには私の血を与えていると……魔界では珍しくもない闘魔黒血呪法と呼ばれるモノだ……」
「闘魔……じゃと?もしや、それはあのミストバーンの闘魔傀儡掌と同じ暗黒闘気によるモノかっ…!?」
「ミスト?ああ、バーンについていたあの暗黒闘気の出来損ないか……所詮アレは他の肉体に寄生しなければ生きてはいけない虫だ。ああいう出来の悪いガス生命体は寄生という生き方を選ぶしかないのだろうからな……」
「ミストバーンを出来損ない呼ばわりかよ……」
「じゃが、どうやら口だけのヤツではないようじゃ……」
あの大魔王バーンが長い年月自身の身体を預ける程、その能力を信頼していたミストを寄生する虫とこき下ろすリーデアであったが、マトリフ達はその言葉が、ただミストを嘲笑するモノではなく絶対的な強者が持つ確信が込められている事をその肌で感じていた。
「ああ……こりゃ相当気張っていかなきゃならねぇみてぇだな……たくっ……!何処のどいつかも知らねぇヤツの封印を解く為に随分な回り道だぜ……」
『そうか……やはりお主達でも厳しいか……』
すると、これまでの戦いを見ていたように謎の声の主がマトリフ達の意識に語り掛ける。
「へっ!だんまり決め込んでたと思ったら予想外の展開に思わず黙ってらんなくなったってのか?」
マトリフが思わずボヤく。
『確かに一筋縄ではいかんヤツ等とは思っていたが、これ程とはな……私の目に見えているワケではないがこの場の闘気や魔法力の流れでおおよその状況はわかる……』
「というとワシ等に道案内をした時もそうじゃったのかのう?」
『ああ、そんなところだ……しかし、このままではやはり不味い展開だな……そこで一つ助言を授けたい……』
すると、そんなマトリフ達の様子にリーデアは違和感を覚えて睨みを利かせている。
(「なんだ……ヤツ等、何をブツブツ言っている?」)
「おぉぉ~はぁぁよぉぉぉ~!!」
その時、灰と化した身体が完全に復元したゴライアスが復活した。
「よし、ゴライアス……ヤツ等の力は理解したな……」
「はぁぁぁい~~」
「次は始めから85%でいけ……」
「はぁぁぁい~~!!わぁぁかぁぁたよぉぉぉぉ~~~!!!」
「ヤツが復活しやがったぜ!」
「うむ、では手筈通りにいくぞい!!」
「おう!!んじゃ、もう一度こいつも……ピオリム!」
ピオリムの重ね掛けで、ブロキーナとマトリフの素早さが更に上がる。
「ほんじゃ、先ずは掻き回してくるわい!ちょえぇぇぇーーー!!!」
ブロキーナとゴライアスの第二ラウンドが始まった。
先ずブロキーナは攻撃よりも、ゴライアスの四本の豪腕から繰り出される強烈な攻撃を巧みに捌き、スピードで翻弄する作戦を仕掛ける。
「なぁぁぁんだぁぁぁーー!!!ちょぉぉろぉぉちょぉぉろぉぉすぅるぅなぁぁぁ!!!」
ゴライアスは必死にブロキーナを追い回すが、捉える事が出来ずイライラが募り始めていた。
「いいぜ、ブロキーナ……デカブツの頭にだいぶ血がのぼってやがる……さて、もう一人はどうだ?」
マトリフはブロキーナとゴライアスの戦況に注意を払いつつも、リーデアに対する観察を忘れていなかった。そして、それはほんのついさっき謎の声の主から与えられたあるヒントを元にした策の一環だった。
(「助言だと?なんだよそれ?」)
(『うむ、それはな……この場には三つのエネルギーのみが存在しているという事だ』)
(「三つじゃと?」)
(『一つはマトリフ殿の魔法力、一つはブロキーナ殿の闘気、そして、もう一つはお主等の相手の闘気とわずかな魔法力』)
(「そりゃ、俺達だってそんなもんさっきから解ってるさ……ん?三つ……?」)
(「どういう事じゃ?……ワシ等二人と相手の二人……簡単な足し算じゃが四つのエネルギーの間違いではないのか?」)
(『いや違う、お主等が相対しているエネルギーは一つしか感知出来んのだ……つまり、感知出来ている闘気は一人分のみ……それは相手が二人ではなく、一人しかいないという事でもあるのだ……』)
マトリフは直前の謎の声の主との会話を思い出しながら、不敵な笑みを浮かべる。
「なぁるほどな……そういう事かよ……手品のタネは……」
マトリフが注視するその先にはブロキーナを捉えきれずに怒り心頭で冷静さを欠いているゴライアスと、そしてもう一人リーデアの姿があった。
「さっきまでのクールなリーデアさんは何処へ言ったのやら……ヒヒッ」
リーデアの表情や仕草を見る限り、かなりの憤りと焦りが見て取れた。先刻までの落ち着き払った表情や態度とは裏腹にその視線はゴライアスと同じ様にブロキーナの素早い動きを必死に捉えようとしている。
「やっぱりか……さて、んじゃあ後はタイミング次第だぜブロキーナ……」
すると、マトリフはブロキーナに合図代わりの視線を送る。
(「……!?」)
ブロキーナもそれに気付くと、ゴライアスを翻弄しながら死角に入り、攻撃に転じ始めた。
「ほりゃ!!」
ドゴォォォン!!!
