子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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感想の一つに“絵が無いと面白くねぇ絵を入れろ”といったものがあり、“つまり絵があれば面白いんだな?”という考えのもと初心者ながら挿絵を鋭意作成中なのだがやはり難しい・・・。

というのはさておき、なんとか第二予選も終幕です‼︎
それではどうぞ‼︎


魔遊演闘祭・第二予選【後編】

「はぁ・・・」

 

「飛鳥、どうしたの?疲れちゃった?」

 

アスモデウスに撒かれた後、三人は島を探し回りながら幾つか戦闘に遭遇していた。最初に見つけた時がそうであったように、戦闘が起こっている場所には参加者が確実に存在し、アスモデウスもいる可能性が高いからだ。そして関係のない戦闘を回避しつつも見つかれば戦い、また探すといった行動を繰り返せば疲れもするだろう。

 

「いえ、疲れたのもそうなのだけれど・・・私は相手との相性が悪いだけで勝率の下がる割合が大き過ぎると思ってね」

 

「それは私も同じだよ。アスモデウスさんと戦えてたのは忍だけだったし」

 

今のところ参加者との戦闘では飛鳥も一人で相手と渡り合えているが、アスモデウスとの戦闘では足を引っ張ってルシファーに助けられる始末。溜息も吐きたくなるというものだ。

耀も応用の利くギフトだがアスモデウスとの戦闘では何もできなかったと自身では思っていた。

 

そんな風に二人が愚痴っていると、意外にも鷹宮からフォローが入る。

 

「何か勘違いをしているようだが、戦闘はともかくアスモデウスの能力と最も相性がいいのは俺よりも久遠だぞ」

 

「どういうこと?」

 

鷹宮は最初の戦闘時に不良スタイルになった時から普段よりも口数が多くなっている。耀も今一分かっていない感じなので、鷹宮は呆れたように言葉を続けた。

 

「お前ら、戦闘中の情報収集は勝率を上げる重要なファクターだからな。休憩と合わせて分かっているアスモデウスの能力と作戦を纏めるから座れ」

 

そう言って鷹宮は手頃な岩に座った。促された女子二人も近くの適当な場所に座って話を聞く。

 

「まず初めに言っておく。これから言うのはあくまでも戦闘から得られた推測であって確定した情報じゃない」

 

もし話した内容だけを鵜呑みにして情報と違えば、少なくとも多少は混乱するはずだ。その混乱は戦闘中に限っては致命的であるため、鷹宮は話す前に先に釘を刺しておく。

 

「だが、アスモデウス本来の能力はともかく、ゲーム中の制限という奴の言葉からこの推測は確率としては高いものと考えておけ」

 

鷹宮の言葉に対して、二人は理解したと言うように頷く。

それを確認した鷹宮は、それぞれ二人に問い掛ける。

 

「お前らはどの程度奴の能力を見抜いている?」

 

「えっと、他人に変身しないと他人の技は使えない?」

 

「あとは変身する時は派手に光って、時間差があるってところかしら?」

 

鷹宮に問われた二人は、思いつくアスモデウスの能力を述べていく。

 

「あぁ、一目瞭然なのはその二つだ。そして他人を模倣するといっても顕現しているギフトまでは模倣できないはずだ」

 

あくまで模倣するのは容姿と能力であって、“生命の目録”やディーンといった装備する、または独立したギフトは模倣できないと考える。飛鳥が一番相性がいいと言ったのは、飛鳥本人の戦闘能力は低いもののディーンはこの中で最も威力の高い攻撃力を誇るからだ。

 

「それと推測を合わせて戦闘方針を練る必要がある。まずはーーー」

 

 

 

 

 

 

「さて、残りはあと何チームかしら?」

 

アスモデウスは足元に倒れている二人組を見ながら考える。

第二予選の参加人数は三十人、チームで換算すると十チームが集まっている。自分は二チーム倒したし、鷹宮達は残っているだろう。他に参加者同士の戦闘を考えると・・・。

 

「残りは五チームくらいーーーあ、一チーム遭遇」

 

だがそう言う彼女の周りには誰もいない。参加者と遭遇したのはこのアスモデウスではなく、もう一人のアスモデウスである。彼女達は別々に憑依した自分と相互に情報をリンクさせることができるのだ。

 

「ということは、あと三・四チームだけね。・・・そろそろ此方からも探そうかしら」

 

