子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

14 / 71
昨日の文に御指摘を戴いたので不自然にならない程度に修正しました。
ついでに今までの文の誤字・脱字・その他諸々修正しましたが小さい差なので読み返す必要はありません。

それではどうぞ‼︎


“ペルセウス”登場

黒ウサギ達が中庭に着いた時、十六夜は地面に立ち、レティシアは黒い翼で空中に浮いて対峙していた。お互いに見上げ、見下ろす形で視線を交差させている。

 

「互いにランスを一撃ずつ撃ち合い、止められねば敗北とする。準備はいいか?」

 

「オーケー、いつでも来な」

 

十六夜の返事を聞き、レティシアは金と紅と黒で彩られたギフトカードを取り出した。

 

「レ、レティシア様⁉︎ そのギフトカードは」

 

「下がれ黒ウサギ。既に決闘は始まっている」

 

レティシアは声で黒ウサギを制しながらギフトカードからランスを取り出す。そこから振りかぶって打ち出そうとするランスによって、空気中には目に見えるほど巨大な波紋が広がっていた。

 

「ハァアッ‼︎」

 

気勢を上げて空気摩擦で熱が帯びる程の速度で放たれたランスに対し、十六夜は、

 

「カッーーーしゃらくせぇ!!!」

 

 

 

殴りつけた。

 

 

 

「「「ーーーは・・・⁉︎」」」

 

素っ頓狂な声を上げる当事者とツッコミの二人。

他の三人のうち悪魔二人は物珍しそうな表情を浮かべているだけだ。

 

(ま、まずい・・・‼︎ ーーーだがこれ程なら・・・)

 

十六夜から打ち出された高速で迫る散弾銃のごとき鉄塊に、避けれないと思うと同時に尋常外の才能に安堵して血みどろになって落ちる覚悟を決めたーーー次の瞬間、レティシアの前に紋章が浮かび上がる。

 

左手をかざして紋章を出した男鹿は、次に電撃を纏った右拳を突き出して魔王の咆哮(ゼブルブラスト)を放った。

放たれた電撃は高速で打ち出された鉄塊を追い抜いて紋章に着弾し、レティシアに迫っていた凶弾の全てを爆風で弾き飛ばして彼女を守っていく。

 

「お、上手くいったか」

 

「上手くいったか、じゃねぇよ‼︎ 魔王の咆哮(ゼブルブラスト)魔王の烙印(ゼブルエンブレム)の合わせ技なんて初めて見たぞ⁉︎」

 

「そりゃ初めてやったからな」

 

「ぶっつけで危ねぇことすんなよ‼︎」

 

レティシアは爆風で煽られた髪を押さえつけながら、男鹿と古市の会話を聞きつつ今度は純粋な感嘆の気持ちを浮かべていた。

 

(私が避けることを諦めたのに、それをあの離れた場所から対応してしまうとは・・・。それに瞬時の判断と行動、それを成し遂げるための発想や実力も備えている。これで二人とも発展途上とは恐れ入る・・・)

 

“これ程の規格外な才能ならば・・・”などとレティシアが考えていると、黒ウサギが真剣な表情で近付いてきた。

 

「レティシア様、ギフトカードをお借りしてもよろしいですか?」

 

その言葉を聞き、レティシアは仕方ないとばかりに目を背けながらギフトカードを渡す。

 

「ギフトネーム・“純潔の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)”・・・やはり・・・。鬼種は残っていても、神格がなくなっています」

 

「なんだよ。もしかして元・魔王様のギフトってそれしかねぇのか?」

 

男鹿に邪魔されてしまったものの、レティシアの様子からあの一撃で終わっていたことを悟った十六夜は男鹿に対して文句を言わずに黒ウサギの言葉に聞き返す。

 

「・・・はい。多少の武具はともかく、自身に宿る恩恵はもう・・・」

 

「ハッ、どうりで歯ごたえが無いわけだ。せっかく楽しめそうだったのによ」

 

