新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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カールへの船旅

 

 ─死線を超えし友─

 

「あれが勇者ダイ様の故郷であるデルムリン島ですよ!」

 カールの復興支援の為パプニカから出港した船団の中で、最も大きな船の舵を取る船長が指を指してその島を示す。

「おおーーー!!アレがダイ君の故郷!!デルムリン島かぁーーー!!!」

 と、一際興味津々で目を輝かせながら声を上げたのは、レオナからカール復興の重要な使命を託されたと思い込んでいる獣王遊撃隊の隊長チウだった。

「おいおいチウ!あまり乗り出すなよ!大海原に飲み込まれるぞ?」

 クロコダインがまるで保護者の様にチウを諌める。

「なぁに大丈夫ですよクロコダインさん!こんなに大きな船ですから、よっぽどの事がない限り揺れたりしませんよ♪」

 と、その瞬間!

 

 ドガァァァーーーン!!!!

 

「う!うわぁぁぁーーーーー!!!!」

「なんだ今のはっ!!!?」

 クロコダインがチウに注意を促したそのそばから船が何らかの衝撃で大きく揺れた。

「あ!!あれはっ!!!!」

 船長が船首の方を見ながら声を上げる。すると、海が大きく迫り上がったかと思うとその中から巨大なイカのモンスターが現れた。

「あれはっ!!?海の暴れ者クラーゴンだ!!!!」

「ぐごおぉぉぉーーーーーー!!!!」

 海の中から出てきたクラーゴンはどういうワケか怒りを露わにしている。

「な!!なぜだ!!?大魔王が倒れて各地のモンスターは大人しくなったと聞いていたのにっ!!!」

 大きな波が起こったことにより船が更に大きく揺れ甲板にも大量の海水が流れ混んで来た。

「待て船長!!もしかしたら……」

 と、クロコダインが何かを思い付いくとクラーゴンの前に出る。

「クロコダインさんっ!!!」

「アンタ何やってるんだ!!?いくらでっかいアンタでも流石にあのクラーゴンには……っ!!!?」

 

 スウゥゥゥーーーーーー

 

 チウや船長の声に応えずクロコダインは深く息を吸い込む……そして!!

 

「ウオォォォォォーーーーー!!!!」

 

「…………っ!!!!?」

「…………っ!!!!?」

 

 その場にクロコダインのとてつもない雄叫びが響き渡る。

 するとクラーゴンは、その雄叫びに恐れ慄き怯えながらその動きをピッタリと止めた。

「ク、クロコダインさん今のは!!?」

 チウが驚いて訊ねるとクロコダインは振り返って告げた。

「ほらチウ!お前の出番だ!!」

「へ……?」

「二代目獣王の仕事だ!アイツの話しを聞いてやれ」

「えーーー!!ボ!ボクがですかっ!!!?」

「曲がりなりにも獣王を名乗るなら、あんなザコ相手に怯んでるんじゃないぞ!ついでに仲間に出来るなら儲けモンだろ?」

「な!仲間に……っ!!?」

「大人しくなっている今のうちにやってみろ」

「は、はい〜」

 クロコダインにそう言われてはチウもイヤとは言えず半ば渋々……いや、おそるおそるクラーゴンの元に向かった。

「ク、クロコダイン殿……彼で大丈夫なのか?」

 船長や他の船員、また復興支援団のパプニカ兵達皆が心配そうにチウの背中を見ていたが、クロコダインは不敵に笑いながら言った。

「なぁに心配には及ばないさ……まぁ見ていてくれ……」

 船長達はクロコダインの言葉に困惑しながらもチウを見守る事にした。

 と、そこに船内の部屋にいたヒュンケルがクラーゴンの姿を見咎めて甲板に姿を現した。

「クロコダインさっきの揺れはヤツの仕業かっ!?」

「おおヒュンケル!ああ、あのクラーゴンがぶつかって来た様だ、だが……今アイツがそのトラブルを治めてるところだ」

 そういいながら、彼は親指でチウの方を指差す。

「ん……?チウが?何をやっているんだ?」

「俺が出ていっても良かったんだが……二代目獣王としてアイツにも経験を積ませないとな……フフ」

 

「だ、大丈夫だぞ……な、何も怖がることないぞ……ボ、ボクは味方だから……」

 一方、クロコダインにクラーゴンとの交渉をけしかけられたチウはビクビクしながらクラーゴンに話し掛けていた。しかし、相対するクラーゴンもクロコダインの雄叫びが大分効いているのか、同じ様にビクビクしている。

「ん?なんだお前……まだクロコダインさんの雄叫びが怖いのか?んーーーまぁ解るけど……あれ?」

 と、チウはクラーゴンの目を見つめて何かに気付く。

「さっきまで怒っていたから気付かなかったけど……お前悪いモンスターの目じゃないなぁ〜」

「うぉぉぉ〜ん………」

「ふむふむ……」

「うおぉぉぉぉ〜ん………」

「ほうほう……」

「うぉっうぉぉぉぉ〜ん……」

「なるほど〜そういうことかぁ〜……あ!」

 チウはクラーゴンの話しを真剣に聞いていると海面に何かを見付けて声を上げた。

 

