☆隠密訓練
わたしはレヴィ9。ただし、最後に(見習い)だとか(仮)だとかが付く。
要するに今は訓練生で正式にはまだその立場を認められたわけではないのだ。
一刻も早くその資格を得られるように、わたしは訓練以外でも鍛錬を怠らない。
人は皆寝静まったであろう真夜中。
わたしは一人、息を潜め足音を殺し、目的地に忍び寄る。
ここのマップは完全に把握できている。暗闇の中での移動でも何の支障もない。
さて、目的地もとい目標の保管されている箱の前に着いた。
あとはわたしの身長よりも大きい保管庫の中からブツを取り出して帰るだけ……。
——いける!
いくつかの引き戸の中から、迷いなく一つを開ける。よし、あった!
しかし、目標を発見したわたしは浮かれていて、背後の警戒が疎かになっていた。
——パチッと。
一瞬にして部屋に明かりが灯る。バレた。現場を押さえられてはごまかしようもない。
「……こんな時間に明かりもつけずなにしてるんだ、七海?」
「……訓練で疲れたけどなんか眠れなくて。甘いもの欲しくなっちゃったの」
「プリンくらい好きに食えばいいのに。……太っても知らないけど」
「なっ……禁句! それは禁句なのに! こうなったら暁君にも付き合ってもらうから。はい暁君の分のプリン。そうだ、ちょうどいいから話聞いてよ。今日の訓練でね……」
二人きりの、二人だけの甘い時間がゆっくりと過ぎてゆく。
☆喧嘩の数だけ
気持ちよく晴れ渡る天気とは裏腹に、わたしの心は曇り模様。嘘、かみなり模様。
「暁君のバカ! アホ! も~う、バカッ‼ ……ごめんね千咲ちゃん、朝から部屋に押しかけて。しかもこんなにうるさくして」
「それは大丈夫だけどね。今日はどうしたの? 先輩と喧嘩でもした? んだよね?」
「喧嘩というか、すれ違いというか……。今日はね、暁君と朝からお出かけする予定だったの。それなのに暁君ったら、いつまでも待ち合わせ場所に来ないし、部屋に迎えに行ったら『悪い、今起きた』って。わたし、すっごく楽しみにしてたのに」
「なるほどね。そのご機嫌斜めと朝から気合の入った格好の理由がわかったよ」
……実際のところ、昨日は遅くまで任務があったから仕方ないのはわかるけど、それはそれとしてわたしが怒るのも仕方がないとは思うのだ。
「それにしても七海ちゃん、そんなに怒って不安にならないの? 相手に嫌われちゃうんじゃないかとか、……相手のことを嫌いになっちゃうんじゃないか、とか」
「え? それはないかな。わたしたちの間では時々あることだし。暁君はわからないけど、わたしの方は喧嘩中に仮に嫌いになっても、喧嘩が終わればまた絶対好きになるし」
「へーえ。なんかいいね、そういうの。あ、ケータイ鳴ってるよ。先輩じゃない?」
「うん、わたしたちはどんなに喧嘩しても大丈夫。絶対に仲直りできるし、また好きになる、その自信がある。だから安心して喧嘩できるしぶつかり合える。……まあ、それでもお兄ちゃんにはたくさん餃子食べてもらうけどね?」
☆隠密訓練
甘いものも甘い時間も大好きです、てお話。
一週間連続七海ちゃん投稿第9弾。
やりきった感がすごかったです。
これの投稿日7月3日に合わせて一週間毎日投稿してさらに最終日は3本投稿。
これにてレヴィ9こと七海ちゃんに捧ぐ、7日間投稿最終日3本の計9本が完了いたしました。
これが七海ちゃんで助かった。
仮に「千」咲ちゃんだったらできない企画でした。
なにはともあれすっごく楽しかったです。
お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!
☆喧嘩の数だけ
喧嘩なんかしちゃってもわたしたちは大丈夫! てお話。
そりゃ兄妹なんですもん。喧嘩くらい数えきれないくらいしてますよきっと。
そのたびに仲直りしてそのたびに想いを育んできたんだからそりゃ兄妹は強いのです。
相手のことを理解したうえで自分を安心してぶつけられる関係はとても良いものだと思います