新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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戦火の声

 

 ─裂かれた絆

       繋ぐ絆─

 

「マトリフ殿ーーーー!!!!

 ブロキーナ殿ーーーー!!!!」

 カイアの悲痛な叫び声がこの広いヒュルトの間に響き渡る。

「リーデア達を倒した様だったからどんなモノかと思っていたが、フン!他愛もない……」

 ヒュルトは崩れ去った瓦礫を眼下に不敵な笑いを浮かべながら、マトリフ達がいた場所を見下ろしている。

「……と、思ったか?」

「……っ!!?」

 瞬間ーー!!ヒュルトの背後から声がした。

「ベギラゴンーーー!!!」

 すると、トベルーラで上空に逃れていたマトリフがベギラゴンを放った。

「ほう……」

 

 バアァァァーーーーーン!!!

 

 しかし、ヒュルトは振り返るとその暗黒魔力を纏った左手でマトリフのベギラゴンを防ぐ。

「成る程、極大呪文を溜め無しでも放てるのか」

「チッ!!やっぱそう簡単にはいかねぇか!!」

「マトリフ殿!!」

 カイアはマトリフの姿を見て胸を撫で下ろす。そして、すぐ様マトリフを援護する様に闘気技を放った。

「鬼眼閃翔牙ーーー!!!」

「っ……!!?おのれっ!!!ルーラ!!!!」

 ヒュルトはマトリフのベギラゴンを防ぎながらの体制でカイアの技を防ぐまでには至らず、やむを得ずルーラでその場から逃れた。

 しかし!!

「待っとったよ……」

「なにっ!!?」

「閃華裂光拳ーーー!!!!」

 

 ドゴォォォーーーーン!!!!

 

 やはりヒュルトの攻撃を上空に飛んで躱わしていたブロキーナは、更に彼のその動きの先を読んで閃華裂光拳をヒュルトに直撃させた。

「っ……!?そいつはっ!!?」

 しかし、ヒュルトは寸前でブロキーナの拳を黒い力で防いだ。

「リーデアと戦ったのならわかるだろう?」

「暗黒闘気かっ!!!?」

「そうだ……だが、それだけではないっ!!ハァーーー!!!」

 ヒュルトはその力でブロキーナを勢いよく吹き飛ばす。

「くくっ!!なんのっ!!」

 しかし、ブロキーナも空中で回転しながら体勢を建て直し、難なく着地する。

「大丈夫か!?ブロキーナ!!」

 マトリフがトベルーラで素早くブロキーナの元に着地する。

「マトリフ殿、ヤツのアレは……」

「暗黒闘気に黒眼の力を加えたモノだ」

 すると、カイアもマトリフとブロキーナの元に駆け付けて説明する。

「暗黒闘気と黒眼の力?」

「ククク……その通りだ。元々はこの暗黒闘気もメドゥルザ様から頂いた力……しかし、あの方は更に俺の鬼眼の力にも新たな力を注いでくれた……それが黒眼の力よ……この漆黒のエネルギーが俺に無限の力を与えてくれる」

 そう言って、ヒュルトはその全身に暗黒魔力、暗黒闘気、そして黒眼の力の三つのエネルギーを纏う。

「なんという圧力、コイツはあの最終決戦でのバーン並みじゃ」

「バーンだとっ!!?おいおいマジかよ!!?」

 ブロキーナはバーンパレスでの最終決戦時、バーンの鬼眼の瞳の中に閉じ込められていた状態ではあったが今、目の前に存在するヒュルトからは、あの時のバーンと同じ様な圧力を感じていた。

「成る程な確かにそうかも知れないな」

 姉としてバーンをよく知るカイアもブロキーナの言葉に頷く。

「さて、どうしてやろうか、この三つの暗黒エネルギーでいくらでも貴様等をズタズタに切り裂いてやれるぞ?」

 重く禍々しいエネルギーを湛えながら、ヒュルトがゆっくりとマトリフ達に迫ってくる。

(「おい、二人とも俺に策がある」)

(「策……っ!?」)

(「ホホ♪どうするのじゃ?」)

 すると、マトリフはヒュルトに対抗する策を小声でカイアとブロキーナに伝える。

(「とりあえず先ずはそれぞれが三方向に散る」)

(「それでヤツの隙を作るのかのう?」)

(「ああ、俺とカイアは呪文の連発で隙を作るから、ブロキーナはタイミングを計っていてくれ!一瞬だ、その一瞬で三方向から、それぞれのとっておきの飛び道具で勝負に出る!!」)

(「成る程!やってみよう!!」)

(「上空に逃れられても軌道修正出来るヤツで頼むぜ!!」)

(「よしっ!」)

(「うむっ!」)

