新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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ランカークスの朝

 

 ─アバンの目─

 

「それでは、本当に色々とお世話になりました!!」

 清々しい朝の陽光が照らす中、アバンは旅立ちの支度を整えてジャンクとスティーヌに謝辞を告げていた。

「おう!またいつでも来てくれや」

「ええ、また色々なお話しを聞かせて下さい……あ、お料理のレシピも!アバン様は本当にお料理がお上手ですから♪」

「いや〜ははは!スティーヌさんも素晴らしいですよ♪私も勉強させて頂きました!」

「お、そうそう勉強と言えばこのバカ息子の家庭教師は続けてくれんだろう?アバン殿!」

「バ、バカ息子だとーーー!!」

 起き抜けでまだ寝癖のついたポップがジャンクの罵言に反発してると……

「いえ、もう彼は既に私を超える智慧も強さも身に付けつつありますから、逆に私が教えて貰う事がこれからはきっと沢山増えるでしょう♪」

 と、アバンは嬉しそうに言った。

「いやいやいやいや!何言ってんスか先生!!俺の方がまだまだ教えて貰いたい事たくさんありますよ!!」

「勿論、教えられる事はまだありますが、先刻のあなたの成長度合いを鑑みれば私やマトリフを凌駕する才があるのは明白です……成長だけで考えればあなたは私の弟子達の中ではダントツ一番ですよポップ♪」

 ポップの謙遜の姿にアバンは真剣な目で彼の成長振りを評価しながらも最後は茶目っ気たっぷりにウィンクした。

「そうかい……なら今度はフツーに遊びに来てくれや……スティーヌじゃねぇがアンタと話すのは本当に面白いからな♪」

「はい!もちろんです!!カールの復興が落ち着きましたら、是非とも!!」

「そうでしたね……カール王国はアバン様の故郷でしたわね……でも相当な被害に遭ったと私達の耳にも聞こえていたのですが……」

 スティーヌはその話をするのが、申し訳ないと言うような複雑な表情で訊ねる。

「ええ、そうですね……王女のフローラ様からパプニカのレオナ姫宛てに届いた書簡の内容を聞いた限りでは、カールの復興にはかなりの苦労が伺われますが、その書簡を受け取ったパプニカは元よりロモス王国やここベンガーナ王国、更にリンガイアやテランからも支援物資が届けられているという話しも聞いておりますので、皆さんのお力添えの賜物ではありますが、復興は少しずつ為されていると思います……」

