新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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夜明け

 

 ─新たな絆─

 

 白白と遠くの空に夜明けの光が仄かに浮かび始めた頃………解呪の洞窟の入口に光の塊が突如現れた。

 

 シュウゥゥゥゥゥーーーーーーーー

 

 マトリフ、ブロキーナ、カイア、ヒュルトは、朝の冷えた空気を感じて自分達の身が地上にあることを実感した。

「戻れたのか……?」

「ホホ♪やったのう♪」

 そう言って、マトリフとブロキーナは顔を見合わせる。そして……

「いやっほーーーーーーーーー!!!」

 二人はガッツポーズで生還の喜びを表している。

 と、そんな中……

「ここが……地上……人間界……」

 カイアが見つめるその瞳の先には、夜明けの空がゆっくりと太陽の光を迎えていた。

「美しい………なんて美しいの……」

「そうか……魔界じゃあ朝日なんて拝めねぇモンな………」

 そう言ってマトリフはカイアの隣に立つ。

「そうね……あなたの世界にこれて本当に良かったわ……」

 カイアはマトリフの自分に向ける眼差しを真っ直ぐ見つめる。そこには、心の底からの愛情が溢れていた。

……と、その時だった。

 

 ドサ……ッ!!

 

 何かが倒れる音がして、皆がその方向を見ると……ヒュルトがその場に身を横たえていた。

「ヒュルト………っ!!!?」

「ヒュルト………っ!!どうした!!?」

「大丈夫かのう……!!!?」

 カイア達が慌てて駆け寄ると、ヒュルトは弱々しく笑いながらカイアの支えでなんとか身を起こす。

「ご、ごめんなさい……ちょっと……力を使い過ぎたみたいで……」

「謝んなって!俺達を助ける為にやっぱ随分と無茶をさせちまったみてぇだな……こっちこそすまなかったな……ヒュルト……」

 マトリフはヒュルトの容態を気遣いながら優しく告げる。

「マトリフさん……ありがとう……」

「ヒヒ♪」

「今、回復呪文を掛けるわ……ベホマ!」

 カイアはベホマでヒュルトの体力の回復を図る。

「でも、本当に地上って綺麗だなぁ……太陽だよね……あれ……」

 ヒュルトはそう言いながら、遠い山の上に登る朝日を指差す。

「ホホ♪ならあそこの丘に行ってみようかのう?ここよりもよく見えると思うよ♪」

 ブロキーナがそう言いながら、少し遠い位置に見える丘の上を指差してニカッと笑う。

「おしっ!あそこならルーラで行けるぜ!」

 そしてマトリフ達はルーラで近くの丘に飛んだ。

 

「わぁぁぁーーーーーー母さん!!スゴイよ!!ここからの眺め最高だよ!!!!」

「本当にスゴいわね!!!平地でみる景色よりも朝日が大きく見えるわ!!!」

「ああ……ここはいいなぁ……」

「若い頃から何度となくこの丘からの景色をみたものじゃよ……」

「ブロキーナ殿のお気に入りの場所ってワケね♪」

「ホホ♪まぁそうじゃな……」

 そう言うと、ブロキーナはカイアと彼女に身体を預けているヒュルトを見つめ、そしてその隣のマトリフも視線に捉えながら、その黒眼鏡の奥の瞳に熱く輝るモノを感じていた。懐かしい数十年前のとある微笑ましい光景を思い浮かべながら……

「スー……スー………」

「あら?」

「ん?ハハハ……寝ちまったか……?」

「フフ……♪そうね……夜更しが過ぎたモノね………長い長い……夜更し……だったものね……」

 寝入ってしまったヒュルトの表情に優しい眼差しを向けるカイアの言葉には、この親子が本当に長い間苦しんできた、その長遠の旅路の終焉をもの語っていた。

 そして、マトリフはそんなカイアの表情を見ながらある提案をする。

「おめぇ等……ネイル村に身を寄せねぇか……?」

「え………?ネイル村……に……?」

「ああ……魔界でロカと話した時に聞いてたかも知れねぇが、アイツの嫁と娘が住んでいる村さ」

「レイラさんとマァムさんね……ええ、ロカはネイル村の事もよく話してくれたわ……でも……いいのかしら……」

「あん………?」

「確かに地上の人間を敵対視はしていないけど、でも私達は魔族よ……そんなにすんなり受け入れてくれるかしら……」

 カイアのその懸念にマトリフもブロキーナも顔を見合わせる、そして……

「ワハハハハハ!!!」

「ワハハハハハ!!!」

「な、何よ!二人とも!わたし何かおかしな事言った?」

 突如、笑い出したマトリフとブロキーナにカイアは口を尖らせて言う。

「いやいや、そういうワケじゃねぇが……」

「そんな心配は無用ということじゃよ♪」

「え……?」

「あの村の連中は、人間だの魔族だのと差別なんかしやしねぇさ……」

「マトリフ……」

「ロカが故郷のカールじゃなく、何故あの村にその根を下ろしていたのか……レイラとの結婚だけが理由じゃないのさ……」

「ウム、レイラ殿をカールに呼ぶことだって出来たのに、敢えてロカ殿がネイル村に身を寄せたのは、あの村人達の人柄に惹かれたからでもあるのじゃよ……」

「人柄……?」

 カイアは首を傾げて問う。

「ああ……あの村の連中には、きっと染み付いてるのさ……レイラの親父さんの教えがな……」

「レイラさんのお父上……?」

「レイラの親父さんは、あの村の神父だった……かつてアバンとロカが魔王ハドラー討伐の旅を続けていた中であのネイル村に立ち寄った際には、まだ健在だったんだがな……」

「大魔王バーンの時代になった直後に魔の森のモンスターから村人を守るために命を落とされたのじゃよ……アリアム殿は本当に立派な方じゃった……」

 マトリフとブロキーナは、過去にレイラやマァムを訪ねてネイル村に訪れた時からレイラの父アリアムとは旧知の仲であった。

「そう……そうだったの……」

「だからよ、村のヤツらはそんなアリアム神父の教えを今でも守ってるのさ……どんな存在であれ苦しみ喘ぐ存在には手を差し伸べよう……ヒヒ♪ロカが初めてネイル村に来た時もモンスターにやられた傷で痺れて動けなくなっていたところを直さま娘のレイラと治療してくれたらしいぜ……」

