なにかがおかしい
飯田 天哉は思う
いや、なにがおかしいのかは理解している
だが、ソレを尋ねてもいいのだろうかとも思う
体操服に運動靴、トレードマークと言ってもいい眼鏡
飯田の現在の服装である
体育祭ではコスチュームやサポートアイテムの使用が
サポート科及び事前申請があった場合を除いて
禁止されているために皆、同じような服装である
飯田は対戦相手を見る
葉隠 透、同じクラスに所属するも
一度も顔を見たことのない少女だ
顔を見たことのないと言っても葉隠が不登校だったり
顔を隠しているわけではない
“個性” “透明”
見えないのだ顔が身体が“透明”ゆえに
だから、見たことは無いのだが……
もう一度、飯田は正面の相手を見る
すっぽりと覆面を被り、手袋を着け、
肌の露出が一切ない姿の……185センチ程の巨体を
眼鏡を外す
一度、眼鏡拭きで丁寧に拭い掛ける
眼鏡を装着する
右を見る…ヨシ!
左を見る…ヨシ!
眼鏡の度数は合っている
うん、どう見ても185センチの巨体だ
体操服もパッツンパッツンになっている
腕周り等は
脛も同じくらい…
…見たくはないが…決して見たくはないのだが
股関あたりも…
「その…失礼を承知で訊きたいのだが…
葉隠さん…で間違いない…か?」
なんてネイティブな…!!
飯田は思った
同時に疑問にも思った
あれ?なんか声、野太くないか…と
葉隠は…多分、葉隠だろう
葉隠らしきガチムチはその肉体を体操服越しであるが
見せびらかすようにポージングを決める
試合開始前にも関わらず
飯田は疲れきってしまった
遠い目をして生徒用の観戦席を見て…ん?
あの体操服だけが浮いているように見えるのは…?
「偽物じゃないか!?」
『ええっ!?偽物ですって?
葉隠さん…念のため名乗ってもらえるかしら?』
『間違いないなく葉隠さんね!』
『ええ、そうですね!ミドルネームもバッチリです!』
「あれか!?僕の方がおかしいのか!?」
『では確認も終わったということで
試合を始めるわよ!!正々堂々と戦いなさい!!』
開始早々にビリー…もとい葉隠が仕掛けた
レスリング仕込みの超低空タックルである
速度には自信のある飯田だが対応が出来なかった
そして葉隠アニキの太い指先が飯田の体操服を…
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『さすがヒーロー科 飯田君!!
歪みねぇ身体をしているわね!!』
『だらしねぇ身体だったら目も当てられませんね!』
上半身の衣類を紙のように破り捨てられ
続いて下半身にも魔の手が伸びるが
飯田は“エンジン”を吹かせ回避した
一瞬、回避が遅れズボンも失ってしまうが
これで飯田を責めることはできないだろう
むしろ、葉隠ニキの絶技を讃えるべきだ
純白のブリーフが日に照らされ眩しい
衣類と共に別のナニカも失ったのか
飯田が吹っ切れたように笑い出す
「へへへ…ブッ殺してやる…靴なんて必要ねぇ!!
靴下も必要ねぇや!!へへへ…誰がテメェなんか…
テメェなんか怖かねぇ!野郎、ブッ殺してやらぁ!!」
残った運動靴と靴下も自ら脱ぎ捨て
ブリーフと眼鏡だけの姿となった飯田が突撃する
━━激戦
そう呼ぶしかないだろう戦い
飯田の鋭い蹴りが葉ニキの体操服を破り
葉ニキの巨大な手が飯田のブリーフを引き上げ
負けじと飯田も葉ニキのブリーフを引き上げ…
汗や色々な汁で手が滑り
偶然にも葉ニキの覆面に手があたり覆面が外れた
『おおっと葉隠さんの覆面が外れて…コレは!?
コレが葉隠さんの素顔なのかしら!?』
『なんというかガチムチ♂アメリカンですね!』
『『…というか、ひょっとして別人?』』
「だから僕は最初から言っただろう!?」
尻に紅葉のような真っ赤な手形を残した飯田が叫ぶ
アレは数日は治らないだろう
銭湯になんか行ったら注目の的になること間違いなしだ
『…葉隠 透さん、反則行為により失格!
飯田 天哉君の勝利!!準決勝進出よ!!』
「こんな勝ち方なんてあんまりだぁ!!」
勝者のむなしい叫び声が天高く響いた
※葉隠“ビリー”透の設定
交遊関係の広い芦戸の紹介で葉隠と知り合う
“妖精の教え”を再び日本に布教するべく来日
後日、色丞や峰田と親交を結び、飯田とも和解した
故ビリー・ヘリントン兄貴に敬礼(*`・ω・)ゞ
※飯田 天哉の設定
まともな対戦相手に恵まれない少年
ブリーフを剥ぎ取られる前に決着が着いた
本当は葉隠(ビリー)を勝たせたかったが
そうするとアニキばかり目立つので断念した
※葉隠 透の設定
生徒用観戦席でビデオカメラ片手に大爆笑してた
途中、飯田と目が合って「やっべっ」とか思ったが
試合は始まっているので無問題
真なる悪は観戦席に潜む