テンプラと自虐する男の㊙手記   作:Mak

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テンプラの秘密: 今世も前世も結婚経験なし。


お久しぶりです。1年4ヶ月ぶりの投稿となります。もしもこの作品を楽しみにされている方々がおりましたら大変お待たせ致しました。

ウマ娘も早いもので2周年、彼女たちの世界観も大分解像度が上がってきたような気がしますがまだまだ多くの謎が秘められていますね。

この作品はあくまで公式では出ていない、または出せない表現できない部分を個人的な解釈で表現していきたいと思っております。

これからもどうぞよろしくお願い致します。


書き散らし ウマ娘たちのお名前事情

ウマ娘のお名前事情

 

ひどい目にあった。

一昨日はトレセン生の趣味を取材するという楽な仕事のはずだったのだがマルゼンスキーに取材を申し込んでしまったのが運の尽きだった。

常日頃、情報は前もって入手と吟味をするべきだと意識しているつもりだったのだがどうやらまだまだ甘かったらしい。

いや、しかし狙い目は悪くないと思うのだ。

現役の生徒で車を持つばかりか、スポーツカーを乗り回すとかハイソだし特集記事のトップを飾るに相応しい見栄えもあるのは間違いない。

トレセン内外に年上のお姉さまとして人気の高いマルゼンスキーというのもオッズ1.0の元払いぐらいに堅い案件だ。

失敗したのは、思ったよりも、そう…噂以上に彼女の運転が非常にアグレッシブだったということだった。

誓って云うが、彼女マルゼンスキーは無謀な運転はしていない。

ただ、スポーツカーならではの優秀な加速力とブレーキ性能、それを見事に操る彼女の力量やレース勘も合わさってか、助手席にしがみつくことしか出来ない身としては心の準備もする間もなく掛かる前後左右へのGに身を晒され続ける、それが非常に怖いのだ。

 

 

だが今日は別にマルゼンスキーの運転が如何に荒いかを訴えたいわけではない。

生還後、思わず本当に運転免許証を持っているのかと思わず問いただした際、証拠として見せて貰った免許証、顔写真はマルゼンスキー本人の物なのに氏名欄に見慣れないお名前が記載されていたのだ。

ぷりぷり文句言いつつ、何故だか恥ずかしそうに免許証を見せてくれた彼女に聞いたところそれが彼女の本名とのことだった。

 

なお、この手記は私以外見ることは無いだろうが個人情報のため彼女の本名を書き残すのは控えさせてもらう。(というより直ぐに片付けられてしまったので覚えていない。もの凄く恥ずかしそうにしていたのでそんなに顔写真が酷かったのだろうか? なぜ免許証の写真ってあんなに映りが悪いのか)

 

 

というわけでウマ娘たちのお名前事情をより深く知るために、ウマ娘と結婚し、ウマ娘の子どもを持つ元トラックマンの先輩に話を聞くことにした。

やはり家庭を持つと物入りなのか、それなりの代金(金銭他家庭自慢に惚気、人生の墓場への勧誘などなどの精神的な疲労を含む)を支払う羽目になったがその甲斐はあったのでよしとする。

 

先輩曰く、ウマ娘は生まれて2の名前を持ち、時には3つに増え、それを使い分けるのが当たり前らしい。

そんな話は聞いたこともないしマユツバな話だがその先輩もウマ娘と結婚、出産を迎えるまで知らなかったとのことなので親類縁者にウマ娘が居ないと知ることのないクローズドな話なんだとか。

 

その3つの名前とは、親類縁者から与えられる本名、三女神から授かる授かり名、自分の意思で登録する選手名の3つを差すことが多い。

順に追って説明していこうと思う。

 

 

まず本名とは両親または親族もしくは親しい間柄の人から名付けられる名とその家族を現す姓との組み合わせからなる、法律的には生後数日以内に役所に届け出たものを差す。

これは我々が良く知る、所謂ヒトと同じ名前であるため説明は割愛させてもらうが、ヒトと違うのは忌み名に近い扱いにされており公的な用件以外では使われず、もっぱら次に紹介する名前を通り名として使用していることである。

 

 

 

その通り名を授かり名、昔はバ名と呼ばれ、戸籍制度が整備された後にウマ娘たちも本名を付けることを義務付けられるようになる前まではこれが彼女たちの本名とされた名前である。