「なんだか、うぉぉぉ〜とか、そんな声しか聞こえんが……」

 船長が相変わらずの困惑した顔でいると……

「ハハハ!だが、交渉は上手くいったようだ!!」

「え……っ!!?」

「クロコダインさ〜ん!!うまくいきましたよ〜♪」

 チウがそういいながら振り向いてクロコダインに手を振っている。

「おおーーーーーー!!!!」

「………っ!!!!?」

 その途端、船長達の間から歓声が上がった。無論、その歓声の中には他の獣王遊撃隊のメンバーも漏れなく入っている。

「凄いじゃないか!!?あのクラーゴンを説得するとはっ!!!」

「見直したよ!!!」

「い、いやぁ〜ハハハ……それ程でも……」

 すると、照れながらもしっかり胸を張っているチウの後ろにピョコン!と一匹の小さなイカのモンスターが現れた。

「おいチウ!そいつはなんだ?」

「へ?あー!!お前ーーーー!!」

 クロコダインの問い掛けにチウが後ろを振り向いた途端、沢山の小さなイカのモンスターが海から飛び出て来た。

「う!うわわわわわぁぁぁぁ!!!!」

「チウ!!!!」

「ちょっ……!!?ちょっと待ってて!!ちゃんと皆に紹介するからーーー!!お前達ーーーーーー整列しろーーーーーー!!!!」

 すると、なんとチウのその声に反応し数十匹はいる小さなイカのモンスターが甲板の上で綺麗に整列した。

「よぉぉし!!良く出来たぞ!!えーっと……皆さんにご紹介します!コイツらはクラーゴンの友達のプチアーノンというイカのモンスターです!」 

「プチアーノン……?」

 船長は聞いたこともない名前のモンスターだったらしく首を傾げている。

「はい!どうやらさっきの揺れはプチアーノン達がこの海域で群れをなして踊って遊んでいたところ突然船が現れて、プチアーノンが驚いていたところ友達のクラーゴンが友達のダンスを邪魔されて怒っちゃったとのことです……因みに船底に大きな傷や穴は開けてないそうなのでご安心下さい!!あ、勿論クラーゴンも驚かせたことを反省してるそうです……」

「そ、そうか……それはこちらも悪いことをしたな……申し訳ない……」

 船長はそう言って頭を下げた。

「うぉぉぉん!!うぉぉぉん!!」

「こちらこそごめんなさい……だそうです!」

 チウはそう言ってクラーゴンの通訳をする。

「チウ、じゃあクラーゴンは仲間に出来たのか?」

 クロコダインが訊ねると、チウはピースサインをしながら胸を張る。

「もっちろんですとも!!!」

「そうか!!やったな!!!」

「いやいやいや、まぁでもボクに掛かればこらくらいは……ん?なんだ?」

 チウが得意気にしていると、再びプチアーノンがチウの傍に来て何かを告げている。

「え?なになに?クラーゴンが仲間になったなら自分達も仲間になる?へーそうかい、それはなにより………ん?自分達も……?って、もしかして全員っ!!?」

 と、チウが数十匹のプチアーノン達に驚いて訊ると、皆が一様にウンウン!と頷いている。

「えぇぇぇーーーーーーーっ!!!!」

「ハッハッハッ!!コレはまた随分と大所帯になったな!!」

 クロコダインが笑いながらチウに告げる。

「い、いきなりそんなに増えても……」

「なんだ?嬉しくないのか?」

「いや、そりゃあ仲間が増えるのは嬉しいですけど……いきなりこんな数ですよ〜名前をみんなに付けるのだって大変ですよ〜あ!そうだ遊撃隊バッジも作らなきゃ〜!うわ〜いくつ作ればいいんだぁ〜!!!え〜と…ひーふーみー……」

 と、チウは一人パニックになりながらプチアーノン達を一匹ずつ数えだした。

「まぁ獣王の道は一日にして成らずといこうことだ、精進しろよ」

「は、はい!心得ました!!」

 チウは先代?獣王のクロコダインより厳しくも温かい言葉を貰い身を引き締める思いだった。

 船はそうして穏やかな船の旅を取り戻し、再びカール王国のサババの港を目指す。そして、その船団の傍らにはクラーゴンとおおよそ五十匹のプチアーノン達がチウの説得により、カールの復興支援の新たな仲間として同行していた。

「そういえばヒュンケル、チウに聞いたのだが今回はヒムのヤツは一緒じゃないそうだ……」

「ああ、サババはヤツ等親衛騎団が最初に襲撃した地だからな……今もその記憶には新しいだろう……なのでやはりまだ行くべきではないとヒム自身がレオナ姫に言ったそうだ……」