アスモデウスはゲームを終了に近付けるべく変身を開始する。しかし、その姿は今までに見せてきた人型ではなく異形のものだった。

体長は小型車くらいの大きさとなり、四足歩行の獣姿を形取る。そして最も特徴的なのは三つに分かたれた頭部である。変身の光が収まり現れたのは、漆黒の毛並みをもつ三頭の巨犬ーーーケルベロスだった。

 

ケルベロスとなったアスモデウスは犬の優れた嗅覚を利用して索敵を開始しーーー上空に異物の匂いを感知して振り仰ぐ。

 

 

 

そこで見たのは、隕石の如く重力に引かれて落下する紅き巨兵の姿があった。

 

 

 

アスモデウスはそれを確認して可能な限り後方へと跳躍する。

その直後、ズドォォォン!!! と彼女が立っていた場所を含めて辺り一帯を陥没させながら、それは着地した。

 

「DEEEEeeeeEEEEN‼︎」

 

戦闘の開始を告げるように紅き巨兵ーーーディーンは雄叫びを上げる。

 

「GuRuuuuuuuuuッ!!!」

 

それに対して、後方へと跳躍していたアスモデウスも着地前から威嚇するように唸りを上げる。

しかしそれはディーンへと向けられたものではない。その巨体から跳躍し、彼女が動くことのできない空中にいる間に攻撃を仕掛けようとしている鷹宮と耀へ向けてだ。

 

「ハッ‼︎」

 

鷹宮は犬の身体では防ぐことの難しい背中の上へと紋章を展開して逆さに着地し、真下へと跳躍すると同時に前転の勢いを加えて踵落としを放った。

まともに食らったアスモデウスは残り少ない地面への落下距離を叩きつけられ、衝撃のままに地面をバウンドする。

 

「はあぁぁ‼︎」

 

さらに攻撃は止まらず、バウンドした身体の斜め下へと潜り込んだ耀が、鷹宮と同じように掌へと圧縮した旋風を下腹部へと叩き込む。

鷹宮が引力によって圧縮した空気を解放して暴風を放つのとは異なり、耀は旋風を操って圧縮した空気を解放した後、さらに解放した空気を操り相手に集中してぶつけるので単純な風の威力は耀の方が強い。

 

地面へと叩きつけられた直後、アスモデウスは再び空中へと打ち上げられて吹き飛ばされる。

 

「行きなさい、ディーン‼︎」

 

そこへ向かって飛鳥を乗せたままのディーンが走り寄り、巨大な拳を振り上げていく。

 

 

 

 

 

 

《まずは奴の戦闘スタイルだ。力を制限しているからか元来からか、複数の技による多彩な戦略を主としている》

 

《辰巳君の雷とレヴィさんの水による合わせ技のことね》

 

《あぁ。だがこの戦略には一つ穴がある》

 

《・・・次々に変身する必要がある》

 

《そうだ。そして変身中の時間ーーー約一秒の間は恐らく攻撃することができない》

 

《だったらその一秒を狙って攻撃を仕掛けるの?》

 

《いや、その短い時間で無理に攻撃を仕掛けて間に合わなかった場合、逆にカウンターを食らう可能性がある》

 

《だったら基本方針としては・・・》

 

《ーーー奇襲から始まり、変身する暇さえ与えない連続攻撃だ》

 

 

 

 

 

 

今のところ作戦は成功している。このまま飛来するアスモデウスを二人の元へと殴り返して連撃を繋げ、できれば憑依を解除させるまで続けていく。

 

「GuRuaaaaAAAA!!!」

 

そんな考えの飛鳥へと向けて、ケルベロスと化した三頭のうち右端の口から豪炎が吐き出される。

それに対してディーンの動きが一瞬だけアスモデウスへの攻撃から飛鳥を守る防御に向かおうと停滞するが、

 

「構わないわ‼︎ そのまま撃ち抜きなさい‼︎」

 

それを飛鳥は抑え、攻撃するように命令する。

ディーンの拳圧で豪炎を吹き飛ばせば、元は黒ウサギの審判衣装として加護が与えられた紅いドレスと雪国仕様で肌の露出が少ない今の衣装ならば耐えられるはずだ。散った豪炎であっても完全には防げないかもしれないが、感電覚悟だった鷹宮を見習い多少の火傷は覚悟しようと決めた。

 

そして、豪炎で隠れたアスモデウスの姿を予測して巨大な拳を突き立てる。

 

(〜〜〜ッ、熱っつい‼︎ というより肌がチリチリして痛い‼︎)

 

咄嗟に腕で顔を覆ったために火傷は免れたが、熱量はどうしようもない。飛鳥はすぐに顔を露わにしてディーンの拳の先を見つめるがーーーいない。殴り飛ばした様子も見られない。何処に行ったのかと思考する間も無く、

