─約束の未来へ─
【ネイル村】
マァムはレイラに父ロカの秘密を告げられた後、久し振りに母と遅い時間まで色々な事を語り合った。
「それにしても随分と話し込んじゃったわね……マァムそろそろ休みましょうか?」
レイラが最後のホットミルクを入れ替えながら、窓の外の月を眺めて言う。
「うん、そうね……でも、おじさん本当に大丈夫かしら……ブロキーナ老師も一緒らしいけど……」
マァムは先刻ブロキーナの元に行ったマトリフを心配して言った。
「彼はロカの事については、とても自分を責めていたから……私やアバン様があまり自分を追い込まないように話してもどこか頑なでね……きっと大魔道士として自分にもっと出来ることはあったんじゃないかとずっとその胸に抱えているモノがあるのだと思うわ……でも、それは私やアバン様も同じなのにね……」
レイラは少し悲しそうな表情で語る。
「マトリフおじさんはきっと焦ってもいるのね……身体の事もあるのだろうし……」
「そうね……身体をゆっくり休めて欲しいけど……」
「父さんの事が決着しないときっと安心して休めないって言いそうね……確かに頑固だもん!」
「フフ♪」
夜はさらに更けていき、レイラが
眺める満月は天高く夜を照らしていた。
その頃、解呪の洞窟ではマトリフとブロキーナがリーデア、ゴライアスとの戦いを終えて先刻の魔法陣での回復を図っていた。
「はぁ~気持ちいいなぁ~♪」
「暗黒闘気で受けた傷も完全回復じゃわい♪」
『見事な戦いを見せてくれたな、改めて驚いたぞ』
「ヒヒ、まぁブロキーナがやってくれたからな~」
「いやいやマトリフ殿の機転のおかげじゃよ♪」
『お主達は良い同志なのだな……』
「へっ!まぁな!!世界一高名な老人コンビだ!」
「ホホ、そうじゃな♪」
そうして、二人は魔法陣で回復した後、いよいよ封印の間へと向かった。
「封印を解くには俺の魔法力が必要だって話だが、さっきの扉みたいな仕掛けなのか?」
マトリフはリーデアとゴライアスとの戦闘の前に出くわした封印の間へと続く銀の扉の事を思い出していた。
『強大な魔法力を使うという点では同じだが、解くにはその前にその封印の祭壇でとある呪文の契約をして貰う』
「とある呪文の契約?なんだよ今更……俺はこう見えても大魔道士だぜ?大抵の呪文は使えるんですけど?」
マトリフは嫌味な顔でボヤく。
『いや、地上では決してお目にかかれない呪文でな……大魔道士のお主でさえ知っているかどうかわからん』
「ふ~ん……俺の知らない呪文ねぇ……どんな呪文なんだ?」
『それは……』
「それは?」
『その呪文とは……』
「……?その呪文とは……?」
『後のお楽しみだ♪』
ズルッ……!!!?
