discordで送ったネタの清書。このネタを使わせてくれたやっしい君に百万の感謝を。

身内用に書いたものだけれどこちらにも。

原作:@yassy841
著者:@fianen_loreko

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貴方の元へ

私は最初から何処にもいなかった。ただIS-3型戦闘擬人モデルNo.01(あの個体)の代わりとして存在して、帰る筈のない彼女が帰還するまでの消耗品。ただ、そう思うしかなかった。

 

『IS-3型戦闘擬人モデルNo.17。欠番となったNo.01の代わりにお前のこれからの任務を担当する個体だ。極力復元をするように指示をしたが、仕様変更に伴い視覚センサの色だけは変わっている。また、貴殿の要望通りパーソナルの復元作業は行っていない。今後はこれを使うようにしてくれ。』

『………はい。』

 

私を受領した時のマスターの顔は、今でも鮮明に思い出すことができる。まるで亡霊でも見たような、私自身の存在を認めまいとするあの絶望しきった目。彼に拒否権は無く、ただ私の存在を受け入れる他無かった。それが三年前、私が彼の元に初めて来たときの記録。

 

 

 

「今日のお前の任務内容だ。」

「また、この任務ですか。貴方も懲りないですね。」

「…行ってこい。」

「了解。」

 

また今日も事務的な話だけをして、私は基地から出ていく。ここ十年近く、この地域はPMC同士の戦闘や、国家間・宗教間の紛争が絶える事が無い。私の任務は決まって、ポイントD-44への機能停止した戦闘擬人モデルのパーツ回収任務。マスターは所謂「誰もやりたがらない汚れ仕事」というものを私に押し付けているのだ。受領以来、私は戦闘に出た事がない。前任者のお陰で戦闘データのみは記憶領域には存在するが、実戦経験は一度もない。

これに関しては不満はなかった。彼は私を見る目が必ず憎しみの感情を帯びている。私は決して歓迎される存在ではなかったことは、機械の私ですら容易に想像ができた。

 

「お、あのモデルまたゴミ拾いに行かされてるぜ。」

「どーせまた前の機体が壊れた所に行くんだろ?あいつもバカだよな。」

「全くだ。こんな人形に思い入れなんて持つからあーなるんだよ。」

「所詮は機械なんだ、使い潰して壊れたら新しいの貰っときゃそれでいいのによォ。」

 

…またマスターの陰口が聞こえてくる。彼は基地の中では異端の存在だった。彼は自身もよくわからないまま上の人間に気に入られ、20代の若さで既に戦闘擬人モデルを受領している。コネで貰ったと言えばそれまでだが、彼は何故か私たち人形に対しても誰とも変わらない人間として接していたようだ。戦績自体は決して高くないものだったけれど、それでも彼は笑って「まあどうにかなるでしょ!」って言っていたらしい。

「らしい」といったり、断言していないのは私がその表情を知らないからだ。

3年前、私の前任者[No.01]は戦闘に出たっきり基地へ帰還することはなかった。ただ彼の元に帰ってきたのは前任者のコードが残った左腕のみ。彼としては前任者は自身の子のように思っていたのだろう。しかし、待てど待てども彼女が帰ってくることは無い。職務どころか自身の健康管理すら危うくなった彼は、上層部の独断によって「私」を製造、無理矢理受領させた。それは、マスターにとっての呪いの始まりだったのだろうか。私には彼の感情は深く理解できることはないだろうから、憶測でしか話すことができない。

 

 

 

軍用ジープで1時間ほどかけて、目的地へと辿り着いた。まだ戦闘が止んで間もないのか、地面は熱を帯びており、周囲の硝煙と擬人専用冷却用特殊液 ( 擬人モデルの血液)の匂いを、私はセンサ越しに強く感じていた。

私は「仕事」をするときは必ず十字を切ってから作業を始めている。最初はそんな事は気にしていなかったのだが、マスターが前任者を人間のように接していたと聞いた次の日からはそうするようにしていた。今思えば、そうすれば彼が私自身を見てくれるかもしれないと思ったのだろう。そんな「私を見てほしい」という純粋な思いは、いつしか前任者への憎悪へと変わっていった。