 そうして、作戦会議を終えたマトリフ、ブロキーナ、カイアは改めてヒュルトに対して戦闘態勢を取る。

「フンッ!コソコソと下らん作戦など練ってもこの俺には通用せんぞ!!」

「散れっ!!」

 マトリフの掛け声で三人はそれぞれ別々の方向に走る。

「イオラ!!!」

 カイアは早速イオラの連発でヒュルトを牽制する。

「フッそれがなんだ!!」

 しかし、暗黒魔力が衣のようにヒュルトの身を包んでイオラの直撃を防ぐ。

「メラミ!!!」

「……っ!?今度はメラミか…!?」

 すると、間髪入れずにマトリフがメラミの連発を放つ。

「小賢しい!こんなもの喰らうかっ!!」

 カイアとマトリフはそれでもヒュルトの周りを素早く駆け回りながら、イオラとメラミの連発を繰り返す。

(「隙だ……一瞬で良い!!隙を見せろっヒュルト!!」)

 カイアは冷静にヒュルトの動きを観察しながら一瞬の隙を探っている。

「下らん攻撃だっ!!消えろっ!!ハァァァーーーッ!!!」

 ヒュルトは全身に纏っていた三つの力を放ち、暗黒の円陣を広げる。

「こいつはっ!!?」

 マトリフがその暗黒エネルギーの広がりに驚愕していると、ブロキーナの声が響いた。

「円陣の外に出るんじゃ!マトリフ殿っ!!!」

「ブロキーナ!!?」

 マトリフは素早くブロキーナと入れ替わる形で暗黒エネルギーの円陣から脱出する。

 

「武神流土竜昇破拳!!!!」

「………っ!!?」

 

 ドオォォォーーーン!!!!

 

 そしてブロキーナは、ヒュルトの足元付近に強烈な拳の一撃を放った。と、その瞬間!ヒュルトの足元の地面が大爆発を起こしてヒュルトは勢いよく宙に吹き飛ばされた。

「なっ…!?なにっ!!?」

 完全に虚を突かれたヒュルトに一瞬の隙が生まれた。

「今だっ!!!」

 マトリフ、カイア、そしてブロキーナはそれぞれの渾身の一撃を放つ構えを取る。

「メドロ……っ!!?」

 しかし、その瞬間マトリフの脳裡に、先刻ヒュルトの事を語っていたカイアの表情と言葉が過った。

(「我が子までもが、まさか一族を裏切るなどとは夢にも思わなかった……」)

「鬼眼豪竜閃ーーーー!!!!」

「閃華神裂波ーーーー!!!!」

「ちっ……!!

    メラゾーマァァ!!!!」

 マトリフのメラゾーマが一瞬遅れた。しかし、カイアとブロキーナの放った闘気技は上空のヒュルトに激しい勢いで一直線に向かっていく。

「ブラックアイズローブ!!!」 

 すると、ヒュルトは纏っていた暗黒エネルギーをマントの様に広げてブロキーナとカイアの技を防ぐ。

 

 ズガガァァァーーーーン!!!!

 

「な……!?なにっ!!!?」

 しかし、二人の技の威力は予想を越えてその暗黒エネルギーを突き破りヒュルトに直撃した。

「グアァァァーーーー!!!!」

 

 ドガァァァーーーーン!!!!!

 

 そしてヒュルトは、自身の遥か後方の壁に激しく叩きつけられた。

 しかし、そんな中でマトリフは一人違う方向に目を向けていた。

「クソッ……!?やっぱダメだったか……!!」

 マトリフは天井に目を向けると、自分が放ったメラゾーマがヒュルトを外れて直撃した場所をみて苦い顔をしている。

「マトリフ殿!!どういうことだ!!!?」

「……っ!?」

 強い口調でマトリフに迫ったのはカイアだった。

「何故あの絶好のタイミングでメドローアを打たなかった!!?途中でメラゾーマに切り替えたのは何故だっ!!?」

「カイア……すまねぇ……」

「私は謝って欲しいと言ってるんじゃないっ!!何故だと訊いているんだ……!!!?」

「カイア殿……」

「……っ!!?」

 静かに止めに入ったのは、ブロキーナだった。

「メドローアは極大消滅呪文。全ての物質や存在をこの世から消してしまう……」

「そ、それはわかっている!!私はそれをどうしてっ……!?ま、まさかっ……!!?」 

 と、カイアがマトリフの顔をみると俯き加減で苦悶の表情をみせている。

「マトリフ殿、お主……」

「いや、失敗は失敗だ。俺のミスだ。てめぇで策を立てておきながら本当に面目ねぇ……」

 マトリフはもう一度、さっきと同じ様に頭を下げる。しかし、カイアは首を横に振りながら言った。

「いや……私の方こそ大きな声を出して申し訳ない……相手が息子であると、やはり冷静さを失っているのか……つい感情的になってしまう自分がいる……」

「無理もねぇさ………でも俺達、約束したろ?」

「えっ……」

「力になる……とな」

「ブロキーナ殿……」

「言うまでもねぇが、俺達がお前の力になるってのは、お前にとっての最善を尽くすという事だ、お前が本当に望んでいる事をな……」

「私が望んでいる事……」

 カイアの目にはうっすら光るモノがあった。しかし、彼女はその瞳に感じた熱と共に必死にそれを抑えて踵を返すとヒュルトが吹き飛んだ先に視線を移した。

 すると……!

