新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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奈落

 

  ─約束─

 

「メドゥルザ……ワケを訊かせて貰おうか……?」

 娘のマァムに対するメドゥルザの言葉にロカは怒りを込めた声で訊ねる。

『なぁに、そう慌てるな……あと一人……いや二人か……ゲストを迎えてやろうではないか……』

「なんだと……っ!?」

 

 ドォォォーーーーーーン!!!

 

 メドゥルザがそう言った瞬間、ロカのいる場所の程近くでルーラの着地音がした。

「なんだ……っ!?一体……っ!?」

 ロカが土煙の舞うその先を見据えるていると……

『ご苦労だったなアギス……』

「はっ!ご命令通り、ワズはこちらに確保しました……」

「ワズ婆さん……っ!!?」

 メドゥルザの家臣である女魔族のアギスが気を失っているのか目を覚まさない状態のワズを抱えてロカの前に現れた。

 と、その時……

「おい……っ!!どうしたロカ!!?何があった………!?」

 その意識に届く声はマトリフのモノだった。マトリフやブロキーナ達もまだロカと意識が繋がっている状況から彼の周辺において何か事が起きたことを感じていた。

「マトリフ……こっちはちょっと厄介なコトになっちまってな……おい……!アギスとか言ったな……!お前……最近俺のコトをジロジロ見てたろ……っ!?」

 ロカはアギスがメドゥルザの命令で彼を監視していたコトに勘づいていた。

「ほう……気配は完全に消していたつもりだったがな……なるほど……メドゥルザ様がお気に掛けるのも頷ける……」

「なに?メドゥルザが俺を……?」

 ロカはその言葉に訝しんで眉を顰める。

『アギス……余計なことはいい……お前はスグにワズを連れてこい』

「はっ!失言でした!申し訳ありません……っ!では、直ちにそちらに向かいます!」

「お……っ!?おい……!!ちょっと待て……っ!!婆さんをどうするつもりだ……!!!」

 すると、ここでメドゥルザがロカに告げる。

『フフフ……ならばロカよ……我が城に来い……この十数年、貴様を招待したことは一度もなかったがよい機会だ……ついでに貴様の娘について色々と語らうとしようではないか……?』

「なんだと……メドゥルザ!!!てめぇ!!!!」

 再びロカの瞳に怒りの色が浮かぶ。

「おい!!待てっメドゥルザ!!どういうつもりだ……っ!!!?俺達だってマァムに何かあったらてめぇを許しゃしねぇぞ!!!!」

 ここで再びマトリフも熱く声を上げる。

『フッ……バカめ貴様らは所詮ここでくたばる身だ……敢えてここで詳しく説明する意味も必要もなかろう……だが、ロカにはそれ以外にも用があるのでな……フフフ……まぁそれもここで終わる貴様らは知ることはないだろうがな……フハハハーーー!!』

 メドゥルザはそう言いながら嘲笑する。そうして徐ろに懐から、手のひら大の闇色の宝玉を取り出した。

「ではメドゥルザ様……ロカも連れて向かいますか?」

 と、ここでアギスがメドゥルザの指示を仰ぐ。

『ん?そうだな……いや、ロカよ……貴様は自分の足で来い……招待してやるとは言ったが、このままあっさりとここまで来られても興が削げるというモノ……我が城は同じ大陸上とは言え貴様がいる場所からは遥か北に位置しているが、大体の場所はワズから聞いているのだろう?』

 メドゥルザはロカを嘲るように言う。

「ああ……ワズの婆さんから前に訊いたよ……」

『なら、来れんことはないな……?』

「わかったぜ……ただ一つ約束しろ……っ!!」

『ん?なんだ?』

「俺が行くまでワズの婆さんには絶対に手出しするな……っ!!!絶対にだっ!!!!」

 ロカはメドゥルザに強い言葉で約束を迫る。

『フフフ……いいだろう……ただしこちらもいつまでも待っているつもりはない……そうだな……五日……それだけ待ってやろう……』

「五日……だな……わかった……」

 そう言うとロカは、その瞳に強い覚悟を定めた。

『待っているぞ……ロカよ……さぁアギス……戻れ』

「はっ……!!」

 そして、アギスはロカに一瞥するとルーラでメドゥルザの居城へと戻った。

「くっ…………!?」

 ロカはそのルーラの軌跡を睨み付けながら苦々しい面持ちで見送る。

 と、ここで再びメドゥルザはマトリフ達の方に話を向けた。

『さて、いよいよお待ちかねの時間だ……お前達の処分に移ろう……身の程知らずの地上の人間と……鬼眼族の二人よ……』

「………っ!!?」

「メドゥルザ……!!てめぇ!!まだなにかするつもりか……っ!!?」

『なんだロカ……相変わらずだなお前も……のんびりしていて良いのか?私は言ったぞ?いつまでも待っているつもりはないと……五日という猶予も気が変わるやも知れんが……?』