戦場で五体満足で残っている人形というものは人間と同様に多くはない。人形も人間も変わらずに機関砲で撃たれれば木端微塵になるし、地雷を踏みぬけば脚を失う。弾丸が指を吹き飛ばす事もあれば、飛んできた破片で失明することもよくある話だ。私の仕事は、そんな人形から必要なパーツを回収していく死体漁り。戦闘擬人モデルのパーツというものは高価であり、貴重な鉱物資源を使っているものも少なくない。近年は低コスト化に伴う更なる量産計画が立ってはいるが、依然として需要に対して供給が追い付いていないのが現実だ。

 

「使えるものは何でも使う」

 

それが私たち人形の実情であり、噂では「フランケンシュタインの怪物」に出てくるような継ぎ接ぎの人形もいるという話もある。私はその怪物がどのようなものかを知らないが、恐らく元は美しい顔であったとしても縫合痕だらけの顔になってしまっているのだろうか、そんな想像しかできなかった。

人形だった物体から眼や循環器官、まだ使える腕部などを回収していると、私は瓦礫に埋もれている人形を見つけた。左目しか見えない状態のそれを見て不思議に思ったのは、その人形が目を閉じていた事だった。多くの人形は死機能停止の際に目を閉じる事は余りない。だいたいは即時停止をして目を見開いたまま動かなくなっているからだ。まるで眠っているかのようなその人形からもパーツを回収するために瓦礫をどけていった私は、次第にその動きを鈍くさせてしまっていた。

 

「あな…た……。」

 

彼女は私と同型の人形だった。それだけだったらまだよかったのだが、彼女はいつか写真で見た帽子を被っていた。そして、左腕が無い。それだけで私の循環器官(心臓)の鼓動が早くなるようだった。震える手でボロボロになった服の首元を広げ、印刷された型式番号を確認する。そこには間違いなくIS-3型戦闘擬人モデルNo.01という文字列があった。

思わず私は回収用の袋を放り投げ、身に着けていた対人用の歩兵銃を彼女に構える。ここで彼女を破壊しておけば、マスターの望みは叶う事は無い。そうすれば、私だけを見てくれるはず…!

引金を引こうとしたその時、彼女が目を醒ました。私の緑色の瞳と違い、紅い瞳をした目が

私を捉えた時、何故か指が震えてしまった。

 

まだ生きている。

彼女はまだ生きているのに、私がこのまま生きていていいのだろうか。

 

そんな迷いが自身の思考に割り込んだ時、彼女の残った右手が銃身へと伸び、自身の循環器官へと向ける。私はその行動に困惑していると、ずっと私を見ていた彼女が口を開いた。

 

「いい、よ。わたしのこと、こわしても。」

「え…。」

「そのために、きたんでしょ?」

 

か細い声で彼女は言葉を続ける。私は彼女が言った言葉の意味を理解できず、ただ質問を投げる事しかできなかった。

 

「どうしてそんな事を…。」

「もう、わたしうごけないの。あしもうごかなくなって、あとはしぜんていしをまつだけ。でも、ずっとあのひとを、マスターをまっても、きたのはあなただけ。なら、わたしよりあなたがいきて。」

「そんな、私…っ!?静かにして!」

 

話をしていると、途端に履帯が地面を削る音がする。私は彼女の口を塞ぎ、私も姿勢を低くする。付近にいた戦車はこちらへと近付いてくるようで、次第に駆動音が大きくなっていく。私は焦った。武器は対人用のもののみで、対戦車用の武装は持っていない。周辺での味方の戦車部隊の展開の情報は聞いていない。つまり、そこにいるのは間違いなく敵だ。表情を硬くした私に、彼女は残った右腕を静かに動かし、自身の対戦車兵装を私に差し出した。

その時は敵を倒さなければ私は間違いなく破壊されるという緊張感から何も言わなかったが、それでも自身を殺そうとした相手に唯一の武器を渡すという行為は今でも正気の沙汰じゃないと思っている。自身の記憶領域にある(マニュアル)通りに対戦車弾を装填し、自身のセンサアイで駆動輪を狙う。敵の戦車はVK100.01(P)、きちんと駆動輪を狙わなければ一撃での破壊はできない。段々と呼吸が浅く、少なくなっていく。角から駆動輪が露出した時、私は撃てと兵装に念じる。

