☆新しい景色
日が落ち、寮の門限を気にしながら気持ち早足で学院に戻るデートの帰り道。
「そういえば、イルミネーション出す家増えてきたな。いつもの通りがにぎやかだ」
「そうだね。この季節になると夜に外歩くだけで楽しいから好きなんだ。ね、覚えてる? 家にいた頃にも近くにイルミネーションがきれいな住宅街があったよね」
「ああ、七海が行きたいって言うからよく一緒に行ったよな。人が多くて大変だった」
「風情がないなぁ。他の人なんてどうでもいいんだから。……今年もさ、一緒に見に行こうよ」
「いいぞ。結局、今年もいつもと同じだな」
「違うよ。全然違う」
そして七海は俺の目をまっすぐに見つめながら、指を絡めて手を握った。
「今年からは〝妹〟じゃなくて〝恋人〟と見るんだから。見方が変わればきっと見える景色も変わってくるよ」
手袋越しからでも感じる七海の温もりにふいに顔が火照ってくる。
「あはは、お兄ちゃん照れてるの? 今からそんなんじゃこの先持たないよ?」
そう言い残して七海は駆け出した。繋いだ手を引かれて俺も走り出す。
思えば、兄として俺が七海のことを引っ張っていくことの方が多かった。
それが今や、門限を気にしているとはいえ手を引かれるとは……。
俺はこれから何度、七海と新しい景色を見られるのだろうか。
☆推定高さ三メートル
みんなは〝一年間の距離〟を考えたことがあるのだろうか。
わたしが知る一年間の距離。それは推定高さ三メートルである。これは例えるならそう、校舎の一階差分だったりする。
大きく踏み出せば、横方向になら二歩やそこらで到達できる距離。しかし残念、人は自由に空を飛べない。仮に驚異の大ジャンプを披露できたとしても天井に阻まれる。
そんな距離感でわたしはずっとその背中を追ってきた。
一年というこの距離が大きすぎる。大体のイベントごとは一緒にできないし、わたし以外の女の子との思い出話なんて聞きたくもない。廊下でたまにすれ違うことがあったとしても、せいぜい小さく手を振るくらいしかできやしない。
わたしが一歩歩みよれば、その分だけ遠ざかってしまう。
絶対にわたしのことを置いてはいかないし、振り返っては優しい目を向けてはくれるけど、この差が埋まることは絶対にない。ずっとそう思ってた。
だから勢い任せだったとしても、この手が届いたことがとても嬉しい。
そして、一度掴んだこの手は二度と離してあげない。
たった三メートルがなんだというのだ。どんな時でも一緒にいたい。わたしのその想いは誰にも何にも止められない。
だから今日もわたしは窓から飛び出し、たった三メートル下にいるお兄ちゃんに会いに行くんだ。
☆新しい景色
いつもの二人といつもじゃない景色、なお話。
こんな感じのお話を書いてみたものの、七海ちゃんは確実に内弁慶だから元からお兄ちゃんのことを引っ張ったりしてそう。
でもなんだかんだで妹に手を引かれるなんてすごく幸せそう。
☆推定高さ三メートル
わたしとお兄ちゃんの距離は、てお話。
遠距離恋愛の日に書いたお話。
いつも会話文メインだから地の文メインで書いてみようと思ったりもしたお話。
どう繕っても地の文が多くなる内容だったから都合よし、てことで。
と思っていたら全部地の文になってしまいました。
ちょうどいい塩梅がわかりませんでした。
私が地の文メインで書くとなんとなく、暗いお話になるからどうかな~と思っていましたが、思いのほか反応もらえて大変満足。何なら一番感想もらえてめちゃくちゃ嬉しかったです。
私事ですが、最近リアルの方が忙しくなってきたので毎週更新してたこの更新が止まるかもです。
Twitterの方の「投稿期間を一週間以上明けない」は維持するつもりですのでそちらも応援してくださると嬉しいです。
こっちの更新も余裕があったら今まで通り行いますが、しれっと一ヶ月くらいのをまとめて投稿するかもです。