ヒロインとの1ページSS   作:やなや

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慣れてたはずの香り/等身大の初恋

☆慣れてたはずの香り

 いつものように昂晴君家に向かう途中で急な大雨に降られてしまった。だから……。

「ずぶ寝れのままだと風邪ひくだろ。風呂入って、その間に服は洗濯しちゃえば? 洗濯機の使い方とかタオルの場所、わかるか?」

「当たり前でしょ。普段誰が洗濯して片付けてると思ってるの?」

「はいはい。服洗ってる間の着替えは出しといてやるから早く温まってこい」

 そう言う昂晴君に背を押されて、お風呂を借りることになってしまった。

 正直このお風呂場は何度も見てるし、わたしが掃除することもあるから最早慣れた場所ではある。……でもわたし自身が入るとなると話が違う。

 昂晴君家で裸になってるのが気恥ずかしくて、ササッとシャワーを浴びて体を拭く。

 昂晴君が用意してくれた着替えはこれか。たまに着てるのを見る普通のジャージ。

 ワイシャツだったら〝彼シャツ〟とかやってあげたのに。いや〝彼〟じゃないけど。

 そんなことを考えながらありがたくジャージを着て、髪を乾かす。

 乾かしたばかりの髪から漂うシャンプーの香り。そして着てるジャージからも……。

 やばい。昂晴君の匂いが強い。普段からお洗濯とかしてあげてるからこの匂いには慣れていたけど、それが自分を包み込んでるこの状況はやばい。くらくらしてくる。

 早く、早く自分の服の洗濯と乾燥を終わらせないと……!

 ——それでもまあ、洗濯し終わった自分の服から漂う昂晴君の香りにまたドギマギすることにはなったんだけど。

 

 

 

 

 

☆等身大の初恋

 初めて会った日のことなんてもう覚えていない。気が付けばそこにいるのが当たり前で、なくてはならない存在だった。

 だからこの気持ちがいつからだったのかも分からないし、この感情の名前を知ったのだってそれが生まれてからずっと後のことだったと思う。

 長い時間を過ごす中で、この気持ちは小さかったわたしの思い込みなのかもしれないと思ったこともあった。年だって離れているし。

 4つ差とは割と大きなもので、小学校でもなかなか会う場面がなかったというのに、中学校以降になるとそもそも一緒の学校に通うことすらできなくなってしまう。

 それは実らないなんて話もよく聞くし、幼馴染の関係なんて大きくなったら途切れちゃったりするのかな。そう考えて怖くなったことだってある。

 そして今、今なお隣を歩く昂晴君の横顔をわたしはじっと見つめてみる。

「……なんだ、希。俺の顔に何かついてるか?」

「ううん、そうじゃなくて。昂晴君も大きくなったなぁって」

 わたしも女の子としては色々大きい方だと思うけど、昂晴君の方がもっと大きい。

 互いの成長を感じる度に、今までずっと一緒にいられたことが嬉しくなる。

 そして、この想いはいつまでも消えることなく続いている。これまでも、これからも。

 だからわたしをきちんと見てもらえるまでは、ずっと隣にいてずっと一緒にいるんだ。

 わたしは今、等身大の初恋をしている。




☆慣れてたはずの香り
 着てる服から落ち着かない香りがする! てお話。
 でもきっといつしか落ち着く香りに代わっていく。

☆等身大の初恋
 この気持ちは今なお成長し続けている、てお話。
 こういう幼いころからの積み重ねのお話が大好きです。



 今回のお話とは関係ないですが、毎週ここに投稿しようと思っているのにいよいよストックが切れてきて大ピンチです。
 二週に一遍とかになるかもです。
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