子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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いよいよクリスマスですね、今年も一年が短く感じました。
今年中にあと一・二話更新したいところです。

それと一巻分の投稿を再編集しました。少し文を足したり変えたりというのが大半ですが、お暇な時にでもまた見てください。

今回は男鹿達に接触した女性の正体が明かされます。
それではどうぞ‼︎


二人の接触者

「・・・お前、なんで七大罪のことを知ってやがる。まさかソロモン商会の連中か?」

 

男鹿は謎の女性に対して警戒心を上げ、古市は下がってベル坊を連れ戻しに行く。

男鹿達の知る限り、箱庭で七大罪のことを知っているのはソロモン商会と“ノーネーム”のみだ。この女性がソロモン商会だと考えれば、今ここで戦闘になるかもしれないのでベル坊と離れているのは不味い。

 

「フフッ、だったらどうする?そしてギフトゲームを口実に君を倒しに来た刺客だったとしたら?」

 

女性は男鹿の警戒を受けて楽しそうにし、体内の魔力を循環させて周囲に幾つもの水の塊を浮かべていく。男鹿もベル坊からの魔力を循環させて手に雷を宿して迎撃の構えを取った。

二人が一触即発の空気を醸し出す中、先に女性の方がクスクスと微笑みを浮かべて雰囲気を柔らかくする。

 

「なーんて、冗談だよ。あんな奴らと一緒にしないで欲しいね。まぁ、私もちょっと悪ふざけが過ぎたかな」

 

そう言って水の塊を全て雪だるまに作り変えていくので、男鹿も警戒は解かないものの大人しく雷を霧散させる。

 

 

 

「自己紹介がまだだったね。私は七大罪が一人、レヴィアタン。長いからレヴィって呼んでいいよ。君達のことはソロモン商会にいた時から耳に入ってるわ。男鹿辰巳君、古市貴之君」

 

 

 

ついに謎の女性の正体が判明したかと思えば、その予想外すぎる正体に古市は驚きを隠せなかった。

 

「あー、だから七大罪のこと知ってやがったのか」

 

「そ、だって私が七大罪だし。改めてよろしくね、男鹿君」

 

「おう、じゃあ早速そのギフトゲームとやらを「ちょっと、待て‼︎」・・・んだよ古市、何か用か?」

 

古市に対して男鹿のリアクションは疑問に納得しただけだった。そのままレヴィアタンーーーレヴィの言うギフトゲームを始めようとしたので古市は慌てて止めに入る。

 

「古市君、いったいどうしたの?」

 

「え、俺の反応がおかしいの⁉︎ 絶対にこいつの反応の方がおかしいよね⁉︎」

 

男鹿に続いてレヴィまで疑問の眼差しを向けてきたので、古市は男鹿を指差しながらツッコむ。

 

「そうじゃなくて、なんでソロモン商会にいるはずの七大罪がこんな所にいるのか、他の七大罪はどうしているのか、ソロモン商会は今何処で何をしているのか、色々と訊きたいことがあるんですけど」

 

「だからギフトゲームで勝ったら知ってること教えてあげるって言ったじゃない」

 

「でも、レヴィさんの口振りからしてソロモン商会を良くは思ってないですよね?だったらギフトゲームなんかせずに俺達に協力して下さいよ」

 

「えぇー・・・分かったよ。じゃあ、取り敢えずギフトゲームしよ?」

 

「俺の話聞いてた⁉︎」

 

自由奔放なレヴィに古市は振り回されっぱなしだ。

レヴィも会話を端折り過ぎたと思ったのだろう、言葉を付け加えていく。

 

「いや、情報は教えるよ?でもギフトゲームはしたいの。だからクリア報酬は別にして、ゲームが終了したら・・・ね?」

 

「まぁ、そういうことなら。どっちみち祭りの間はどうすることも出来ないと思うし」

 

「決まりだね‼︎ それじゃ早速・・・」

 

言うが早いか、レヴィの言葉とともに三人の前に羊皮紙が舞い降りてくる。

 

 

【ギフトゲーム名 “天地創造の化生達”

 

