新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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パプニカの闇

 

 ─キラーマシンの誘惑─

 

 一年が経った。アリアはアバンとフローラから贈られた祈虹の指輪の効果もあったのか一年前まで自分の寝室から殆ど出られなかったことが嘘だったかのように今では毎日のようにベンガーナの街中を散策している。

 また、今年に入ってからアリア自身がずっと行きたがっていたカール王国のフローラ王女の生誕会にも漸く参加することも叶い、世界を旅しているアバンにこそは残念ながら逢えなかったものの彼女にとってはこの上もなく楽しい時間を過ごせた様だった。

「それでねお父様!カールではこんなに大っきなケーキを皆さんで担いでパーティーに運んでらしたのよ!なんでもそのケーキのレシピもアバン様がフローラ様のために旅に出る前に考えていらしたそうなの!!ホントにステキよね〜アバン様って♪」

「そうかそうか!ハハハハ!!ならアリアの誕生日にはもっと大きなケーキを用意しないとイケないなぁ!!」

「まぁ!ホントに!!そしたらフローラ様とアバン様もお誕生日会にお呼びしたいわ♪」

「そうかそうか!そしたら招待状の手配もしなきゃな!こりゃ大忙しだ!!ハハハハハハ!!」

 そう言いながらもクルテマッカは娘がキラキラした表情ではしゃぐ姿に上機嫌だった。

 

 コンコン……!

 

 すると、そんな親子の賑やかな時を遮るようにクルテマッカの執務室の扉がノックされた。

「失礼致します……クルテマッカ陛下。ご準備が整いました」

「ん?なんだもう出来たのか?ゆっくりで良いと言っただろ?」

「ははっ!……しかし……!」

 かわいい娘との楽しい時間を遮られた気分のクルテマッカは顔を顰めてそう言うと、彼を呼びに来た家臣は頭を垂れながら困惑する。すると、そんな家臣の後から顔を見せたのはオルヴァだった。

「父上……アリアがかわいいのはわかりますが公務の方もございますので……ほらアリア!お前も父上のお邪魔になるだろ?」

「オルヴァ!わ、わかっておるわ!しかしアリアが悪いんじゃないぞ!」

「もちろんわかってますよ父上……でもアリアもそろそろ家庭教師のメティス先生がご来られますから……」

 と、オルヴァは妹のアリアを見ながら言った。

「あ〜あ……お勉強かぁ〜」

「コラ!アリアそんな言い方するモンじゃない!メティス先生に失礼だろ?」

 オルヴァが兄らしく妹のアリアを諌める。

「お兄様はメティス先生がお好きだものね〜♪」

「お……!お前っ!?なんてこと言うんだ!!」

 しかし、思わぬ妹の反撃にオルヴァはたじろいだ。

「なんだ?オルヴァ〜お前も隅に置けんな〜ハハハハ!!」

「ち!父上は早く支度をされて下さい!!船がお待ちですよ!!」

「おーおーわかった!わかった!ではアリアまたパプニカから帰ったらゆっくり話をしような♪そうだパプニカの土産も楽しみにしていなさい」

「まぁ!ありがとうお父様!!パプニカといえば憧れのレオナ姫様のお国ね♪」

「おおそうだ!ただ残念ながら姫には今回お会いする予定がないのだよ、スマンなまたの機会にアリアの話をしておこう」

「そう……でもお仕事もお忙しいみたいですもの大丈夫です!その代わりいつか私もパプニカに連れて行ってくださいね!お父様!」

「おう!そりゃあモチロンだ!!約束だ♪」

「ええ!約束よ♪」

 そうして二人の父娘は指切りをした後、クルテマッカはオルヴァと共に執務室を出ていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その頃、ベンガーナ城内の長い回廊を控え目ながらもどこか知的な美しさを纏った一人の女性がアリアの部屋に向かって歩いていた。

