生徒用の観戦席にて
試合を見ていた少年は泣いていた
目を背けたかった
けれども友の決死の覚悟を見逃すことはできない
元々、仲が良かったわけではない
昔からの知り合いというわけでもない
ただ同じ立ち位置にいたというだけだ
底辺
知名度の底辺
人気の底辺
存在感の底辺
底に沈んだ澱
それが少年と彼だった
「少し…ほんの少し目立とうとしただけなのに…
勝負にすらしてもらえなかった
瀬呂…お前は凄いヤツだよ
俺が認める…全員に否定されても
俺だけは認めるよ…凄い目立てていたって…」
少年の名は尾白 猿夫という
散々存在感の無さをネタにされてきた男だ
「あんなこと俺にはできない
そもそも類似キャラがいないしね」
彼の心に届いていた
ゆえに、迷う
自分はこのままでいいのだろうか
実力で勝負
なるほど聞こえはいいだろう
奇策、番外戦略、卑怯な手段、ヒール行為…
なるほど聞こえは悪いだろう
しかし、使えるものを使わず勝ったとして
全力で戦ったといえるのだろうか
もし、使えるものを使わずに負けたとしたら
後悔はないのだろうか
試合という意味での勝敗も大事だ
武道家として正々堂々と挑みたいとも思う
プロや一般観客に対するアピールという意味ではどうか
例えば圧倒的な実力で勝てれば大成功だろう
例えば熱狂するような名勝負の末なら
勝敗に関わらずに大成功といっていいだろう
例えば悲惨な負け方だったとしても他にないような
唯一無二のナニカをアピールできたのであれば成功だ
全部、彼が持っていないモノである
ましてや相手は葉隠である
正真正銘の透明人間だ
存在感が薄いだけの男とは違う
潜入や奇襲向けの“個性”として
勝敗に関わらず彼女は成功者だ
彼が負けたらどうか
彼女の有能性を知らしめるだけで
彼には注目は集まらない
彼が勝ったらどうか
ない
なにもない
精々が彼女を鍛え戦闘力を与えたら使えそうだと
そう思われるだけだろう
彼にはなにもないのだ
“尻尾”
単に尻尾が生えているだけの“個性”
“犬”や“猫”などの“個性”でも尻尾はあるうえに
発達した嗅覚だったり身のこなしは上
他の動物の良い所を人間の身体サイズで再現するのだ
使いこなせればヒーロー向けの“個性”だろう
だから否定したかった
ただの人の身体に異形なのは“尻尾”だけ
それでもヒーローになれると
ヒーローを目指していいんだと
努力を重ねればきっと夢は叶うんだと
派手さは必要ない
目立たない地味な“個性”でもやれるんだと
自分に得るモノがなかったとしても
せめて後続の為に地味なまま勝つ!!
武道家としての正道を進む
アピールとしては弱くとも
それが不器用な彼に出来る唯一のことなのだから
「あれ?尾白君、後ろゴミ付いてるよ!」ピッ
「あ、ありがとう葉隠さん
試合、負けないからね」
「私も負けないよ~!!
尾白君もきっと目立つから大丈夫!」
「……いやさ、今それ言う?」
「あはは!頑張ろ~ね!」
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『さぁ4試合目よ!前競技では同じチームだったのに
戦うことになってしまったボーイ&ガール!!
尾白 猿夫君と葉隠 透さんの戦いね!!』
『あっ葉隠さんはジャージを着ないようですね
運動靴だけが動いていますね
“コスチューム”の使用は禁止されていますが
ジャージを脱ぐことは禁止されてないのを
利用して“個性”を活かしてますね』
『この衆目の中で全裸運動靴なんて凄いじゃない!
