新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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戦士達の語り

 

  

 ─絆の空間─

 

 

 ダイが黒の核晶(コア)の爆発により空に消えてから翌日の昼下がりの午後。かつての陸戦騎ラーハルトはパプニカ城から程近くの森に身を潜めながら、自身の武器である鎧の魔槍を懸命に振り回していた。早朝の日がまだ昇り切らない頃から、まるで何かに取り憑かれた様に槍を振るう姿はどこか悲愴を感じさせる様だった。

(ダイ様……そして、バラン様……申し訳ありません。このラーハルトあなた方に会わせる顔がありません……)

 ラーハルトはあの爆発の瞬間に何も出来なかった自分自身が許せなかった。バーンとの決戦前、何も出来なくともダイの盾にならなれる。そう、強く言い切った自分が盾になるどころかみすみすダイを爆発の中に失ってしまうとは、バランから託されたダイを守るという使命を果たせなかった自分を心の底から詰り、恥じた。そして、今は槍を振るいながらその無念な思いを自身の弱さや情けなさと共に切り裂きたい思いだった。

「ここに居やがったか!シケた面してんなぁ!」

 ラーハルトはその声に槍を振るう手を止めた。

「なんだお前ら、何のようだ?」

 まるで、ヒュンケルの様にぶっきらぼうに応えるとそのヒュンケル本人とハドラー親衛騎団のヒムがラーハルトを見つめていた。

「は!ご挨拶だなぁ……一応心配してやってんのによ!」

「何故、お前らに心配されなければならん、用がないなら消えろ」

「あんだとぉ!?」

「よせ、ヒム。悪かったなラーハルトお前の邪魔をするつもりはないんだが……」

 ヒュンケルはヒムを制してラーハルトに歩み寄った。

「ダイの事だろう?」

 ラーハルトはその友の言葉に槍を下げ俯いて瞳を閉じた。

「まぁわかるぜ、俺も大事な主君を亡くしたクチだからな……」

「亡くした?だと……」

 ラーハルトは鋭くヒムに睨み付ける。

「ダイ様がいつ亡くなったというのだ!?つまらぬ口を二度と聞けなくされたいかっ!!」

 ダイとの決戦後に死んだハドラーと自身の主君であるダイを並べられたラーハルトは激しい怒りを向けた。

「わ、悪かったよ!そういう意味じゃねぇって!」

「ラーハルトお前らしくないな」

 今度はヒュンケルがラーハルトに強い言葉を向けた。

「なにぃ!?」

「お、おいおい!お前ら!?」

 ヒュンケルとラーハルトの間に出来た、ただならぬ不穏な空気にさすがのヒムも困惑している。

「俺はまた、弟弟子達を守れなかった……」

 そう悔やむように呟くヒュンケルは自身の右拳を握りしめる。

「こうしても、もう殆ど力が感じられない。こんな状態だからアイツ等を守れなかったのは当たり前だと解ってはいるが、やはりさっきまでの俺は気持ちで理解出来なかった」

「さっきまで……だと?」

 ヒュンケルは改めてラーハルトに真っ直ぐと視線を向ける。

「ダイは必ず生きていると、俺は信じている」

「!?」

 ラーハルトは友の真っ直ぐな眼差しと言葉に目を見開いた。

 そしてヒュンケルは続ける。

「さっきの様にお前も、そう信じているのだろう?」

 そう問い掛ける言葉にラーハルトは再び目を閉じる。そして、その一瞬だけラーハルトの目に輝るモノをヒュンケルもヒムも見逃さなかった。

「ああ、ダイ様は必ず生きている。必ず……」

 ヒュンケルもヒムもその言葉に笑顔で頷くとラーハルトも口元を緩めた。

「ところで、用事はそれだけか?」

「いや、実はもう一つ、お前に確認したいことがあってな……」

「なんだ?」

「お前がバランの血で甦った時、確かアルゴ岬の近くの竜の騎士が回復の為に使う奇跡の泉の近くだったと以前聞いたが……」

「ああ、それがどうした?」

「その奇跡の泉について、少し訊きたいのだ。それは竜の騎士以外には回復は望めないのか?」

 ヒュンケルは自身の身体の回復を諦めてはいなかった。故にかつてラーハルトから訊いていた竜の騎士が傷を癒すという奇跡の泉の事を訊ねた。

「奇跡の泉か……確かに可能性がないとは言い切れないが……」

「……が?なんだよ?」

 ヒムがラーハルトの次の言葉を促す。

「あの場所は竜の騎士の為の聖域だ。うかつに足を踏み入れていいところではない」

「そんな固いこと言うなよ~!」

 ヒムがそう言うとラーハルトはキッと睨む。

「あの場所はバラン様と奥方のソアラ様との出逢いの場所でもあるのだ」

 ラーハルトの瞳は何かを懐かしむ様な眼に変わっていた。

「そうか……ならばそうそう足を踏み入れる訳にはいかないな……」

「バラン様やダイ様の許しでもない限りは俺も足を踏み入れるつもりはない」

「そっか……大事な場所なんだな……」

 ヒムもしみじみと感じ入った様だった。

「しかし、バーンは既にダイ様の手で倒され、もう地上には倒すべき敵はいない筈だが何故、力を求める?」

「ダイを見付ける為に旅立とうと思っていてな……その為には、やはりこのままではな……」

「そうか……そうだな。俺も、ダイ様を探してみるつもりだ」

「どこか宛てでもあるのか?」

「いや、だが世界中には竜の騎士についての伝承や言い伝えなどもあるだろうからな、それを追っていけば何か手掛かりになるモノも掴めるかも知れん」

「なるほどな……やっぱ考えてんだな」

