子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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二巻目に突入です‼︎

それではどうぞ‼︎


あら、魔王襲来のお知らせ?
“火龍誕生祭”


“ペルセウス”との戦いから一ヶ月後。

飛鳥は自室に届けられた白夜叉からの招待状を見ていた。封を切って中を見ると一枚の紙が入っており、その表にはこのような文が書かれていた。

 

ーーー“火龍誕生祭”の招待状ーーー

 

 

 

 

 

 

「辰巳君、起きなさい‼︎」

 

ドンドンドンドンドンッ。

自室で手紙を見た後、まだ起きていなかった男鹿を起こそうと飛鳥は彼の私室のドアを叩いていた。それなりに強く叩いているのだが、一向に中からの返答は返ってこない。

 

「辰巳君、いい加減に「ビエエェェェェエエン‼︎」「ギィヤアァァァァアアア⁉︎」・・・た、辰巳君?入るわよ〜?」

 

返答はなかったが、その代わりに中からは泣き声と悲鳴と電撃音が響き渡った。一瞬躊躇うも恐る恐る部屋に入ると、突然の音に驚いて泣き起きたであろうベル坊と黒焦げになった男鹿がいた。

 

「・・・ね、寝てるなら仕方ないわね‼︎ それじゃあ〜「待てコラ」ッ⁉︎」

 

誤魔化して逃げようとする飛鳥の後ろから亡者のような男鹿の声が聞こえてきた。ギギギ、と機械のような動きで振り向くと不機嫌そうな男鹿と目が合ってしまう。

 

「い、いえ、忘れてたわけじゃないのよ?でもベルちゃんが泣くと放電するのって、説明もされてなければ箱庭に来たときの一回だけだったじゃない?ついうっかりというか・・・」

 

「・・・・・」

 

「う、その・・・ごめんなさい」

 

男鹿に無言で睨まれ続け、気まずくなって謝る飛鳥。まだ十五歳の女の子が不良顔の男鹿に睨まれて怯むのも仕方がないだろう。

しばらく無言が続いたが、

 

「・・・ハァ。それで、どうしたんだよ?」

 

「そ、そうよ‼︎ 白夜叉からギフトゲームの招待状が来てるのよ‼︎」

 

取り敢えずは許してくれたっぽい男鹿に飛鳥は安堵し、空気を変えるためにも起こしに来た理由を話した。

 

「へぇ、あの白夜叉からか」

 

男鹿も勝てなかった最強の“階層支配者”からの招待状。

それだけでも面白そうだと思えてしまう。

 

「分かった。少ししたら行くから他の連中も起こしてこい」

 

「えぇ。貴之君は春日部さんとリリに起こしに行ってもらってるから、合流して十六夜君を起こしてくるわ」

 

 

 

 

 

 

「貴之、起きてる?」

 

コンコンコン。

 

古市を起こしに来た耀は飛鳥とは違って怒鳴ったりはせず、大人しく静かに古市の私室のドアを叩いていた。

 

「・・・まだ寝てるのかな?」

 

コンコンコンコンコン。

 

そう、静かに・・・。

 

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコ「起きた‼︎ 起きたからそろそろやめて⁉︎ 朝一番にそれは軽くホラーだから‼︎」

 

古市の焦ったような声が聞こえてきたのでドアを叩くのを止め、断りを入れてからリリと一緒に中へと入る。

 

「おはよう」

 

「おはようございます‼︎」

 

「うん、二人共おはよう。・・・やっぱり箱庭に来てよかったなぁ」

 

唐突な脈絡のない発言に耀とリリは首を傾げる。

 

「朝から女の子が俺のことを名前で呼んで起こしに来てくれるのがどれだけ幸せか・・・。あっちじゃゴミだのキモ市だのロリコンだの罵倒から始まるかアランドロンとの気色悪い遣り取りから始まる日々に警察を呼ばれそうになったりと違ってなんて清々しく朝を迎えることができるんだ・・・」

 

「うん、その発言が原因だと思う。警察がいない分、私達で罰しないと駄目だから犯罪はやめてね」

 

古市の言うことを聞きながらリリの耳を塞いで距離を離しつつ、いつも以上の無表情で耀は警告する。

 

「いや、だから違うって‼︎ ごめん、もう変なことは言わないからその態度はやめて‼︎」

 

古市は必死の形相で懇願するのだが、それも距離を離される原因だということは分かっていないのだろう。

 

「じゃあ面白そうなことがあるみたいだから、飛鳥もすぐに来るし早く着替えてね」

 

言われた古市が急いで着替えてから出ていくと飛鳥も合流しており、十六夜を起こしに行ったが部屋にいなかったらしいので、十六夜を探すべく彼が毎日通っている書庫へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