…あら?尾白君はまだ入場してないの?』
「…ここにいます」
『あっえっ?何時の間にステージに!?』
13号が話している最中には居たのだが
やはり誰も気付かない気付いてくれない
彼のコンプレックスでもあるソレは
試合後には霧散してしまうとは
まだ、誰も想像すらしていなかった
『それじゃ試合開始よ!!』
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「いくら服脱いだってよぉ
靴履いてたらすぐわかんだろ」
観戦席にて切島が溢す
確かにある程度のフォームは隠せるが
居場所は丸分かりである
「ふむ、切島よ…貴様はナニを見ている」
「あ?いやだってそうじゃね?」
「…言い方を変えようか
今、葉隠嬢はどこにいるかね?」
「靴があっからソコに…っ!!」
「わかったようだな…靴は囮だ
靴はあくまで靴、すぐ脱げるのだよ
そして相手が靴を見ている隙に接近をするのだ
“透明”ゆえに正面からでも気付かれずにな」
色丞のその言葉が正しいことが
ステージの上で正面された
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「そ~れ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ステージ上では葉隠が尾白のズボンを降ろしていた
もう一度言おう
葉隠が尾白のズボンを降ろしていた
「なっなんで!?」
尾白は動揺していた
靴が囮なのはわかっていた
葉隠が腐の陣営であることもわかっていた
どうせ、ろくでもない手段を取るともわかっていた
だが、予想していないことが
あってはいけないことが起きていた
尾白の“個性”は“尻尾”だ
そして”尻尾”は臀部に生えている
ゆえズボンには専用の穴が空いている
その穴に”尻尾”を通しているために
“尻尾”を曲げながらでないと
ズボンを降ろせないハズなのだ
しかし、実際にズボンは降ろされた
「ふふふ~ん!わからないって顔してるね!
ん~じゃあヒント!試合前!」
「試合前…?まさか、ゴミを取ってくれた時に!?」
「大正解!!」
「それより俺のズボン返してよ!?」
ヒーローは格好ばかり気にしてはいられない
だが、ズボンを降ろされても気にしなければ
それはヒーローというより人としてどうかしている
「はーい!皆さんご注目!!
尾白君はおとなしい顔していて
こ~んなドエロいパンツを履いてま~す!!」
「やめてくれぇぇぇぇぇ!!」
尾白も高校生である
下着くらい自分で選んで買う
しかし“個性”柄、選択肢が少ないのだ
一般的な下着とされるブリーフやトランクス、ボクサー…
一応は尾白でも履けないことはないが
途中で“尻尾”が引っ掛かってしまうのだ
そうすると動くと下着がずり落ちてしまう状態だ
ゆえに尾白でも履ける下着は
いわゆる紐パンであったり
穴空きパンツやケツ割れパンツしかない
つまりドエロいパンツしか選べないのだ
「もう嫌だぁぁぁ!!棄権!棄権します!!」
『んん~聴こえないわね』
『多分、空耳でしょう』
ありがとうございます
いいぞ!もっとやれ!!
「はっ!そうだ場外になれば…!!」
『セメントス!やっておしまい!』
「えらほらさっさ~!」ズズズ
『これは特別仕様のデスマッチステージですね』
『ええ!これで場外はないわ!!
思いっきり戦いまくりなさい!!』
ステージはセメント製の檻で囲まれた
選手は外に出ることができないが
観客席からはよく見えるので問題ない
「これが教師のやることかァァァ!!
このエセ教師!変態!人間のクズっ!!」
『お~ほっほっほっ、なんとでも言いなさい!
痛くも痒くもないわぁ~!(愉悦感)』
「三十路過ぎてるのにそんな格好して
恥ずかしくないのかよ!このオバサン!!」
『……………葉隠さん、
その猿のパンツも剥ぎ取ってしまいなさい』
「は、はいぃぃぃ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それはゾッとするほど冷たい声だったという
葉隠 透、判定により勝利
※尾白のパンツは無事に剥ぎ取られました
※尾白 猿夫の設定
猿~のパンツはいいパンツ
エロいぞ~エロいぞ~(フニクラ感)
実際、エロいパンツしか選べなそう
それともマジックテープとかで停めるのだろうか
※葉隠 透の設定
正面から奇襲攻撃ができる子
原作にて“鍋”を透明にしていたので
自分以外にも“個性”を使用できる模様
つまり相手の”服のみ”を透明にできるってことだね!
※ミッドナイトの設定
そろそろキツいんじゃないかと
自分でも思いはじめている31歳
だが、他人から言われると腹が立つ
やっておしまい!