一緒に来た友人あるいは家族、恋人と談笑する者がいた
今のうちにと露店に行ったりトイレを済ます者もいた
スマホで呟いたり動画を上げる者、
それを確認する者もいた
休憩時間や試合の合間の空き時間ではない
試合中の観客席の風景である
なぜ試合中にも関わらず
観客は試合に注目していないのか
飽きだ
飽きてしまったのだ
試合が開始されてから既に2時間が経過していた
序盤はよかった
似た“個性”で似た性格の2人が戦う様子は
熱血だとか男気を感じられ
充てられた観客達もソレに熱狂した
正面突破、正々堂々といった戦い方は
見る者の心を熱くさせる熱力が確かにあったのだ
15分が経過した頃、
お互いがお互いの琴線に悪い意味で触れたのだろう
罵詈雑言が飛び交い罵りあっている様子は
見ているだけならば滑稽さもあり
ソレが試合中ということもあり
一種のシュルレアリスムがあって見ていられた
20分も経過した頃には
語彙力の無さからか
子供のケンカにしか見えなくなってしまった
口を開けば幼稚な言葉しかでなくなった
一部抜粋すれば
「バーカ!バーカ!」
「バカっていうやつの方がバカなんだよ!」
「うっせぇ“個性”被りやがって」
「あ゛あ゛っ!?オメーいくつだよ?」
「15だバカ野郎!」
「被ってんじゃねぇか!?何月生まれだコラァ!?」
「10月16日だクソ野郎!」
「だだ被りじゃねぇか!?」
小学生のケンカの方がまだ理知的だろう
延々とソレが続いたのだ
そりゃ観客も飽きるというものだ
誰もが変化を望んでいた
ステージ上で殴り合っていた2人も
ソレを見守る観客も
何か状況を変えるモノを求めていた
そして、ソレは叶えられた
どこかで聴いたような
具体的にはテレビの通販番組で聴いたような音楽
ソレが突如としてスピーカーから響いた
「「ジャパネット発目のお時間です!!(高音)」」
なんか来た
ステージ上に乱入したのは
次試合の選手である発目 明と色丞 狂理だった
2人ともなぜかスーツを着ている
「変化が無い試合…どうにかしたいですよね」
「そこでだ……素晴らしい提案をしよう」
色丞が語った素晴らしい提案とは
試合が拮抗している以上、実力的には同等と判断し
次試合もこのまま行い
勝った1人が次に駒を進める
変則バトル・ロワイアルであった
実力こそ全てである
仮に切島、鉄哲のどちらが勝ったとしても
次の試合の結果は同じだろう
ならば4人で戦うことによって
試合時間の省略が可能かつ、
本来ならば1人しか相手に出来なかった者に
挑める為、経験という意味ではメリットがあり、
チームワーク、即席でこコンビネーションが試される為に
見応えも学ぶことも多い
メリットが盛りだくさんの“素晴らしい提案”であった
難点をあげるならば結果が見えていることか
ミッドナイトがソレを認め
急遽始まったバトル・ロワイアル
果たして勝者は…
「しゃっあ!!俺は誰にも負けねぇ!!」
「全員ぶっ飛ばしてやる!!」
気合い十分な切島と鉄哲だが
「はい!今回 ご紹介する商品は!!」
「こちらです!!かつて人気を得ていた『三式ゴールデン★ボール★クラッシャーmk.2.01改スペシャルスプリングエディションオリジナルカラーバージョンV4』の改良版!!『肆式ゴールデン★ボール★クラッシャーmk.16.16改スペシャルサマーエディション雄英体育祭限定カラーバージョンV7ミニ』!!」
なんのこっちゃと思う読者が大半だろう
以前に発目がパワーローダーのパワーローダーを
破壊☆粉砕☆大喝采!!した悪魔の兵器の次世代型である
「従来型と比べてかなり小型になっているんですねェ!」
「その通りです!具体的には“電マ”サイズですね!
なのにパワーはそのまま!!嬉しいですねぇ!」
「では早速使ってみましょう!!」
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カッコよくなりたかった
強いヤツに憧れた
でも、それは無理で
夢は夢で
現実はかけ離れていて
ある事件が切欠で俺はへこんだ
自室で深夜、女々しく悩んだ
偶然、昔買ったソレが目に入った
かつての憧れのインタビュー動画
忘れてた夢
“後悔しない生き方”
今の俺は胸を張れるだろうか
明日、死んだとして後悔しないだろうか
深夜、家を抜け出して
チャリで住宅街を抜ける
24時間営業のドラッグストア
買うのは毛染め1番派手なヤツ
それと整髪剤、ハードタイプのヤツ
うっすらと東の空が赤らんできた頃
鏡に写った俺はヒーローだった
強くて硬派でカッコいいヒーロー
今はカッコだけ
でもいつか
いつかきっと
本物のヒーローに俺は…
後悔しない生き方をするために…!!
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「あ、すんません…俺、辞退しますわ」
「切島ァァ!?テメェどういうつもりだ!?」
「いや、現実みようや
もうさ高校生なんだからさ」
「見損なったぞ!!テメェは男らしい男だと!!
そう!俺は思っていたんだぞ!!」
「んなこと言われてもよォ…
わり、時間切れだわ…………ごめんな」
切島は辞退した
ならば残った鉄哲は?
「ではスイッチオンです!!」
「新型の威力を食らうがいい!!」
「俺は硬ぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
狂人共の餌食となってしまった
確かに鉄哲は硬かった
一般的に硬さとはモース硬度で表すが
鉄のモース硬度は5である
ダイヤモンドのモース硬度は10であるが
これだけではいまいち分かり難いだろう
ガラスのモース硬度は5から7である
硬さでいえば鉄以上なのだ
つまりなにが言いたいかというと
硬さと脆弱性は必ずしも比例しないということだ
鋳型という金属加工方法がある
練鉄と比べて安価に造れ大量生産に向いているのだが
鋳物は割れ物というくらに割れやすい
鉄哲 徹鐵 個性“スティール”
ソレが折れる音は決して大きくなかったが
観客全員がハッキリ聴いたという
※切島 鋭児郎の設定
鉄哲と熱戦を繰り広げていたが
あまりにも長く続き過ぎた
後悔しないために諦めることを選べた
大人になるということはそういうことである
※鉄哲 徹鐵の設定
切島と熱戦を繰り広げていたが
あまりにも長く続き過ぎた
後悔しないために諦めなかった
大事なナニを失った
※発目 明の設定
我等がボ卿
鉄哲の鉄哲をへし折り砕き粉砕しパウダーにした
その後、色丞からの提案で
スポンサーについてくれるというので棄権した
※色丞 狂理の設定
絶対に勝つ方法とは
勝てる戦いしかしないことである
主人公なのに買収行為を普通にした
…正直、発目相手に勝てるヴィジョンが見えない