子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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タグ追加したはいいものの、まだオリキャラを出すまでは行きませんでした・・・
まぁそこは今度こそ次回、ですね‼︎

それではどうぞ‼︎


旅支度は万全に

大魔王からの招待状と手紙、荷物を受け取った男鹿とレティシアは修行を中断してそれらをジンに報告した。

ジンは“魔遊演闘祭”の招待状を見てそれをどうしたのかと疑問に思い、大魔王の手紙を読んで呆然とし、手紙に書かれていた荷物の中身を確認して愕然としていた。

他のみんなにも報告したいが各々バラバラに過ごしているため、呼び出すよりも夕飯後の集まっている時に報告した方が効率がいいということでいったん話は終了となった。

そして夕飯後、ジンに言われて残っていた主力陣は何事かと問い掛けている。

 

「それで、ジン君。報告することって何かしら?」

 

「はい、まずはこれを見て下さい」

 

そう言って取り出したのは修行中に男鹿にぶつかった袋ーーー金貨が三十枚も詰まった袋を机の上に置いた。

 

「ど、どうしたんですかこれッ⁉︎ 現在ある“ノーネーム”全財産の約七倍もの金貨ですよ‼︎ いったいどこから引っ張り出したんですか⁉︎ まさか問題児様方の影響を受けて良からぬことに手をーーーフギャ⁉︎」

 

「落ち着け黒ウサギ。というか“影響を受けて良からぬこと”ってどういうことだ、おい」

 

“ノーネーム”となって以来かつてない程の大金を前に軽く錯乱していた黒ウサギの頭頂目掛けてチョップする十六夜。

錯乱して自分たちのことをどう思っているのか吐露した黒ウサギに対して少し強めに腕を振り下ろしたので軽く涙目となっている。

 

「申し訳ありません、つい本s・・・コホン。それで、この金貨はいったいどうしたのですか?」

 

またも口を滑らしそうになった黒ウサギは咳払いで言葉を切り、改めて金貨の出処を問う。

黒ウサギの質問に対して、金貨を受け取った本人であるレティシアが答えた。

 

「これは私が所用で辰巳と“ノーネーム”の外れにいた時に大魔王殿から届けられたのだ」

 

「また大魔王さんから?」

 

「はい、手紙なども同封されていました。今読みますね」

 

ジンはローブの内側から手紙を取り出して音読する。

 

「『おっす、昨日ぶり〜。今日ヒルダが帰ってきたんだけど、やっぱりビデオ途中で切れてたんだって?だからわざわざ手紙送ったんだぞ?わしだって仕事はきちんとするタイプなんだからな?仕事で箱庭に帰るのが面倒なだけなんだからな?取り敢えず馴染みの奴らに声掛けといたからそいつらに任せるわ。白ちゃんにも手紙送っといたからそっちにも頼ってちょ。んじゃ、わし今度は腹話術の練習があるから。あとよろしく〜』・・・だそうです」

 

「絶対、大魔王が仕事するタイプって嘘だろ」

 

「・・・もしかしてパペットも腹話術も仕事の一環だったり?」

 

「「ないな、うん」」

 

手紙の内容を聴き終えた十六夜がまずツッコミを入れ、それに対して耀がフォローをするも男鹿と古市が揃って否定してしまう。

 

「それで、大魔王の馴染みってのは分かっているのか?」

 

話が脱線しかけているので鷹宮がジンに話の先を促す。

手紙には“馴染みの奴ら”としか書かれていないので文面だけでは特定するのは困難に思われる。

 

「多分大丈夫です。手紙と一緒に“魔遊演闘祭”の招待状も入ってましたから」

 

「ということは大魔王様の馴染みというのは、やっぱり“罪源の魔王”達でしょうか?」

 

「恐らくその通りだろう。この金貨は境界門の使用料と準備物の代金といったところか」

 

ジン、黒ウサギ、レティシアと箱庭組は最低限の言葉で話を進めていくが、外界組はそこから推測するだけで全然話についていけない。

それに気付いたジンがみんなに分かるように説明してくれる。

 

「えっとですね、“魔遊演闘祭”とは“七つの罪源”を中心に北側で行われる祭典のことです。基本的には悪魔が在籍するコミュニティを招待するんですが、主催者が目を掛けて招待したコミュニティも参加できます。僕達は招待されたことはないので聞き伝手の情報ですが」