「そうですか……それでしたら安心ですね……」

「はい、本当に有り難い限りです……なのでベンガーナ王にも直接お会いしてご挨拶と感謝を伝えさせて頂こうと思います」

「これから行くのかい?ベンガーナのお城に?」

「ええ、フローラ様からも仰せつかっておりましたので……その後にカールに戻ります」

「そうかい……それならアバン殿はいわゆる大使ってヤツだな?」

「いやいやいやいや!一介のカールの兵士ですよ〜ははは!あ……でも、それじゃあ流石にベンガーナ王と謁見など礼を失してしまいますね……困ったな……」

 と、アバンはそう言って本気で悩み始めた。

「フフフ♪本当に不思議な方ですねアバン様は♪」

「へ?」

「大使がイヤなら勇者としてでいいじゃねぇか……それなら構わないだろ?」

「あーなるほど!確かにそれなら臆せずイケそうです!元勇者ではありますが、案外と使える肩書きですからね~あはははは!!」

 そうして、皆で笑っていると、ジャンクの武器屋の裏からロン・ベルクとノヴァが姿を現した。

「あーーー!!良かったぁ!!間に合ったぁ!!」

「おや?ノヴァ君にロン・ベルクさん!お見送りに来てくれたのですか!?」

「スイマセン!!朝から先生と故郷のリンガイアまで行っていたモノで………」

「リンガイアに……?」

 ポップが何気なくノヴァに問う。

「ああ、カールに送る為の資材の調査をしていたんだ」

「なんでまたそんなこと?リンガイアには親父さんや生き残った兵士の人らもいるんだろ?わざわざノヴァが行かなくても……」

「いや、俺がコイツに連れて行ってくれと言ったんだ……」

 と、ポップの疑問にロン・ベルクが口を開く。

「ロン・ベルクさんが?」

 アバンがロン・ベルクに訊ねると、彼は折り畳まれた一枚の紙をアバンに差し出した。

「これは……?………っ!?」

 そして、その紙を開くとアバンは思わず目を見開く。

「流石だな……一目でその内容が解るとは……そうだそこにはリンガイアで採掘出来るある鉱物とその用途を記してある……」

「ロン・ベルクさん……」

「俺もカールの状況を風の噂で聞いていた……城壁は勿論その他の街の状況だって殆ど形を成してない程に破壊し尽くされたという話しだったからな……そこでコイツの故郷のリンガイアではとある良い鉱物が手に入るコトを思い出したんだ……」

「良い鉱物?」

 今度はジャンクが訊ねる。

「ああ……ミスリル銀というのを聞いた事はあるか?」

「そりゃあ俺だって武器屋の端くれだ、知らねぇワケねぇだろ?」

「フフフ……愚問だったな……」

「親父……ミスリル銀ってもしかして、魔力を込められる鉱物ってヤツじゃなかったか?」

 ポップのその問いにジャンクは思わず顔が綻ぶ。

「ホウ♪おめぇよく知ってるな?」

「アバン先生のおかげさ♪ね、先生♪」

「そうでしたね、ミスリル銀については私もそれなりの知識はありましたから、しかし、そういえば鉱物の事についてあなたが興味を持ったのはヒュンケルやラーハルトさんのあの鎧がきっかけだと言ってましたね」

「はい、伝説になるような鎧の魔剣や魔槍にどんな金属が使われてるのか気にはなってて……んで、アバン先生ならその辺りも詳しいかなと思って……」

「なんだ、それならロンのヤツに訊いても良さそうなモンじゃねぇか?聞いた話じゃその鎧のなんちゃらはコイツが作ったモンなんだろ?」

「まぁ俺もそう思ってたんだけどさ〜」

 と、言いながらポップはロン・ベルクの顔を伺うように見る。

「そう簡単に武器職人は自分の手の内を教えはしないさ、ましてや鎧の魔剣や魔槍は俺が作った武器の中でもそれなりに手応えがあったモノだ……ジャンク、お前は人が良すぎるんだよ……ま、最もオレはお前のそういうトコを気に入ってはいるがな……フフ」

「そうですね、この人は武器作りを止してからは、他の沢山の職人さんに自分の武器作りの手法を手解きしていたくらいですから……」

「べ、別にいいじゃねぇか!!ヘタクソな武器を作って客が無くなるよりかはよ!!」

「ええ、そうですね♪」

「お前らしいよジャンク……」

「う、うるせぇよ……!!」

「ハハハハハ!」

 その人の良さを見抜かれて照れるジャンクに皆が優しく笑顔で称える。

「んで、そのミスリル銀がリンガイアから採掘出来るってのか?」

「うん、そうなんだ!今朝早くにリンガイアに飛んで、先生とそのミスリル銀が含まれている鉱物を調査してたんだよ……まぁ、そうは言ってもまだ途中ではあるんだけど、切り上げてアバン様のお見送りに来たんだ」

「そういうコトだからそいつに書かれているのはリンガイアで採掘されたミスリル銀鉱物のまだほんの一部だ……しかし、それだけでも役には立てるだろう?」

「ええ!勿論です!!しかも丁寧に用途まで記されてますし、魔力を込めたミスリル銀で新たに作り直せば以前よりも強い城や街を作れそうです!!本当に有難うございます!!!」