 すると……

「おおっ!これはこれはメティス先生!」

 執務室から出たばかりのクルテマッカは、連れ立っていたオルヴァと家臣と共にその知的な女性に出くわした。

「クルテマッカ陛下!ご機嫌麗しゅうございます」

「ハハハハ!いやぁいつもアリアが世話になってますな!ありがとうございます!!」

 豪快に笑いながらクルテマッカも挨拶に応える。

 このメティスと呼ばれた女性は丁度アリアが体調を崩す少し前から彼女の家庭教師を務めていた。

 また、元々ベンガーナ王国に仕える学者の家の娘でミネルヴァの姉であるルティナの教え子でもあった。因みに年齢は今年二十歳でオルヴァの五つ程年上である。

「とんでもごさいません……アリア様はとても優秀なお方ですのでお教えする私の方が感心してしまいます……」

「そうですか!?ハハハハ!!聞いたかオルヴァ!!アリアは優秀だそうだ!ハハハ!誰に似たのだかな!」

「え、ええ……」

 オルヴァはいわゆる父のアリアに対する親バカ振りに呆れながらも頷いた。

「あ……オルヴァ王子様もご機嫌麗しゅうございます……」

「あ!ど、どうも!こちらこそ!妹がいつもお世話になっております!」

「い、いえ……あ、それではわたくしはこの辺りで……」

 メティスはそう柔らかく言いながら頭を垂れると一瞬オルヴァと視線を交わし頰を赤らめる。

「おぉ!そうですな!ワシ等もこれから野暮用でパプニカに行かねばならんのでな、メティス先生今日も娘のこと宜しくお願いしますぞ!ハハハ!!」

「はい、かしこまりました……陛下もオルヴァ様も道中お気を付けて……」

「ああ、痛み入ります……行くぞオルヴァ!」

「あ、は、はい!そ、それでは失礼致しますメティス先生!!」

 そう言ってオルヴァは慌てて前を行くクルテマッカを追って家臣共々去っていたが、メティスはその後ろ姿が見えなくなるまでじっと見つめていた。

 

「オルヴァよ……アリアの言っていた通りお前相当入れ込んでおるなメティス先生に……」

「え!?な、なにを仰っているのですか父上!!な、なぜ私がメティス先生に……!?そ、そんな大それたことっ!!」

「何を言っとるか!見ればわかるわ!お前のあの狼狽える様は他では見れんぞ!なぁ、そう思うだろう?」

 クルテマッカは必死に取り繕うオルヴァを尻目に連れ立っている家臣に同意を求める様に言った。

「そ、そうですね……ハハハ」

「おっ!!おい……っ!!」

 オルヴァは照れ隠しに連れている家臣に声を上げる。

「男なら堂々としていろオルヴァ!!そんな風にオドオドしているとメティス先生に相手にされんぞ!ワハハハ!!」

「ち、父上〜!!」

 そんな親子の会話をしつつ、クルテマッカとオルヴァはパプニカ行きの巨大な船が停泊しているベンガーナの港に向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一方ベンガーナ王妃のミネルヴァは城内でクルテマッカの見送りを済ませた後、自室の窓から見える空を不安気な表情で見つめていた。

「ミネルヴァ様……どうされました?」

 そんなミネルヴァにそっと声を掛けたのは長年このベンガーナ城の侍女を務めているマギサだった。

「マギサ……ええ、ちょっと空模様がね……」

「空模様?」

 マギサはそう呟くと窓からの青く澄み切った空を見つめて首を傾げた。

「良いお天気にみえますよ?」

「フフ……そうよね?でも、きっと荒れるわよ……パプニカの旅がご無事であれば良いのだけど……」

 ミネルヴァは憂いを含んだ表情でそう呟いて遠いパプニカの空に視線を送った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 パプニカ王国。 

 

 このパプニカは言わずと知れたレオナ姫の国ではあるが、この当時は父王もまだ健在の頃であった。また、レオナ自身は13才という若年でありながらも賢者としての修練期間の為にパプニカの城から離れ他の地に赴いていた頃でもあった。

