僕のH☆EROアカデミア   作:紫煙隊

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その試合、……オラァァッッ!!

 

 

選手控室

そこで集中に集中を重ねる男がいた

名を砂藤 力道と言う

 

砂藤は理解していた

自分は最終競技で残れるだけの実力はないのだと

おそらくこの最終競技…ほぼ誰と戦っても負けると

 

“個性”を知る前ならば

心操との試合だったなら機会が…

“個性”を知った上で挑めるならば…勝てただろう

 

切島や鉄哲とならいい試合になっただろう

試合という形にはなるが勝てるかというと疑問だ

あとは……あれ?

え~と、ほらアイツ…アイツだよ

あのドエロいパンツの奴と……

………あっ、そうだ自転車の奴!!

”存在感を希薄にする個性”相手だと

攻めきれないだろうし

探知できないうちに決まられてしまうだろう

 

 

だが自分の相手は麗日 お茶子

正直、自分と同じように実力不足感がある

自分はまだ“個性”の性質上

ラッキーパンチの可能性がある

彼女にはそれがない

 

彼女の“個性”は知っている

“物を浮かせるだけの個性”だ

もし、相手が男で鍛えていたなら勝ち目はなかった

だが女性だ

力も強くなく技術もあるわけではない

唯一自分が勝てる相手だ

 

しかし、それでいいのだろうか

勝てる相手と戦ってそれで勝って

そこに誇りはあるのだろうか

胸を張れるのだろうか

無論、棄権するつもりはない

ならば、せめて彼女にとって

得るもののある試合に…

 

控室の扉が叩かれた

3回のノック音

こんな時に誰だと扉を開ける……誰もいない

いたずらか気のせいだと思い閉めようとして目に入った

地に伏せる…いや土下座をする麗日の姿が

 

 

「砂藤君…いや、砂藤さん……

 勝ちを譲ってもらえへんか…」

 

なにを…なにを言っているんだコイツは!?

土下座など生まれてから一度もされたことはない

それも女子からなどは一生ありえないハズ…!?

いや、それよりもだ

勝ちを譲る…?

 

「ウチは貧乏なんや…私が生まれる以前からや

 その長さ……貧困…砂藤さんに想像できるん?

 頼むわ…ウチにはもう時間がない…

 それに…砂藤さんに勝てる実力もないんやッッッ」

 

「え……だ、だからって…」

 

「砂藤さんッッッ」ポロポロ

「お願いや砂藤さんッッッ」ポロポロ

 

「じょ…冗談じゃないッ

 勝ちを譲れって…

 お前にもヒーローとしての誇りがあるハズだろ!?

 全力を尽くすぜ俺は」

 

しかし、麗日は諦めない

踵を返し去ろうとする砂藤に後ろから抱き付き

なおも懇願を続けた

 

「いい加減にしろッ」ガッ

 

「…うう」

 

そしてあまりにも情けない麗日の姿に

砂藤は怒り遂に手が出てしまった

多少ダーティな手を使って戦うならまだ許せる

だが、八百長は駄目だ

戦士として許してはいけない

尻餅をつき踞る麗日を見下ろしながら…

 

「俺だって勝ちてェよッッッ

 俺だってオメエが怖ェェよ!!!

 ……試合場で会おう」

 

顔を上げず涙を溢す麗日の嗚咽が

去り行く砂藤の耳にやけに残っていた

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

『手のひらの肉球がチャーミング!麗日 お茶子!!

 1人だけ昭和の世界からやって来た砂藤 力道!!』

 

『確かに昭和ジャンプの感じがしますね~

 平成なら“ぬ~べ~”あたりに出てきそうです!』

 

『では正々堂々戦いまくりなさい!!』

 

 

ステージ上、最初に仕掛けたのは麗日だった

 

「砂藤さん…………………………ダッシャッ!!」

 

『いきなりの大技が決まりました!!

 ノーモーションからの延髄切り!!』

 

『続けてナックルアロー!!