「クソ……っ!!?てめぇって野郎は……なんてヤツだ……!!!」

 その時、二人の会話を聴いていたマトリフがロカの意識に語り掛ける。

「おいロカ……っ!!おめぇは早くそのワズ婆さんってのを助けに行け!!」

「マトリフ……っ!!?」

「俺達の方は大丈夫だ!!」

「だ、だけどよ……」

「ロカ殿……お主のコトじゃ、今は何が一番大切なのか……わかるはずじゃろ?」

「老師……」

「あなたの力が必要とされてるのよ……ワズをお願い……」

「ん?カイア……知ってるのか?そのワズって婆さんのコト……」

「ええ……古い知り合いよ……」

 マトリフがそう尋ねるとカイアは微笑を浮かべて言った。

「ロカ……レイラとマァムにはちゃんと伝えとく……」

「え……っ!?」

「おめぇは目の前で危ない目にあってる相手を見過ごせないヤツだってな……でも、まぁ……アイツらこそソレをよくわかってるだろうケドな……」

 このマトリフの言葉を始めブロキーナやカイアの想いがロカの胸に熱いモノを灯らせた。

「マトリフ……ああ、わかったぜ……!!マトリフ!ブロキーナ老師!そしてカイアさん!必ず!必ず地上で逢おう!!」

「ああ、そんときゃレイラやマァム……それに勿論アバンもな……!!」

「ウム!楽しみにしておるよ♪」

「ああ!ありがとうみんな!!俺も必ずこの魔界から出てやるぜ……っ!!!」  

 そうしてロカとマトリフ達は地上と魔界という隔たれた環境により互いに顔を合わせられない中ではあってもその絆の繋がりを改めて強く確信した。

「おいっ!!メドゥルザ……!!!そういうコトだからよ首洗って待ってろよ!!!てめぇなんざ軽くぶっ倒してやるぜ……っ!!!」

『フハハハハ!!聴くに耐えん茶番の後には貴様の戯言か!!?フフ……まぁいいだろう……では、お前が我が元に辿り着くまで、俺はお前の大切なモノを綺麗サッパリ片付けておくとしよう……』

「なんだと……っ!!?」

「構うなロカ……っ!!俺達を信じろ……っ!!!」

「マトリフ……っ!!!」

「行けーー!!っロカーーー!!!!」

 マトリフの熱い叫び声にロカはその瞳に力を込める。

 そして、踵を返しメドゥルザの居城のある方角に強い視線を向ける。それは、あの大剣をひたすら振るっていた時の獣の如き鋭い眼光だった。

(「約束だ………っ!!!お互い必ず生きて会おうぜーーーーーー!!!!」)

 ロカはそうして走り出した。大切な恩人を救う為、そして大切な友との約束を果たす為、そしてその胸には、常に大切な家族の暖かい笑顔がその存在の深さを示していた。

(「レイラ……マァム………待っていてくれ……俺は必ずお前達のところに帰る……!!」)

 

 やがてロカとの意識は完全に絶たれた。そして、漸くマトリフ達はダークデインの影響による身体の痺れからも開放された。

「ふぅ……っ!やっと動けるようになったぜ……みんな大丈夫か……?」

 マトリフがブロキーナとカイアに目を向けながら訊ねる。

「ホホ♪なんとかのう……」

「私も大丈夫よ……今のうちに回復させましょう……ベホマラー!!」

 カイアはベホマラーで自分とマトリフ、ブロキーナのダメージを回復させる。と、そんな中でヒュルトは浮かない顔をしている。

「ん?どうしたヒュルト……?」

「お前もダメージを受けたのか?」

 ヒュルトはマトリフ達とはやや離れた位置にいた為にダークデインの影響下にはいなかったが、カイアがヒュルトの様子をみて訊ねる。

「いや、オレは大丈夫だよ……みんなごめんなさい……オレの所為で……」

「あん?なんでおめぇの所為なんだよ?」

「だってオレがもっと早くに気付いていれば、みんなメドゥルザのダークデインを喰らわずに済んだかも……」

 ヒュルトは肩を落として俯きながら言う。

「なぁに言ってんだ!おめぇの所為なんかじゃあねぇよ!!」

「え……っ!?で、でも………」

「全てはヤツ……メドゥルザが悪い……」

「ウム、その通りじゃよ♪」

「みんな……」

 