 

ジンが概要を説明し、黒ウサギが引き継いで説明を続ける。

 

「お祭りの雰囲気も“火龍誕生祭”と似たものだそうですね。悪魔特有・・・と言っていいかどうかは分かりませんが出店や特産品、メインのギフトゲームの他にも気候が冬なので温泉なども盛んだそうです」

 

黒ウサギの説明が終わり、レティシアが締めるように最後の説明をする。

 

「“魔遊演闘祭”は境界壁を更に超えた北側なので境界門を使用することになる。“火龍誕生祭”の開催された街のような暖房のギフトは少ないため防寒の準備も必要だ。金貨はそれらに使えということだろう」

 

大まかな説明を聞いて外界組は色々と納得していたが、それと同時に疑問も浮かんでいた。

 

「確かにそれだと“七大罪”である大魔王の馴染みは“七つの罪源”って流れになるよな。けど魔王認定されてる悪魔がどうして放ったらかしにされて、あまつさえ祭りなんて開いてるんだ?」

 

十六夜の疑問はもっともなもので、箱庭において魔王は天災と比喩される存在だ。それがこれ程までに大々的かつ平和的な活動しているということが不思議でしかない。

 

「詳しくは知りませんが、黒ウサギの小ウサ耳に挟んだ情報だと白夜叉様と同じく霊格を落としているというような噂を聞いたことがあります」

 

魔王と恐れられた白夜叉は白夜の星霊の力を封印するために仏門に下って霊格を落とすことで“階層支配者”として下層に干渉している。

罪源の魔王達も何かしらの方法で霊格を落とすことで現在を過ごしているのだろう。

一応疑問も解消したということで、十六夜は話を締め括って席を立つ。

 

「それじゃ、大体の話は聞いたし明日は防寒のギフトとやらを白夜叉のところへ買いに行くか」

 

十六夜の言葉に飛鳥と耀も続いて立ち上がる。

 

「そうね、大魔王さんも白夜叉に頼れって言っているのだし、“サウザンドアイズ”程の大型商業コミュニティなら防寒のギフトも売っているでしょうね」

 

「今回はお金を落としに行くんだから、白夜叉の店の店員さんも無碍にはしないはず」

 

古市も出ていこうとしたが、肝心なことを聞いていなかったので立ち上がりながら質問する。

 

「ジン君、その祭りっていつ頃から始まってどれくらい続くの?」

 

「“魔遊演闘祭”は不定期的に開催される祭典で、今回は五日後ですね。期間は一週間でしょうか」

 

招待状を見ながら日取りを確認したジンの言葉を聞いて鷹宮も立ち上がって扉へと向かうが、明日は“サウザンドアイズ”に行くつもりはないようだ。

 

「わざわざ準備に全員行く必要はないだろ。明日、俺の分は任せる」

 

そう言って部屋を出ていった。

そんな鷹宮が“魔遊演闘祭”へ行くことに何も反対しないのは“罪源の魔王”に興味があるからだろうか。

 

「どうすんだ古市?俺達は明日行くのか?」

 

「一応俺達の世界の問題も関わってんだし、行かないわけにはいかないだろ」

 

最後まで席に残っていた男鹿が古市に確認して席を立つ。

どうやら男鹿も任せられるなら任せたいと思っていたようだ。

 

「すみませんが、僕とレティシアさんの分もお願いできますか?僕達は祭典に向けてやることが残っているので。黒ウサギ、付き添いはお願いしていいかな?」

 

「Yes‼︎ 任されました‼︎」

 

ジンは“火龍誕生祭”の時とは違って出発までに余裕があることから、このことを知らない子供達への説明と祭典中の仕事を割り振るのだと言う。レティシアはメイドとして祭典までの指揮監督だ。

そのまま少し話し合うというので男鹿と古市は三人を残して部屋を出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、支度を終えて朝食を食べた後に防寒のギフトを買いに行く面子で“サウザンドアイズ”へと向かっていた。

支店に近付くと店先には何時もの女性店員がおり、彼女も近付いてくる一同に気付いて溜息を吐いている。

 

「そんな露骨に面倒臭そうにすんなよ、今日は買い物に来ただけだ。白夜叉にも話は通ってるはずだぜ?」

 

