ヒロインとの1ページSS   作:やなや

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※今回はバッドエンド(デッドエンド)なので口に合わない方は他のお話を読んでいただけると幸いです。


あなたのいない世界 SIDE S/SIDE N (バッドエンド)

☆あなたのいない世界 SIDE S

 遠くから声が聞こえる。だんだんと鮮明になってきて意識が表層に浮き上がる。

「暁君、聞こえる? わたしのことわかる?」

 体が全く動かない。

 かろうじて目を開くと、七海が見える。

 ……血まみれの七海が。

「……七海⁉ 血が! なんで……」

「もう、大丈夫だから。わたしがついているから」

 少しずつ思い出してくる。俺は薬を打ち込まれて能力を暴走させた。

 暴れ狂い、人も物もすべて壊した。

 今は七海が能力のおかげで意識を取り戻したようだ。

 つまり、七海に傷を与えたのは俺。明らかに致命傷ですぐに手当てをしても……。

「七海! 俺はいいから自分の手当てを……!」

「わたしのことはいいの。それに今わたしが手を離したら暁君、また暴れちゃうでしょ? わたしがついてなきゃ」

「なんで……。お前が暴れる俺を止められるわけないだろ! もう壊せるものはなかったんだ! 放っておけば勝手に自己崩壊していたはずだ! なのに、なんで……」

「なんでって、わかるでしょ。お兄ちゃんのいない明日にわたしの居場所はないの」

 まっすぐに俺の目を見つめて言う。この行動に微塵も後悔はないというような表情で。

「生まれ変わったらまたお兄ちゃんになってね。大好きだよ、暁君」

 その言葉を最後に七海の腕から力が抜けていく。俺を抑えていた能力も弱まり、意識は再び暗闇へ。

 もうすでに自分を取り戻す意味を失った俺は抗うことさえしなかった。

 

 

 

 

 

☆あなたのいない世界 SIDE N

 わたしが駆け付けた時にはもう手遅れだった。

 多くの人が倒れ、物が壊されていた。

 わたしたちが追っていた事件を考えると暁君の能力が暴走しているのだと想像がついた。

 暁君の暴走はきっと脳に直接ダメージが行くからこのままだとまずい。

 この場で動けるのはわたししかいない。お父さんたちは到着に時間がかかる。

 何よりも、わたし自身が今の暁君を一人にしたくない。

 わたしの運動能力じゃどうあっても暁君を止められない。

 だからわたしは手を広げて、笑いかけながらゆっくり近づいた。怖くないよ、と。

 ——そして体が吹き飛んだ。頭を殴られたことに、壁に打ち付けられてから気づいた。

 ふらふらする。まっすぐに歩けない。それでも暁君の下へ。今度は真上から叩きつけられる。一瞬意識が飛ぶ。もう痛みなんて感じなくなっていた。

 目の前に二本の足があった。抱きしめるように両手ですくい上げると暁君が転んだ。おそらく最後のチャンスにすべてをかける。暁君の頭に手を添えて能力を発動した。

 想いが通じたのか、奇跡が起こったのか、暁君が正気に戻った。

 はた目には二人並んで寝そべり、わたしが暁君の顔を自分の方に向けているように見えるだろう。

 ごめんね。助けが来るまでわたしはもたない。だから暁君も暴走を再開させ、きっと尽きてしまう。でも、これで伝えられる。思いがけぬ最後になったけどこれだけは。

「生まれ変わったらまたお兄ちゃんになってね。大好きだよ、暁君」

 本当はお兄ちゃんじゃなくて恋人でもいいよ。なんて伝える前に終わってしまった。




☆あなたのいない世界
バッドエンド系の話です。
こういう話もたまになら好きです。
あなたの隣が私の生きる場所、てお話。
今まで投稿してなかっただけで書いたの自体はSS10本目くらい。
完全自己満足のつもりで書いて投稿する気はなかったけど、なぜかバッドエンド物が流行ったので日の目を見ました。
こういう保管庫行きはいくつかあるので機を見て全部放流できたらいいな……とか思っていたり。
悲しい系のお話がずっと続くと気が滅入るのですが、たまにならおいしくいただく所存です。
背景設定的にはかなりゆとりを持たせてるのでいろいろ想像できますね。
確定しているのは、学院潜入中の某先生に薬盛られたことだけですから、誰とくっついていても一応成立するつもりです。
七海√前提なら、二人はくっつく前のお話。
他の娘√なら七海ちゃんは自分の気持ちに蓋をした後の話になりますね。
けなげで一途な子可愛い。
いつもいつも書きたいように書いて、言わせたい台詞言わせてるだけの私ですが、今回言わせたかったのは SIDE N のラスト2行。
これを言わせるためだけに二人には眠ってもらいました。

お読みいただいている方はもうお察しかもしれませんが、今回みたいな裏表で書く構成がやなやは大好きです。
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