キミに似合うと思う/月よりも星よりも
☆キミに似合うと思う
今日のデートの待ち合わせはワタシの家。
柊史くんが「迎えに行くから家で待っていてほしい。着替えやすい服装で」と言うので、おとなしく待っている。
それにしても、「着替えやすい」服装の意味は何だろう。
服装の指定なら普通「動きやすい」とか「汚れてもいい」とかあたりだと思うんだけど。
……もしくは、おうちデートなら「脱ぎやすい」服装とか……。
そこまで考えて顔が熱くなってくるのを自覚したころに呼び鈴が聞こえた。
「はーい。いらっしゃい、柊史くん。どうぞ上がって」
「お待たせ、紬。お邪魔します」
そう言って靴を揃えて家に上がる柊史くんを、ワタシは自分の部屋へ案内する。
「今日はこれからどうするの、お出かけはするんだよね? あとその荷物は……?」
「うん。せっかくだから外に出て見せびらかしたいね。……これは、その……」
柊史くんが言いよどむ。かれこれ数十秒はため込んでから、ようやく口にしてくれた。
「……偶然、可愛い服を見つけて。買ってきたんだ。これを着てデートしてほしい」
顔を真っ赤に染めて、綺麗に包装された袋を差し出してくる。
「……きっと、キミに似合うと思う」
多分、今ワタシの顔は柊史くんに負けないくらいに真っ赤に染まっていると思う。
彼がワタシに着てほしいという服。どんなものか気になって、その贈り物が嬉しくて、ワタシは逸る気持ちを必死に抑えながら丁寧に包装を解いていった。
☆月よりも星よりも
仄暗い光の中、まばらに散る人を避けながら二人で歩く。
「紬、足元気を付けて」
「わかってるって。それに、こうして手を繋いでるんだから転んでも安心でしょ?」
紬は得意げに繋がれた手を持ち上げる。
本日のデートは水族館に来ていた。
連休中だけあって人が多いように感じるが、それでも移動に困ったり水槽が見えなくなったりするほどではない。
ゆっくりと進んでいくと、少し広いスペースに出た。
そこでオレたちは、無数の小さくて揺れ動く光に包み込まれる。
「うわ、すご。……これ、全部クラゲなのか。なんと言うか……幻想的な感じだ」
「……そうだね、驚いた。こんなに綺麗だなんて。……クラゲって〝海の月〟って書くみたいだけど、これだけいっぱいいると……」
「〝月〟というよりも〝星空〟って感じだ。……クラゲに感動するなんて、何か悔しい」
「あはは……ちょっとわかるかも。でも、……本当にすごい」
そう言って紬は繋いでいるのとは反対の手で水槽に触れ、顔を近づける。
オレは、そんな彼女に——星々の淡い光に照らされて、深海の中で一人静かに煌めく彼女に——目を奪われ、心を射抜かれる。
紬を連れてどこへでも行きたいと思う。
きっとその度にオレたちは思い出を増やし、その度にオレは彼女のその横顔に、見惚れることになるのだろう。
☆キミに似合うと思う
「……きっと、キミに似合うと思う」てお話。
このセリフは『ポケットモンスターSPECIAL』19巻で主人公ルビーが放つ言葉です。
このセリフが数ある決め台詞の中でもしかしたら一番好き。
ちなみに柳谷のお話の作り方は大体言わせたい一言、もしくは演じてほしいワンシーンがあってその再現のためだけに他の部分を書く感じです。
ポケスペは本当に面白いので機会があればぜひご一読を!
この場でその面白さを語るにはスペースが足りないので割愛。
ポケスペ知ってる人と毎回笑うのは、この漫画の中ではポケモンによるトレーナー絵のダイレクトアタックが可能です。
なんならそっちの方がメインです。
え? かなりお気に入りの紬回の後書きでお話に全く触れないで終わるの?
☆月よりも星よりも
どんなきれいな光景より君の姿に見惚れちゃう、てお話。
ゴールデンウィークネタですね。
もう7月も半ばなのにいつの話しているのか分からないですけど5月の連休ネタです。
このクラゲの軍団が星空のようだと思ったのは昔水族館に行ったときに本当に思った感想です。
超きれいで幻想的な光景でした。
いやもう本当、”海月”じゃなくて”海星”でいいんじゃないかと思いましたけどダメだ。ヒトデには勝てない。あいつの”星”体現どには敵いっこない。
まあこの時の柊史にとって紬は月だとか太陽だとかそういう”唯一”の存在なんでしょうね。