☆いつもの日常に飴玉を
いつもの日常。いつもの朝。なんの代わり映えもしない普通の毎日が今日も始まる。
いつもと少し違うのは今朝はお父さんが早くに家を出たくらいかな。
あと、確かお兄ちゃんも……、
「七海。今日は日直当番だから先に出るな。行ってきます」
「はーい、行ってらっしゃい」
朝ご飯の後片付けをしながら、慌てて家を出るお兄ちゃんに返事をする。
いつもよりも早くに出るのにいつも通りの時間に起きるからバタバタするんだ。それだってわたしが何度も起こしに行ってやっとだし。
わたしはいつも通りに落ち着いて支度をして家を出る。ああ、今日は帰りの頃には雨が降るんだっけ。傘を持って行かないと。……だというのに。
まったく。どうして傘置きに傘が二本も残っているのか。一本はわたしのだから当然として、もう一本の持ち主はついさっき家を出たばかりのあわてんぼうである。
一緒に朝ご飯を食べてるときにちゃんと「今日は雨降るよ」って言ってあげたのに。
本当に、わたしがいなきゃダメなんだから。
「……仕方ない。本当に仕方ないなぁ。雨に打たれるのも可哀そうだもんね」
優しい妹がちゃーんと傘を届けてあげよう。
周りに誰もいないこの状況で、ついつい口元が緩むのをわたしは特に気にもしない。
そしてわたしは一本だけ傘を残して、いつも通り学校へ向かった。
☆雨の待ち人
参った。せっかく学校が終わったのに、外はがっつり雨が降っていて傘がない。
今朝七海に傘を持つよう言われた気もするが、急いでいたので忘れてしまった。
仕方ない。覚悟を決めて家まで突っ走るいかないか。
……わざわざ見せ物になる気もないから、せめて時間を潰して人が少なくなってから。
そう考えて下校ピークを過ぎたころに昇降口に降りると、よく知った顔を見つけた。
お気に入りの傘を差しもしないで雨空を見上げては髪をいじり、水たまりにかかる波紋を見てはスカートのしわを直す。
どうやらそのまま帰る気もなく、何かを待っている様子。
というか、自惚れでないなら待っている〝何か〟は確実に……。
「あ、お兄ちゃん! やっと来た。遅いよもう」
気づかれた。そしてやっぱり待ち人は俺だったようで。
「悪い。……いや、特に待ち合わせとかしてないよな? どうしたんだ?」
「え。いやあの、そういえば家出るときにお兄ちゃんの傘残ったままだったなー。お兄ちゃんずぶ濡れになったら可哀そうだなー、って。ほら、なんでもいいから早く帰ろ!」
「気づいたなら持ってきてくれたらよかったのに。というか昼のうちに連絡してくれればここまで時間潰すこともなかったんだが……」
「あーもうはいはい、いいから早く帰ろ。二人で入るには狭いからちゃんと詰めてよね」
妹と相合傘をする姿を人に見られないのは、結果的には幸いだった。
☆いつもの日常に飴玉を
本当にお兄ちゃんは仕方ないなぁ。てお話。
妹と相合傘とかきっと全兄のあこがれですね間違いない。
何気ない朝のあれこれを想像するのも楽しいものです。
会話文すらなくひたすらに心情だけを吐露するような話も書いてみたいです。書けるものなら。
明確に意識をもって一本だけ傘を持っていく七海ちゃんは可愛いものですね。
☆雨の待ち人
あそこで佇むあの子の待ち人は? てお話。
待ってる最中の様子とか、待ち人が来た時の反応とかってキャラごとに色々あって想像すると楽しい感じ。
きっと七海ちゃんは照れ隠しするけど端々から会えたことの嬉しさが漏れ出てる感じきっとそうであってほしい。
書いた時の裏話的なのだと、本来は続き物を書く予定はなく、上の「いつもの日常に飴玉を」の単発の予定だったんですけど、ありがたいことに続きも読みたいという感想をいただいたりして書きました。
というかぶっちゃけ私自身書いてみたかった。
なので本来〝傘を一本だけ〟の一本を暁君と七海ちゃんのどちらの傘にするかは悩んで濁してぼかしたんですが、下で七海ちゃんの傘に確定しましたね。
だってそうじゃないと後々気づいたっていいわけができなくなっちゃうから。
もともと相合傘をするのが目的だったのでサイズ的に少し大きい(ことにしておく)暁の傘の方が適役ではありますが七海ちゃん自身の傘を持ってきています。
まあそっちの方が密着度が高くてそれはそれでよいのです。
相合傘はやっぱりロマンがあってよいものですね。
さてさて今回もお付き合いいただきありがとうございました。
私事ではございますが、SSを投稿し始めてからついに(Twitterの方で)SS100本に到達いたしました。
普段からお読みいただいている皆様には感謝です。
とは嬉しいお知らせながら一つ問題が。
ついにストックが尽きました。
来週からは(投稿できるなら)多分違うキャラのお話になります。
現時点では喫茶ステラからノゾミールの線が濃厚。
若干逃げの一手にはなりますが、変わらずお付き合いいただけると嬉しいです。