☆すきだよ
ザザーとさざ波が寄せては返す音が聞こえる。頬を撫でる潮風が心地よい。
「息抜き、海でよかったのか? しかも海岸を歩くだけとか」
「いいの。少し羽を伸ばしたかっただけだから、何の準備もしてないし」
高校受験の勉強にうんざりして、家庭教師役の昂晴君を引き連れて気分転換タイム。
「あーあ、勉強なんてもうしたくないなー」
なんて言いながら、波打ち際で数式や英単語を書き連ねる。
書いたそばから波にさらわれていくその光景はちょっとだけ面白かった。
「あんまり波に近づいて派手に濡れたりするなよ」
「そこまで子どもじゃないもん。大学生になったからってわたしのこと子ども扱いしすぎだよ」
成長したって中身は子どものままのくせに。思ったことがすぐに口にも顔にも出るし。
……だから、わたしのことを見ていないことがわかっちゃうし。
「そうかい。じゃあ俺、コンビニでアイスでも買ってくるから。希はなにがいい?」
そう言って海辺にしゃがむわたしを置いて、昂晴君は歩き出す。
「あ、待ってー。わたしも行くー。アイス自分で選ぶ!」
最後に一言、たったの四文字だけを書いてわたしは立ち上がる。
波に消えるまでの数秒間、その言葉を眺めただけで少しすっきりした気がする。
いつか、ずっと消えないこの想いをあなたに届けたい。
☆固定観念
本日分の授業が終わったわたしたちは、灼熱の陽を浴びながら体が溶ける前に何とかコンビニのアイスコーナーに辿り着く。
アイスを冷やすための冷気が、熱気をまとった体を優しく迎えてくれた。
「ひゃー外あっつーい。早くアイス食べたーい。希ちゃんはなににする?」
「うーん、モナカもいいしバリバリくんも捨てがたい……」
ショーケースに並ぶアイスたちを見比べて、わたしは今日一番の集中力を発揮する。
「どうしよう、やっぱりパプコがいいかなぁ。でも今、昂晴君いないしなぁ……」
「え、こーせーくん? って誰? その人がどうかしたの?」
「だって昂晴君がいなきゃ、わけっこできないから。…………~~~! なし! 今のなし! 何でもないから!」
アイス選びに没頭するあまりにした自分の失言を慌てて取り消す。
うわ、なんだか外にいた時よりも顔が熱い。
「あ、その人ってあれか。いつも希ちゃんが話してる幼馴染の人か」
「そうだけど! 違うからね! 変な意味はないから!」
「なるほどねー。いつもその人とわけっこしてるんだ。仲良いね」
「もういいから! ほら愛衣ちゃん、わけっこしてパプコ二人で食べよ?」
「はーい。僭越ながらこの火打谷愛衣、幼馴染さんの代わりを務めさせていただきます」
「だから、そういうのじゃないんだってばーーー!」
☆すきだよ
わたしのことを見てくれてなくてもわたしはあなたのことをずっと見てるよ、てお話。
初ノゾミールです!
年下幼馴染なんてそりゃもう可愛いでしょ。
ノゾミールは自分の√以外だと昂晴に対する感情がかなり謎な部分があるのでそこは好き勝手に想像しちゃうのが私。
というか単純に過去捏造編が一番楽しかったりします。
ずっと二人歩いてきたんだな、って感じで生きてくれると嬉しいですね。
☆固定観念
違う違う違う、違うんだってば! てお話。
そりゃ半分ことかしますよね。
絶対していてほしい。
兄妹ほどゼロ距離ではないにしてもかなりの近さの存在なんだからそれくらい当たり前。
そこにいるのが当たり前。
そんな距離感がすごく好きです。
書いた時には夏だったからアイスネタが二つ続いた。
アイスおいしいから仕方ないですね。