 そんな中、ここパプニカ王国では十数年前より秘密裏にとある計画が進行されていた。

「フフフ……ここまで本当に長かった……だが、コイツを上手く使えればこの国は我らのモノとなる……」

 不敵な笑みを浮かべながらその男はそう呟いた。

「テムジン様……」

 と、男は自分の名を呼ぶ声のする方を見た。するとそこには賢者の法衣を纏った長髪の若者が佇んでいる。

「バロンか……どうだお前の方は……」

「無論、問題はありませんよ……この私がしくじることなどあり得ません」

「フハハハ!相変わらずの自信家だな……まぁそこがまた頼りになるのだがな……そういえばあのデカいサソリも順調に育っているのか?」

「無論です。アレがなければ話しになりませんからな、私の魔法力を日々注いで一切の攻撃呪文を弾くよう工夫も凝らしているので中々のシロモノですよ」

「そうか!そうか!フフフ……あと一年……あと一年の後に姫に洗礼の儀式の地に赴いて頂かなくては……フフフ……まぁそこが姫の墓場となるワケだがな……」

 テムジンはそう言いながら醜悪な企てをする。

「私はコイツをどう使うかが楽しみですよ……その洗礼の儀式の地はあの怪物島ですからな……腕試しには持って来いというワケだ……」

 そう言ってバロンという男はテムジンの後方に聳える巨大な機械人形に視線を向ける。

「そうだな……その時にはこのキラーマシンで思う存分暴れるが良いわ……ファーハハハハ!!!」

 

 キラーマシン………。

 かつて魔王ハドラーが世界の平和を脅かしていた頃。ハドラーの拠点であった地底魔城と同じ大陸に存在していたこのパプニカ王国にハドラーはこのキラーマシンを差し向けたのだった。

 だがしかし、その当時パプニカを訪れていた勇者アバンとその相棒の戦士ロカの活躍によりキラーマシンは見事に撃退されたのだ。 

 その後、パプニカ王国は起動停止となったキラーマシンの本体を回収しその調査と分析を司教テムジンに任せていた。

「バロンよ……一年後の姫の抹殺が終わったら……コイツを使って他国に攻め入るのも面白いかも知れんな……フフフ」

「司教とは思えん発想ですな……ですがやるとすればどこから攻め入るのです?」

「フフフ……お前こそ乗り気ではないか?そうさな……ベンガーナなどどうかな?」

「おおっ!?ベンガーナですか!?なるほど面白そうだ……あの国は軍事の面でも世界各国から一目置かれておりますからな……あの国を叩ければパプニカが魔法王国に加え軍事の面でも世界に名を轟かすことが出来る……」

「そういうことになるな……フフフ……そう考えれば勇者に打たれたとは言え我がパプニカに素晴らしいプレゼントを与えてくれたモノだ……魔王様々だなぁ!!フォハハハハ!!!」

「そういえば近々ベンガーナのクルテマッカ王がパプニカに来られるとのことでしたな……」

「うむ聞いておる……だがこのキラーマシンだけは絶対にクルテマッカ王に知られるワケにはいかんぞ……厳重に警戒体制を敷くよう手配してくれ」

「お任せ下さい……私にしくじりはあり得ませんので」

 バロンが鋭い視線をテムジンに向けながら頷くとそれを受けてテムジンも悪計に満ちた表情を浮かべた。

 後にこの邪悪な人間達の奸計がレオナを危機に陥れる事になるのだった。

 

 




 前半はアバンとフローラのおかげで平和な空間を取り戻したベンガーナ王クルテマッカ家族の幸せな時間です。アリアも元気になりベンガーナ城下町によくお供を連れて遊びに出ています。因みに実際に彼女が床に臥せっていたのは1年程なのですが、家庭教師のメティスとの出会いはその直前でした。
 さて、ところ変わってパプニカの怪しげな雰囲気。原作でも出てきましたねパプニカの悪人コンビ。この二人の暗躍を少しオリジナルで掘り下げてみました。
 ベンガーナを攻撃対象にしているのは、もちろん伏線です。
 因みにレオナは賢者の修練期間でいわゆる合宿に出ています。パプニカ王家の別荘兼修練施設があると思って下さい。お供はもちろん三賢者です。まぁこの頃の三賢者は立場的にはパロンの弟妹弟子みたいな感じですよねきっと……
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