☆ななみと月下の詠唱
時折訪れる天体イベント。本日は「皆既月食」である。
今日ばかりは〝天体観測〟の名目で、学院の敷地内に限り夜間外出が認められている。
生徒たちは思い思いの面々でこのイベントを楽しんでいた。
俺はもちろん七海と共に。……七海の要望でなぜか人気のないところにいた。
「あ、見て見てお兄ちゃん! ちょっと欠けてきたんじゃない? すごいすごい!」
「本当だ。欠けてる気がする。ここから赤くなったりするんだろ? すごいよなぁ」
「うん、すごい。すごく……アガる」
「……七海?」
「——すぅぅ……〝闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ! 『封印解除』!〟」
七海がなにか唱え始めた。おそらく子どもの頃から好きなアニメの呪文なんだろうが、胸の前にかざしているのが寮の部屋のカードキーなのでいまいち様にならない。
「——〝黄昏よりも昏きもの、血の流れよりも紅きもの…………ドラグスレイブ!〟」
なんだっけ? 聞き覚えはあるけど何の技だったか思い出せない。
その後も、有名どころや多分オリジナルの詠唱を行い、実にご満悦な様子。
そんな愛しい妹に兄として言えることはただ一つ。
「七海、楽しんでいるところ本当に申し訳ないが、声がでかい。遠くまで聞こえるぞ?」
「っ⁉ つ、〝月に代わってお仕置きよ!〟」
どういう返事なのかわからないし、騒いでいて怒られるのは俺たちの方だった。
☆お披露目会のターゲット
コンコン、と部屋の扉が叩かれる。誰か、なんて疑問は当然ない。
この家には俺のほかには二人しか住んでないし、時間を考えれば該当者は一人だ。
「お兄ちゃん、支度終わった? ちゃんと夏服にした? もたもたしてると遅刻するよ」
我が家のおかん、じゃなかった、妹の登場だ。
「大丈夫だって、昨日だって何度も何度も念押しされたからな。ちゃんと夏服だぞ」
と、部屋の入口を向くが七海の姿が見えない。いや、正確には顔だけは見える。
「なにコソコソ隠れるようにしてるんだ? 入るなら入ればいいだろ」
「いや、えっとその、うん……。ちょっと恥ずかしくて」
もじもじしながら部屋に入ってくる七海も、当然真新しい夏服に身を包んでいる。
「ど、どう……かな? 変じゃない? ……似合う?」
「どうもなにも、試し着の時にさんざん見たからな。その時にも同じこと聞いただろ」
「そうだけど! 今までと違う格好、新鮮じゃない?」
「女子の制服は去年も見てるからな。新鮮味はあまりない」
「……もう。せっかく新しい服なのに。せっかく一番に見せに来たのに……」
ぼそぼそと小声だったため内容こそ聞き取れなかったが、肩を落として部屋を出ていく妹を見て「乙女心がわかってない!」とよく言われることを思い出す。
「あー七海。その、なんだ。夏服、似合ってるぞ。ばっちりだ」
拙い誉め言葉だが、振り向いた妹の顔を見て兄の務めを果たせたことに安堵した。
☆ななみと月下の詠唱
テンション上がっちゃってもう大変! てお話。
5月26日の皆既月食の日に投稿したものです。
今年はどうやらスーパームーンと重なってとても見どころ時だったらしいですね。
残念ながら我が家からは曇っていて見えなかったんですが……。
まあそれはさておき、七海ちゃんスーパー詠唱タイムです。
「カードキャプターさくら」「スレイヤーズ」「セーラームーン」から拝借いたしました。
なかでもCCさくらが好きです。
あそこも兄妹なのがとてもいいですよね。超好き。
最新シリーズは途中までしか読めてないからまた読み始めたいな。
下記、投稿時のフリート予告です。
『今日はお兄ちゃんとね、皆既月食を見るの!
でも、気分が乗ってきちゃってもう大変!
闇の力がわたしを呼んでいる!
くっ、静まれわたしのポニーテール!
ブラコンハッカーななみ
「ななみと月下の詠唱」
次回もななみと一緒に〝レリーズ!〟』
☆お披露目会のターゲット
初めての格好一番最初に見てほしい! てお話。
話はそれますけど、私の中では七海ちゃんが暁への思いを自覚したのは中学生ごろなんですよ。
だから今回のお話は、中学の夏服なのか、高校の夏服なのかで若干印象が変わります。
まあどっちの七海ちゃんも可愛いんですけどね。
本日6月6日は兄の日らしいです。
なので兄妹やり取りのこの二つを投稿しました!
兄妹は良い!