十六夜は強い奴と戦えると思っていたから不満を漏らし、黒ウサギは苦い顔でレティシアへと問い掛ける。

 

「レティシア様は鬼種の純血と神格を備えた“魔王”と自称する程の力があったのに、今はその十分の一にも満ちません。いったいどうして・・・‼︎」

 

黒ウサギとレティシアが沈鬱そうな顔をしている隣で成り行きを見守っていたヒルダとアランドロンが提案する。

 

「ふむ。とりあえず屋敷に戻って話せばどうだ?」

 

「そうですな。お互いに聞きたいことも色々とあることでしょう」

 

二人の提案に頷く黒ウサギとレティシアだった。

十六夜も未だに、というかそろそろ関係のないことで言い争いを始めている男鹿と古市を呼び寄せて屋敷に戻ろうとする。

 

 

 

異変が起きたのはその時だ。

遠方の空から褐色の光が差し込む。

 

 

 

「っ⁉︎ ゴーゴンの威光か⁉︎ まずい、全員私から離れろ‼︎」

 

咄嗟に周りにいたみんなを庇うように立ち塞がる。

光に呑まれたレティシアは石像になってしまい、光が差し込んできた空には翼の生えた靴を装着した男達がいた。

 

「いたぞ‼︎ 石化させた吸血鬼を捕獲しろ‼︎」

 

「例の“ノーネーム”もいるようだがどうする?」

 

「構わん、邪魔するなら斬るまでだ‼︎」

 

男達の言葉を聞いた十六夜は獰猛に笑って呟く。

 

「おいおい、生まれて初めてオマケ扱いされたぜ。ここは傍若無人な奴らにキレるところか?」

 

「いや、連中もお前に言われたくはないと思うぞ?」

 

「と、取り敢えず本拠に逃げて下さい‼︎ さっきも言いましたが“ペルセウス”と揉めては“ノーネーム”がどうなるか分かりません‼︎」

 

黒ウサギが最も問題を起こしそうな男鹿と十六夜を本拠に引っ張り込もうとしている間に、男達はレティシアへと縄を掛けていく。

 

「・・・よし。ギフトゲームを中止してまで用意した取引だ。これで破談にならずに済んだな」

 

「そうだな。箱庭の外とはいえ、国家規模のコミュニティ相手の商談を取り消すのはーーー」

 

「箱庭の外ですって⁉︎」

 

男達の会話が聞こえた黒ウサギは驚愕の声を上げ、引っ張っていた二人を放置して抗議した。

 

「“箱庭の騎士”とまで呼ばれる彼らヴァンパイアは、箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ⁉︎ それを箱庭の外へなんて・・・‼︎」

 

「我らの首領が決めた事だ。“名無し”風情が黙っていろ」

 

本拠への不法侵入に“名無し”という言葉。明らかに見下した行為に黒ウサギは激昂して言い返す。

 

「こ、この・・・‼︎ 無礼を働いておいて、非礼を詫びる一言もないのですか⁉︎」

 

しかし、黒ウサギがどれだけ怒りを露わにして言っても男達の態度は崩れることはなかった。寧ろ男達は傲岸不遜な態度を助長させている。

 

「ふん。こんな下層のコミュニティに礼を尽くしては我らの旗に傷が付くわ」

 

「それとも“名無し”如きが我ら“ペルセウス”と問題を起こすか?」

 

グッ、と黒ウサギは黙り込むしかなかった。先程、男鹿と十六夜に問題を起こしたら“ノーネーム”がどうなるか分からないと言っていたのは黒ウサギ自身だ。

その事実を前に彼女は悔しそうに男達を睨むことしかできなかったが、

 

 

 

「ならば、“名無し”とやらじゃなければ問題ないな」

 

 

 

「え?」

 

黒ウサギが聞こえてきた声を疑問に思ってそちらを見ると、いつの間にかヒルダがレティシアを捕らえようとしていた男達に近付き、どこからか取り出した傘で男の一人を殴り飛ばしていた。

 

