新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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凶翼の悪魔

 

 ─神殿最奥部の死闘─

 

 テランの北の神殿遺跡。その最奥部に辿り着いたクルテマッカとミネルヴァは漸く凶神の像を安置する祭壇を見つける事が出来た。

 しかし……!

「我が名はウィングデビル!この神殿の底に眠る凶神の復活を成し遂げる為その像!!貰い受けるぞ!!!」

 ウィングデビルと名乗ったそのモンスターは大きな翼を持つ悪魔を象った石像の魔物だった。

「なんだとっ!!?」

「この像が凶神の復活を!!?」

 クルテマッカもミネルヴァもウィングデビルの言葉に驚愕の表情をみせる。

「ホーホホホ!そんなことも知らずにここまで来たのか……しかも一度ここから奪った凶神の像をわざわざ持って来てくれるとは!ホホホ手間が省けたわ!!」

「手間が省けた?まさか貴様っ!!?」

「クルテマッカ様っ!?どういうことです!?」

 ミネルヴァはウィングデビルとクルテマッカの言葉の真意を測り兼ねて訊ねる。

「決まっているだろうお嬢さん……その手にある凶神の像を奪った相手を八つ裂きにする為にそいつを探し出す手間が省けたということさ!!」

「そんな……っ!!?」

「クソっ!!なんてヤツだ!!!」

「オイオイ文句があるのはこちらの方だぞ!我々の凶神の像を奪ったのは貴様ら人間なんだからなっ!!!」

 ウィングデビルはそう叫ぶと背中の翼を強く羽ばたかせた。

「うぉぉ……っ!!!?」

「きゃあぁぁーーーっ!!!?」

 すると翼の羽ばたきの勢いで大風が起こりクルテマッカとミネルヴァはその強烈な風に晒された。

「クルテマッカ様!?もしかしたらさっきの回廊の風は……」

「ええ!おそらくヤツの翼から起こしたあの羽ばたきによるモノでしょう!!しかしまさかあんなモンスターがいるとはっ!!?」

 二人は激しい風の中ここまでの道中にあった回廊の風の原因がこのウィングデビルの所為だと理解した。

「ホーホホホ!!!さぁ!その凶神の像を渡せっ!!!」

「くそーーーっ!!!」

「渡すモノですかっ!!!」

「なんだとっ!!!?」

「……っ!?ミネルヴァ様っ!!?」

 激しい風に晒される中ミネルヴァの声はその風を引き裂く様に響き渡った。

「凶神の復活の為にこの像を渡すことなど絶対に出来ませんわっ!!!」

 するとウィングデビルはその翼の羽ばたきを収めて言った。

「そういえば確か数日前ここに来た人間も同じ様なことを言っていたな……」

「でたらめを言うなっ!!フォルケン王や数日前にこの神殿遺跡に入ったテランの兵士からは貴様のことなど聞いていないぞっ!!」

「それはそうだろう……数日前のその時には未だあの忌々しい祈祷師一族の封印が完全に解けてはいなかった。あの封印は凶神だけでなくかつて凶神により魔界から呼び出された我等の様な魔物さえも封じていたのだ……だがようやくその封印が解ける寸前であの人間は再びその封印を掛けに来やがったのさ……」

「ルティナお姉様……」

「ホーホホホ!!そうか!やはりお前はあの人間と関係があったか!!ということはお前も祈祷師一族の末裔だな!!!」

「そ、その通りですわ!!この北の山の神殿遺跡に開いた魔界への道を永久に閉ざす為に姉様も私もここに来たのですっ!!!」

「皮肉だなぁ〜ホホホ……」

「なんだとっ!!!?」 

 ミネルヴァを高みから見下し嘲笑するウィングデビルにクルテマッカが怒りを向ける。

「呪いによって目覚めない姉の代わりにここまで来ても結局ここでワシに殺され大事そうに抱えているその凶神の像も奪われる……ホホ結局は凶神の復活に一役買うことになるワケだからな」