つまり、ウマ娘たちが幾つも名前を持つようなったのは近代化の影響によるものなのだが経緯については北海道アイヌに近しいのでまた割愛させてもらう。

それはさておき、上のほうで三女神から授かると書いたがこれは比喩的な表現とかではなく、文字通り三女神から授かった名前なのだとか。

 

これまた非常にマユツバな話ではあるが、真面目な顔で説明してくださる先輩の顔から察するに事実なのだろう。

 

具体的にどうやって授かっているのかというと、ウマ娘が生まれる際、その出産に立ち会った周辺の人物の脳裏に共通のイメージが浮かぶのだとか。いわゆる神託と説明した方が分かり易いだろう。

人々はそのイメージから連想し、それに相応しい単語をそのウマ娘の名前にするのだとか。

 

実際に三女神が居るのか(その他神々も同様。転生した身としては信じざるを得ないが)どうかは科学的に証明されてはいないのだが、この現象はウマ娘がウマ娘を生んだ時にしか起こらないらしく、同じウマ娘の母親が男児を出産した際には発生しないという。

そのため、宗派によって解釈は分かれるのだが共通して神の御業とされ、非常にありがたみのある、また一番確実で身近な奇跡とされている。

 

余談ではあるが、ウマ娘が生まれる際の立ち合いには家族や親せきだけでなく、友人や会社の上司、葬式でもないのに僧侶や神職の人も呼んでその出産に立ち会ってもらう習わしがある。出産の大事を前にそんな母親の精神的負担になりそうなことをして良いのかと疑問に思ったがこれにはちゃんとした理由があるのだとか。

 

一つにはやはりこのような不思議な現象は滅多に体験出来る物ではなく、同時にめでたいことでもあるので福音を共有することで人間関係の強化を目的とした一種の儀式的な側面と、もう一つは神からのありがたい授かり物を取りこぼさないようにするという切実な理由による物のためだという。

 

この神託、目覚めたら直ぐに忘れてしまう夢のようにあやふやな物らしく、とてもではないが出産中のウマ娘はおろか、気が気でない夫や職務中の助産師ではその神託を脳裏に留めておける余裕がないのだという。そのため身内よりもまさに他人事な立場の立会人の方がこの役目には向いており、彼らは決して奇跡体験を楽しむためではなく重大な役割を担っているのだ。

 

立会人が多ければ多いほど良いと推奨される理由もある。全員がその神託を受けとれる、または覚え続けておける訳でもなく、また後程すり合わせをすることを加味するとやはり人数がある方が生む方としては安心できるらしい。

 

身内ではない僧侶や神職が呼ばれるのは彼らが神に仕えているから他人よりも神託を拾える確率が上がる…と昔は云われていたがどちらかというと大昔の知識層が彼らのような役職の人間が多かったため、その頃の慣習が今なお続いているかららしい。いくら神託を受け止められたからとして、それを言語化出来なければ意味がない。そういった知識人の必要性は大昔の逸話からも読み取ることができる。

 

 

その大昔、とあるイギリスの貴族に馬車引きとして仕えていたウマ娘が予定よりも早く陣痛が始まった。運が悪くその時屋敷の人間たちは殆ど出っ張らっていたらしく、留守を預かっていたメイド長が助産師を務め、立会人は同じく屋敷に仕えていた丁稚が立ち会ったという。

 

無事ウマ娘の子どもが生まれ、一仕事終えたウマ娘とメイドは安堵したのだがその後問題が発生する。丁稚に神託は何だと確認すると丁稚は神託を確かに受け取ったがそれが何なのか分からないというのだ。

 

慌てたメイド長はいくつかの連想ゲームの末、神託の内容が「芋」だったという。

あまりにもあんまりな神託の内容のため丁稚は疑われることになるのだが、彼の必死な釈明により、結局そのウマ娘の名前はかの有名な珍名バ、「Potoooooooo」となった。

 

余談だが、なぜこのような綴りになったのかというと無知な丁稚が釈明の際に単語の音だけを頼りに必死こいて地面に書いたからとされ、これにより怒り狂い暴れる寸前だった母親のウマ娘とメイド長は虚を突かれてしまい、思わず大笑いしてしまい、最後は丁稚を許しその名前を正式なものにしたのだそうだ。

 