 バリバリバリーーーーーー!!!!

 

 すると、突如目の前の呪精木が黒い稲妻を放ち始めた。

「ヤベェ!!またダークデインだ!!」

「離れるんじゃ!!!」

 マトリフ達はダークデインを纏う呪精木から距離を取る。

『フハハハハーーーーーー!!!!何処に逃げても無駄だ!!この呪精木を通して貴様らにダークデインの嵐をお見舞いしてやるわーーーーーー!!!!』

 

 ズドォォォォーーーーーン!!!!

 

 メドゥルザは先刻よりも広範囲に渡る強力なダークデインを放つと、黒い雷は更に凄まじい勢いと速度でマトリフ達に襲いかかって来た。

「カイア!!マホカンタで跳ね返すぞ!!!」

「わかったわ……!!!」

 しかし、マトリフとカイアは迫りくる雷撃に素早く反応し魔法力を両の手に込めると光の壁を作った。

「マホカンターーーーーー!!!!」

「マホカンターーーーーー!!!!」

 

 ズガガァァァーーーーーーン!!!!

 

「母さーーーーーーん!!!!」

「マトリフ殿ーーーーーー!!!!」

 

 キィィィーーーーーーン!!!!

 

 ヒュルトとブロキーナの叫び声が辺りに響く。

 すると、寸でのところでマトリフとカイアが作りだしたマホカンタの壁が呪精木から放たれたダークデインを受け止めていた。

 そして……!!

 

 ドォォォォーーーーーーン!!!!

 

「おお……っ!!?あの凄まじい勢いのダークデインを跳ね返した……っ!!!」

 

 ドガガァァァーーーーーン!!!!

 

