フィルムをほどき、箱を開ける
包装紙を取り除き、軽く叩くと中身が少し出てくる
1本咥えるとジッポーを開く
カチン、と金属音が響く
この音が好きだ
ヂッ、火花が散って炎が揺らめく
ガスライターにはないオイル独特の臭いがする
良い香りとはいえないが嫌いではない
先端に火を灯し、ゆっくりと吸い込む
この最初の一口がたまらない
吸う時は必ずゆっくりだ
ゆっくり吸わないと煙に雑味が混じるからだ
流れるように喉を滑り落ち肺を満たしていく
肺だけではなく心も満たされているよう錯覚する
吸い込む時と同じように吐き出していく
白い線だったソレが広がり淡くなり薄紫にも見える
たまには頬を突っついて煙で輪を作って遊ぶ
大人にしかできないものの
どこか子供のようで童心が帰ってくる
もう一度、吸い込み…そして、吐く
そしてまた吸い、灰が溜まったら軽く叩いて落とす
半分程吸ったところで後ろを見る
女子高生とオカm…オネエさんがいる
そして、腐っていた
もちろん肉体的にではない
精神的というか魂レベル…
魂の奥底、芯の部分から腐っていた
どうしてこうなった!?
分倍河原 仁は後悔の最中にあった
その後悔の原因は数ヶ月前の事件が原因である
当初、彼は“王様”だった
“個性” “二倍”
モノを増やすだけの“個性”ではあるが
彼の場合は“人間”も“自分”すらも増やせた
そして増やした“自分”が“二倍”を使い4人になり
もう一度増やせば16人、さらにもう一度で256人、
さらにさらにもう一度増やして65536人…
たった6回繰り返しただけで約429億人である
一個人のたった一つシンプルな“個性”は
世界を滅ぼせうるだけの力があった
ゆえに増長した
家事も全部
気紛れに買い物に行ったり、外食を楽しんだりと、
その日までは
「匂い立つわぁ・・・
堪らぬ“腐”の匂いで誘うものね・・・
えづいちゃうわ ふんぬっ!!」
突如、野太い声が聴こえたと思ったら
分倍河原が腰掛けていたソファーの向かいの窓から
窓ガラスをぶち破り巨漢が室内に躍り出た
ついでに割れたガラスの破片が分倍河原の額に刺さった
「自分を増やして●●●●するなんて…
上級者向けの性癖ね…気に入ったわ」
違う!!そうじゃない!!
いや、それよりも襲撃者だ排除しなければ!!
でも、誤解も解かなければ!!
どっちにしろ、相手を抑えつける必要がある
無数の“分身”が巨漢に迫る
巨漢は持っていた”巨大な棒磁石”を振るった
…いや、振るったように思えた
なにせ見えたのは振りかぶった姿と
振り抜いた後の姿で過程が全く見えなかったのだから
その前後で変わったことと言えば、
“分身”達が数を大きく減らしたこと
壁に肉と臓物と骨がへばりついて染みになっていたこと
染みになっていた“分身”達が
ようやく死んだことを理解したように溶けていく
“オリジナル”と“分身”は見た目も匂いも同じだ
“個性”によっては判別できるかもしれないが
外観では区別はできないだろう
ならばこの巨漢は区別する気がないのだ
つまり下手をすれば今の一撃で
自分が死んでいた可能性があった
そして
降伏を…
…しようとして肩を掴まれた
そして、拉致され気が付いたら
“ヴィラン・ファクトリー”の従業員になっていた
※分倍河原 仁の設定
包んでいるが被ってはいない(意味深)
某少年紙の広告にあるクリニックとは無関係
ある意味で原作以上のトラウマを負った
スカウト(物理)の被害者
※巨漢の設定
正確には巨漢女
愛称は“マグネ”、ヤンキー風なら“魔愚禰”
某作者のイメージ的には世紀末覇王的なイメージ
多分、物理特化型
※マグネの“巨大な棒磁石”の設定
原料が鉄やネオジムなら270キロ越え
200×200×1000だと仮定してこの結果
実際にはもっと重いと思われる
重くて硬いモノで高速で殴ればだいたい死ぬ