「そうだな……今は我々の仲間となってはいるが、その詳しい事情を知らないサババの人間達がヒムの姿を見たら下手したらパニックになるかも知れん……」

「だが俺にはヤツの、ヒムの気持ちがよくわかる……俺とて僅か数カ月前までは魔王軍の一部隊を率いてパプニカで破壊の限りを尽くしたのだ……人間に対する憎しみをその原動力としてな……」

 ヒュンケルは暗い瞳で語る。

「ヒュンケル……それを言うなら俺もだ……脆弱な人間共がデカイ顔して生きている事につまらん不条理さを感じていたからな……ロモス王国の人間達の事など、ゴミの様に感じていた……」

 そして、クロコダインも過去の自身の愚かさに顔を顰める。

「だが、だからこそ今こうして人の国を生き返らせようという目的で、その人間と同じ気持ちでこの船に乗っている事の不思議さに感慨を覚えるよ……」

「フフ……そうだな……クロコダイン俺は生涯忘れないぞ……あの時のお前の涙を……」

「俺の涙?」

 ヒュンケルはその手で一度はクロコダインを死の淵に至らしめた事があった……それはダイが初めてヒュンケルと相対しダイがヒュンケルのその強さに成すすべなく倒された際の事、クロコダインは先刻のロモス王国での戦いによる傷が完治していない状態であったにも関わらず、ダイの救出に現れたのだった。

「"人間はいいぞ"……そう語ったあの時のお前の涙は、正直俺の心に大きな迷いを生んだ……」

「ヒュンケル……」

「だが、あの涙が後の俺の心の闇を払拭するきっかけの一つになった事は確かだ……あの時は本当にすまなかった……クロコダイン……」

 そういうとヒュンケルはクロコダインにしっかりと頭を下げた。

「おいおい!俺にとっては昔のコトだ!!それに頭など下げなくても俺はとっくに許しているさ!お前のコトは生涯の友だと思っていると前にも言っただろう?」

「そうか……そういえばそうだったな……俺を信じてくれたあの時……そうだ、俺もお前という友だったからこそ、あの時にああ言えたのだろう……死線を潜り抜けて来た友だったからこそ……」

「ミストバーンの闇の盃の時か……しかし、本当によく乗り越えたモノだ……」

「仲間が……いたからな……」

 そう言ってヒュンケルはその青く広がる空に仲間の顔を思い浮かべる……

 マァム、ポップ、ラーハルト、ヒム……レオナ……アバン……そしてダイ……

「クロコダイン……」

「ん?」

「そしてお前だ……ありがとう……」

 ヒュンケルのその言葉と自身に向けられたその澄んだ眼にクロコダインは微笑を浮かべて頷き応えた。

「………おう……」

 この二人の間には数々の死線を超えて、今のこの時を共に味わえる現実に対して特別な思いがあった。かつては共に魔王軍の軍団長という立場でその時も他の軍団長とは違う尊敬の印象をお互いに感じていた二人ではあったが、ダイ達に出会う前まで互いにこの様に語り合える友となれる事など欠片も思っていなかった。ヒュンケルとてバランと同じく他の軍団長の中でクロコダインには一目置いてはいたが、決して馴れ合う事は無かったのだ。  

 しかし、彼は今のこの自分自身に戸惑いを感じることもなく、むしろどこか誇らしささえを感じていた。だが、それは決して口で説明出来る様な明確なモノでもなく、ただその胸に清々しい風を感じる、そんな不思議な感覚だった。

 




 ヒュンケルとクロコダインの絆もとても深いモノです。ダイとポップが始めからずっと一緒に冒険をして来た自他共認める最高の相棒ならば、この二人も元軍団長同士という立場から正義の戦士として、何度も死線を潜り抜けて来た最高の相棒であると思うのです。フレイザード戦も、バラン戦も、親衛騎団との初戦も、そしてバーンとの戦いも乗り越えて来た紛れもない戦友です。だからこそヒュンケルの新たな人としての旅路には、やはりクロコダインは欠かせなかったという話です。生涯の友……良いですね♪✨ 
 また、一方チウの隊長としての能力も発揮させて頂きました✨獣王遊撃隊ファンに取っては新たな仲間の誕生となりました。クラーゴンはドラクエ3ではトラウマ級の強さを発揮してくれてましたからね(^_^;) 書き手の最も戦いたくない敵ランキングにしっかり入ってます(笑)だって3回攻撃でしかも3匹でこられたら……(-_-;) 今思い出しても若かりし頃の自分を散々イジメてくれました ま、だからこそ仲間になってくれれば大いに頼もしい存在です✨ ついでにプチアーノンもくっついて来たので、名付けとバッジ作成は大変でしょうが、二代目獣王に頑張って貰いましょう (笑)
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