 

 

 

「ーーー後ろががら空きだぜ」

 

 

 

「え?きゃぁ⁉︎」

 

声と同時に飛鳥の背中へと衝撃が走り、ディーンから蹴り飛ばされた。飛鳥が地面と衝突する間一髪のところで耀が飛び込んで受け止める。

 

「飛鳥、大丈夫?」

 

「痛ったぁ〜・・・。えぇ、助かったわ春日部さん。ありがとう」

 

飛鳥は顔を覗き込んで心配する耀にお礼を言って立ち上がる。

ディーンの上を見ると黒く尖った翼を生やした知らない男が飛んでいた。飛鳥と鷹宮は知る由もないが、耀はその男がレヴィの姿で戦っていたアスモデウスに倒された三人組の一人であることを思い出していた。

 

「もう、途中まで上手くいってたのに」

 

要するに、先程アスモデウスが放った豪炎は第一予選で赤星がやった目眩ましと牽制である。その隙に飛べるプレイヤーに変身して背後に回ったのだ。

 

「奇襲で倒せるほどアスモデウスは弱くない。次に切り替えろ」

 

「えぇ、分かってるわ」

 

奇襲が失敗したため、ここからは基本戦略ーーー攻めて攻めて攻めまくるのみだ。空中では耀を中心に、地上では鷹宮を中心に戦いを組み立て、地と空をディーンの巨体で対応しつつ隙あらば大打撃を狙っていく。

だがアスモデウスも魔王として経験を積んできた猛者だ。手加減しているという言葉が嘘のように巧みな攻防を三人相手に繰り広げる。

 

レヴィに変身すれば文字通り流水の如く攻撃を受け流し、男鹿に変身すれば雷電の一撃をもって戦闘の流れを持っていき、鷹宮に変身すれば引力によって三人の連携を振り回し、レティシアに変身すれば“龍影”を使って三人同時に相手取る。

他にも知らないプレイヤーに変身して戦闘を進めるのだが、変身の切り替えが絶妙過ぎて一秒の変身時間を狙うことも困難となっていた。

 

 

 

「よっしゃ、まだ喧嘩してんじゃねぇか」

 

 

 

そんな第二予選の最高潮ともいえる激戦の中、呑気な声が横から聞こえてきた。

四人は警戒しながらも戦闘を中断して声の方へと向く。そこに立っていたのは仮面を着けた筋肉質の男だった。

 

「なんだ男鹿、お前だったのか。俺も混ぜろよ、お前だけ二回も喧嘩できるなんて不平等じゃねぇか」

 

と、今現在男鹿に変身しているアスモデウスに話し掛けてくる。

その言葉から全員がこの男性が男鹿の知り合いであることを理解し、鷹宮に関してはほぼ誰かを特定できていた。

 

「俺は悪くねぇだろ。そんな言うならお前がこいつらと喧嘩するか?こいつら結構やるぞ」

 

もちろん第一予選に出ている男鹿が第二予選に出ているわけがないのだが、それを分かっていないと判断したアスモデウスは試しに振ってみた。

 

「ほぉ、お前がそこまで言うのか。面白そうじゃねぇか」

 

(これはただのお馬鹿なのか天然なのか、この子の方も面白そうね)

 

やはり分かっていなかった男に内心面白がるアスモデウス。

だが、誰か分からない飛鳥と耀からすれば面倒なことになったという思いしかなかった。

 

「悪いけど先に倒す」

 

逸早く行動に出たのは一番近かった耀だった。高速で飛翔して懐に入り、一撃で沈めるべく拳を振るう。

 

「ーーー細ぇ腕の割りには随分重い拳じゃねぇか」

 

が、男はその場に留まるどころか痛そうな素振りすら見せずに耀を一瞥する。

 

「ッ、だったら‼︎」

 

物理攻撃は効かないと判断した耀は少し後退しながら掌に空気を圧縮し、直撃すれば小型車程の大きさだったアスモデウスすら吹き飛ばした暴風を叩き込もうとする。

それに対して男も突き出された手掌に向けて拳を打ち込んだ。

 

 

 

ただそれだけで圧縮した空気は霧散し、耀の手はいとも簡単に弾かれる。

 

 

 

(嘘・・・まさか、十六夜と同じギフト無効化のギフト⁉︎)

 

色々と思考を巡らせるも答えなど導き出せるはずもなく、次に何をされるかを考えて身を強張らせ、

 

 

 

「待ちなさい‼︎」

 

 

 

