新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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決戦

 

 ─呪神冥竜の奸計─

 

 

 【魔界】

 

「フンッ!!フンッ!!」

 老婆魔道士のワズから借りてきたランプの僅かな灯りの元で、その男は一心不乱に大剣を振っている。

 

「今日もとりあえずは異常なし……か……」

 女魔族のアギスは、呪神冥竜メドゥルザの命令でこのところずっとこの男の監視を続けていた。

「日がな一日……ああして剣を振っているだけ……アレをこの14年ずっと続けている……やはりメドゥルザ様のおっしゃる通り、この私が警戒し過ぎていたか……」

 アギスは、今監視をしている男に対して、油断がならない存在だと感じた旨を率直にメドゥルザに進言していた。

「だが、どうにも微かな違和感……いや、胸騒ぎがする……ヤツのあの眼は、魔界に堕ちた人間とは思えない……」

 アギスは暗闇に紛れながら、岩影に身を潜めて男の様子を伺っている。

 男は懸命に大剣を振り回しながらその瞳に獣の様な鋭い眼光を宿している。そして、深い闇を真っ直ぐに見据え、その目の前の闇を切り裂かんとするかの如く一太刀一太刀に熱い魂を込めて、その大剣を振り下ろしていた。

 

 男の名は……ロカ……と言った。

 

 

【解呪の洞窟─

      ─封印の間】

 

「閃華裂光拳!!!!」

「メドローア!!!!」

「イオナズン!!!!」

 

 ズガガァァァーーーン!!!!

 

 ブロキーナ、マトリフ、カイアのそれぞれの攻撃が炸裂し、ヒュルトのドラゴン兵団は全滅した。

 

「よっしゃ!片付いたな!!」

「うむ、この腕輪のおかげでスピードだけでなく、攻防両方の力が上がったようじゃわい!!感謝するぞいカイア殿」

「喜んで貰えて何よりだ、ブロキーナ殿」

「しっかしカイア!おめぇもなかなかやるなぁ!体術や闘気技、それに極大呪文まで使いこなすとは」

 ドラゴン兵団との戦闘時、カイアはブロキーナに負けじと体術や闘気技でドラゴン軍団を指一本触れさせる事なく次々と倒していった。そして更にイオナズンやベキラゴンなどの極大呪文も使いこなし、その女神のような容姿からはとても想像出来ない程の強さを見せつけた。

「ま、まぁ……一応は鬼眼族の長だからな……それなりには……で、でもやはり女らしくないかな……」

 カイアはマトリフを伺う様に言う。

「んーでも、まぁ俺は強えー女が好きだからな♪」

「ほっ本当にっ……!?」

「おうっ!だから気にすんなって!」

「マトリフ殿~♪」

「おわっ…!?きゅ!?急に抱き付くなよっ!?」

「ホホ♪照れとる照れとる♪」

「て、照れてねぇよっ……!!?」

 カイアの愛情表現にマトリフは戸惑いながらもブロキーナの冷やかしに突っ込みを入れる。

「よ、よしっ!んじゃそろそろ行こうぜ!黒眼巨竜のツラを拝みによ!!」

「うむ!」

 そうして、その後三人は回復魔法陣で全快するとカイアがヒュルトのいる最下層への行き方を説明し始めた。

「実はな、この封印の間だが、この場所から直接自分の足でヒュルトのいる最下層に行くことは出来ないのだ」

「ほう……それは、どういう事じゃろう?何かトラップでも?」

「仕掛けという意味ではそうかもしれないが、ただの仕掛けではない。厳密にはこの封印の間とヤツのいる最下層は、根本的に違う次元に存在しているのだ」

「なにっ?違う次元だと?」

「そう、ヒュルトは私を封印する空間を違う次元に作った……つまり今、我々が立つこの場はヤツが作り出した異次元の空間だ」

「そりゃあ……なんの為に?」

 マトリフがその疑問を口にする。

「私の鬼眼の力の恐ろしさをヒュルトは誰よりも理解しているからだ、そこいらに知られている様な封印術では到底私の力を抑える事は出来ないからな……」

「だから次元の異なる空間にって事かのう……だが、そもそもその異次元を作り出すこと自体が凄いことなのでは?」

「先ほどお主が話していたバーンの鬼眼の力である瞳と呼ばれたあの玉だが、アレも内部は異次元の空間だ。つまりヒュルトもバーンと同じような異次元を扱う鬼眼の力を持っているという事だ……最も今では鬼眼ではなく黒眼と言っている様だがな……」

「黒眼……だから黒眼巨竜ってワケか……」

「ヤツは我が鬼眼一族から離反した際に新たな力を与えられ黒き竜に変わったのだ……」

 その言葉に、マトリフとブロキーナは顔を見合わせる。

「黒き竜……?因みにその力を与えたヤツってのは?」

 マトリフの問いにカイアはその眼を真っ直ぐ見つめて言った。

「かつて竜の騎士バランに破れた冥竜王ヴェルザー……そして、その際に滅ぼされたヴェルザー一族……しかし、そのヴェルザー一族には不死身のヴェルザー以外にもう一人、生き残った存在がいた……」

