子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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いよいよ二人の対決です‼︎

今回はゲームだけなので少し短いですが、それではどうぞ‼︎


男鹿vs十六夜

騒ぎを聞きつけた住人達が見上げる中、屋根に立つ男鹿と十六夜が対峙し、黒ウサギは審判として少し離れたところに待機している。

 

 

【ギフトゲーム名 “悪魔の王と人類の至高”

・ルール説明:ゲーム開始のコールはコイントス。参加者がもう一人の参加者を“手の平”で捕まえたら決着。敗者は勝者の命令を一度だけ強制される。

 

宣誓:上記のルールに則り、“男鹿辰巳”・“逆廻十六夜”の両名はギフトゲームを行います。】

 

 

男鹿と十六夜が宣誓を交わすと、羊皮紙が一枚ずつ二人の手元に舞い落ちてきた。

 

「それはコミュニティ間の決闘ではなく個人の間で取引される“契約書類”で、決着と同時に命令権へと変化します」

 

黒ウサギの説明を聞きながら二人は内容を確認している。

 

「コインが地面に着くと同時に開始だな?」

 

「Yes。トスは黒ウサギが行うのですよ」

 

「いいぜ。さっさと始めてくれ」

 

男鹿の言葉に従って黒ウサギはコインを取り出した。

二人が集中しているのを確認した黒ウサギはコインをトスし、緊張した面持ちで開始を待つ。

 

ーーー・・・キン‼︎、という金属音と同時に爆発的なスタートダッシュで二人同時に前方へと疾走する。

黒ウサギは一瞬だけ二人の大衝突を覚悟して冷や汗を流したがそうはならなかった。

 

二人とも()()()()()()()()()()()()()()()、衝撃を撒き散らしながら反発していく。しかし、お互いに本気ではないとはいえただの力比べならば鉄筋コンクリートを砕ける男鹿よりも山河を砕ける十六夜の方が圧倒的に分があり、男鹿の方が体勢の崩れは大きい。

先に体勢を立て直した十六夜が、男鹿を転倒させようと崩れた足に蹴りを放つ。それを避けるために男鹿は体勢を立て直すのをやめてバク宙の要領で大きく跳び上がり、空中に斜めに紋章を出して着地。膝をバネに重力を味方につけて殴り掛かった。

十六夜が避けても避けなくても男鹿が殴れば衝撃で屋根が砕けるのは目に見えており、足元を崩されると判断して十六夜は別の屋根に跳び移って距離を取る。男鹿は十六夜が跳び移ったことによって屋根を殴ることを止め、着地の衝撃だけが伝わって屋根は砕かれずに表面が割れるだけとなった。

 

ここまでを開始から息もつかさずに行った二人は、道を挟んだ屋根の上で次の動作に備えている。

そこへ審判をしていた黒ウサギが慌てて声を掛けた。

 

「ちょ、ちょっとお待ちください‼︎ これが“鬼ごっこ”だって御二人とも理解していますか⁉︎」

 

「さっきも言ったが逃げるのは趣味じゃねぇ」

 

「正直オレも好みじゃないし、別にルール違反でもないだろ。それに知らないのか?鬼ごっこの必勝法は鬼を倒しちまうことなんだぜ?」

 

十六夜はニヤリと笑いながら横暴なことこの上ない必勝法を告げる。だが事実として“相手に攻撃してはならない”というルールが設定されていない以上、黒ウサギ個人としては止めたくても審判としては止めることができない。

 

「さぁ続きといこうぜ、男鹿」

 

「あぁ、いいぜ」

 

またもや両者同時に跳び出す。空中で先程と同じようにぶつかるかと思われたが、男鹿が紋章を出して跳躍。十六夜の頭上を跳び越して前方宙返りによる回転の遠心力を加えて後頭部に踵落としを食らわせた。

十六夜は空中で身動きが取れないことと男鹿のアクロバットな動きに対処できず、地面へと叩きつけられて土煙を上げる。

 

「ーーーこの程度じゃてめぇはくたばらねぇだろ」

 

右手に雷撃をまとい、土煙の中心に当たりを付けて魔王の咆哮(ゼブルブラスト)を放つ。

相手がただの人間ならば過剰攻撃となり致命傷となってもおかしくない。

 

 

 

「ーーーハッ、しゃらくせぇ!!!」

 

 

 

