新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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テラン北の山の遺跡

 

 ─凶神の像─

 

「クルテマッカ様……この度は、このようなコトになってしまい本当に申し訳ございません……」

 ミネルヴァは北の山の遺跡への旅支度を整え、テラン城の入口付近で待ち合わせていたクルテマッカに深々と頭を下げた。

「い、いやいや!!なにを仰いますか!?我が国はこちらのフォルケン王に父の代からお世話になっておりますので、お力になれて光栄であります!!それに、いつも父上からフォルケン王の様な傑物たれ!と、発破をかけられておりますので!ワハハハハ!!」

「まぁそうでしたか……フフフ♪ですがこの度はどうしてこのテランの地にお出でになられていたのですか?」

 ミネルヴァは豪快に笑うクルテマッカに笑顔を向けると、彼がテランに赴いたワケを訊ねる。

「ああ、それはこのテランにある鉄鋼石の調査に来ておりました」

「鉄鋼石……?ですか?」

「はい。父も更にその先代の王である祖父もこちらのテラン王国との交流や交易の始まりはその鉄鋼石なのだと言ってました……ベンガーナにおける殆どの金属はテラン国から採掘させて頂いている鉄鋼石が原料となっているのですよ」

「まぁそうでしたか!私はそういうお国同士の事業のコトには本当に疎くて……」

「あーいえいえ!私も父や祖父の受け売りですから!ワハハハハハ!!」

 再び豪快に笑うクルテマッカに、ミネルヴァはなぜかこの時から親しみを覚えていた。

「でしたらその調査に横槍を入れてしまった形ですね……」

「ハハハ!実はそんなこともないのですわ!!」

「……え?どういうコトですか?」

「その鉄鋼石が最も多く採れる採掘場は、例の遺跡のスグ近くでして、なので向かう先は殆ど変わらんのですわ!!」

「あら、そうでしたか!それなら良かった……クルテマッカ様のお仕事のお邪魔になってしまったかと心配しておりましたので」

「なぁに!ご安心下さい!それにその像だって、また元の遺跡に戻すだけなのでしょう?どちらも朝飯前というモノですよ!!ワハハハハハ!!!」

 更に豪快に笑うクルテマッカだったが、しかし今度はミネルヴァの表情に影が射す。

「おや?どうされましたミネルヴァ様……」

「残念ですが、この凶神の像をその遺跡に戻すだけでは目的達成には成り得ないんです……」

「それは……どういうコトです?」

「ええ……先程、出発前にこれから向かう北の山の遺跡についての文献をフォルケン様から一通り見せて頂いたのですが、この像を持ち出す時に姉のルティナが施した封印術と同じ術を遺跡に安置した時に施さなければならないのです……ですが、私は姉のルティナ程優れた術師ではないので……正直上手くいくか不安なのです……」

 ミネルヴァはそう言って俯く。しかし、そんな彼女にクルテマッカはやはり豪快に笑いながら言った。

「ワハハハハハ!!!」

「ク……クルテマッカ様?」

「あーいやいや、申し訳ありません!!しかし、貴女も私と同じ様なところがありますなぁ!!」

「クルテマッカ様と……同じ……?」

「はい、先程も少し父や祖父の話を出しましたが、私も初めの頃は不安で仕方がなかった……本当に私などがベンガーナ王国という大きな国を背負って立つ事など出来るのかと……」

 そうしてクルテマッカは語り始める。

「私自身、国の公務に本格的に携わる様になって数年経ちますが、それまではただ剣を奮い、狩りや乗馬に夢中になっていた子供でした。なので、それ故にいざ国務に携わる年となり、父上の期待に応えようとしても中々上手くいかないもので……何度父上に叱られたコトか……ハハハ……」

「そうですか……ですが、今のクルテマッカ様のご評判はこのテランでもよく話しに上がってますわ……ベンガーナの王子は質実剛健の勇猛な方だって♪」

「いやいや!!とんでもない!!私なんぞまだまだですわ!!!ワハハハハハ!!!!」

 ミネルヴァはやはりこのクルテマッカの豪快に笑うその姿にその胸を熱くしていた。

「なのでミネルヴァ様……大丈夫ですよ!私は貴女なら必ずやり遂げるコトが出来ると信じております!!」

「クルテマッカ様……ありがとうございます……」

 ミネルヴァはそう言ってクルテマッカに笑顔で応えた。

 そうして、二人は北の山の遺跡へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ここテランの北の山に眠る太古の遺跡は、かつては古き神々を祀る神殿であった。しかし、この遺跡のコトが書かれた文献によると、数百年前に現れたある邪悪な魔道士により魔界へ繋がる道が開かれ、凶々しい神の召喚が成されたという伝承があった。  