飛鳥が考えた通り、十六夜はジンと一緒に書庫で眠っていたようだ。

見つけて声を掛けたのだが、

 

「あぁ、お嬢様達か・・・おやすみ」

 

「起きなさい‼︎」

 

飛鳥の声を聞いた十六夜が二度寝に突入しようとしたので、彼女は十六夜の側頭部へと飛び膝蹴りーーーシャイニングウィザードを食らわせようとする。

 

「させるか‼︎」

 

「グボハァ⁉︎」

 

しかし十六夜が防御ーーージンを盾にして難を逃れる。盾にされたジンは空中で綺麗な三回転半を描き、そのまま本の山を崩して埋れていく。

 

「ジ、ジン君がぐるぐる回って吹っ飛びました⁉︎ 大丈夫⁉︎」

 

「・・・ギャグパートだから大丈夫だと思うな」

 

オロオロとしているリリに耀がまったく根拠のない、それでいてテキトー極まりないフォローを入れる。

 

「いや、寝起きで側頭部に膝蹴りを食らって大丈夫な訳ないでしょう⁉︎」

 

「あれだよね。ジン君って意外と丈夫だよね」

 

吹っ飛んだジンが本の山から起き上がりながら文句を言っているのを見て古市は感想を漏らす。

 

「いいからコレを読みなさい。絶対に喜ぶから」

 

そんな四人を無視して飛鳥は招待状を取り出し、十六夜に読むようにと手渡す。

 

「何々・・・白夜叉から?えーと、北と東の“階層支配者”による共同祭典ーーー“火龍誕生祭”の招待状?」

 

“火龍誕生祭”を簡単に説明すると、美術工芸品の展覧会や批評会に加えて様々なギフトゲームが開催される大祭であるようだ。

 

「コレは二度寝を邪魔されるだけの価値がありそうじゃねぇか面白そうだな行ってみようかなオイ♪」

 

「ノリノリね」

 

招待状を読んだ十六夜がソワソワしながら行こうとしているとジンがストップを掛ける。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい皆さん‼︎ 北側に行くって、本気ですか⁉︎ リリ、大祭のことは皆さんには秘密にとーーー」

 

「「「秘密?」」」

 

「あ、ジン君終わったな」

 

ジンは失言に気付いたがもう既に手遅れだ。問題児三人の顔には邪悪な笑みが浮かんでおり、古市は同情の眼差しをジンに向けて合掌している。

 

「そっか。私達こんなに面白そうなことを秘密にされてたんだね。ぐすん」

 

「コミュニティのために毎日頑張ってきたのにとっても残念だわ。ぐすん」

 

「ここらで一つ、黒ウサギ達には痛い目に合ってもらうのもありかもしれないな。ぐすん」

 

泣き真似をするその裏側でニコォリと物騒に笑う問題児達。ジンとリリはダラダラと冷や汗を流してどうしようと考えていると、男鹿とアランドロンが入り口から歩いてきた。

 

「お前らこんな所にいたのか」

 

「遅いわよ辰巳君‼︎ 今まで何処で何をしていたのよ‼︎」

 

一番に起こしに行ったはずの男鹿が遅かったので飛鳥は泣き真似をやめて咎める。

 

「なんか白夜叉に話を聞きに行ったらお前らも連れて来いとよ」

 

「「「早い(な)(わね)(ね)」」」

 

一瞬前とは真逆の評価である。遅かったのではなく先に行っていたようだ。自分だけで行くなと三人は不満に思うも、これで北側に行く正当な理由ができたという訳だ。

 

「白夜叉に呼ばれたんなら仕方がねぇ‼︎ “サウザンドアイズ”に直行だゴラァ‼︎」

 

「直行だコラ」

 

「その前に置き手紙を用意しないとね。フフフ、どんな内容にしようかしら」

 

「久遠さん、程々にね?」

 

手紙の内容を決めて書いた後にリリに渡して黒ウサギに届けるようにお願いし、アランドロンに転送してもらう。

手紙の内容は以下の通りになった。

 

 

『黒ウサギへ。

白夜叉に呼ばれたので北側の四〇〇〇〇〇〇外門と東側の三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアとヒルダさんもね。私達に祭りのことを意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合、加入組は全員コミュニティを脱退します。死ぬ気で探してね。応援しているわ。

P/S.ジン君も連れて行ってます』

 

 

「あ、あの問題児様方はぁぁぁぁああああ!!!」

 

問題児達の自由な行動に“ノーネーム”の敷地内では黒ウサギの絶叫が響き渡ったそうだ。




今回はここまで、というか今週はこれで終わりだと思います。

できればあと一話投稿したいですけど時間が・・・というわけで、更新を待ってくれている人には申し訳ないです。

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