 そう言ってアバンはロン・ベルクとノヴァに深々と頭を下げる。

「必要な分はまたフローラ様とも相談してみて下さい。今朝見たところじゃ、まだリンガイアには沢山のミスリル銀がありそうなのでご連絡頂ければいつでもご用意出来ます!」

「へぇ〜それにしても、なんでリンガイアからそんなに多くのミスリル銀が出るんだ?」

 ポップがそこで疑問を呈する。

「おそらくは、ギルドメイン山脈の影響でしょうね」

「ギルドメイン山脈?」

「ほう、やはり知っていたか……」

 アバンの言葉にロン・ベルクが感心しながら頷く。

「ええ、あそこにはかつて若き日のマトリフが修練を積んでいたギュータと呼ばれる秘境がありましたから……」

「ギュータ!?し、師匠が修練を積んだ秘境!!!?」

「マトリフから聞いてませんか?あーまぁそうですね〜今はもうありませんから、言ってなかったのかも知れませんね……」

「そんなところが……ギルドメイン山脈にあったんですか……」

「ええ、しかもそのギュータの中には魔界と繋がる可能性のある場所もありましてね……ですからギルドメイン山脈やその周辺からは魔力の籠もった鉱物なんかも時々見つかるコトがあるんですよ……ミスリル銀もおそらくその一つでしょうね」

「ま、さっきの鎧の魔剣や魔槍のヒントはソコにあるというワケだ……ジャンクの息子よ……」

 ロン・ベルクはそう言ってポップに不敵な笑いを見せる。

「そっか……そこから採れた金属や鉱物が……なるほどな……」

「だが、他言無用だぞ……ペラペラと他所で話されても困るからな……」

「お、おう!わかってるって!!へへ……」

 ロン・ベルクに釘を刺されて、ポップは思わず苦笑する。

「それでは皆さん、改めて本当にお世話になりました……最後にこんなお土産も頂けてやはりこちらに来て良かったです!」

 アバンは居ずまいを正して、改めてジャンクやロン・ベルク達に謝辞を示す。

「道中気を付けて下さいアバン様……」

「大丈夫さ母さん、アバン先生ならルーラでひとっ飛びさ♪」

「おめぇそれじゃあなんだか味気ねぇだろ?やっぱガキだなぁ……」

「あんだってぇ……!?」

「まぁまぁ……でも、ポップあなたも素晴らしいご家族に恵まれて本当に幸せ者ですね♪私もたまには混ぜて頂きたいくらいですよ♪」

「いつでもいらして下さいアバン様♪」

「おうっ!今度は気楽にな♪」

「酒をやるなら俺に一声掛けてくれよ……」

「ええ、次回はカールの美味しいワインでも持参しましょう♪」

「ちぇ〜大人はいいよなぁ〜」

「ホントだよね……」

「大丈夫♪その時は私が腕によりを掛けてご馳走を作るから♪」

 そう言ってスティーヌが優しくポップとノヴァを宥める。

「おー!!それなら俺らも楽しめるぜ!!」

「うん!そうだね♪」

「では、その時を楽しみに……」

「はい!」

「ポップ魔導書の勉強もしっかり頑張って下さいね♪」

「は、はい……」

「それでは皆さんお世話になりました!!!」

 そう言ってアバンは、最後に笑顔で挨拶してポップ達の元から去っていく……

 と、そんな彼の背中を見つめているポップにジャンクがその息子の肩に手を置いて告げる。

「アバン殿の目をちゃんと見ていたか?ポップ……」

「え……?」

「心底おめぇを真っ直ぐに信じていた目をしていたぜ……おめぇと帰って来た時からずっとな……」

「親父……」

「忘れるなよ……そして刻み込め……あんな風に自分を信じてくれる人はそうはいねぇ……」

「…………」

「フ……それが、親にとってどれだけ嬉しいか……ありがとよ……ポップ……立派な人に出会ってくれて………」

 そう語るジャンクの言葉にポップは、胸を熱くする。

 そして、そんな父親と息子の背中を見つめるスティーヌもまた、その瞳を熱くしていた。その先に遠ざかるアバンの背中に心からの謝辞を込めて深々と頭を下げながら……

 

 




 アバンにとっても、今回ランカークス村に訪れた事は想像以上に有意義なモノだったと思います。ポップの家族との信頼関係や、ロン・ベルクから訊いたエルフの情報、更に最後には故郷カールの復興に必要不可欠なリンガイア産のミスリル銀など、なにげに今後の展開に於いても重要な話となりました。ポップがギュータの存在を初めて知ったことも大変重要な事ですし、これからのマトリフとの絡みも楽しんで書ける予感が今からしています(笑)
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