☆暑い夜とお熱い二人
恋人との同棲生活。夜は当然、同じ布団に二人で身を寄せ合って眠っている。
彼女のぬくもりを感じながら身も心も休ませ、癒せる幸せ。
しかし……。
「ぅあっつい……」
「ここのところ熱帯夜ですもんね。冷房、もっと強くしますか?」
「寝てるときに冷えると風邪ひいちゃうからなぁ」
「じゃあこのままで。あまり気乗りしないですけど、別々に寝ます?」
「それはいい。そうするくらいなら、冷房ガンガンにして風邪ひいて看病してもらう」
「看病イベの立場、逆じゃないですかね。……明日の朝、俺が先に起きて冷たい空気を部屋に入れておきますよ」
「んー、いいよ。それよりも昂晴、腕」
涼音さんは俺の腕を引き、そこに自分の頭を乗せる。
俗にいう「腕枕」というやつだ。
「明日の朝起きた時に、このままこうして隣にいてよ」
「暑いですよ」
「冷めてるよりいいでしょ?」
上目遣いで満足気に言う俺の彼女は、そのまま頭をずらして俺の胸に額をぐりぐり押し付けるようにしてから眠りにつく。
その愛おしい仕種に、この小さな身体が離れていくのが惜しくて、俺は黙って冷房を強くするのだった。
☆願いの叶え人
本日は七夕。
まあ、あいにくの天候で天の川どころか、星ひとつ見えないのだけど。
「昂晴はさ、七夕なにお願いしたの?」
「え? ああ、店に飾った笹の葉の短冊ですか。俺は『もっとおいしい料理を作れますように』って。涼音さんは?」
「私は『お店の料理を食べたお客さんが笑顔になれますように』って。でもまあ、織姫と彦星も気の毒だよね。年に一回の逢瀬の日に有象無象の願い事を聞かなくちゃいけないなんて」
「まあ冷静に考えると、一年ぶりのデートの日にわざわざ他人の話聞いてる余裕ないですよね」
「その点今年は良かったのかね。雲で隠されてて思う存分イチャコラできるじゃん」
「下世話。今日が終わったら、また一年会えないなら仕方ないんじゃないですか」
「そもそも、お仕事さぼったが故に引き離されちゃった人に仕事のお願いしてもねぇ」
「そんなこと言っちゃあ、願い事叶えてもらえませんよ」
「良いよ別に。私の願いはキミに叶えてもらうから」
「……おぅ」
「だからこれからも頼むよ、私の彦星様」
「……はい、お任せを。俺の織姫様」
「ま、お仕事の話は置いといて。せっかくの恋人の逢瀬の日だ。私たちも恋人しようか。もちろん、神様に怒られない程度にね」
恋人たちの逢瀬は、静かに秘めやかに、誰にも邪魔されずに過ぎてゆく。