━━職場体験
中学校、あるいは高校、専門学校ならば
生徒に社会体験をさせるために授業の一環で
組み込んでいるところも多いだろう
しかし、雄英高校
それもヒーロー科においては意味が異なる
たとえば普通の中学校
将来は“こんな仕事”がしたい
“あの職業”に憧れがある
など、いわば“その程度”の意思で、
興味本位で参加できるものだ
そして、現実を知り挫折する者もいれば、
若く、いや幼くして天職と確信し、
その仕事に就くための資格を取るために
専門学校へ通う道に進んだり、
その仕事関連の情報を集めたりするだろう
たとえば高校、
こちらはヒーロー科の職場体験に近いかもしれない
専門学科などに通っていればだが
そのまま将来目指す仕事を体験し、
決意を固めるか、あるいは向いていないと
将来の軌道修正をする
そして、雄英高校の職業体験の場合、
更に一歩踏み出している
“ヒーロー見習い”として公の場に出るのだ
たとえ資格が無くとも
コスチュームを着て街に出れば
周囲からはヒーローと認識される
将来為の勉強でもあるが、
自分の名を売る機会でもある
少し前まで普通の中学生だったのに
体育祭に続き世間にアピールして人気を稼ぐ
そうまでしないといけないヒーロー業とはいったい…?
ともかくだ、職場体験とは
夢を自分の“将来”にするか“憧れ”で済ますか
取捨選択、運命の別れ道
現実を見る機会でもある
…もっとも、将来就く確率が高いならと、
”派遣の作業員”など選択する者はいないだろうが
さて、その雄英高校ヒーロー科の生徒は悩んでいた
プロヒーローへのアピールの場である雄英体育祭
それなりのアピールはできた
できたのだが、それは本人の望んでいることではなかった
本来の実力が出せなかったという訳ではない
むしろ実力以上の力を出せただろう
それがいけなかった
過剰評価なのだ
自分はあれほど動けるわけではない
しかし、武闘派ヒーローからの指名が多い
違うのだ
そうではないのだ
自分は武闘派ではないのだ
肉弾戦など最終手段であって後方支援型なのだ
指名をしてくれたプロヒーロー達に対して
申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる
体育祭の結果だけ見れば
前衛型近接戦闘向きだと見えたのだろう
本当に申し訳ない
実際は戦うことすら怖いのだ
しかし、何事にも例外がある
指名をくれたプロヒーローの中の1人
プロヒーローにさほど詳しくはない自分でも知っている
トップヒーローの1人
ラビットヒーロー“ミルコ”
ニュースで何度も名前を耳にしたことがある
ヒーロービルボードチャートにて
トップ10に名前を連ねるヒーロー
顔は覚えていないが
活躍は何度も耳にした
気になる
興味がある
…
机の上に出したままのスマホのロックを解き
検索をかける
…?
……?
いや、
おかしいな
公式サイトを確認する
口田は絶叫した
失望したのだ
ラビットヒーロー…
思っていたよりウサギ要素が少ない
いや、少な過ぎる
もっとモフモフでフワフワのケモ度が高めの…
口田の純情な心は裏切られた
彼としては“嫁”は根津校長一筋なのだが
“嫁”とアイドルは違うのだ
既婚者ならばわかるだろう
嫁のことは好きだし浮気するつもりはないが
綺麗で可愛いアイドルは別腹なのだ
いわば趣味、趣味なのだ
ただ可愛いモノを愛でたいだけだった
決して浮気などではないのだ!!
そして、“名前だけで判断して”
可愛いだろうと思って検索した結果が
思っていたのと違った
”それだけのこと“などと思った読者諸君に
わかりやすく説明しよう
“テディベア”は可愛いだろう
みんな好きに決まっている
“テディベア”と名前がついているからといって
“淫乱テディ●ア”と検索したようなものだ
そりゃショックを受けるだろう
もし、テディベア好きの小中学生が
検索して画像が出てきたなら
泣くか、その道に進むかの二択だろう
結果として口田はふて寝した
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口田がふて寝したあと、
完全に眠りに入ったことを確認して動きだす者がいた
口田のスマホを起動し、
検索履歴を確認した
━━━━ミルコ?
━━━━へぇ、あのメスが…ねぇ
━━━━ご主人様に近づくクズ豆は摘まなきゃ
闇夜に1つの影が蠢きだした
※口田 甲司の設定
校長への思いから頑張り過ぎて
周りからの評価が変わった
本人はそれに戸惑っている
重度のケモナー
※ミルコの設定
口田の中では“某園長”のようなイメージだった
きっとウサギさんが敵をバッタバッタと倒していくんだ!
検索したら裏切られた
本人に落ち度は一切ない
※某園長の設定
口田の理想のヒーロー像(見た目)
フワフワしていて抱き締めると意外と華奢で
気分屋で耳と尻尾が敏感で…でも夜は大胆で…
全ては口田の妄想、そんな園長は存在しない
※蠢きだした影の設定
忘れられていた影
ネズミ絶対殺すマンから
ウサギを名乗るヒーロー絶対殺すマンにジョブチェン
…憶えている読者はいるのだろうか?