「ふざけるなっ!!貴様なんぞにやられはしないっ!!!」

「そうですわっ!!必ず!必ず私が姉の代わりに……っ!!?待って……姉が目覚めない理由が呪いだと知っているということは……まさかっ!!?」

「ホーホホホ!!本当にバカなヤツだ!!漸く気づいたか!!お前の姉の中途半端な封印術のお陰でこうしてワシも自由になったのでな……御礼に永遠に目覚めぬ呪いをプレゼントしてやったのさ!!無論この国の王にもついでに石化の呪いを掛けてやったわ!!!」

「おのれーーー!!!許さんっ!!!」

 ウィングデビルが告げた真実に怒りが頂点に達したクルテマッカはここで携えていた剣を勢いよく抜いて構えた。

「そんなモノでこのワシを倒せるとでも?ホーホホホーーー!!!笑わせよるわ人間!!!」

 するとウィングデビルは翼をはためかせて更に上空の高い位置に飛び立つとそこから急降下しながらクルテマッカに襲い掛かった。

「身の程知らずがっ!!くらえーーー!!!」

「来いっ!!!」

「クルテマッカ様っ!!!」

「ホーホホホーーー!!!」

 

 ガキィィィーーーーーーーン!!!!

 

「ぐわぁぁぁーーーーーー!!!」

 

 ドガァァァァン!!!!

 

「クルテマッカ様ーーーっ!!!」

 

 クルテマッカはウィングデビルの鋭い爪の攻撃に跳ね飛ばされ後方に吹っ飛んだ。

「ぐっ!?ぐぅぅ……っ!!」

 クルテマッカは激しいダメージを受けたがなんとか立ち上がる。しかしその左肩には痛みが走り、見ると鮮血がジワジワと滲んでいた。

「いけない!!早く回復をしないとっ!!」

 ミネルヴァがそんなクルテマッカの傍に駆け寄ろうとすると突如ウィングデビルが上空から彼女の目の前に現れ彼女を阻んだ。

「きゃあぁぁーーー!!!」

「ホホホホ!そうはいかんよお嬢さん」

「ミ、ミネルヴァ様ぁぁーーー!!お逃げ下さぁぁぁーーーい!!!」

 クルテマッカは苦痛に顔を歪めながらもミネルヴァの危機に声を上げる。

「もう遅いわ!貴様もこの爪の餌食にしてくれるっ!!」

 ウィングデビルの鋭い爪が今度はミネルヴァに振り降ろされる。

「させるかぁぁっ!!!」

 その時クルテマッカは懐に隠し持っていた狩りに使うブーメランをウィングデビルに向かって投げつけた。

 

 バシィィィーーー!!!!

 

「ぐわぁぁぁーーーっ!!!」

 

 すると、ウィングデビルの鋭い爪がミネルヴァを切り裂く寸前にクルテマッカの投げたブーメランが見事に腕に命中した。

「クルテマッカ様!!!」

 ミネルヴァはその一瞬の隙を突いてクルテマッカの元に駆け寄る。

「ありがとうございますクルテマッカ様!!ああ!でもこんなお怪我をされてっ!!!」

「な、なぁに大丈夫ですよこんなかすり傷……うっ!うぅ……っ!!」

「いけません無理をなさっては!いま回復をしますわっ!ベホイミ!!」

 すると、ミネルヴァはクルテマッカに回復呪文を掛けてその傷を回復していく。

「おのれ……おのれ人間共め〜もう許さんぞ〜」

 一方ウィングデビルはクルテマッカのブーメランによる腕のダメージから回復すると怒りを込めた赤い目を光らせてクルテマッカとミネルヴァを睨み付ける。

「まずい!ミネルヴァ様っ!お退がり下さい!!」

「な、何を仰っているのですか!?この様なお怪我で!!まだ完全に回復出来てませんっ!!!」

「ホホホホ回復呪文まで出来るのか……だがワシをここまで怒らせた貴様らは最早生きては返さんっ!!!これで終わらせてやるわ!!!

 ハァァァァァーーーーーー!!!!」

 すると次にウィングデビルは激しい凍える吹雪をクルテマッカとミネルヴァに向けて吐き出した。

「うぉぉぉぉーーーーーーっ!!!」

 クルテマッカが叫び声を上げるなか激しい吹雪が二人に襲い掛かる。しかしその時!!