「なんだとっ……!!?」

「ヴェルザー一族の生き残りじゃとっ……!!?」

 思いがけないカイアの言葉にマトリフ達は驚きの声を上げる。

「そうだ、その名は呪神冥竜メドゥルザ……ヴェルザーの実の息子だ……」

「なんと!?まさか……そんなヤツがのう……」

「………ん?呪神……?」

 すると、マトリフがその言葉に反応する。

「ああ、呪いの神……という意味だ。そして文字通りメドゥルザは魔界の全ての呪術を統べる者と言われている………噂では、その呪力は父であるあのヴェルザーをも越えると……」

「ブロキーナ……!!という事はもしかしたら!!!?」

「うむ、あり得るのう……」

「どうした?二人とも……」

 カイアは二人の様子に首を傾げる。

「カイア、ここの洞窟をおめぇは管理していたと言っていたな!」

「ああ、数年前にヒュルトに封印されるまでだから……今からなら十年程前からな……」

「カイア殿がこの洞窟の管理をする前には誰がここを?」

「それが、今話したメドゥルザというヤツだ……まぁ最も父であるヴェルザーが天界の精霊に封印された様に、メドゥルザ自身もその精霊の天力により今もまだ魔界から動けずにいるのだが、その前から恐らくなんらかの方法でこの洞窟を支配していたのだ……」

「けど、それをおめぇが奪ったのか?」

「まぁ結果的にはな……ただ、私がここの洞窟を管理するきっかけとなったのは、ある人間のおかげでもある……」

「ある人間?」

 マトリフは、予感を感じて訊ねた。

「メドゥルザの呪いをその身に宿したロカという人間の男だ……」

「………っ!!!?」

「………っ!!!?」

 マトリフもブロキーナも、ここに来てようやくカイアという魔界に深く通ずる存在から、ロカの名を聞く事が出来て胸が熱くなった。

「マトリフ殿……ブロキーナ殿?」 

 カイアは二人の妙な様子を伺う様に見つめる。

「ブロキーナ……やっとだ……やっと……アイツの手掛かりが……」

「うむ、そうじゃな……ようやっと……ホホ♪今夜ここに来た甲斐があったのう……」

「どうした?二人とも……あのロカという男を知っているのか?」

「ヒヒ……知ってるも何もそれが俺達の目的さ……」

「目的?」

 そうして、マトリフとブロキーナはカイアに自分達がこの解呪の洞窟に足を踏み入れた事や14年前に起きた悲劇から今に至るまでの話を切々と聞かせた。

「そうか……あのロカ殿が……お主達の……」

「ああ……不器用で、意地っ張りで……でも、絶対に失いたくねぇ掛け替えのない最高のダチさ……」

「うむ………」

 マトリフもブロキーナもロカの顔をその心に深く思い浮かべた。

「カイア……アイツとは何処で?やっぱり魔界か?」

「ああ、そうだ。ロカ殿が魔界に来たばかりのあの当時、私はロカ殿からこの洞窟で解呪の実を口にして地上で生きる事が出来なくなった事を聞き、それを確かめる為に私はここに訪れ、かつて存在していた解呪の実をつける呪精木が枯れ果てているのを見つけた……」

「呪精木?」

「枯れておった?」

「呪精木というのは、あらゆる呪力を蓄えている魔界の樹木でな、逆にその呪精木になる実は、あらゆる呪いを解く力があると言われている」

「それをロカはマァムや子供達の呪いを解く為に食っちまったんだ……しかし、なんだってそんなモンがこの地上界の洞窟に?」

「それこそが、さっき話しに出たメドゥルザの奸計なのさ……」

「どういうワケじゃ?」

「メドゥルザは先ず、魔界で動けない自分の代わりにこの地上世界に自らの使い魔を送った。そしてこの洞窟の最深部に呪精木の種を植えさせた……」

「種?」

「ああ……そして、その種が芽を出し、やがて苗となり木となり……最終的には実を付ける……そうなるとどうなると思う?」

「ん?何だいきなり……ん~でも魔界にしかない樹木だろ?あんまり良い感じはしねぇな……」

「まさか、毒でも広げんじゃろなぁ?」

 マトリフとブロキーナは首を捻っている。

「毒というのはいい線だが、厳密には呪いを広げるのだ……呪精木に蓄えた呪いをな……そして、呪精木を植えたこの洞窟を中心に、地上世界の支配を目論んでいたのだ」

「地上世界を呪いで……!?」

「あの当時、ポルトス周辺の町や村に広がっていた呪いがメドゥルザの仕業だったというのかっ!?だが、それをロカのヤツが……」

 二人はその事実に戦慄を覚えた。14年前のあの時、幼いマァムや女児達を死の淵にまで追い込んだ呪いの正体は呪神冥竜と呼ばれるメドゥルザの所業だったのだ。そして、ロカは図らずもそのメドゥルザの呪いによる地上世界支配の野望を砕いたのだった。