一説ではこの名前は丁稚がでっち上げた、つまり神託とは関係ない名前になったのではという可能性もあるのだが、なんにせよこの「Potoooooooo」は珍名な名前ながら生涯戦績はとんでもないウマ娘として歴史に名を残すことになる。

 

元来、このような珍名を持つウマ娘は走らないと云われている。諸説あるが、それは女神の祝福である神託を正しく授かれなかった罰とされている。この「Potoooooooo」の場合は例外であり、その理由としては丁稚のでっち上げなどではなく、神託通りの名前だったもしくは神託に対し突拍子もない名前を付けたことに神々すらも気に入り、逆に祝福を与えたのではと言われる。それほどにレアな事例であり、娘たちの将来を考える母親たちの気持ちを考えればおろそかに出来ない行事なのだ。

 

 

 

余談が長くなってしまったが、今度は3つ目の名前、選手名の話をしようと思う。

 

これまた書いて字のごとくなのだが、ウマ娘が成長し、URAなどの団体に登録する名前の事を差す。ルールは国によって様々だが、日本の場合カタカナ表記で2文字以上9文字以内と定められている。この名前こそが我々トラックマンやファンの方々が良く知る、よく目にするウマ娘の名前であり、同時に彼女たちの名前事情をより複雑にしている要因である。

 

そもそもバ名が生まれた時からあるのだからわざわざ選手名をつける必要性が無いのではと思いがちだがそうではない。近代ウマ娘レースが大きな組織、法的根拠のもと整備されたことによりそこには様々な要因によって彼女たちの名前事情はより複雑にせざるを得なくなったのだ。

 

まず選手名の登録だが、これは別に彼女たちのバ名や本名で登録する必要はない。まったく関係のない名前もつけても良いのだ。例えて言うのであれば源氏名や芸名みたいに個人情報との繋がりを完全に断ち切ることも可能なのである。これは、アイドルと賭け事の対象として様々かつ大量の感情や目線から彼女たちを保護する目的もある。

 

 

この世界にも競輪やボートレースなどヒト(ボートには数少ないがウマ娘の選手もいる)が、多くの選手は成人しているのに対しウマ娘レースに出る彼女たちの多くは未成年者なのだ。

これは彼女たちの全盛期である本格化とピークの期間が中、高校生と異様に早く短いからなのは言うまでもない。そのため時折未成年者を賭け事の対象とする法律に対する反対運動も起こるのだが、それによりウマ娘レースが衰退し、国内からウマ娘が減るという目も当てられない結果に陥った例も存在するため、非常に難しい問題であると同時にURAなどは様々な努力を行い文化の保護のため細心の注意を払っているのである。

 

選手名登録もその一環なのだ。既にバ名が通り名として機能し、選手名から容易に個人情報に結び付かないようにURA等が苦心している関係上、たとえ観客が彼女たちに全財産を賭け失おうとも個人に逆恨みし危害を加えないよう予防する効力になるのだ。

 

 

と、それはあくまでURA側の主張であり、実情はその逆、授かったバ名をそのまま登録名にするウマ娘もいる(というより多い)。この話の切っ掛けともなったマルゼンスキーなどがその代表例だ。個人情報保護法によりバ名の時点では本名にたどり着くことは難しく、彼女たちの場合は実家が太いこともあるので容易に手を出せば社会的に抹殺…できると噂されているので登録名をまったく別の物にする必要がなく、女神からのありがたい名前で走ることで縁起を担ぐウマ娘も多いのだ。

 

もちろん、バ名を捩る、または文字数制限以内で前後に付け足して登録するウマ娘も存在する。所謂、冠名を持つウマ娘たちのことだ。

例題としてメジロ家の名ステイヤー、メジロマックイーンを挙げよう。

分解すると、メジロが冠名、マックイーンが授かり名(登録の際つけた全く違う名前の可能性もあるが確かめようがないのでこれが彼女のバ名扱いとする)、そしてその裏には我々の知らない彼女の本名があるのだ。

 

上記のメジロ家やサトノ家(サトミじゃないのに驚いた)が冠名を付けるのは家柄の誇示と家業の宣伝のためとされており、それだけウマ娘レースというのは注目と宣伝効果が高いという証左といえるだろう。

この様に名門と呼ばれる家柄出身のウマ娘は共通の冠名を用い一族の結束を強めているのだが、必ずしも共通の冠名を持つウマ娘が全員親戚と言うわけではない。

 

