─鬼眼の女王カイア─
マトリフは先刻より契約した究極破壊呪文デステマにより、封印の間の巨大な黒魔晶に囚われていたある存在の封印を解き放った。そして、今この時、その封印から解き放たれた存在がマトリフ達のその頭上に姿を見せた。
「おおーーー♪」
「これはこれは……」
マトリフとブロキーナの前に現れたのは、薄手の衣を纏った美しくも麗しい女神と思わせる様な絶世の美女だった。
「こいつはっ!!!?何かのご褒美か~♪」
マトリフは己の欲望にあまりにも正直なだらしない顔ではしゃいでいる。すると、その美女は宙に浮かびながらゆっくりとその瞳を開いていく。そして……
「ようやく……ようやく自由の身になれた………」
その女神のように美しい女性はゆっくりとマトリフとブロキーナに視線を向けると優しく微笑んだ。
「マトリフ殿、ブロキーナ殿お初にお目にかかる……そして、改めて感謝する。本当にありがとう……我が名はカイア。魔界における、鬼眼の一族の長である」
「鬼眼じゃと……!?」
ブロキーナが声を上げる。
「その通りだブロキーナ殿……鬼眼と言えば……」
「うむ、大魔王バーン……ヤツも確か鬼眼の力を有しておったな……」
ブロキーナは先の大戦時、バーンパレスでの最終決戦で、バーンが使った鬼眼の力で瞳と称される玉に閉じ込められた時の事を振り返った。
「そうか、そういえばそんなこと言っていたな……」
マトリフもアバンやヒュンケルにその時の事を訊いていたのか、ブロキーナの話に頷いていた。
「というコトは……おめぇさんはバーンと何らかの関係があるってのか?」
マトリフはカイアに訊ねる。
「そうだな……お主達には私の素性を明らかにすると約束もしていたからな……では、先ずは私とバーンの関係から話そう……彼は元は私と同じ鬼眼の一族の者だ、だからこそ当然のごとく鬼眼の力を使う事も出来た、そして更に言えばかつて私はバーンにとって姉という位置付けにあたる者であった……」
「へぇ~そうかい……」
「成る程のう……姉か……」
「……っ!?」「……っ!?」
その瞬間、マトリフとブロキーナはお互いの顔を見合わせながら驚きの声を上げた。
「姉っ……!!!!?」
「ああ……だがそれは、今言った通りかつての話だ……もう何千年も前にヤツが我が一族から離反した事でその関係は絶たれた……」
カイアはそう淡々と説明する。
「そうか……なら、おめぇはバーンが勇者ダイに倒された事はなんとも思ってねぇのか……?」
マトリフはカイアを探るように訊ねた。
「そうだな……我が一族である鬼眼族というのは、魔界でも厳格さで知られている種族でな……たとえどのような理由があろうとも離反するという事はその命を絶たれても仕方がない程、重罪なのだ……だからこそバーンがあの様に倒された事については、私は無論のこと今も魔界で現存する鬼眼一族にとっては当然の事だと理解している……」
「そうかい……」
しかし、マトリフはそう言うカイアの瞳に微かな憂いが浮かんでいたのを見逃さなかった。
「勇者ダイだったか……彼は竜の騎士でもあるのだろう?そういう意味で言えばバーンが倒されたのも竜の騎士という存在を作った神の意思という事だ……」
「なら、次はおめぇを封印したヒュルトについてだ……おめぇさんは今はヤツと敵対していると始めに言っていたが、そもそもあの黒眼巨竜とやらの目的は一体なんなんだ?」
マトリフは続けざまにカイアに質問をすると、カイアは何故か頬を赤らめながら不思議な事を言った。
「そ、それは……マトリフ殿……怒らないで聞いてくれるか?」
「あん?なんで俺が怒るんだよ?」
「………?」
マトリフは当然の事を訊き、ブロキーナも首をかしげている。
「それは……その……ヒュルトは私の息子なのだ……」
「はぁ~息子ねぇ……」
「成る程のう……」
「……っ!?」「……っ!?」
「息子……っ!!!?」
マトリフとブロキーナはさっきと同じ反応で二重に驚いた。
「だ、だからその……っ!?わっ……!私にはかつては夫がいたのだが……っ!?い、今は連れ合いはおらん!!なので、マトリフ殿……あ、安心なされよ……」