「あ、あのなぁ!!!おめぇ自分の封印解いて貰うってのにのんきだな~」
「ホホ、愉快な御仁じゃわい♪」
『エンターテイメントだよ♪エンターテイメント♪わかるかい?マトリフ殿♪』
「うるせっ!ネアカかおめぇは!」
『ハハハ!そうかも知れないな♪』
「さて、そうこうしている内に封印の間に着いたぞい」
マトリフが謎の声の主と戯れていると、ブロキーナが封印の間に続く最後の扉を指し示す。
「おしっ!んじゃ、いよいよだな!!」
そうして二人は、その重い扉を開いて封印の間に足を踏み入れた────。
一方、マァムはレイラに就寝の挨拶を済ませた後、自室で父ロカの事を考えていた。
ロカは魔界で生きているかも知れない───。
母レイラを始め、アバン、マトリフそして、ブロキーナまでもが今も諦めずに父ロカの生存と地上への帰還を強く信じている。
そして、マトリフの話によればその鍵を握るのはポップだと……
「父さんが生きているなんて……しかも、もしかしたらポップが父さんを救ってくれるかも知れない……」
マァムはふと、大切に枕元に置いたポップの手紙に視線を向ける。
パプニカからネイル村に帰る前にアバン伝でポップから送られた一通の手紙……あの時マァムは溢れる涙と共に深くこの手紙の暖かさを胸に抱いた。大切な彼の想いがきっとこの手紙の中に込められていると思うと、喩え今は逢えなくてもポップが側に居てくれている様にも感じられた。
「ポップ……」
そうして、マァムはあの時と同じ様に胸にその手紙を納めてから、全身に熱く響く鼓動を感じつつも、ゆっくりとその封を切った。
『マァムへ
こんな風に手紙を書くなんて初めての事だから、正直どう書いたら良いかわからないのが、本当のところだ……でも、やっぱりそれでもあの時、お前に酷い事を言ったことは謝りたい。
本当にごめん。
俺は、いつもこうで……大切に想う相手を傷付ける。相変わらずの臆病者で本心を伝えられないのに……好きなのに……わかっているのに……本当にごめん。
何度もお前に涙を流させて来たよな、だからもしかしたら俺はお前に相応しい男じゃないのかもしれないとも考えた……何度も…何度も……
でも、その度にお前の笑う顔が俺の中に色濃く浮かんでくるんだ。
失いたくない想いが、どうしようもないくらいに膨れ上がる。
そして、気付いたら……やっぱりお前の事が好きだという気持ちしか残らない。
だからマァム、今ここで俺は誓うよ。
俺はお前を必ず守る。
何があっても絶対にお前の近くにいて、いつでも、必ず守る!
だから、もう一度だけチャンスをくれないか……お前があの時、あのバーンパレスで俺にチャンスを求めたけどやっぱり俺も、お前との未来を見たいから……だから、もう一度俺は改めてお前を好きになる。ずっとずっと好きだったけど、もっと強く、もっと深く、そして優しくお前を好きになろうと思う。
アバン先生とマトリフ師匠から言われた事なんだけど、ダイがいない今、世界の平和の維持には俺の力が必要だという事を言われた。正直言えば不安もあるし、アバン先生やマトリフ師匠が俺に具体的にどうして欲しいのか、まだ詳しくはわからないけど……でも、世界や地上の平和の為に俺に出来ることがあるのなら、先生達のいう通り力を尽くしてみようと思う。
だから、マァム。力を貸して欲しい。俺の心の支えになって欲しい。お前を好きだという気持ちを強さに変えて、この世界を守る力を身に付けて、愛する人達を守りたい。
お前と一緒に……。
ポップ 』
たどたどしく、どこか不器用な彼らしさも感じつつ、それでもマァムを想う優しい気持ちが溢れた手紙だった。
涙でその一つ一つの文字が滲まない様にしながらも、マァムは止めどなく溢れる涙を抑えることは出来なかった。そして、ポップの想いに呼応する様にマァム自身の胸も熱く高鳴りを覚えていた。
「あなたに逢いたい……」
そう言ってマァムは再びポップの手紙を胸に納める。じんわりと胸の奥で感じるその温もりに、マァムはただ、ただ、その愛おしさを感じていた。
洞窟の話が続きますので、ちょっとインターバル的な回となりました。まぁ戦闘シーンが続く書き手の休憩でもありますね(笑)
ただ、内容はポップとマァムの今後についてとても大切なところです。マァムの中のポップの存在の大きさを更に確実にする為に、この手紙の内容はかなり悩みました。星空の回の件をただ謝るだけでは薄くなるし、そもそもマァムがポップの抱えているモノや自分を本心からどう思っているのか?を知る必要もありましたので、まぁこうしてみようと思い立った次第です。また、しっかりと言葉にして好きという想いも改めて伝えた内容にしたので、マァムに伝わったと確信しています。
さて今回実は、個人的にはとても記念すべき回になります。
とは言え特別何かをするワケではないのですが(笑)(^^;
この、新章ダイの大冒険!無事に1周年を迎える事が出来ました~✌️
いつも読んで頂いてる皆さんには、感謝でいっぱいです!
いつも本当にありがとうございます!!
これからも、なんとかかんとかダイの世界の更なる大冒険を繰り広げて、皆さんに楽しんで貰える様に頑張って参ります!!今後とも是非とも宜しくお願い致します