☆私を温めて
四月に入り、肌寒く感じることも少なくなってきた。
——だから。
「いい加減にこたつを片付けようと思います」
「え、嫌」
しかし涼音さんに即座に反対された。
「もうだいぶ暖かくなったし、もうあんまり入らないでしょ。現に今も使ってないし」
「それでもこたつ様は必要。片付けるなんて、いーやーなーのー」
「なんで駄々っ子になってるんですか。片付けますからね」
そう宣言し、俺はまず最初にこたつの天板を外すべく中腰になる。
——その時。
ガバっと。涼音さんが後ろから首に腕を回すようにして抱き着いてきた。
「ほーら邪魔してやるー。うりうりー」
「うわ、涼音さんあぶな……。っていうか涼音さん……」
「ん? 当ててんのよ」
「いや当たってる感触全然な……。ギブギブ、首、絞めないで!」
ほどなくして腕が緩んだ隙をつき、俺は背中の涼音さんごと天板を持ち上げる。
「ちょ、わ、足浮く! こわ!」
涼音さんは落ちないように腕で体を固定し、耳元で囁いてくる。
「片付けちゃうなら、私が寒がらないようにしっかり温めてよね、昂晴」
☆見た目も中身も
繰り返す毎日。そんな普通で平凡な日常の中にも謎は発生する。
「あれ? おかしいな確かに買ってあったはず……」
「ん? 昂晴、どうかしたの?」
休日の昼下がり、俺が冷蔵庫の中をあさっていると涼音さんが声をかけてくる。
「我が家の冷蔵庫にしまってあった俺のプリンが消失するという事件が発生しまして」
「へえ……。よろしい。その事件、私が見事に解決してあげよう」
「眼鏡と蝶ネクタイいります?」
「そうそう、見た目は子ども、中身は大人、その名は……。って、やらすんじゃない。私はちゃんとした大人だよ!」
「はいはい。それで探偵さん、せっかくなので推理をお願いします」
「ったく、調子のいい……。えーと、現場観察ね。まずキッチン回りから。うん、片付いてるね。なんならいつもよりも」
「昨日涼音さんが飲み散らかしたのを、今朝俺が一人で片付けたんですよ」
「昨日は君の帰りが遅かったのがいけないんだぞ。だから私は一人寂しくお酒を飲んで、ふと甘いものが欲しくなったから……冷蔵庫から…………プリンを……。……そうだ、それで食べてから昂晴のだって気づいて容器だけ捨てて証拠の隠滅を……」
涼音さんは途中から何かに気づいたようにぼそぼそとつぶやく。
「やってることが完全に子どもなんですが」
「……今から涼音さん特製スペシャルプリン作ったげるから許して?」
☆私を温めて
ちょっと季節的にはもう遅いかもしれませんが。
こたつ片すならわかってんだろうね? てお話。
わがまま風な涼音さんも、簡単に持ち上がっちゃう涼音さんも可愛くて大好きなんですが、今回一番見てもらいたいのは何と言っても!
後ろからしがみつくところです。
このシチュエーションがもうすっごく好きなんです。
押し当てられてる描写がすっごく好きです。
まあ今回は押し当てるものがなかったりするわけですが、それもそれでまたいい。
後ろから抱きしめられて耳元で囁かれたらも一撃骨抜きですね。
☆見た目も中身も
某名探偵映画を見に行く前にあまりに楽しみで書いたものです。
「真実はいつもひとつ!」てお話。
こうなったら涼音さんにはあのセリフを言ってもらうしかないじゃない、というか言ってほしい! の趣味だけで書きました。
見た目ロリの中身大人ぶってるお姉さんっていいよね。
可愛い。可愛い。可愛い。