「よっしゃぁぁぁーーー!!!!」

 メドゥルザから呪精木を通して放たれたダークデインをマトリフとカイアは見事に跳ね返した。そして、そのことによって呪精木は完全に息絶えた。

「マトリフーーーーーーっ!!?」

「お……っ!?オイオイ……っ!!カイア……!?」

 二人の初めての共同作業による成功の喜びをカイアはマトリフに抱きついて表現すると、マトリフは照れながらもしっかりカイアを抱き締めた。

「ホホ♪見事じゃ二人とも♪」

「うん!母さんもマトリフさんもスゴイなーーー!!!」

「ハハハ♪まぁな!」

「マトリフさんと母さんは息ピッタリだね!!」

「ヒュルト……」

 カイアは顔を赤くしながらもマトリフを見ると、彼もニカッと笑顔で応えた。

「あ……でも、解呪の実は……」

 そう言ってヒュルトはダークデインによって燃え尽きようとしている呪精木を見つめながら、落胆した様子で告げる。

「ホホ♪ヒュルトくん……これはなんじゃろ?」

「え……!?あ!そ、それは……!!解呪の実……っ!!!?」

 ブロキーナの声にヒュルトが振り返ると彼が笑顔で解呪の実を手にしている。

「最初のダークデインを受ける前にヒョイっ……とな……失敬させて貰ったよん♪しかも一応ワシの回復系魔法力で守っておいたから無キズだよ〜ん♪」

「あの状況で……いつの間に……!!?」

「ヒヒ♪さっすが武闘家のスピードだよな♪」

「なぁに、この鬼眼の腕輪にまだ力が残っておったのじゃよ♪のうカイアどの♪」

「お役に立てて光栄だわ♪あ、でもその腕輪……壊れたところがあるわね……ちょっと待って今、修復するわね」

「おお♪それは助かるのう♪」

 そう言って、マトリフ、カイア、ブロキーナは三人で笑い合っている。 

 そして、ヒュルトはそんな光景をみて、改めてこの三人の頼もしさに胸を熱くしていた。

『フフフ……フハハハハ!!!!』

 と、これでもう何度目になるだろうか、メドゥルザの嘲笑の声が辺りに響き渡る。しかし、今回はどこか違和感を感じるモノだった。

「メドゥルザか……っ!!!?」

「もういい加減ウンザリする笑い声だけど、何か………」

「ウム……変じゃな………」

「なにか違和感が………あ!!こ、これは………っ!!!?」

 ヒュルトのその声に一同が彼の指す方を見ると、その足元に黒く禍々しい魔法陣が現れ始めた。

『フハハハハーーーーーー!!!あのダークデインで大人しくくたばっておけば良かったモノを……自らの手で地獄への道を開いてしまうとはな……っ!!!本当に愚かなヤツらだ!!!!』

 メドゥルザの声はその魔法陣の中心から聞こえて来ている様だった。

「まさか……っ!!?まだ何かトラップが………っ!!!?」

『流石に勘がいいなヒュルト……あの呪精木から解呪の実を取れば、この魔法陣が発動する様に仕掛けておいたのさ……貴様らに相応しいとっておきの最後の仕掛けをな……フフフ……』

「なんだと……っ!!!?へっ……どんな最後を演出してくれんのか知らねぇが俺らだってそう簡単にゃくたばらねーよ……っ!!!」

『愚か者め……ならば地獄への道を存分に味わうがいい!!!!漆黒の地の底より出でよ!!

 呪神冥法獣オセロットーーーーーー!!!!!』 

「呪神冥法獣……!!!!?」

「オセロット……!!!!?」

 その瞬間!マトリフ達の足元に広がる魔法陣が不気味な赤い光を放ったかと思うと、その魔法陣の中心に凄まじい勢いで大きな亀裂が入り始めた。

「ヤベェ……っ!!!トベルーラで飛ぶぞ!!!」

「わかったわ……!!!」

 そして、マトリフはブロキーナを抱えてトベルーラで亀裂の入った地面から飛び、カイアとヒュルトも飛び立つ。

 しかし………!!!

「な……っ!!?なにぃぃぃ!!!?」

「ま、魔法力が……っ!!!?」

「消えたっ!!?このままじゃ……っ!!!」

 マトリフ、カイア、ヒュルトはトベルーラを使って飛び立った筈だったがその瞬間に彼らの魔法力が掻き消された。

『フハハハハーーーーーー!!!その魔法陣はオセロットを召喚するだけのシロモノではない!!貴様らの魔法力を封じる為のモノでもあるのだ!!!さぁ!!冥界の巨獣オセロットのエサとなるがいいーーーーーー!!!フハハハハ!!!

ハーハハハハハーーーーーーーーー!!!!!』

「な、なんじゃ……っ!!!?

この巨大な口はーーーーーっ!!!?」

 流石のブロキーナも自分達の眼下に現れた巨大な口を広げる魔獣の姿に声を上げた。

「く……っ!?喰われる!!!!」

「うわぁぁぁーーーーーー!!!!」

 マトリフ達が眼科の脅威に慄く中メドゥルザの言うその冥界の巨獣は徐々にその姿を表しながらマトリフ達を飲み込もうとしている。

 巨大な鰐の様なその巨獣の口内には数え切れない数多の牙が生え揃い、あらゆるモノを砕かんとばかりに凶悪な鈍い輝きを放っている。

 そして、魔法力を完全に封じられたマトリフ達は為すすべもなくその闇の底に飲み込まれていった………。

 

 

 




 ロカとはここで、暫しの別れになります。ロカがこの後目指すメドゥルザの城ですが、実際にヴェルザーが封じられている魔界の奥深い場所とは離れてはいます。理由としては、天界の精霊が敢えてヴェルザーとメドゥルザを離した位置で封印したからです。恐らく闇の力(一族)の分散という目的もあったのだと思います。また、ロカのいる大陸とメドゥルザの城は同じ大陸上ではありますが、その大陸事態が半端なく広いです。地上界の全ての大陸がスッポリ入ってしまうくらいのデカさです。因みにロカのいる場所は大陸の南、メドゥルザの城は北端。なので、ロカは例えば地上の最南に位置するパプニカ王国のあるホルキア大陸から最北の死の大地に徒歩でいくというコトになります。
何事もなく……というワケにはいきませよねやっぱり (笑)

 
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