この兵器の都合のいい所は、自身が念じれば発砲できるという事だ。厳密には発砲を念じた時に掌から発せられる信号によって発砲をしているらしいが、この際にはどうでもいいだろう。私は駆動輪を徹甲弾で破壊した敵車両に対し駆けて接近し、砲塔真下の弾薬庫のある場所に向けて二発叩き込む。一発目の時点でキューポラや操縦手ハッチからは炎が上がっていたが、そんな事を確認する余裕は私にはなかった。

初めて敵を殺したという感覚、対戦車兵装の重み、発砲時の反動。それら全ての感覚が鮮明に残り、機械だというのに武器を杖にしてへたり込んでいた。

人が、命だったものが焼ける匂いに思考領域が悲鳴を上げる。今までマスターに対しては機械のように振舞っていたのに、自身の存在が危ぶまれる時に限ってしか人間のように振舞えない。まるで存在そのものを嘲笑われているようだった。何度も荒く息をして、頭部の熱を排出して冷静さを取り戻す。少し経ってから私は立ち上がり、彼女の元へと戻ろうとした。

その時、後ろから呻き声が上がり、私は残骸へと振り返る。目の前には生き残りと思われる人間が私に拳銃を向けていた。

 

「化け物め…!」

「ぐゥっ!」

 

ほぼ同時の発砲。目の前の男が上半身の無い肉塊へと変貌した瞬間、私の左側の視界を喪失した。痛覚の無い私は一瞬何が起きたかわからなかったが、数秒後には左目を撃ち抜かれたのだと理解をした。恐怖を感じるのに痛覚を感じないギャップに困惑しながらも、今度こそ私は彼女の元へと戻っていった。

 

 

 

まだ息が上がったままの私は彼女の元に戻り、武装を返そうとすると、いらないと彼女は私に告げる。

 

「いいの?」

「もうすぐうごかなくなるから、あげる。」

「そう…わかったわ。」

「わがまま、いってもいい?」

「何?」

「ひだりめだけ、つれていって。あなたのひだりめ、もうつかえないでしょ?わたし、じぶんのめでマスターのことみたい。」

 

凝固していない循環液が未だに少しずつ流れていく左頬を触れる。彼女は私自身に彼の元へと戻って欲しいと言っている。しかし、彼は―

 

「わかったわ。稼働データとの同期もしたいから、左手を出して。」

 

彼女はその言葉に首肯すると、左手をゆっくりと自分の前に差し出す。私はその手に重ねながら、左目を緊急排除し、ブロックごと切り離す。無理矢理ユニットを排除し、人工皮膚も引き剥がしている為に若干の痛覚を感じるが、それは我慢をした。彼女も自身の左目を切り離し、私にユニットごと差し出す。それは人工皮膚も既にボロボロだが、機能自体は保ち続けていた。

私はそれを空洞になった左目に押し込む。規格が若干違うのか、また痛みが私を襲う。まだノイズが走る左側の視界の中、データロードが完了するまで私はこの格好のまま彼女を見つめていた。

目は彼女の望みだ。彼女はもう自身の生を諦めているのだろうか。…いや、そうでなければ自分を破壊していいなんて言うはずが無いだろう。そのまま彼女がシャットダウンすれば、私は彼を―

 

本当にそうなのだろうか?

 

この思考は、私の願望でしかない。本当にそうなる確信なんてない。それにこの二人は、間違いなく互いを想っている。その二人の思いを、私が壊していいのだろうか?

 

怖い。

 

私を見てくれなかったら。

 

もしも、この事を知られてしまったら。

 

でも、私だって、私だって、彼の傍に―

 

 

気付いたら、私は自身のパーソナルを彼女のモノへと上書きを始めていた。ただの稼働データ同期にしては時間がかかっている事に、彼女も気付いたようだ。彼女は不安そうな顔をしながら私に訊ねてくる。

 

「なにを、やってるの?」

「…あなたのデータ同期。」

「うそ。じゃあどうして、こんなにおおきいでーたを、どうして…?」

「私はね、あなたの『代わり』でしかないの。あなたが帰ってくるまでの、マスターの代替品。それが私。」

「え…?」

「あの人はね、私の事なんて見てないんだ。あの人が見ているのは、あなただけ。」

「そんなことない!ますたーが、そんな、わたしをまってるなんて…」

「本当よ。少し前の話をしてあげる。」

 

 

 