再びの乱入者の凛とした声により、またもやその場の動きが止まった。

今度は女性のようで、同じく着けている仮面から黒色の長髪が背中へ流れている。

 

「貴方ねぇ、何でもかんでも戦闘を見つけたら突っ込んでいくの止めなさいよね」

 

「男鹿もいるしいいじゃねぇか」

 

「男鹿が第二予選に出てるわけないでしょ。偽物よ、偽物」

 

乱入してきたはずなのに呑気に会話をしている二人に鷹宮が話し掛けた。

 

「邦枝、東条。こいつがアスモデウスだ。参戦しないなら退いてろ」

 

鷹宮は石矢魔高校の制服を着ているため、乱入者の女性ーーー邦枝葵は自分達が知られていても不思議ではないと思ったのだが、

 

「おい、もうバレてんぞ。オーナーが乗り乗りで選んだ仮面が台無しじゃねぇか」

 

乱入者の男ーーー東条英虎は変わらず呑気な反応だ。

 

「ーーーゼブル・・・」

 

そこまで黙って見ていたアスモデウスが痺れを切らしたのか、右拳に雷電を纏って構える。狙いはギフトを無効化したであろう東条ではなく葵だ。

 

「・・・ブラストォォッ‼︎」

 

葵はそれを見た瞬間にアスモデウスへ向けて走り出し、()()()()()を抜く。

 

「心月流抜刀術・()()()()()()()ーーー追走蓮華」

 

右の刀を抜刀の構えで持ち、左の刀を逆手に峰を向けて右の刀に添わせる。右の刀を振り抜いて雷撃とぶつかりーーー斬り裂く。

 

(刀で雷撃を斬った?あの刀も無効化・・・っていう感じじゃないわね)

 

普通なら鉄の刀に電気で感電するはずだが、打ち消されたという感覚もアスモデウスにはしなかった。

そして冷静に分析しているが距離を詰め寄られ刀の間合いに入り、拳を振り抜いた姿勢の彼女では避けることができない。

 

右の刀の軌跡をなぞるように、振り抜いた身体の捻りの勢いに乗せて左の刀を振り抜く。腹部に直撃してアスモデウスは吹き飛ぶが、空中で姿勢を正して地面に足を付け、地面を滑りながらも立ち留まった。

 

「やるな邦枝。まぁ相手が三人だろうが五人だろうが纏めてーーーあ」

 

アスモデウスが喋っていると突然言葉を区切り、宙から舞い落ちる“契約書類”が視界に入る。これの意味するところはつまり・・・

 

「残り二チームとなったため第二予選通過者はお前らだ。盛り上がってきたところ悪いがな」

 

そう言って戦闘姿勢を解き、男鹿の姿から元に戻るアスモデウス。

 

「ちょっと待ちなさい。勝利条件は貴女の憑依を解くことのはずよ。残ったからって勝ちにはならないんじゃないかしら?」

 

その場を代表して飛鳥が問い掛けたのだが、それに対してアスモデウスは、

 

「それならもし相手が全員弱かったら誰も合格できないじゃない。いったい何時から戦闘で私を打ち倒して憑依を解除させなければならないと惑わされていたのかしら?」

 

言われたみんなが一人を除いて納得する。その場合はてっきり全員敗北にするのだと考えていたのだが、そこまで厳しいルールではなくアスモデウスや他の参加者から生き抜くことが勝利条件でもあったらしい。

確かに残り二チームとなった状態で彼女が憑依を解除すれば勝利条件にも問題なく、このフィールドには隠れる場所が用意されていないので一時やり過ごすことはできても何時かは戦闘になって参加者は減っていく。それに勝利条件は“憑依を解除する”であって過程は含まれていない。

 

「ちょっと待て、俺は何もしてねぇぞ‼︎」

 

納得できなかった一人ーーー東条が抗議する。勝利条件云々ではなく耀の旋風を打ち消した以外に何もしていないので物足りないようだ。

 

「来るのが遅かったと思って諦めなさい。それでは、また会場で」

 

アスモデウスが光ると雪だるまの一体に戻ってしまった。それに伴い二チーム共にその場から消え、予選会場へと戻るのだった。




東条や邦枝もついに参戦‼︎ 二人のギフトについては追い追い説明しますが、取り敢えず邦枝の技の解説をします。

心月流抜刀術・断在二刀流壱式、追走蓮華:簡単に説明すると、“るろうに剣心”の天翔龍閃に双龍閃を繋げたような技。あくまで動きの例えであり、空を斬って真空を生み出し相手を引き寄せたりはしない。

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