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー

 

「こいつはまた、とんでもないのう……」

「我が息子ながら、流石にここまでとはな」

 ブロキーナもカイアも先刻、渾身の一手を放った者としてヒュルトへのダメージにそれなりの手応えを感じてはいた。しかし、それがヒュルトの逆鱗に触れたのか彼がいると思われる一帯から感じられる暗黒エネルギーの威圧感は今まで以上に異質でとてつもないモノだった。

「三つの禍々しい暗黒エネルギーを一つにして高めている」

 カイアが苦々しく説明する。

「成る程なこれがヤツの本当の力ってワケか……」

 マトリフ自身もそのヒュルトの異質な暗黒エネルギーの威圧感を感じながら、それでも冷静に分析する。

「ここしかねぇな」

「え……?」

「マトリフ殿?」

 マトリフはカイアとブロキーナに何も応えずに、その歩をヒュルトのいる方へ向ける。

 そして……

「ヒュルトォーーーー!!!!」

「………!!?」

 マトリフは突然、高らかに声を張り上げてヒュルトに向かって歩いていく。

「マトリフ殿っ!!?」

 カイアが慌ててマトリフを止めようと進み出ると、その肩をブロキーナが止めた。

「……ブロキーナ殿!?」

 ブロキーナは何も言わずに首を左右に振ってカイアを諌める。

 そして、彼女もブロキーナと同じ様にヒュルトの元に向かうマトリフの背中に視線を送って見守っている。

「お前、本当にそれでいいのか?本当にそれが、お前の望む姿なのか?」

「………な……に……?」

 マトリフは押し潰されそうな程の強烈な暗黒エネルギーを纏い、その溢れる力を解放しようとするヒュルトを前にして告げる。

「ここに来る前にカイアから少し訊いたよ……お前がその生まれもった力を持て余し、鬼眼一族の中でツラい目にもあったって話しを……でも、その度にお前を必死に守ろうとしてくれた存在だっていたんじゃねぇのか?」

「き……さ……ま……」

 ヒュルトは禍々しいその暗黒エネルギーの濃度をより深くしていく。

「カイアは確かに一族の長として、一族のしきたりを破ったお前を罰しないといけないのかも知れねぇが……それでもアイツは逃げずに今日までずっとお前の事を真剣に考えていたんだぞっ!!!」

「だ……ま……れ……」

「お前が本気でアイツにぶつかって!!ツラかった事、悲しかった事、そして少しだけかも知れねぇが、幸せだった時の事から……逃げずに向き合ってみろ!!!!」

「黙れっーーーーー!!!!!」

 瞬間ーーーヒュルトはその全身からこれまで以上の激しい暗黒エネルギーを放った。そして、その勢いでマトリフはカイア達のところまで吹き飛ばされた。

「うわぁぁぁーーーー!!!!」

 

 ガシィィィッーーー!!!

 

 しかし、ブロキーナとカイアは吹き飛ばされて来たマトリフをしっかりと受け止めた。

「………っ!!!?す、すまねぇ……二人共……」

「何を言う私の方こそ……」

「少しでいい……」

「えっ……!?」

「俺の言葉なんざ、ほんの少しでいいんだ……アイツに届かすのは……」

「マトリフ殿……」

「カイアぶつけろ。お前の全てを、お前の命の言葉で……」

「暗黒エネルギーの圧力の高まりが若干じゃが抑えられておる。おそらく無意識にヒュルトはマトリフ殿の言葉で迷いが生じとるのじゃろう……」

 カイアは二人の言葉にゆっくり目を閉じ、その胸に手を当てて気持ちを落ち着かせている。

 そして……その胸に一筋の炎が宿る。

「よし……!!行ってくる……」

 そう小さく呟いたカイアの瞳には強い光が込められていた。

 そうして、今度はカイアがヒュルトに向かっていく。

(「マトリフ殿、ブロキーナ殿、お主達の想いが、この私に忘れかけていたモノを思い出させてくれた……だから私は逃げない!!お主達が与えてくれた希望をもう決して手離しはしない!!!」) 

 カイアはゆっくりと歩を進めながらマトリフとブロキーナに対する感謝とヒュルトに向き合う深い決意を胸に、鬼眼一族の長としてではなく、一人の親としての戦いに挑んだ。

 

 




 技の応酬の中で、互いの思いが様々吹き荒れる展開となっていますが、カイアが時に激情的になるところを二人のおじいちゃんコンビが冷静に上手くバランスを取っているという良いチームとして描けていれば幸いです。ヒュルトの暗黒エネルギーは、暗黒魔力と暗黒闘気、そして黒眼の力の三つの力が合わさったモノですが、それをこれからどう使ってマトリフ達を追い詰めるのか?そして、マトリフ達はどうやってそれを乗り越えていくのか?が今後の展開の要になりますが、一筋縄ではいかない事は確かですね(^_^;) 
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