「ああ、その話しは私もロカ殿本人から訊いたよ……自分の娘の命も危なかったと……そして、それ故に彼は……あの解呪の実を口にしたと……」

「メドゥルザ……メドゥルザ…!……メドゥルザ!!!もう、覚えたぜクソ野郎がっ!!!!」

「うむ、全くはらわたが煮え繰り返りそうじゃ……」

「しかし、メドゥルザが地上世界の支配に使おうとしていた呪いが具体的にどのような代物だったのかまでは、残念だが私にもわからない……しかし、マトリフ殿、ブロキーナ殿……我々はその答えを知り得るチャンスが今、目の前にあるのだ……」

「なんだと!?」

「……!?そ、そうか……ヒュルト!?」

「その通りだ……ヒュルトはメドゥルザの命令で今現在、この解呪の洞窟を支配している……それに、ヤツがヒュルトをヴェルザー陣営に引き入れたのは今から1000年前のこと……つまり、前述の地上世界を支配する為には少なからずヒュルトも何らかの役割を与えられこの洞窟に差し向けられた筈だ……だからヤツに訊けば……」

「成る程な……へっ!やっぱり今日ここへ来て正解だったな!!」

「ホホ♪」

 マトリフとブロキーナは見えてきた希望の光に、大きな期待を膨らませていた。

「よし……では、二人共私の手を……」

 そういうと、カイアはマトリフとブロキーナに手を差し出す。

「これから、この次元を脱出してヒュルトのいる部屋の前まで行く」

「前まで?」

「ヤツの部屋の前にはヤツがゲートと言っている、いわゆる結界が張ってあるのでな、先ずはその結界を破る」

「成る程な……おっしゃ!行こうぜ!!」

 マトリフのその一声を合図にカイアは鬼眼の力を解放し、その異次元の空間から脱出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーー。

 

「クソッ……!!!?やはり封印は、解かれた様だな……」 

 ヒュルトは命令を下した自身の配下達が一向に戻らない事で、封印の間で起きた事を察していた。すると……!

 ヒュルトの玉座から真っ直ぐ先に見える重厚かつ巨大な扉の向こうに強い力の波動を感じる。そして、その力は徐々に大きくなっていく。

 

 バリバリバリバリーーーッ!!!

 

 ヒュルトがこの部屋の前に施していた結界が強力な力で破られていく。やがてその結界を破る音が止むと、一瞬の静寂の後にその重厚な扉がゆっくりと開いていった。

 

 ゴゴゴゴゴゴコーーーーー

 

 見据えていた視線の先に三つの人影が見えてくる。ヒュルトは冷徹にその人影を射抜く様に見つめていた。

「へっ……!どうやらアイツがヒュルトってヤツみてぇだな……」

「うむ……そのようじゃな……なんとも禍々しい空気を纏っておるのう」

 マトリフとブロキーナはその場からでは、やや遠い玉座に座るヒュルトと思われる男を見据えて言った。

「そうだ……アイツが黒眼巨竜ヒュルト……闇に堕ちた我が息子だ……」

 マトリフ、ブロキーナ、そしてカイアは、ゆっくりとヒュルトの玉座に向かっていく。

 そして………

 

「まさか、こんな事態になるとはな……」

 憎々しげに、ヒュルトはカイアを見据えて言う。

「一族を裏切った者は、必ず追い詰められ大きな制裁を受ける……お前も知る通り、あのバーンでさえも倒されたのだ……」

 カイアは先の大戦でダイに破れたバーンの事を引き合いに出す。

「フン……!バーンの失敗は、己の鬼眼力に溺れ、あのダイと言った竜の騎士の真の力を見くびっていたことだ!!そして、更にヴェルザー様と違い優秀な人材を多く置かなかった事が敗因でもある」

「ホウ……まるで自分がその優秀な駒とでも言いたそうな口振りだな……?」

「ヴェルザー様は天界の精霊共の封印を間もなく破られる事だろう!そして、そうなれば魔界は元より地上世界や天界さえもヴェルザー様の軍門に下る事は必定!!あの方はその為にこの俺の力を買ってくれたのだ!!」

「我が一族の掟をいとも簡単に踏みにじり、ヴェルザーなどに与したその報い!!鬼眼一族の長として、改めてその身に刻んでくれよう!!」

 そうして、いよいよマトリフ、ブロキーナ、カイアは黒眼巨竜ヒュルトとの決戦に臨んだ。

 深く、暗い解呪の洞窟の底で命を懸けた最後の熾烈な戦いが繰り広げられようとしていた。

 




 ようやくこの洞窟編のラスボスである、黒眼巨竜ヒュルトとの対面を果たしました。ドラクエのボスと言えばやはりドラクエ1の竜王という印象もあるので、この物語の最初のボスキャラもそれに習いドラゴンにしようと考えていました。因みに竜王も始めは人型モンスターでしたので、この回のヒュルトもそんな人型魔族です。
 強さは前に出てきたリーデアよりも当然強いです。本編ダイのキャラで言えば、真バーンよりちょい下くらいでしょうか。とは言えかなり強いです。キルバーンよりは強いです。 
 最もマトリフもブロキーナもここまでで結構レベルアップしてますけどね……カイアもいるので……(^^)v
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