皐月賞が無事終わって1週間後、俺は今、空の上にいる。
とある雑誌社からの依頼でアメリカクラシック三冠の取材の依頼を受け、いま太平洋上空を飛行中だからだ。
アメリカクラシック三冠とは我が国の
というより、元々“三冠”の言葉はこの3レースが由来だと言われ、所謂元祖と言えるだろう。
正式名称「Triple Crown of Thoroughbred Racing」、この名称が後に正式のルールに基づき専用の競技用施設(競馬場)において行われるウマ娘による近代レースの礎を作ったイギリスにも伝わり、なんやかんやあって世界中に三冠という概念が根付いたのだ。
そんな伝統と格式高いレースの取材に白羽の矢が立ったのが俺だ……。
別に現地に人を送らんでも地元の人間に記事を依頼してそれを翻訳すればいいのに、どうやら依頼人の新しい上司が「現地に足を運ぶことに意味がある!」と最近のメディアマンにしては中々気骨のある人らしい。
と言っても部下の方はそうではなかったらしく(依頼人もアメリカ語が喋れないから嫌だと)こうしてお鉢が回ってきたのだ。
まあ、無理も無いと思う。
なにせアメリカ三冠が開催される5月から6月までの一か月弱をアメリカで生活しなければならないのだ。
第1戦のケンタッキーダービーが5月初め、第2戦のプリークネスステークスがその2週間後、更にその3週後に第3戦のベルモントステークスが開催されるのだ。
中々過密なスケジュールだ。 あちらのウマ娘はタフさも要求されるのだから本当に大変だ。
言わずもがな、我が国のクラシックは皐月賞から日本ダービーで一か月強、菊花賞なんて5か月後だ。
その間にトレーニング次第ではライバルたちが三冠制覇を阻むドラマチックな展開があったりして三冠の価値を高めていたりするが、やはり休む時間が短いからなのかこちらはこちらで意外と三冠達成が少なく、37年も達成者が居なかったりと別のベクトルで覇業といえる。(ウマペディア調べ)
そしてそのタフさは日本人にも求められている。
1レース毎に帰国しては予算がいくらあっても足りないので運賃が高い国際便の回数を最小限に留めるには現地で生活するしかない。
それは並の日本人にはG1レース7勝に匹敵するぐらい困難なことだろう。
その最たる理由は米が食えないからだ。(依頼人もそう言っていた)
一応言っておくと、ケンタッキー州とニューヨークでも米は一応食える。
この情報は取材で仲良くなったケンタッキー州出身の帰国子女、グラスワンダーちゃんから聞いた話だ。(ニューヨークは旅行で得た経験から。メリーランドは行ったこと無いから知らん)
とは言え、その味は雲泥の差がある。
普段我らが食べている米とカルフォルニア米を比べるのはかなりアンフェアだがそれでもやはりあの繊細な味は絶対に味わえない。
グラスちゃんに日本に来て何が一番美味しかったか聞いたら「白米」と答えた程なのだから相当な物だろう。 ……あの子はもうアメリカに帰れないんじゃないかな?
中東部の片田舎というハンデを物ともせずにあそこまで日本文化に造詣深い子になれたなと本当に感心したものだ。
実は(前世では)同じアメリカからの帰国子女であり彼女の気持ちが判るのでこの時の取材はスムーズに進み、良い関係を築けたものだ。
お蔭さまでケンタッキー州での滞在中は彼女の実家で過ごせることになっている。
(もちろん彼女が家族のために用意したトランクケース一杯の日本土産と恐らく大量のケンタッキー土産のピストン輸送という大仕事を任されたが)
何にせよ、まともな米が食えるのはニューヨークの和食レストランぐらいな物だろう。
だがそもそもニューヨークは最終戦の地だ。
そしてわざわざ特に物価の高いニューヨークで米を食べることは恐らく無いだろう。
ステーキがチャーシューの代わりに乗っている一番高いラーメンだったが、日本円に換算すると3000円近くするぐらい物価が高い地区だ。
どうせレースが終わった次の日には(26時間かけて)日本に帰るのだ。
きっと空港のコンビニで買ったツナマヨおにぎりを食って感涙するに違いない。
米を食わなくても平気なタイプの人間だが、やっぱり一定期間米を食べないとコンビニオニギリのクオリティの高さとそのありがたみに気づけるので色んな人にオススメしたいものだ。
そんなわけで(前世で)アメリカ生活に耐性のある私に白羽の矢がたったわけだが、早くも暗雲が立ち籠っており先行き不安な気持ちにさせられている。
いま俺は、日本の航空会社が運航する国際便では無く10万円も安いアメリカの航空会社が運航する飛行機に乗っている。
機材は一応最新機種だが座席がエコノミークラスじゃあそのありがたみも薄い。
せめてビジネスクラスに乗せてくれよ。
でもそれはまだ良い。 いくらでも我慢してやる。
だが機内エンターテインメントシステムが使えないってどういうことだ!!
フライト開始してからずっとエラー表示で3回ぐらい再起動したうえで機長のアナウンスによると整備の際にデーターそのものを更新し忘れていたらしい……。
そんなのアリかよ!?
というわけで暇を持て余した私は機内wifi(有料)を使ってこんな使えもしない書き散らしを書いているわけである……。
まったくもって不安だ。 きっと機内食も不味いんだろうな……。
搭乗2時間前のコンビニオニギリがもう恋しい……。
ウマ娘のブームというのは恐ろしいものでして、こんなにウマ娘がまったく登場しない作品(多分ハーメルンに登録されている作品で一番じゃないかな?)もはや詐欺に近いのではと思うような作品を読んで頂き、またお気に入り登録や感想、過分な評価を頂きとても感謝しております。
本当は第2話はとあるウマ娘のグッドエンディング到達記念で書くつもりだったのですが難航してしまい、更に取材と言い訳してそのウマ娘でレジェンド到達、勝負服解放、覚醒レベルMAXと時間だけが奪われてしまうこの始末…。
仕方がないのでこんな書き散らしめいた2話になってしまいましたが、こんな作品でも楽しんで頂けたら幸いです。
なお、最後の事件は実体験です。
今でもwifi代金返せと思ってますよデ〇タさん!
主人公がテンプラを名乗った訳を知りたいですか?
-
Yes
-
No