「あ?安心……?て……?」
マトリフはカイアの言葉にどこか呆けている。すると……
ちょいちょい……
(「マトリフ殿…マトリフ殿……」)
突如ブロキーナがこっそり手招きをしながら、小声でマトリフに告げる。
(「な、なんだよブロキーナ……」)
つられてマトリフも思わず小声になる。
(「思うにカイア殿はマトリフ殿にホの字なのではないのかのう……?」)
(ホの字……?ホの字って俺に?俺にかっ……!?」)
言いながらマトリフはカイアの方を伺う様に見ると、そのマトリフと目が合った瞬間、彼女は顔を真っ赤にして照れるように目を剃らした。
(「ほ~らそうじゃろ♪」)
(「マ、マジか……!?い、いや!でも何でだよっ……!?」)
(「そんなことまでわからんよ~ただ、彼女のマトリフ殿をみる目はタダ事ではないと思うのう……いやはや、マトリフ殿もスミにおけんのう……ホホ♪」)
(「い、いやぁ~まぁそのなんだ……確かに悪かねぇ話しだが……」)
と言いつつマトリフはイヤらしい視線をカイアの豊満な胸や腰に向ける。
しかし……
「いやいやいやいや!!待て待て!!こんなジジイにあり得ないだろ~!!」
マトリフはそう呟くとブロキーナが明るく言う。
「見た目は確かにお主の方が年寄りにみえるが、実際は彼女は何千年も生きておるのだろう?という事は……結婚すれば姉さん女房じゃな♪」
「お、お前なっ!!?急にそんなこと言われてもよっ!!!?」
マトリフは今日一番で最も冷静さを欠いて動揺している。
「とりあえず本人に確認してみたらよいじゃろ?ホレホレ♪」
「ブ、ブロキーナ!!お前なぁ!!?」
ブロキーナがマトリフの背を押しながらマトリフを促す。
「ちょ……っ!?ちょっと待てって……!!」
「ホレホレ……♪」
結局マトリフは背中を押されて、カイアの目の前に立つ。
「マトリフ殿……」
カイアが上目遣いでマトリフを見つめると、マトリフはゴクリと生唾を飲み込みながら緊張を露にしている。
「お、おう……いや、俺はその別におめぇに旦那がいたとか、そんなの気にしねぇ……ケドよ……で、でも……まさかホントに俺に……?」
「………お、お主さえよければ、その……わ、わた、私は……」
先程まで鬼眼族の女王と言っていた彼女とは思えない程、今のカイアはいじらしい乙女のようにマトリフの目の前で赤面しながら狼狽えている。
「そ、そうか……で、でもよ……とりあえず……その……俺のドコがいいんだよ?こんなジジイだぜ……」
「そ、それは!お主がなんの躊躇いもなく、私の為に……あの究極破壊呪文であるデステマの契約に臨んでくれた……コトや……私も信じていたとは言え、やはり人の身であのデステマを扱えたというのは……本当に……その……凄いと思ったし……」
「思ったし?」
「その、だから……ス、ステキだなぁ……って……」
カイアは今日一番の赤面を見せた。
「そ、そうか……?ハ、ハハ……」
「ホホ♪という事はマトリフ殿の心意気と類い稀なる才能にホレたという事じゃな♪」
コクン………
カイアはブロキーナのその言葉に可愛らしく頷く。
「よ、よしっ!!まぁそういうコトなら……い、いいぜっ俺は!!」
「マトリフ殿……ほ、ホントに!?ホントに私で良いのか!?」
「き、鬼眼族の女王ってのがイカついが……ま、まぁな……」
「マトリフ殿♪ーーー!!!」
「お、おわっ……!!!?」
カイアはマトリフのOKの返事に嬉しさのあまりに思わず抱きついた。
「ホホ♪これはめでたいのう♪仲良き事は美しきかな♪」
そうして、解呪の洞窟で巻き起こった思わぬ展開にマトリフ、ブロキーナ、そしてカイアという一際風変わりな一行(パーティー)が結成された。
マトリフにも春が来ましたね~(笑)まぁ100年近く生きて来てずっ~と独身というのもマトリフらしいのですが、年齢の割に気持ちは若いですからね♪因みに現在Vジャンプで連載してる『獄炎の魔王』では、マトリフの元カノが出てますが、このエピソードを書き終えた時はまさか、このタイミングでマトリフの本妻?となるキャラクターをココに載せる事になるとは思いませんでした(笑)