私が赴任してからの数か月は真面に口すらきいてくれなかった。彼は部屋に閉じこもったまま、私は彼を衰弱死させないように扉越しに食事を届けるだけ。そこに会話が入り込む余地は僅かにもなかった。そんな時期が過ぎ、少しずつ事務的な会話を交わし始めた頃、事件は起きた。

あの時、マスターは会議の為に部屋を開けており、私はただ一人その部屋にいた。ふと窓際を見ると、倒れたままのガラスの写真立てがあるのを見つけてしまった。好奇心からそれを取り上げると、そこにはマスターと前任者が、私には決して見せない笑顔をして二人で映っている写真が入っていた。

その時、私は初めて嫉妬心とでも言うべき感情が芽生えた、そんな気がした。何故、私には見せない[[rb:表情 > カオ]]を彼女の前ではするのか。何故、私には憎悪の眼を向けるのか。私が製造され、赴任するまでの過程を知らない私にとって、彼の感情というのは予測できることではなかった。思わず右手に力を入れてしまい、ぱきりという乾いた音と共にヒビが入っていた。そこに丁度会議から帰ってきたマスターが入室し、私が持っているものを見て血相を変えていた。思わず動かした指を角で傷つけていたが、それは後々になってわかったことだった。

 

『お前…何やってるんだ!』

『ぁ…ち、違うんです!これは―』

『勝手にそれに触る……っ!』

 

マスターは私が持っているそれを奪い取ると、それに傷をつけられているのを目にしてしまった。彼はほぼ反射的に手を出してしまったのだろう。乾いた音と共に座り込む私。頬を叩かれたという事に気付くのには時間がかかってしまった。思わず声を荒げながら私は彼に抗議をする。

 

「なんで…何で私の事を見てくれないの!ずっとあの子の事ばっかり!私の事だって見てよ!」

「やめろ!その声でそんな事を言うな!」

「え…」

「もう、こんな…あの子の顔で、あの子の声で、そんな事を………。」

 

 

 

「それからだったかな。互いに冷たくなっていったのは。あの人がどう考えてるかなんて私にはわからない。でも、これでわかったでしょ?マスターはあなたのことをずっと思い続けてるの。あなたがいなくなってから、何年も。」

「でも、わたし…こんなからだで…」

「大丈夫。その為に今こうしてるんだから。」

「まさか…!?」

 

ああ、今更になって気付いたのか。鈍いなぁ、私。

 

「やめて…!もう、こんなしんだからだのわたしなんてっ、いい!だから―」

「私はね、その未来を選ぶべきじゃないの。そうしたら、あなたも私も悲しい思いをするだろうから。だから…」

 

私は触れていた彼女の手をぎゅっと握り締める。

 

「私の命を使って、生きて。」

 

右目から涙を流しながら言えた言葉は、たったそれだけ。

 

ただ、私は帰る場所が欲しいだけだった。

ただ、マスターに私自身を愛してほしかった。

もう叶わぬ願い。でも、何処にもいなかった私は最期に、誰かの役に立てたのだろう。

そう信じたい。

 

この思いを、音声記録に残そう。

 

「さようなら、二人とも。マスターによろしく、幸せになってね。」

 

たった一つでもいい、私がいた証拠として―

 

[newpage]

 

"私"は、元々私自身の肉体だったものの目の前で目を醒ました。左目は既に完全に適応し、視界も晴れている。

 

私は、また生きている。

 

そう思う度に、『彼女』が残したであろう記録が、心が映像記録を再生するかのように脳裏へと浮かび上がる。私は目を閉じて、彼女の事を想う。自然と両目から涙が流れていた。目を開くと、微笑んだまま動かなくなった私の身体が横に転がっている。『彼女』の心を感じ取ったのだろうか、私にはわからない。死後の世界なんてものを、私たち人形が与えられるのかすら。それでも―

私は立ち上がり、握り慣れた武装を持って帰還する。マスターの元へ。

 

 

 

久々の基地は、昔と殆ど変わった所はなかった。何かあるといえば、以前より私の同僚が増えたような…そんな気がする。意外にも何もないまま私はマスターの部屋の前へとたどり着いた。数年越しの帰還に、私も何故か少し緊張をしているのだろうか。心拍数が上がっているのを感じる。私は深呼吸をしてノックwをし、普段通りに部屋に入った。

 