「コイツ‼︎ 自分達のコミュニティが誰に喧嘩を売っているのか分かってないのか⁉︎」

 

いきなり攻撃してきたヒルダに、男達は今までの余裕を崩して怒鳴りつける。

 

「何度も言わせるな愚図どもが。私はここに来たばかりでコミュニティとやらには入っていない。ここには私の主君がいたから来ただけだ」

 

そんな男達を気にも掛けず、ヒルダは悠然と立ちながら傘を構えて言葉を続ける。

 

「安心しろ、殺しはせん。それとも女一人にも敵わないと援軍でも求めるか?」

 

ヒルダの挑発に男達は一斉に手持ちの武器を構えた。

しかし、武器を構ているヒルダに対して遅れて武器を構えている時点ですでに遅い。まず手前にいた男を有無も言わせず殴りつけ、そのまま周りにいた男の意識を神速ともいえる速さで刈り取っていく。

 

「クソッ、急いで陣形を取れ‼︎ 相手は一人だ、取り囲んで叩き潰すぞ‼︎」

 

一人、また一人とやられていく中で男達は遅まきながらヒルダを中心にするように広がっていく。

 

「ふん、脳みその足らない連中だ。私の速度に付いて来れない時点で陣形など意味を成さないと分からんのか」

 

一瞬で前にいた槍を構えた男の懐に踏み込むヒルダ。傘の仕込み剣を抜いて槍を斬り、こめかみに柄の部分を叩きつける。どれだけ取り囲もうが動きを捉えることができなければ一緒だ。すぐに陣形は崩れて乱戦となる。

男達は自分の武器で仲間を攻撃しないように固まることはなかったが、それでも動きを制限されることに変わりはない。そこへヒルダはブラックホールにも似た魔力の塊を叩き込んでいく。連携で来る男達にはステップで躱し、他の連中を魔力で抑え込みながら一人ずつ叩き潰していく。

 

しばらく同じような流れで戦いが続き、気付けば三十人近くの男達が地面に沈んでいて手際良く拘束されていく。

 

「す、すごいです・・・」

 

「お前らの世界は男鹿といいヒルダといい無茶苦茶だな。やっぱり古市も・・・」

 

「いや、そこでこっちに振らないで⁉︎ 俺は普通だから‼︎」

 

黒ウサギが呆然とし、十六夜がもしかしてという目を古市に向けていると一仕事終えたヒルダが帰ってきた。

 

「もう終わりか。ならば行くぞ」

 

「へ?いったいどちらへ?」

 

「奴らが働いた無礼に対して決闘を申し込みに行く・・・ってところか?」

 

黒ウサギの疑問には十六夜が答えた。そう、取り消されたギフトゲームならこちらから申し込めばいい。幸いにもその理由を作ってくれたのは“ペルセウス”の方だ。これでレティシアを取り戻すチャンスを得ることができた。

 

「取り敢えず“サウザンドアイズ”に乗り込むぞ。“ペルセウス”とは面識も無いしな」

 

「だったらアランドロンに送ってもらえばいいんじゃねぇか?」

 

男鹿の提案に、しかし十六夜は否定する。

 

「いや、最悪その場でゲームになる可能性もある。こっちの手の内は隠しておいた方がいいだろう。春日部は怪我をしてるからお嬢様と御チビを連れて行くぞ。頭数はいた方がいい」

 

飛鳥とジンにその場で簡単に新しく来た三人の説明をし、“サウザンドアイズ”に行く旨とそれまでの経緯を伝える。

それを聞いたジンは耀の看病に残るとのことで、ジンを除く残ったメンバーで“サウザンドアイズ”二一〇五三八〇外門支店を目指すのだった。




いよいよペルセウス戦です‼︎
来週には一巻分が終わる予定です‼︎

他作品を読んで、自分の文は少し味気ないかなぁと思う今日この頃。
一巻分は崩さないためにもあまり変化はつけませんが、二巻からはもう少し上手く練っていけたらと思います。

今回も三話投稿するのでまた明日‼︎

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。