が、十六夜はただの人間には程遠いのだ。

腕の一振りで雷撃と辺りに舞っている土煙を霧散させる。土煙が晴れたそこには、服に汚れは付いているものの擦り傷程度の軽傷を負っただけの十六夜が堂々と立っていた。

 

「ついうっかりしてたぜ。空中で動ける相手に空中戦を仕掛けるなんざ間抜けもいいところだ」

 

言葉だけならば自分を罵っているような感じだが、表情は実に楽しそうに笑っている。無理もないことかもしれないが、十六夜は自分と真正面から戦える相手に歓喜していたのだ。

箱庭にきて戦ったアルゴールは弱体化していたし、白夜叉には圧倒的な実力差を戦う前に見せつけられた。確かに十六夜は男鹿よりも速いし力もあるかもしれないが、男鹿はベル坊の力と技、経験によって対等に等しい相手となっている。

そんな男鹿を相手にして浮かれるなという方が無理だろう。

 

「これはお返しーーーだッ‼︎」

 

男鹿が下に避けるように上半身に狙いをつけ、地面が砕けてできた石を連投する。男鹿も単発ならば上体を逸らすだけで十分に避けられるのだが、それだけでは避けられない角度で的確に、避ける方向にも連投されては降りざるを得ない。

そこをすかさず十六夜は殴りに掛かり、それを男鹿が迎え討つ。拳、肘、膝、足と平手は一切使わずに殴り、防ぎ、躱していく。この勝負は“鬼ごっこ”という名目で始められたが、中身は決闘そのものである。捕まえて終わらせるなどという安易な考えは、既に二人の中には存在していなかった。

 

男鹿は日頃の戦闘経験から十六夜の動きを予測して攻撃をいなしつつ打ち合っていたが、スピードで勝る十六夜にとうとう一手遅れてしまう。

 

「吹っ飛べ‼︎」

 

そこを十六夜はアッパーで顎を打ち抜いて時計塔まで吹き飛ばし、さらに追撃をかけた。時計塔に激突して口から血を流している男鹿へと一直線に突撃してきた十六夜をなんとか躱し、躱された攻撃は時計塔を無残な瓦礫へと変貌させる。

 

二人は大きめの瓦礫を足場に、落下しながら三次元で殴り合いを続けていく。

 

「ゼブル・・・」

 

男鹿は十六夜との間にある瓦礫へと向けて紋章を乗せる。

それを見た十六夜は膝を曲げて跳躍の構えを取る。

 

「・・・エンブレムッ!!!」

 

爆発により散弾と化した瓦礫を十六夜は下へ跳躍することで避け、着地と同時に落下する瓦礫をバックステップで回避していく。

遅れて地面へと着地した男鹿も落下する瓦礫を後方へと回避し、必然的に十六夜との距離が開いてしまう。

 

「ハアァァ‼︎」

 

「オラァァ‼︎」

 

開いた距離を助走をつけて接近し、再び攻防を繰り広げようとーーー

 

 

 

「そこまでだ貴様ら‼︎」

 

 

 

したところで中断されてしまう。

気付けば三人の周りには騒ぎを聞きつけた北側の“階層支配者”ーーー“サラマンドラ”のコミュニティが集まっていた。

 

「せっかくいいところだったのに、何なんだよいったい」

 

ヒートアップしてきたのに邪魔が入って不機嫌そうになる十六夜に対し、“サラマンドラ”によるゲームの中断によって今まで審判として黙っていた黒ウサギが抗議する。

 

「何なんだよ、ではありません‼︎ 御二人ともやり過ぎなんですよ‼︎ 周りを見て下さい‼︎」

 

言われて二人が見回すと、崩壊した時計塔、雷撃爆撃落石人体落下などによってひどいことになっている地面、軽微ながら割れた屋根とこの区画だけ嵐のような被害を受けていた。

 

「あーあ、こりゃひでぇな」

 

「他人事みたいに言わないでください‼︎」

 

黒ウサギは痛くなってきた頭を抱えたくなる衝動を抑え、二人の腕を掴んで“サラマンドラ”へと投降するのだった。




今回はここまでです‼︎

十六夜との対決は本気の喧嘩ではないのでミルクは使わない方向でした。本気ではないので二人はお互いに重傷を負わせない程度に加減をしています。
イメージとしては“ごはんくんのヒーローショー”の時の東条との喧嘩が近いです。

次の投稿を今まではある程度予告していましたが、本気で不定期になりつつあるので予告はやらないことにします。
一週間に一話は必ず投稿、投稿できない時は報告、という形にします。

それではまた今度‼︎

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