☆兄妹の昔
日が沈みかける夕暮れ時、一つのいびつな影がふらふらよろよろと歩いている。
「お兄ちゃん、平気だよ。わたし自分で歩けるよ?」
「だめだ。さっき試しに歩いた時に顔をしかめてただろ。おとなしくしておけ」
お兄ちゃんは自分のランドセルを背中ではなく前に持ち、空いた背にわたしを背負ってくれている。それもこれも、わたしがドジして転んで足を挫いてしまったから。
それを聞きつけたお兄ちゃんが半ば強引にわたしを背負ったのである。
実際ありがたいしとても嬉しいんだけど、正直なところちょっと怖い。
わたしと二人分のランドセルの重さを支えているから、いつ崩れてもおかしくない。
ぜぇはぁと息を切らしながら、ゆっくりゆっくりと一歩ずつ進む。
当然なのだ。大人と比べてあまりに小さすぎる背中で。
その背中に自分のすべてを預けてしまっているのが申し訳なくて。
「わたし、家までだったら我慢できるから」
「いいから。任せとけ」
ぐっ、とわたしを背負いなおし、また歩き出す。その強情さに甘え心が芽生えた。
「……ねえお兄ちゃん、もしわたしが怪我してなくてもおんぶしてくれる?」
「してやる。今度するときにはもっと体力つけて安心させてやる」
「そっか。じゃあまたお願いするね。……ありがとう、お兄ちゃん」
今はまだ頼りなくも頼りたい背に身をゆだね、不規則に揺れながらわたしたちは帰る。
☆恋人の未来
まだ日が高いお昼時、一つのいびつな影が学院内を動いている。
「ちょっと、自分で歩けるってば。人に見られたら恥ずかしいから!」
「だめだ。油断して悪化したらどうするんだ」
わたしはうっかりドジをして、足を捻り痛めてしまった。
そのことに気づいた暁君が半ば強引にわたしを背負ったのである。
「……なんだか懐かしいね。昔もこんなことあった気がする」
「そうだったか? というかおんぶくらいだったらちょくちょくやってるだろ」
「そうだけど。……あの頃のおんぶは怖かったなぁ。今ではこんなに安心できるのに」
「そりゃあ成長したし鍛えてるからな。今ならどんなわがままでもどんとこいだ」
「……いいの? なんでも? 本当に?」
「いやに念押しするな。俺にできることならなんでもしてやる」
「じゃあさ。お姫様抱っこ、して欲しい」
「は? 今? なんで?」
「今じゃないよ。いつかの話。わたしは白い豪奢なドレスを着て、暁君はきっとカッコいいタキシード姿で。花びらが舞う中でみんなに祝福してもらうの。そこでしてよ」
「それって。……いいよ。してやる。任せとけ」
「ふふ、楽しみにしてる。……ありがとう、お兄ちゃん。大好き!」
頼れるようになった背ではなく、その腕で抱きしめあう未来へわたしたちは進む。
☆兄妹の昔
お兄ちゃん、これからもよろしくね(幼少期) てお話。
6月6日兄の日の投稿でした。
まだまだ頼りないけどそれでも必死にお兄ちゃんしているのが好きです。
妹もそれがわかって甘えるとなおよろし。
☆恋人の未来
お兄ちゃん、これからもよろしくね(青春期) てお話。
6月12日恋人の日投稿でした。
やなや大好き裏表のお話です。
上の『兄妹の昔』と合わせて読んでいただきたい。
成長したからにはどんなわがままでもどんとこい、って強がれるお兄ちゃんが好きです。
妹は全力で甘えていけ。
さて、私はれない漫画の最終回で結婚式の場面でウエディングドレス姿でお姫様抱っこのシーンがとてもとても大好きなのです。
結婚式あげるときには是認にやってほしい。