「フバーハーーーーーー!!!」

「なっ!!?なんだとぉぉぉ!!!」

 ミネルヴァが突然唱えた防御呪文にウィングデビルは思わず驚愕の表情を見せる。

「ま、まさかそんな高等な呪文まで扱えるとはっ!!?ミネルヴァ様っ!!」

「な、なんとか間に合いましたねクルテマッカ様……回復呪文と防御呪文しか出来ないのですが……お怪我は大丈夫ですか?」

「えっ!?あ、ああ!いつの間にか完全に回復してます!!ありがとうございますミネルヴァ様っ!!!」

「良かった……これでなんとか凌げるでしょうか?」

「はい!今度こそ私にお任せ下さい!!ヤツは私がなんとかしますっ!!」

 ミネルヴァの奮闘に自分も応えようとクルテマッカは力強くそう言った。しかし実のところ彼には少なからず迷いが生じていた。

(「そうは言ったモノの上空にいるヤツを倒すにはどうしたらいいのだ……ブーメランを使ったとしても大ダメージを与えて倒す程の攻撃力は望めないだろうし……ん?待てよあのブーメランは狩りで使っていた……狩り……狩りと言えば……そ、そうかっ!?」)

 その瞬間クルテマッカの脳裏にここまでの道中で交わしたミネルヴァとの会話が思い出された。そんな中で彼は何かを思い付きフバーハで吹雪を食い止めるミネルヴァに小さな声でとある作戦を告げる。

「ミネルヴァ様このままお聞き下さい」

「……?クルテマッカ様?」

「ヤツの攻略法を思い付きました……おそらくこの方法で上手くいくと思います」

「ほ、本当ですかっ!!?」

 ミネルヴァは顔だけクルテマッカの方に振り返る。

「はい!私がヤツの背後に回ってヤツの気を惹き付けます!そしたら隙を突いてあの祭壇まで走って凶神の像に封印を施して下さい!!」

「惹き付ける!?そんな危険です!!」

「大丈夫ですミネルヴァ様!私はこれまでの貴女の奮闘するその姿に心を打たれました!!次は私の番ですっ!!貴女を守ること!それが私の使命ですからっ!!」

「クルテマッカ様……」

「信じてくださいますか?私を……」

 クルテマッカのその言葉にミネルヴァは真っ直ぐその目を見つめてゆっくりと頷いた。

「ありがとうございます……私も貴女を信じています!!それでは……」

「あ!お待ち下さいクルテマッカ様!私の懐に護身用で持ち歩いている煙幕玉がいくつかあります!どうかお持ち下さい……」

「煙幕玉!わかりました!かたじけないミネルヴァ様!!」

 そう言ってクルテマッカはミネルヴァの懐からいくつかの煙幕玉を受け取ると吹雪を上手く躱しながら一人ウィングデビルの方へ駆け出していった。

「クルテマッカ様……どうかご無事で……信じています……」

 北の山の神殿遺跡に待ち構えていた恐るべき魔界のモンスターとの戦いはいよいよクライマックスを迎えようとしている。

 クルテマッカとミネルヴァはウィングデビルを撃退し凶神と魔界へと続く道を封じることが出来るのか……

 今この場において神殿遺跡の深い闇だけがその行く末を静かに見つめていた。

 

 

 

 

 




 魔界のモンスターが現れました。その名もウィングデビル!ドラクエⅵから登場した悪魔の石像モンスターですね。リビングスタチューやストーンビーストなどと同じ種族のモンスターです。凍える吹雪など実際にゲームで使ってくるところを今回出してみました。
 さて、そんなとんでもない怪物と戦うハメになってしまったクルテマッカとミネルヴァですが、クルテマッカは若い頃はそれなりに強かったという設定にしてみました。まぁ呪文までは使えませんがこの時はベンガーナの王子という立場ながらも戦闘術や実戦形式の剣術などもそれなりに高いレベルにあったといった形にしました。更に後のベンガーナ王妃であるミネルヴァも回復呪文やフバーハなどの防御呪文も使える祈祷師として設定してみましたので、なんとか二人で力を合わせてこの危機を乗り越えていって貰いたいモノです。
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