十六夜はそんな女性店員に分かりやすく袋に詰まった金貨を見せ、彼女のオーナーにあたる白夜叉に確認を取るように促す。

 

「・・・少々お待ち下さい」

 

少し逡巡して検討するに値すると判断したのか、暖簾をくぐって店内に消えていった。

女性店員はすぐに戻ってきて、

 

「オーナーに確認が取れました。どうぞお入りください」

 

と言って道をあけてくれた。

ぶっちゃけ大魔王が白夜叉に何も伝えずにぶん投げたことも考えられたのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。

 

「おう、よく来たのおんしら。北側に必要そうなラインナップはあっちの区画だ。案内はできんがゆっくりと見ていけ」

 

白夜叉も今は暇ではないらしく、軽く挨拶をしてからすぐに何処かへと行ってしまった。

言われた区画にはコートなどの一般的な防寒具から防寒のギフトに加え、遭難用品などの雪山でも使えるような様々な品揃えが並んでいる。

 

「一口に防寒のギフトって言っても結構あるわね」

 

「リング型、ブレスレット型、イヤリング型、ネックレス型。他にもありそう」

 

「Yes‼︎ 造形だけでなく性能も数種類ありますよ」

 

女の買い物は長いと言うのがお約束だが、飛鳥と耀と黒ウサギの女性陣も既に三人でワイワイとショッピングに夢中なようだ。

 

「俺達も自分のを選んで、御チビ達の分も買っとくか」

 

「そうだな。女性陣みたいにみんなで動く必要もないし、各自で選ぼうぜ」

 

十六夜と古市は別々の方向に歩いていき、一人その場に残った男鹿は近くの棚を物色していく。

物を見る目がない男鹿だが、取り敢えず自分の分は気に入ったのを選べばいいのでそこは問題ない。

しかし商品を見ていくうちにセンスどうこうの問題ではない問題が立ちはだかった。

 

「ベル坊に使えそうなのがねぇ・・・」

 

「アイ?」

 

小児用のものはあるが幼児用のものがなく、無理に着けると何かの拍子にすぐ落ちてしまいそうだ。

 

「お〜い、黒ウサギ〜」

 

「はいな、なんでしょうか?」

 

「ベル坊に合うやつってそっちにねぇか?」

 

呼ばれた黒ウサギが物色していたのを抜け出して近寄ってきたので聞いてみる。

黒ウサギも男鹿の質問に納得したようで周囲を見回している。

 

「確かにどれもベル坊さんには少し大きそうですねぇ。でしたらネックレス型の紐を短くしてはどうでしょう?」

 

「・・・て、天才か・・・」

 

「え?い、いや〜、それ程でもないですよ?」

 

黒ウサギは男鹿の大袈裟すぎる称賛に苦笑を浮かべているが、純粋に褒められているので悪い気はしない。

その後は冬に合わせた衣類を購入したり、念のために遭難用品を物色したりして防寒のギフト以外にも幾つか購入してから“サウザンドアイズ”を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

“ノーネーム”一同が帰った後、白夜叉は店内の裏側に来ていた。

 

「もうあやつらは帰ったから出てよいぞ」

 

白夜叉が誰もいない空間に呼び掛けると、物陰から袴姿で艶やかな黒髪のロングヘアをした、和風然とした雰囲気の女性が出てきた。

 

「は、はい。でもどうして男鹿達から隠れるんですか?」

 

「それはもちろん、サプライズは内緒でやるものだからだよ」

 

女性の質問に“魔遊演闘祭”の招待状を袖から取り出してヒラヒラと揺らしながら白夜叉は答える。

 

「それよりおんしだけか?他の奴らはどうした?」

 

「えーっと、此処にいるように言われたすぐ後に、“バイト中だから何もないなら職場に戻る”って言ってフラーッと一人出ていったのに続いてみんな・・・」

 

「働き者なのは構わんがなぁ。まぁ見つからなかったようだし良しとするか」

 

白夜叉の言うサプライズは秘密裏に進んでいき、男鹿のことを知る彼女達とは北の地で邂逅することになる。




皆さんには最後の彼女が誰か分かりますかね?
追加情報として彼女の言う“みんな”とは既存の組み合わせではないので楽しみにしてて下さい‼︎

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