「ホホホ……漸く封印も解かれた……この時をどれ程待ったことか……」

 凶神と恐れられたその存在は、地上を蹂躙し数々の魔物を魔界より呼び出し世界を魔獣の世界に変えようと画策した。

 だが、そこに現れた大賢者の力により凶神は封印され、その封印術は古よりこのテランの地に住む祈祷師の一族に伝授され同時に大賢者がこの世を去って後の封印の管理をも受け継いでいた。

「今一度、凶神の復活を果たし地上を我々のモノにしてやるわ!!」

 かつて凶神の手で魔界より呼び出されたその魔物は、血の様に赤い瞳を光らせ邪悪な力を蓄えていた。

 

 

 一方クルテマッカとミネルヴァの二人は順調な足取りで北の山の遺跡へその歩を進めていた。

「あ……!」

「どうされましたミネルヴァ様っ!?」

 ミネルヴァの声にクルテマッカが慌てて振り返る。

「あ、いえ……ごめんなさい……可愛らしい小鳥が飛び立ったので……つい……」

「小鳥……?」

「ええ……私、子供の頃から小鳥が好きなんです……あんな小さな身体で思いっ切り羽ばたく姿にいつも羨ましいな……って……あ、ごめんなさい!私……変なこと言ってますね……遺跡まで早く行かないといけないのに……」

 ミネルヴァはそう言ってはにかみながら慌てて謝辞を示すと、クルテマッカは顔を赤くして照れながら告げる。

「い、いえ!?そ、そんな変だなんて……!!?と、とても!!よ、良いと思われます!!」

「あ、ありがとうございます……」

「アハハハ……で、では先を急ぎましょう!!」

(「こ、小鳥にそんな感情を抱くとは……っ!!?な、なんて可愛らしい方なのだ!!!」)

 クルテマッカはそんなミネルヴァの様子に完全に心を奪われていた。

「どうかされました?クルテマッカ様……先程からお顔が随分と赤いですが……」

「あーハハハ!!大丈夫!!大丈夫!!ノープロブレムというヤツですよミネルヴァ様!!ワハハハハハ!!!」

 そうこうしながら二人は先を進んでいくと、やがて道の先に古びた岩山の神殿の様なモノが見えてきた。

「漸く到着ですね……しかし、これはまたなかなか怪しげな雰囲気ですな……」

 クルテマッカは、岩山の神殿を眺めながらその異質さに顔を顰めている。

「ええ……どうやらルティナ姉様の封魔の術も少しずつ効果が薄れている様ですね……」

 ミネルヴァは手にしている凶神の像を見つめながら言う。

「ならば、その封魔の力が消える前にその像を納めて改めて術を施さなければ……」

「は、はい!!迷っている場合ではなさそうです!!クルテマッカ様……参りましょう!!!」

「はいっ!!」

 そうして、ミネルヴァは己の中の迷いと戦う意志を示しながら、クルテマッカと共に目の前の岩山の神殿遺跡に足を踏み入れた。

 二人は歩を進めながら、神殿内部の様子を観察し凶神の像を安置する祭壇を目指しているが、内部の様子は数百年もの年月を経ているコトもあり至る所に柱や壁が崩れた状態がうかがわれた。