 連打!連打!連打!息をつく暇も与えません!!』

 

 

砂藤は困惑していた

予想していたよりも麗日が動けていることに

そして、予想以上にダメージがないことに

確かに痛いには痛い…が耐えられないほどでもなく

痛みはあれど目眩がするとか

骨や内臓が傷つけられたといいわけではない

少し痛いだけの攻撃だった

 

麗日による数分間の猛攻、それが止まった

殴られ蹴られた砂藤は鼻血を出し

体操服も乱れ、身体中にアザもできていたが

しっかりと2本の足で立っていた

一方で攻撃を仕掛けた方の麗日は

息も絶え絶え、大きく肩を震わせていた

 

 

「砂藤さん」ハァハァ

 

 

「ダメージはあったん?」ハァハァ

 

 

「今 私が仕掛けた攻撃で 君はダメージを受けたかと

 尋いているんやッッッ」ハァハァ

 

 

「ダメージは…ない」

 

 

「君は今 そうして立っているけど…

 私は今の攻撃で立っているのがやっとなんや!

 仕掛けた私のほうがやッッ」

 

 

『おや、麗日さんが砂藤君に何か言ってますね』

 

『少なくとも愛の告白ではないのは確かです』

 

 

「私の言いたいことがワカるん…砂藤さん

 君は今!!そんな”か弱い少女”を

 痛めつけようとしとるんや!!」

 

「……麗日さん」

 

 

砂藤の返答は延髄切りだった

正確に首にヒットし麗日は膝を着いた

2人のやり取りが聴こえていない観客からしたら

麗日の初撃に対する意趣返しかと思うだろう

しかし、砂藤の心境はそんな生優しいものではなかった

 

 

「寝ボケるなよ糞アマ」

 

 

砂藤は烈火の如く怒り狂っていた

選手としてヒーローを目指す者として

断じて目の前の少女を許すわけにはいかなかった

殴る殴る殴る、蹴る蹴る蹴る

ろくに抵抗もできない麗日をいたぶっていた

そして、トドメとばかりに締め技にはいる

チョークスリーパー

完璧に極った締め技というのは抜け出し難い

いや、抜け出し難いからこそ締め“技”なのだろう

ギリギリと音が鳴るのは砂藤の腕の筋肉からか

それとも麗日の首の骨からか

 

 

 

その時である

 

 

       トン  トン

 

 

(タップ!?)

 

 

「ギ……ギブアップや………君の勝ちや……」

 

 

「シャアッ!!」

 

 

腕を上げ勝鬨を上げる砂藤

…が、彼は気付いていなかった

誰が砂藤の勝利を宣言したのか

麗日が締められながらボソリと言っただけ

密着している砂藤だけがギリギリ聞き取れる声量でだ

審判は何を言ったのか

…そう、審判は何も言っていない

 

つまり、まだ試合中であった

 

 

 

 

 

「オラァァッッ!!」グシャッ

 

 

砂藤は自分の勝利を疑わないままに後ろから金的を受けて倒れた

身体が浮かぶほどの蹴りである

蹴った本人…麗日が悠々と両腕を上げる

 

 

『けっ決着ゥゥ~!!まさかの大逆転です!!』

 

『勝ったのは麗日さん!!勝者は麗日 お茶子です!!』

 

 

「WRYYYYYYYYYY!!!!!」




※砂藤 力道の設定

今週の更新はいつもより多めに潰しています
玉砕きの3人目の被害者
試合後に緊急搬送された
鉄哲、峰田と同じ部屋になる

※麗日 お茶子の設定

色丞から“グラップラー”な漫画を借りて読んだ結果、
ちょっとズレた方向にリスペクトした
プロレス技は“男色ディーノ”様の動画を見て学び、
色丞の紹介で“筋肉増強”の人のジムでトレーニングした

※実況席の2人の設定

男子生徒の青春っぽい行動が大好物
勿論エロエロなアレやコレも好き
曇らせた顔も好きだし泣き顔も好き
苦痛に歪む男子生徒の顔もアリだと思い始めた
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