それではどうぞ‼︎
羊皮紙が発光し、文字列が変わっていく。
【ギフトゲーム名 “太陽と悪魔の一撃”
ギフトゲーム勝者:白夜叉】
これでゲームは終わり、白夜叉の勝ちが確定した。
★
「大丈夫ですか、辰巳さん⁉︎」
黒ウサギは急いで湖に叩き込まれた男鹿のもとへと駆けつける。
分厚い氷が砕け、冷たい水が覗いている。
すぐに上がってこない男鹿に黒ウサギの不安は加速していくが、少しすると不機嫌そうな顔を出して陸へと上がってくる。
「・・・クソ、やっぱり強えな。負けちまったか」
冷水に叩き込まれた割には意外と元気そうな男鹿に黒ウサギは安堵する。
それでも男鹿の不機嫌は直らず、白夜叉に言葉を掛ける。
「おい白夜叉。
男鹿の言葉に黒ウサギ、飛鳥、耀は首を傾げる。
十六夜は人間離れした観察眼と動体視力によって男鹿の言う“こんなこと”に当たりが付いている。
「それは悪かったな。赤ん坊がおるのだから
白夜叉が柏手を打つと、男鹿に滴っていた水が白夜叉の元へと集まっていく。
「白夜叉様、その水はいったい?」
「うむ。この水は
夜叉とは、水と大地の神霊にして悪神としての側面を持つ鬼神であり、今回は水の神霊としての力の事を指している。
このギフトにより、地面や空気の摩擦抵抗をなくして男鹿の背後に高速移動し、湖に叩き込まれても窒息しないように膜状にして空気を確保していたのだ。
ちなみに衝撃を緩和させなかったのは今回の授業料である。
「ゲーム自体は私の勝ちだか、他の三人は試練をクリアしておるし、おんしにも楽しませてもらったからの。依頼を引き受けてやろう。今日はそのために来たのだろう?」
「Yes‼︎ 今日は皆さんのギフト鑑定をお願いしようと伺ったのですよ」
ゲッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。
「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだが」
困ったように白髪を掻きあげ、着物を引きずりながら四人の顔を見つめる。
「どれどれ・・・うむ、私と戦った男鹿辰巳は聞いておるし言うまでもないだろう。他の三人も素養が高いのは分かるがなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「うおぉぉぉおい?いやまぁ、対戦相手だった者にギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」
「別に鑑定なんていらねぇよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」
ハッキリと拒絶する十六夜と同意するように頷く二人に困ったように頭を掻くが、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。
「ふむ。何にせよ“主催者”として、星霊の端くれとして、試練をクリアし、私を楽しませたおんしらには“恩恵”を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度よかろう」
白夜叉が柏手を打つと四人の眼前に光り輝く四枚のカードが現れる。
カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトを表すネームが記されていた。
コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム
ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”
パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム
プリムローズイエローのカードに男鹿辰巳・ギフトネーム
「ギフトカード‼︎」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
問題児三人はギフト=贈り物という解釈のもとにボケまくっている。
「ち、違います‼︎ というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです⁉︎」
「そうだぜお前ら。これはあれだ、キャッシュカードだ。それも高額預貯金のな」
「ダブッ」
男鹿に至っては贈られたい物を述べているだけである。
一般家庭に生まれた男子高校生の懐事情は厳しいものだ。
「それも違います‼︎ これはギフトカードと言って、ギフトを収納できる超高価なカードですよ‼︎」
黒ウサギの説明に対して、
「「つまり(素敵)(レア)アイテムってことでオッケーか?」」
男鹿と十六夜は深く理解することを放棄した。
「だからなんで適当に聞き流すんですか‼︎ あーもうそうです、超素敵で超レアなアイテムなんです‼︎」
黒ウサギに叱られながら四人はそれぞれのカードを物珍しそうに見つめる。
そんな四人に白夜叉からの説明が入る。
「本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは“ノーネーム”だからの。少々味気ない絵になっているが文句なら黒ウサギに言ってくれ」
「ふぅん・・・もしかして水樹ってやつも収納できるのか?」
何気なく水樹にカードを向けると吸い込まれ、“正体不明”の下に“水樹”の名前と絵が並べられる。
「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」
「出せるとも。試すか?」
「だ、駄目です‼︎ 無駄遣い反対‼︎ せっかく手に入れた水なんですから節制しましょうよ‼︎」
白夜叉は黒ウサギの様子を高らかに笑いながら見つめた。
「そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」
