それではどうぞ。
異世界との邂逅
これは、後に全国の不良達を恐怖のドン底に叩き落とす伝説・・・子連れ番長べるぜバブが箱庭と呼ばれる異世界で新たな仲間と出会い、さらなる強敵と対峙することで成長していく物語である。
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“ベヘモット三十四柱師団”との戦いが終わり、聖石矢魔学園での生活が安定してきた頃。男鹿達はと言うと、
「おい古市、暇だから焼きそばパン買って来いよ。ベル坊にはんまい棒な」
「アイ」
「暇だからでパシらすんじゃねぇよ‼︎ ベル坊も‼︎」
特に変わらずいつも通りであった。
ベル坊・・・本名をカイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ四世という、魔界の王国ベルゼビュートの王子である。
男鹿はある出来事からベル坊を拾うも、幼いベル坊は人間界では魔力を発揮することができず、魔力を発揮するための触媒として選ばれてしまったのだ。(ちなみに触媒となる人間の条件は“強くて凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤロー”である)
古市と男鹿とは小学校からの腐れ縁であり、ロリコンのキモ市と呼ばれるツッコミ役のモブである。
「なんか今、何処かの誰かにものすごい悪意の篭った説明をされた気がするぞ」
「どうでもいいだろ、お前がロリコンのキモ市なのは。いいから早く焼きそばパン買って来いよ」
「よくねぇよ‼︎ あと買いに行くのは冗談じゃないのか⁉︎」
「アイダブ」
ベル坊にまで言われて焼きそばパンを買いに行かされた古市をそのままにして帰っている男鹿は、ベル坊を拾った河原を焼きそばパンを食べながら歩いていた。
「ここでベル坊を拾ってからもう1年近く経つのか。色々あったもんだ」
石矢魔高校・聖石矢魔学園での喧嘩、魔界関係での喧嘩と地球・魔界問わずに戦ってきたのである。まぁ本人も楽しんでいた節があるので特に文句はないだろうが。
男鹿らしくなく川を見つめながら少し過去に浸っていたのだが、すぐに視線を外して再び帰路に着く。
「ダッ」
歩き始めた直後、ベル坊が何かを見つけたようで手を空へ向けており、男鹿も釣られてそちらを見ると不思議なことに手紙が空から降ってきた。
ベル坊が降ってきた手紙を掴んだのでそれをベル坊の手から取って見てみると、宛名が『男鹿辰巳殿へ』となっている。
「俺宛ての手紙?というかベル坊を拾った時とデジャブを感じるんだが・・・まぁいいか」
少しだけ昔を思い出しながら歩いていたのでそう感じたが、特に何も考えずに手紙を開けて中を読んだ。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』
「何だこりゃ?魔界のふざけた説明書とかじゃなさそうだけどよ」
魔界のふざけた説明書とはツッコミ所が満載の文章のことである。これがもし魔界の説明書であった場合は、
『才能があり過ぎて悩みが多くて暇で暇でしょうがない‼︎ 何か面白いことは・・・なーんて事あるよね‼︎ そんな時はこれ‼︎ “箱庭への招待状” ‼︎ これで面白くなること間違いなし‼︎ 暇なニートから会社の社畜まで楽しめちゃうぜ‼︎ なお問答無用で強制招待されますのでお気をつけ下さい(笑)』
というツッコミ所満載の笑えない内容になるだろう。
そんな考えを巡らせながら手紙を読んだ男鹿だったのだが、途端に光に包まれ視界が真っ白になったので目を閉じた。
急激なフラッシュから感覚が戻ってきた男鹿は、浮遊感を感じてゆっくりと目を開ける。
男鹿の視界に入ってきた光景は今までと変わらない河原ーーーではなく、上空四〇〇〇mほどの大空をパラシュート無しのスカイダイビング中であった。
「オイオイッ、いきなり何だ⁉︎ 何処だここ⁉︎ 魔界に行った時でももう少しマシだったぞ⁉︎」
「ダーッ⁉︎」
これには流石の男鹿も混乱していた。どれくらい混乱していたかというと、紋章術で空中に立てることも忘れて重力のままに落下しているくらい混乱していた。
他にも少年少女が三人に猫が一匹いるが、今は流石の男鹿でも気にする余裕は無く、彼も含めてその場にいる全員が視線の先に広がる風景を見ていた。
地平線には世界の果てっぽい断崖絶壁が、眼下には縮尺を見間違う程の巨大な都市が、魔界に行った時とはまた違う風景が広がっており、
完全無欠に異世界なのであった。
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自由落下もそこそこに、緩衝材の様な水膜を通って湖に落とされた五人と一匹。
「・・・大丈夫?」
『じ、じぬがぼおぼた・・・‼︎』
世間でも珍しい雄の三毛猫と会話をしている少女は、三毛猫の無事を確認してほっとする。
「フー・・・ヴ、エグ」
「待てベル坊‼︎ 泣くな‼︎ 男だ「ビエエエエェェエン!!!」ギャアァァーー⁉︎」
湖に叩き落とされたベル坊が泣いて放電してしまう。
男鹿が必死にあやしていた間に少年少女は湖から出ており、驚きの表情で湖を振り返り見ていた。紫電を撒き散らしながら眩しい輝きを放っている湖を前に、早く上がって正解だったと三人と一匹は安堵する。
ベル坊が落ち着いて泣き止み、放電が停止してから男鹿も湖から上がって三人と合流する。
先に陸へと上がっていた少年少女はそれぞれに口を開いて文句を言っていた。
「し、信じられないわ‼︎ まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて‼︎」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜこれ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「・・・いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「つーか、呼び出した奴は減り込ます・・・」
「アイ」
「そう、身勝手ね。・・・というかあなたは大丈夫なの?」
「大丈夫に見えるか?」
「・・・見えないわね」
「此処・・・何処だろう?」
焦げている男鹿、男鹿を見て少し心配する黒髪長髪の少女、ヤハハと笑っている金髪にヘッドホンの少年、猫を抱いた茶髪ショートヘアの少女、取り敢えず泣き止んだベル坊の五人。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ、以後気をつけて。そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「・・・春日部耀。以下同文」
「そう、よろしく春日部さん。そこの野蛮で凶暴そうな貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう、取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
飛鳥の問い掛けに端的な自己紹介をした耀。
耀とは対照的になかなかにユニークな自己紹介をした十六夜。
そんな場を仕切っている飛鳥も含めて、男鹿に負けず劣らずなかなか個性的なメンバーが揃っているようだ。
「最後に何故か焦げている、赤ん坊を背負った貴方は?」
「あ?男鹿辰巳だ。ひょんなことから子育てすることになった、何処にでもいる普通の高校生だ。こっちはベル坊」
「ダッ」
「よろしく、辰巳君にベルちゃん」
「・・・普通、その若さで子育てはないと思う」
「ていうか何でベル坊は裸なんだ?裸族か?」
十六夜は前にも男鹿が一度言ったことを言い、耀はベル坊を見て控えめにツッコんでいる。
そんな彼らを物陰から見ていた頭にウサ耳を生やした少女は思う。
(うわぁ、なんか問題児ばっかりみたいですねぇ・・・)
召喚しておいてアレだが、彼らが協力する姿は客観的に想像できないウサ耳少女、黒ウサギであった。
どうでしたでしょうか?
正直に言って初めての投稿なのでよかったかどうかはよくわかりません。
なので感想待ってます。