スポンサー契約や恩顧により共通の冠名を付けるパターンもあるのだ。

 

まずスポンサー契約などで冠名を付けているウマ娘の例題としてはシンボリクリスエスやエイシンフラッシュなどがいる。

 

両者とも日本国外出身のウマ娘だがそれぞれ日本語由来のシンボリとエイシン冠名を付けているのは彼女のバックアップをシンボリ家とエイシンという企業が行っているからなのだ。なにせ多くのウマ娘の実家が太いとはいえ留学とはお金の掛かる話なのだ。

 

冠名が大きな宣伝効果をもたらすのは先ほど書いた通りであり、割と外国生まれのウマ娘を日本に招待する団体は多い。それぞれ彼女たちに問い質した訳ではないので必ずしも正しいとは限らないがクリスエスの場合はシンボリ家に恩があるとインタビューで言及していたので的外れではないと思われる。シンボリ家も名門ではあるが、この家は必ずしも一族だけに拘らず広く有能な人材に冠名を付けることを許しており、かなり柔軟である。

 

もちろん、国内のウマ娘のサポートをする企業もいくつか存在する。メイショウ、マチカネなどはその数が膨大であり、赤字にならないのか心配になるのだがそこは色んな計算、もしくは純粋にウマ娘のサポートをしたいという想いがあるのかもしれない。頭の下がる話である。

 

 

このように、登録名はウマ娘本人より企業側のメリットの方が大きいようにも感じるが真に効果を発揮するのは彼女たちの引退後なのだとか。ヒト並に長くなった彼女たちの人生、レースから数十年も離れてなお騒がれる人生を送るというのは嬉しくもあるかもしれないが煩わしいことも多いのは想像も難しくない。ファンに覚えてもらい続けてもらうのはあくまで登録名で活躍した過去の自分自身であり、バ名や本名で暮らす今の自分とその家族を守るためにも登録名というのは将来的なことを見越せば非常に有能な仕組なのだ。

 

 

最後に彼女たちの本名について補足したいと思う。

こういった先人たちの考えた本名に辿り着かないような仕組みになった結果、彼女たちの本名というのは下手をすれば本人たちも忘れてしまうぐらい希薄な存在なのだ。

 

なにせ使い道も明かす切っ掛けが少ないのだ。ましてや両親以外の他人が知る方法は限られるのでほぼ忌み名状態なんだとか。彼女たちの本名を新たに知ることが出来るのは公的な機関を除けば結婚した相手ぐらいな物らしい。

先輩も自分の奥さんの本名を初めて知ったのは婚姻届けを提出する際だったといい、その名前で呼ばれるとむず痒くなり、真っ赤な顔して照れてしまうのだとか。

 

…覚えていないとはいえマルゼンスキーには申し訳ないことをしてしまったと気づいた私は後日お詫びの品を持って謝りに行った。快く許してくれた彼女だったが最後に飛び切りの笑顔で良く解らないことを言われたのが印象的だった。

 

「早く、ミセス・マルゼンと呼ばれるようになりたいわ」…と。

 

 

…シャレで「ミス・マルゼン江」と贈り物に書いたのだが彼女の前世の魂が拒絶反応を示したのか、それとも早く大人になりたいいう夢見る少女的な想いからなのかは私には判別つかなかった。

 




久々に書いたということもありかなり荒い作りになっているかと思いますが、修正は後ほどゆっくり行いたいと思います。

今回はウマ娘でも競馬法と同じく公営ギャンブルの側面もある前提とさせて貰いましたがこれは公式設定ではなく、またこの作品はオムニバス形式のため前後の話ではそのような設定が消えている場合もありますのでご承知おきください。

とはいえ、ウマ娘から競馬にハマってしまった作者は何度か競馬場に行く機会があったのですがあの規模の建物や熱狂を公営ギャンブル抜きで維持するのはとても無理な気がしますw。

あくまでこの作品、この話での設定ですのでご承知おきください。
それではまた。

次はどのような話が読みたいですか?宜しければご意見ください

  • ウマ娘世界におけるポロの扱い
  • URA幹部によるセクハラ発言
  • フィリーズなど牝馬を表す単語
  • マスタング族について
  • テンプラがそう名乗った訳
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