一日目:暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た。

二日目:神は空をつくった。

三日目:神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。

四日目:神は太陽と月と星をつくった。

五日目:神は魚と鳥をつくった。

六日目:神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。

七日目:神は休んだ。

 

しかし神は休めど世界は回り、神無き世界は指標を失う。

やがて世界は終末へと近付くも、終末に捧げる供物は未だ集まらない。

終末を迎える前に、欠かさず供物を探し出せ。

 

宣誓:“男鹿辰巳”・“古市貴之”の両名は“レヴィアタン”のギフトゲームに参加します。】

 

 

「うん、初めて考えたにしては上出来かな」

 

レヴィアタンは“契約書類”の文面を眺めて満足そうに納得している。

言葉からも分かる通り、どうやらギフトゲームを開催することは初めてのようだ。というか本当にそれがしたかっただけなのだろう。

 

「さぁ、ギフトゲーム開・・・あれ?男鹿君は?」

 

羊皮紙に目を落としていた彼女が顔を上げて二人の反応を見ようとしたのだが、いるのは古市だけで男鹿は目の前からいなくなっていた。

 

「男鹿ならあっちですよ」

 

レヴィが古市に問い掛ければ半笑い来た道を指差すので顔をそちらに向けると、離れたところに赤ん坊を背負った後ろ姿が見えた。

 

「ちょ、待って待って‼︎ 何で内容を確認してすぐに帰っちゃうの⁉︎」

 

慌てて止めに走るレヴィと呆れながら歩いて後ろに続く古市。

レヴィは追いついた男鹿の正面にまわって勝手に帰らないようにするが、そんなレヴィに男鹿は真剣な表情で言い返した。

 

「いいか?人間にはできることとできないことがある。そしてどう考えてもこれは俺の手に余る。無理だ、マジで無理」

 

「諦めるの早いよ‼︎ ていうか絶対ちゃんと読んでないよね?どう考えてもってそもそも考えてすらないよね⁉︎」

 

若干今までのキャラが崩れながらもツッコミをこなすレヴィ。

古市はそんなレヴィを同情の眼差しで見守っている。

 

「ほら、古市君も何とか言ってよ‼︎」

 

「って言ってもなぁ。俺だってこれ、解けるとは思えないんだけど・・・この文は何となく見聞きしたことはあるけど、その程度だし」

 

言われて古市も“契約書類”の文面を読み直して考えるが、確信できるような答えは導き出せない。

 

「じ、じゃあ誰かにヘルプ頼んでもいいから、このまま終わるのだけはやめて?」

 

せっかく開催できたギフトゲームが何もしないうちに終わるのは流石に嫌なようだ。レヴィは男鹿達にとってかなり有利な条件を出してきた。

 

「よし、それなら逆廻に見せに行くぞ。あいつなら分かるだろ」

 

それを聞いた男鹿は自分で考えるということはせず、十六夜に丸投げするために再び歩き出した。

が、その前に前方から男鹿達の見知った二人の姿が見えた。レティシアと鷹宮だ。

 

「ん?何だ、もう戻ってくるつもりだったのか?」

 

「お前らこそ何でこっちに来てんだよ?」

 

「お前達が勝手に何処かへ行ったからだ。これから挨拶に向かう場所も知らない辰巳達を放ってはおけないだろう?・・・そちらの女性は?」

 

男鹿から視線をその後ろに向け、古市と並んでいたレヴィについて聞く。しかしその質問の答えは男鹿でも古市でもなく、レティシアの横に並ぶ鷹宮から(もたら)された。

 

「・・・レヴィアタン、どうして此処にいる?」

 

「あれ?鷹宮君じゃない。 久しぶりだねぇ、元気だった?」

 

どうやら鷹宮がソロモン商会と繋がっていた時から二人は面識があったようで、レヴィは意外と鷹宮に対してフレンドリーだ。

 

「レヴィアタン・・・まさか、七大罪か?」

 

「そうだよ、長いからレヴィって呼んでね。色々と質問したいのは分かってるけど、ギフトゲーム中だがらそれは後でお願い」

 

“ギフトゲーム?”とレティシアが聞き返してきたので、助言を許可されている二人は“契約書類”を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