「へぇ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」
ん?と白夜叉が十六夜のギフトカードを覗き込んで表情を変える。
「“正体不明”だと・・・?いいやありえん、全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすことなど」
「なんにせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」
そう言ってギフトカードを懐にしまう十六夜。
だが白夜叉は納得出来ないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。
(そういえばこの童・・・蛇神を倒したと言っていたな。しかし、“ラプラスの紙片”程のギフトが正常に機能しないとはどういうーーー)
そこで白夜叉の脳裏に一つの可能性が浮上した。
(ギフトを無効化した・・・?いや、まさかな)
白夜叉が否定したのも無理はない。
強大な奇跡を身に宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿していては大きく矛盾するからだ。
「あら?辰巳君のギフトは一つだけなの?」
白夜叉が考えている横では男鹿のギフトについて飛鳥達が聞いていた。
「どうやらそうみたいだな」
「でも、辰巳は電撃を操ったり、不思議な紋章で爆発を起こしたり加速したりしてたよね?」
「あぁ、雷撃はベル坊の悪魔の力で、もう一つはベル坊の悪魔の力を制御する紋章術だ」
「紋章術・・・黒ウサギも聞いたことがないですね」
黒ウサギが知らないのも仕方がないだろう。
紋章術は悪魔の力を引き出すための契約を対等以上の関係で交わす
箱庭では力を引き出すのに契約などをする必要はなく、するとしても悪魔自身の力の増大のためで制御する必要性がないのであろう。
そんな風に自分達のギフトについて雑談をしながら、白夜叉の創り出した“白夜の世界”から元の世界に戻ったのだった。
★
七人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、耀達は一礼した。
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦する時は対等の条件で挑むのだもの」
「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好つかねぇからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「次は負けねぇからな」
「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。・・・ところで」
白夜叉はスッと真剣な顔で黒ウサギ達を見る。
「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」
「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」
「強え奴と戦うんだろ?」
「・・・では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
「そうよ。打倒魔王なんてカッコイイじゃない」
「“カッコイイ”で済む話ではないのだがの・・・。まぁ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろうが・・・そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」
二人は一瞬だけ言い返そうと言葉を探したが、魔王と同じく“主催者権限”をもつ白夜叉の助言は、物を言わさぬ威圧感があった。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧共はともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームは生き残れん」
「・・・ご忠告ありがと。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みにいくから、覚悟しておきなさい」
「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。・・・ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」
「嫌です‼︎」
黒ウサギは即答で返す。
白夜叉は拗ねたように唇を尖らせた。
「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三食首輪付きの個室も用意するし」
「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから‼︎」
白夜叉と黒ウサギの漫才を聞き、十六夜は天啓を得たとばかりに手を顎に当てて真剣に悩むフリをする。
「そうか、その手があったか。男鹿はどうした方がいいと思うよ?」
「放し飼いでいいんじゃねぇか?」
「“ノーネーム”のペットでもありません‼︎ このお馬鹿様‼︎」
十六夜と男鹿のボケに黒ウサギがツッコむ。
ちなみに男鹿の返答はボケではなくマジだったりする。
そんなこんなで店を出た六人と一匹は無愛想な女性店員に見送られて“サウザンドアイズ”二一〇五三八〇外門支店を後にした。
白夜叉のオリジナルギフトはどうでしたかね?
はっきり言えば他のアニメの水の使い手が何人か思い浮かんだ人もいるかもしれませんが、水の使い方って極論似たようなものになると思うんですよ。
それと感想に質問が増えてきそうなので近いうちに簡単な設定みたいなものを書くかもしれません。
ではまた明日‼︎