「すぅ………マスター、IS-3帰還しました。」

「お前、またそん、な…事を………っ!?」

「ただいま、マスター。」

 

彼にとって、私の帰還とは叶わぬ願いだったのだろう。それが今こうして目の前にいるのだから、余計に驚く事だ。彼は椅子を蹴飛ばしながら立ち上がり、私の元に駆け寄ってくる。

 

「今まで何処にいたんだ…?おかえり…おかえり、スリーちゃん…。」

 

彼は私を抱き締めながらひとしきり泣くと、私の両手を握って顔を間近にしてくる。少し恥ずかしかったが、それでも久々に自身の眼でマスターを視れたことがとても嬉しかった。しかし、彼の表情は段々と困惑へと変わっていく。私の傷ついた指を見た時、彼の疑念は確信へと変わったようだった。

 

「お前、この目…どうしたんだ?」

「『私』から貰ったんです。」

「わたし?…っ!?まさか。」

「…はい。『彼女』の言葉があります。聴きますか?」

「っ…わかった。とりあえず、着替えてきて。そんなボロボロの格好じゃ気分悪いでしょ?」

「はい。」

 

私は一度マスターの部屋を後にする。恐らく、私の眼を見て動揺してしまったのだろう。着替え終わって部屋に戻った後も、ずっと暗い顔を続けていた。

 

私はマスターの傍に座り、了承を得てから音声記録を再生する。『彼女』の今までの思い、私との出会い、あの時の決断。それらを聴き終わる頃には彼は涙をずっと流していた。

 

「『本当はマスターにもっと愛してほしかった』…彼女の最期の思いです。」

「そんな…僕は、彼女の心をずっと………。」

 

彼は崩れ落ち、ただ泣き続ける。そんな彼を私は膝をつき、優しく抱いた。

 

「私は彼女の代わりにはなりませんけど、それでも―」

 

『彼女』のためにも、精いっぱい生きよう、マスター。

 

[newpage]

 

私の帰還から数ヶ月後。私たちは何度か戦場に出たものの、楽しい生活を続けていた。IS-3Aの赴任や、彼女が保護した男の子が3Aに懐いたりと色々な事があった。たった今、目の前でも…

 

「あー…今日も疲れた…。コイツはどれだけ体力があるんだ?」

「そりゃあ僕が子供の頃だってそれくらいはしゃいでたよ?そんなもんだよ。」

「それ何回目の会話ですか?マスター…。」

 

最近はこんな平和なやり取りを続けることができている。私の眼も戻り、『彼女』の事も既に私たちの中ではある程度割り切ったような、そんな状態だった。3Aと男の子のやり取りを見ていると、何の前触れもなくドアがノックされる。マスターはそれに対し仕事をしながらもそれに応じる。

 

「どうぞー。」

「失礼する。」

 

部屋に入ってきたのは、私達と同じ擬人モデルらしき子だった。しかし、髪は私たちと同じ白だが目は緑色の上、髪型はウルフカットになっている。それに、私達より少し外見年齢が高く設定されているようで、背も高い。馴染みのない顔に私たちは不思議に思っていると、彼女は指令所をマスターに差し出しながら自己紹介を始めた。

 

「本日付で貴殿の部隊に配属されたObject252U Defenderだ。よろしく頼む、マスター。」

「え?僕こんな指令受け取ってないんだけど?」

「たった今渡した。上層部曰く『この部隊は擬人モデルの活用のいい見本になる。その為にまだ制式タイプでない私の試験運用としてデータ収集を頼む』だそうだ。」

「なんて無茶言ってくるんだよあの人たち…。」

 

余り表情を変えない彼女を見ていると、目の色も相まってあの『彼女』を思い出してしまう。横顔が何処か記録に残っている『彼女』にそっくりなのは私も感じ取っていた。恐らく私たちのデータ蓄積による新型製造の為に、少なからず『彼女』の情報も反映されているのだろう。マスターも同じことを感じ取ったのか、少しだけ乗り気ではないような、そんな表情を見せていた。

だが、彼は指令所と睨めっこをした後、笑顔で彼女に言う。

 

「僕は君を歓迎するよ。ようこそ、Defenderっ!?な、何…?」

 

Defenderはマスターに顔を近づけ、微笑しながらこう言った。

 

「今度こそ…貴殿の一番を私にしてみせるよ、マスター。」

 


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