「グガァァァーー!!」
「そりゃ!もう一丁!!」
バキィィィ!!!
「ゴガァァァーー!!」
「ちっ!ゴライアス!!落ち着け!!よく見てヤツを捉えろ!!」
(「ピオリムの重ね掛けに加え武闘家本来の速さか……厄介なヤツだ!!」)
ブロキーナはゴライアスの死角を見極め、その素早い動きを少しも落とす事なく攻撃を加えている。一方リーデアはそんなブロキーナの動きを捉えきれないゴライアスに苛立ちを隠せずに指示をする。
(「ゴライアスとてあの巨体ではあるが、決してスピードがないワケではない……だが、ヤツのあの動きは完全にゴライアスを……いや、私を翻弄している……こうなればアレを!」)
リーデアは戦況をつぶさに見つめながらゴライアスに叫ぶ。
「ゴライアス!!!アレを使え!!100%でな!!!」
「はぁぁーーーいぃぃぃ!!メチャクチャにぃぃぃしぃぃぃてぇぇぇやぁぁぁるぅぅぅーーー!!!」
すると、ゴライアスは最大の暗黒闘気を拳に集中させ、不規則に四本の豪腕を四方八方に振り回した。しかし、ブロキーナはそれでも紙一重のところで躱し続ける。
(「よしっ!今だ!!」)
その時、マトリフはブロキーナの動きと大技を繰り出しているゴライアスの様子を注視しているリーデアの背後にルーラで回る。そして…!
「悪いな……消えてくれやリーデアさんよ」
「……なっ!!!?」
完全に虚を突かれた形になったリーデアは、振り返りつつもマトリフに相対する体勢が取れない。
「くらえっ!!メドローア!!!」
マトリフの最強呪文メドローアがリーデア目掛けてその閃光を走らせた。
「うぉぉぉーーーーー!!!!」
しかし、リーデアにメドローアが炸裂するその一歩手前で、ゴライアスが彼を守るように立ち塞がった。
「なんだとっ!!ちっ!!だが、どのみちそのつもりだ!!一緒に消し飛べ!!!!」
マトリフが放ったメドローアはそのままゴライアス共々リーデアを飲み込もうとしていた。そして、その瞬間ゴライアスの巨体は閃光の中に消え去った。
ところが……!?
「マホカンタ!!!」
「なんだとぉぉーー!!!?」
メドローアがゴライアスを消し去り、その後方にいるリーデアを飲み込もうとしたその一瞬早く、リーデアの目の前に光の壁が現れる。そして、メドローアの直撃を寸でのところで防ぎ、更に反射させた。
「いかんっ……!?」
ブロキーナはその光景にマトリフの身を案じる。
「くそったれがぁぁーーー!!!」
マトリフはそう叫ぶと同時にトベルーラで上空に飛び、跳ね返ってくるメドローアを間一髪でかわした。
しかし……!
「残念だったな……」
「なにぃっ……!!!?」
マトリフが上空に避けるのを読んでいたリーデアは、マトリフの眼前に一瞬で現れ暗黒闘気を纏った拳を見舞う。
「や、やべっ!!!?」
ガキィィィーーン!!!
「な………っ!!?」
「………っ!?……ブロキーナ!!」
リーデアの拳がマトリフに炸裂する寸でのところでブロキーナが割って入り、ギリギリのところでリーデアの拳を防いだ。
「そうはさせんよ……」
「ふん、無駄な事を……」
そう言うとリーデアは更に拳に暗黒闘気を注ぎ、ブロキーナのガードの上から圧力を掛けていく。
「ぐぅ……っ!!!なんというパワーじゃ……!!?」
「我が暗黒闘気の力……存分に味わえ!!はぁぁぁーーーー!!!」
その瞬間、リーデアは強大な暗黒闘気を更にその拳に注ぎ込み、恐るべき力を込めた拳を繰り出した。
「スクルトォォォーー!!!」
マトリフは瞬間的にスクルトの呪文で防御力を高めたが、ブロキーナとマトリフはリーデアの暗黒闘気の拳の勢いで吹き飛ばされた。
ドガガガァァァーーーン!!!