「お前は何も考えていない様だな」

「あ?俺をバカみたいに言うなよ!」

「なら、何か考えがあるのか?」

 ラーハルトがヒムに視線を投げると……

「あ、いや……特にないけどよ……」

「お前な……」

 ラーハルトはすっかり呆れ返っていた。

「ヒュ!ヒュンケルは何処にいくつもりなんだよ!?」

 慌ててヒムがヒュンケルに矛先を向けると。

「俺は今言った通り、先ずはこの身体をなんとかしないとならんからな……ダイの捜索はそれからだ……」

「う~ん、そしたらよお前の師匠に訊いてみたらいいんじゃねぇか?いろんな事詳しいんだろ?」

「ああ、そうだな。ただ、今はポップの回復に努めているからな……あいつが目を覚ましたら訊いてみよう……」

「………」

 すると、ラーハルトは静かに何かを考えている。

「なんだよ?急に静かになりやがって」

「ヒュンケル、その身体の回復もしかしたら可能性があるかも知れんぞ」

 ラーハルトは突如そんな事を言い出した。

「どういうことだ?」

 ヒュンケルが訊ねると。

「この世界のどこかにエルフの住処があるらしい、ヤツ等は不思議な力を持つというのをバラン様から訊いたことがある。力よりも魔法や医療魔術に長けているという話もあるとの事だから、もしかしたらその身を回復させることも出来るかも知れん」

「本当か!?」

「ああ、しかしエルフの住処はまず人間には見付けられないらしい」

「なんだよ!それじゃあダメじゃねぇか!?」

 ヒムが思わず声を上げると。

「だから、俺がいる」

「ラーハルト?」

 ヒュンケルがラーハルトの言葉を理解しかねて訊ねると。

「エルフという種族も広い意味で言えば魔族だ、ならば俺がいればエルフの住処に入れるだろう」

「おお!?なんだよ!それを早く言えよ!よかったなヒュンケル!」

 ヒュンケルよりもヒムが声を上げるとラーハルトが訝しむ。

「何故お前が喜ぶ?」

「決まってんじゃねぇか!バーンパレスで約束したんだよ!傷が完治したら絶対決着つけるってよ!なぁ!ヒュンケル!」

「まぁそんなことも言っていたな」

「なんだ、そんな事か……」

「そんな事だと!俺にとっては大事なことなんだよっ!負けたままでいられるかよ!!」

 ヒムがラーハルトに食って掛かると……

「負けたままで?確かにそれはそうだな……だとしたら順番としては俺が先だ、ヒュンケルと先に戦ったのは俺の方だからな」

「あん?なんだって!?ふざけんなよ!」

「ふざけてなどいない。お前の理屈に沿ったまでだ」

「お前が先に戦っていい!なんて言ってないだろ!!」

「おいおいやめろ二人とも!くだらんことで争うな!?」

 

ピクッ………!

 ヒュンケルがヒムとラーハルトを止める為に思わず口にした言葉に二人は反応する。

「おい、そりゃどういう意味だ?」

「くだらんとは、どちらもお前に負けたくだらんモノ同士という事か?」

「……!?い、いやそういう意味で言ったんじゃない」

 二人はヒュンケルに鋭い眼光をぶつけると、ヒュンケルは珍しく僅かにくたじろぐ姿勢をみせた。

「ぷっ……!?」

「フ……フフフ!」

 すると、今度はヒムとラーハルトが笑いだした。

「な、なんだ二人とも!?」

 戸惑うヒュンケルに更に二人は大きい笑い声を上げた。

「アハハハハ!みたかよラーハルトヒュンケルの顔!!」

「フハハハ!そうだな、こいつがあんな珍しくたじろぐとは!」

「お前ら……」

 ヒュンケルは呆れ返っていた。

「まぁあのバーンさえも俺達の気迫には押されてたしな!」

「ああ、確かにそうだったな」

 ヒュンケルはそんな二人の笑う姿が堪らなく嬉しかった。自分の失言とは言えこうして友と笑い合えるのはまさに平和の証だと感じたからだ。

「なんだよ、ヒュンケル何が面白いんだよ」

「お前の余計な一言がなければこんなことにはならなかったんだ」

「ああ、すまない……だが、初めてでな……こんなに人と笑い合えたのは……」

「お前、大して笑ってねぇだろ!」

「まさか、腹の底で我々を侮辱したのか?」

「い、いやそうじゃない!」

 再びヒュンケルがたじろぐと、またも二人が笑い出す。

「ほら!また焦ってるぜ!」

「これは貴重なモノをみたな!」

「お、おい!からかうな!……」

「アハハハハハ!」

「フハハハハ!」

「………フッ……ハハハハハハ!」

 ヒムとラーハルトが再び笑うとヒュンケルも自分の焦ったそんな姿が新鮮で滑稽で思わず声を上げて笑っていた。こんな清々しく笑えたのはいつ以来だろうか……ヒュンケルもヒムもラーハルトも三人はそうして和やかな空間を楽しんでいた。

 




 この三人は強さのレベルが同じくらいなのもあり、共通する部分があるんじゃないかと考えて、そこから1つのグループとして捉えていました。例えて言えば、バンドの仲間みたいな感じですかね。ぶつかり合いもあるけど、腹の底ではお互い信頼し合っている者同士の友情を表現したかったので、このような形にしました。若干、ヒュンケルが原作と印象が違うかも知れませんが、原作がちょっと堅すぎるので、少し柔らかみを加えようと思いました。まぁまた戦いが始まればクールなヒュンケルになりますが、普段は少しセリフ多めです。カッコいいけど、難しいキャラですね 
セリフ回しで助けてくれるのはこの三人の中でヒムです。有難いですな……
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