男鹿達がレティシア達と合流していた頃、黒ウサギ達はフルーレティの案内で中央の城へと向かっていた。

 

フルーレティの説明によれば、“魔遊演闘祭”は合同で開かれる祭典なので運営本部を併設する必要があり、そこで街の中央に聳える城を運営本部としているらしい。そこならば“七つの罪源”の誰かはいるというので一先ずは城を目指すことになったのだ。勿論レティシア達もこのことは知っているので、男鹿達と合流したレティシア達と城で再び合流する手筈となっている。

 

「近くで見ると一層大きいですねぇ」

 

黒ウサギが城を見上げて感想を述べる。

城とはいっても街中に建設させるのだから面積は限られている。そこでこの城は一般的な建築物より縦長に造られ、耐久性を上げつつ空間を利用するために三つの城を複数の渡り廊下で繋げて三角形の広場を作り出す構造となっていた。城と形容しているが、もしかしたら塔と形容した方が適切かもしれない。

 

「ちょいと、そこのお嬢さん方」

 

と、黒ウサギ達が城の中に入ろうと歩き出したところで誰かに後ろから呼び止められた。

その声に反応して振り返れば、そこには帽子を被った眼鏡の老人が立っている。

 

「どうした、爺さん?」

 

「いや、久しぶりに此処に来たもんでな。レヴィアタン辺りの顔を見に来たんじゃが、何処に行けばいいのかよく分からんくての」

 

要するにこの老人は迷子ということだろう。

でも何故数いる人の中から自分達を引き止めたのだろうか。

 

「お前さんら、人間なのに此処にいるということは恐らく招待客じゃろう?此処には“主催者”に挨拶に来たと見たが、どうじゃ?」

 

この老人は観察力・分析力ともにそこらの若人よりもあるようだ。黒ウサギ達の今の状況のことをピタリと言い当ててきた。

 

「あぁ、爺さんの言う通りだぜ。つまり、俺達に付いていけばレヴィアタンとかに会える可能性が高そうだから、一緒にってところか?」

 

「その通りじゃ、話が早くて助かるわい。で、どうかの?」

 

「俺は構わないぜ。御チビ達も問題ないよな?」

 

十六夜は老人の要望に承諾し、後ろの仲間にも確認を取る。

 

「はい、断る理由もありませんし」

 

「それに、ご老人には親切にしなきゃ駄目ですものね」

 

「うん、私も問題ない」

 

「それでは黒ウサギ達と一緒に行きましょう‼︎」

 

黒ウサギ達は快く老人を受け入れるが、フルーレティはその前に質問をする。

 

「私は案内なので構わないのですが、お連れする先にレヴィアタン様が居られるとは限りませんよ?」

 

「大丈夫じゃ、レヴィアタン以外の罪源の連中とも一応顔見知りなのでな。取り敢えず誰かに顔出しできればよい」

 

老人は罪源の魔王の誰かならばいいようだ。

この時点で黒ウサギ達はこの老人が何者なのかが気になっていた。罪源の魔王と知り合いと言っているが、悪魔であろう割には彼らのことを敬称も使わずに喋っている。箱庭の頂点に君臨する悪魔達と多少は親しい存在ということだ。

 

「俺は“ノーネーム”の逆廻十六夜。後ろの最初に答えた四人も同じコミュニティだ」

 

十六夜に促されて四人とフルーレティもそれぞれ自己紹介をする。

 

「それで、爺さんの名前は?」

 

「うむ、儂はべへ・・・おっと、間違えた。ベヒモスじゃ」

 

「おいおい、自分の名前を間違えるわけないだろ。何で偽名で名乗るんだ?」

 

「すまんの。知り合いの娘がギフトゲームを始める予定でな。暫くはそのヒントとしてベヒモスと名乗っておるんじゃよ。いずれは本名も知れるであろう、それまではベヒモスとして接してくれ」

 

十六夜達はこの老人がいったいどのようなギフトゲームと関係しているのか少し気になったが、取り敢えず詮索はせずにベヒモス(仮)と一緒に改めて城の中へと向かうのだった。




謎の女性の正体はなんと七大罪、レヴィアタンでした‼︎
次回はできれば“七つの罪源”の誰かを出したいところです。

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