「ホホ♪だからカイア殿……心配しなくても大丈夫じゃよ♪」

「ああ、それにもし万が一でも何か不快なことを言われたりされたりしたら、レイラやマァムが黙ってねぇぜ!!アイツら怒るとマジでこえ〜からなぁ!」

「フフ♪わかったわ……二人がそこまで言うのなら安心ね♪」

「ウム!保証するぞい♪」

「ヒヒ♪ああ、安心しろ!」

 カイアはマトリフとブロキーナの提案に頷くと二人の笑顔に優しい笑顔で応えた。

「でも、あの解呪の洞窟も……このまま放っておくのもどうなのかしら……さっきのオセロットという魔獣……アレはきっともう現れる事はないだろうケド……」

「ああ……まぁなぁ……カイア……お前はあのオセロットって化け物の事、なんか知ってるのか?」

 マトリフはカイアが語るオセロットの事に関心を示して訊ねる。

「もう数千年も前の話しよ……かつて暗黒魔力の始祖とも呼ばれ、魔界だけでなく地上界や天界さえもその手に収めようとした邪神が魔界に存在したの。そしてソイツは強大な暗黒の力でその辣腕を奮っていたのだけど、かつての三界の神々によってその邪神は魔界の奥底に封じられたのよ……でも邪神は封じられる直前に自らの分身とも言える邪悪な存在を産み出して神々の目を欺く様にその存在を隠していたの……それが……」

「あのオセロット……というコトかのう?」

 カイアはブロキーナの問いに黙って頷き、続ける。

「ヤツは……オセロットは魔界に充満する暗黒エネルギーを餌にドンドン強大な力を蓄えていったわ……これまでヤツの犠牲になった魔族も数千年の間には計り知れない程いた……でも、そのかつての魔族達も決して黙ってはいなかった……そこで、そのオセロットを先の邪神のように魔界の奥底に封印しようと目論んだのよ……だってそうでもしないと自分達かそのオセロットの底無しの欲望の餌食にされてしまうワケだから……なんせヤツの二つ名は”全てを飲み込む者“って言われていたくらいだもの……」

「”全てを飲み込む者”……ま、まぁ……ありゃあ確かに……」

「飲み込まれる寸前じゃったからのうワシらも……」

「ええ……でも、ようやく魔族達は苦労の末オセロットを封じることが出来たのよ……」

「ただ、メドゥルザはその封印を解いてしまった……」

「そう……魔界支配のために自分ら一族の力を更に強大なモノにする為にね……でも、そうは言ってもあれ程の魔獣を地上に召喚するには相当な魔力が必要になるし、いつまでも地上に留めておくのはいくらメドゥルザでも不可能だわ、ましてや天界の精霊により力が抑えられている今なら尚更よ……だから、もうオセロットはあの場所にはいないでしょうね……」

 カイアはそう言って眉を顰めながらも、解呪の洞窟のあった方に視線を走らせる。

「なるほどな……だが、確かにあの解呪の洞窟は人が足を踏み入れていい場所ではないことは確かだな……」

「ワシからも一応ロモス王には、忠告をしておいたが……念には念を入れんとくかのう……」

「ああ、そうだな……ただ次はアバンのヤツも連れて行こう……アイツならマホカトールであの洞窟の邪気も払えるだろうしな」

「そういえばアバンという方は破邪の魔法に長けているんだったわね!」

「ネイル村にいればアイツにもスグに会えるさ……ルーラでひとっ飛びでやってくるぜ!」

「楽しみだわ!アナタのお弟子さんにも期待してるわよ♪」

「あ、アイツか〜!ま、まぁ……アイツは期待しない方がおもしれぇぞ?」

「何よそれ?変な紹介ね?」

「ハハハハハ!」

「ハハハハハ!」

「フフフ……!」

「ん……んん………」

「………っ!!?」

「おっとと……!こいつぁイケねぇ……王子様が起きちまうわ……」

「し〜っ!」

「ホホ……♪」

 そうして三人はヒュルトの穏やかな寝顔に微笑みを向けて、ゆっくりと照らす朝日の輝きに目を細める。

 漸く長い夜が明け新たな朝が訪れる……

 かつてない新たな敵との邂逅を果たした彼等は、それでも今この目の前の朝日に希望の光を見据えていた……

 

 




 平和です。この回は兎に角平和です。というワケでこれにて解呪の洞窟編は終了となります。長い間お付き合い頂いた皆さん本当にありがとうございましたm(_ _)m✨
 ただ、まだまだ物語は続きます、メドゥルザの城に向かったロカの話やメドゥルザや魔界の勢力のエピソードもこれから進めていこうと思いますので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます✨
 と、いいつつ申し訳ありませんが、誠に勝手ながら次回の更新は夏休みというコトで、お休みをさせて頂きたいと思います……スミマセン(^_^;) 
 翌週から新たな展開でスタートしますので、どうぞお楽しみにしていて下さい。
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