「やはりかなり危険な場所ですな……ミネルヴァ様離れないで下さい……」

「あ、はい……!」

 クルテマッカはそっとミネルヴァの手を取り彼女を守る意志を示すとミネルヴァはその頬を密かに染めた。

「こういった場所は、初めてですか?ミネルヴァ様……」

「え、ええ……どちらかと言うとこういう所によく足を踏み入れているのは、姉のルティナの方で……私はそんな姉の帰りをいつもハラハラしながら待つ身でした……」

「そうでしたか……しかし今回は……」

「はい……ですが姉もきっと見守ってくれていると信じております!!必ずこのテランの危機もフォルケン様や姉様も救ってみせます!!!」

「素晴らしい!!その意気ですよミネルヴァ様っ!!!」

「は、はい!!ありがとうございますクルテマッカ様!!!」

 やがて、二人が進む先に長い直線の回廊が現れた。そして、奥からは何故か風が吹いてきている。

「風……?この先は出口というワケでもないだろうに……」

「ええ……姉様と共にここを訪れたテランの兵士の方にも出発前にこの遺跡内部のコトは細かく訊いて来たのですが……この様な風の話しはなかったですね……」

「う〜む……しかし、我々は迷いながらも前進して来てはおりますからなぁ……入ってきた入口に戻ってはいないハズです……」

「となれば……進むしかありませんね……」

「何かのトラップかも知れませんが……そうですね……ここは慎重に進みましょう……」

 そうして、再び二人は前進していく。

しかし、長い回廊の奥からは相変わらず風が吹いて来ている。

「なんだか不気味な風ですわ……嫌なモノを感じます……」

「大丈夫です……私がついておりますミネルヴァ様!!!」

 既にこの頃にはミネルヴァもなんら恥じ入るコトもなくクルテマッカの腕にしがみつくようにしながら、共にその歩を進めていた。

 すると、ここでクルテマッカがミネルヴァを見つめて訊ねる。

「そう言えば、ミネルヴァ様はどうして小鳥が好きなのですか?小さな身体で思いっ切り羽ばたく姿が羨ましいと仰ってましたが……」

 クルテマッカはその恐怖で身を固めながら自分にしがみつくミネルヴァの気持ちを和らげようとそんな話しをし始めた。

「え……ああ……そうですね……私はご存知の通り、このテランの地に古より伝わる祈祷師の家に生まれましたので……幼い頃からその祈祷師としての力を身に付けなければいけないという厳しい掟の元に育って来たのです……なので、自由な時間などは殆どなく……姉ともたまに小鳥を見ながら羨ましいと話しておりました……小さなその身でも、大きく自由に見えたその姿にきっと幼心に憧れを抱いていたのですね……」

「大きく自由に……なるほど……少しわかります……」

「え……?」

「先ほどもミネルヴァ様のお話しを訊いて言いましたが、私もやはり同じです……今現在の国務という務めも去ることながら、やはり幼少期には王族としての勉強などで城の限られた場所でしか過ごせない息苦しさを感じておりました……確かに、剣や狩りなどを覚えてからはいくらかマシにはなりましたが、ベンガーナ国王の子、ましてや王子などと見られていては、完全に自由というワケにはいきませんからな……」

「そうでしたか……クルテマッカ様もご苦労がお有りなのですね……」

「ハハハ!しかし、まぁモノは考えようで、テランの鉄鋼石の調査になどは家臣や石屋にでも命じれば済むことではありますが、私自らが赴けば他の者達の仕事振りもわかるし、私自身の気晴らしにもなりますからな!」

「クルテマッカ様は御自分でしっかりと歩みを進めているのですね……」

「貴女もそれは同じでしょう?」

「え……」

「フォルケン様やお姉様のルティナ様の危機にこうして歩を進めて、こんな不気味なところまで来ているではありませんか!貴女は今、立派に羽ばたいていると私は思いますよミネルヴァ様!」

「クルテマッカ様……」

 ミネルヴァはそんなクルテマッカの言葉に暖かみを覚えて、柔らかい笑顔を彼に返した。

「さぁ!先へと進みましょう……」

「はい………」

 やがて、二人は再び歩みだす。すると、ようやく長い回廊が終ると目の前に広い空間が広がった。

「おお……っ!?これは随分とひらけた場所に出たが……」

「あ!!アレですわっ!?あの祭壇に凶神の像を……」

 ミネルヴァがそう言って指し示すと、その先には小さな祭壇が見えた。

「ホーホホホ!わざわざその凶神の像を持って来てくれるとは……なかなか殊勝な人間共だ……」

「な……っ!!?なにやつ……っ!!?」

「………っ!!?クルテマッカ様っ!!」

 突如この広間に響いた何者かの声にクルテマッカは身構え、ミネルヴァは焦りの色を見せる。

 深い闇の中から響くその声の主は、若きクルテマッカとミネルヴァをその邪悪な赤い瞳で射抜くように見つめていた。

 

 

 




 クルテマッカの冒険。というテイストでお送りしております(笑)今回はテランの地にある古の神殿遺跡の話しになりますが、なんと、アバンどころか弟子たちもその仲間たちも一切出てこない展開に書き手の私もめちゃくちゃ不安ですが、なんとか切り抜けようとしています(笑)ダイの大冒険の話しですよ〜忘れないで下さい〜 
 さて、ミネルヴァも不安を抱えての冒険ですがここはクルテマッカのオトコを見せる話しになりますのでいわゆる馴れ初めの展開ですね。それなりに今後に繋がりますのでどうかご了承下さい^^; 
 赤く光る目……何者でしょうか……?
 
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