ヒロインとの1ページSS   作:やなや

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雨降り緊急連絡/その傘に守られて

☆雨降り緊急連絡

「もしもし、お兄ちゃん?」

「うん、今ちょうど買い物終わったところ」

「ちょっとお願いがあって……」

「ううん、そうじゃなくてね。荷物は平気、一人で持てるから」

「外に出たら、ぽつぽつ降り始めちゃってるみたいだから……。洗濯物、取り込んでおいてくれる?」

「うんお願い」

「えっ、大丈夫だよ。このくらいなら小走りで帰れるから……」

「うん、平気。……ってうわ、やばい、結構降り出した。お兄ちゃん洗濯物急いで! 早く早く!」

「平気? あんまり濡れてない? ……そう、よかった間に合って」

「うーん、結構濡れちゃいそうだから少し雨宿りしてから帰るね」

「いいって。……聞いてるの?」

「ちょっと待ってれば止むと思うし……」

「もう、わかったよ。うん、ありがとう」

「もう降ってるんだから、急いで走ってこなくていいからね」

「じゃあ待ってるね、ばいばい」

「ふふっ。早く来ないかなー、お兄ちゃん」

 

 

 

 

 

☆その傘に守られて

 なんとなーく沈んだ気持ち。

 何かに失敗したとかではなく、一日を通してうまくいかなかったなぁ、とそんな感じ。

 そんなわたしの心を映したかのように、空には分厚い雲がかかり、降り出してきてしまった。

 ぽつぽつ、ぽつぽつ、と。

 まるでわたし自身を外に広げたみたいに、仕舞い込むわけでも弾けるわけでもない、まさに微妙な天気。

 傘を持っていなかったわたしは、心も体も湿らせながら家を目指す。

 今日の晩御飯はどうしよう。今日は何をしてもうまくいかないような気さえしてくる。

 なにか簡単なものを……。そうだ、カレーなら失敗しないかな。

 お兄ちゃんとお父さん、「おいしい」って言ってくれるかな。

 そうしたらちょっとは元気出るかも、なんて。

 とぼとぼと、心も目線もうつむいて。

 なんだか本格的に降り出しそうな予感——。

「——七海?」

 ふっ、とわたしに日が差して、暗澹とした気持ちを吹き飛ばしていく。

「よかった。行き違いにならなくて。雲行きが怪しかったから傘持ってきたんだ」

 そう言って暁君は自分で差している傘と、もう一本持っている傘を得意げに見せる。

「本格的に降り出す前に間に合ったな。ほら、帰ろう」

 わたしに向かって差し出された傘を、しかしわたしは受け取らない。

 今日くらいはわがままになっちゃおうと心の中でひそかに決意する。

「お兄ちゃん、今日はわたし、疲れちゃった。傘も差したくないから……いーれて!」

 やがて本降りになった雨も、わたしに届くことはもうなかった。




☆雨降り緊急連絡
そろそろ梅雨時になりますが、雨への対策はもうお済でしょうか。
今回は憂鬱な時期を乗り越えるための雨特集となります。
さて一発目。
わざわざ迎えに来てくれなくても大丈夫だってば! てお話。
電話ネタになります。
行間はそれぞれで想像してお楽しみいただければ。
最後の一文についてはもう電話切れた後なので純粋に七海ちゃんの心の声が漏れていることになりますね。可愛い。

☆その傘に守られて
うまくいかないなーでもお兄ちゃんがいればわたしは平気! てお話。
やなや自身がなんかうまくいかないなーと思った時の気分で書いたものです。
なんかちょっと詩チックになっている気がする。学がないからよくわかりませんが。
暁君、別に七海ちゃんが落ち込んでるのを察して迎えに来たとかじゃなくて、単純に「あいつ傘持ってなかったよな?」で迎えに来ただけだけどナイスタイミング!
まあ〝暁(あかつき)〟って夜明けの意味ですからね。言い換えれば日の出の時みたいなもんよ。
常に七海ちゃんを照らしてあげて。
その傘で大切な妹を守れることを願います。
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