二人は強烈な勢いで壁に叩きつけられ大ダメージを負った。
「ぐっうぅ……ブ、ブロキーナ……無事……か……?」
マトリフは辛うじて意識を保ちながらも、ブロキーナに声を掛ける。
「う、うむ……くっ……な、なんとか……生きとるわい……」
リーデアの全力の暗黒闘気による拳はとてつもない力を秘めており、一撃でマトリフとブロキーナに戦慄を覚えさせた。
「スクルトで防御してもこれだけの威力なんてな……反則だろ……」
「マトリフ殿がスクルトを掛けてくれなければ、ワシ等は今頃動けていなかった……礼を言うぞい……ホホ」
「なぁに気にすんなって……だが、それでも結構なダメージだぜこりゃ……しかも暗黒闘気で受けた傷だ……回復呪文が効かねぇ……ここで追撃されたら……」
しかし、マトリフとブロキーナの心配を余所にリーデアが攻撃をしてくる気配がない。
「なんだ?……アイツ何してやがるんだ?」
「確かに追撃して来ないのう……」
そう言いながら、二人はリーデアを探すと、彼は先刻攻撃をしてきた位置から殆ど動かず、ポツンと一人佇んでいる。そして、そのリーデアの視線の先にはメドローアで消え去ったゴライアスの身に付けていた兜の一部があった。
「いやがった……けど、何してやがるんだ?俺のメドローアが消し残したゴライアスの兜の一部だろありゃ?」
「………」
グシャァァッ!!!
「………っ!!?」
マトリフとブロキーナはリーデアのその様子を訝しむ様子で見ていると、リーデアはその視線の先にあったゴライアスの兜の一部を踏みつけて粉々にした。
「役立たずが……結局お前はヤツ等にダメージ一つ与えられなかった……あれ程目を掛けてやったというのにな!!?」
リーデアは今は亡きゴライアスに向かって罵りながら、その足でゴライアスの兜の破片を踏みにじる。
「貴様に我が血を与えても、結局は無駄だということだなっ!!!なぁっ!?そういうことだろっ!?答えてみろっ!!デカイだけしか能のないこの役立たずのデカブツがっ!!!」
「やめんかっ……!!!」
「………っ!!?」
その時、その光景をみていたブロキーナが激昂して声を上げた。
「その者は仮にもお主の仲間であろう……しかも、先刻はお主とて子のようなモノと口にしていたではないかっ!?それなのに!!何故その様な仕打ちをっ……!!!?」
「………」
リーデアはブロキーナの方に顔を向ける。一瞬の沈黙。しかし、すぐさまその表情は冷徹さが浮かぶモノへと変わっていった。
「人間よ……称賛しよう、よくぞ我が子ゴライアスを打ち倒した。特に武術を使う貴様……全くゴライアスがダメージを与える事が出来なかったとはな……」
「やはり我が子……と言うたな……?」
「我が血を与えたのだからな……」
「ならば何故?先程の様なコトを……」
ブロキーナの問いにリーデアは不敵に笑いながら答える。
「光の当たらない闇の世界に住む我等が、負けて堕ちるモノに労いの言葉でも掛けると思ったのか?」
「だからと言ってあれ程の罵倒を浴びせずとも良いと思うがのう?」
ブロキーナの内側から静かな闘気が沸き上がる。
「フ……ぬるま湯に浸かった脆弱な人間共にはわからんさ……我等魔族の生き方などな……」
そして、リーデアも再び暗黒闘気を纏い始める。
「ブロキーナ……」
「マトリフ殿……すまんが、ここからはワシ一人に任せてくれんか?」
ブロキーナの言葉にマトリフは何も言わず彼の背中を見つめている。すると…
(「ん……!?この闘気…これは?」)
その背中からはブロキーナと長い付き合いのマトリフさえ、これまであまり、感じたことのないと思われる闘気を感じた。しかし……
(「いや違うな……似た様なモノを……ついさっき……そうだ!さっきの武神流秘奥義……」)
一見、みたことがないと思われたブロキーナのその闘気をマトリフは数分前に見ていた。ブロキーナがゴライアスに放った武神流秘奥義として……そして、その闘気にマトリフはブロキーナの一つの覚悟をみた。
「わかったぜ相棒……任せた!」
「ホホ、ありがとうマトリフ殿♪」
振り返りながら、ニカッといつもの笑顔を見せると、ブロキーナはその歩をゆっくりと進めていく。
マトリフはそんな友の内側に込められた一つの覚悟をその目で見届ける決意を固めて静かに見守った。
魔界の強敵との戦いという事で、ブロキーナの新たな力を出してみました。設定としては、ブロキーナがマァムやチウに教えていたのは、あくまで表の武神流です。今回彼が使った技。武神流秘奥義はまさに秘められた裏の奥義であり、滅多なことでは使いません。それに、マァムがブロキーナから伝えられた二つの奥義は彼女自身、たった数日間で身に付けましたが、この武神流秘奥義はそうそう簡単にはいかないシロモノです。だからこそ技も強力で、使い方を誤ると危うい技ばかりです。なので、マァムが身に付けるにはじっくり時間を掛ける必要があります。また、更にこの武神流秘奥義誕生の背景にはブロキーナのある秘密が隠されています。が、それはまた後々、物語の中で出していきます(^^)v