子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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皆さんお待たせしました‼︎
いやぁ、長らく執筆から離れると中々に筆が乗りませんね……。
しかし何とか第三章も終わらせることができました‼︎ 今回はエピローグとして伏線を回収したり張ったりの内容になっております。

それではどうぞ‼︎


“魔遊演闘祭”終了

“魔遊演闘祭”のメインギフトゲームである“乱地乱戦の宴”が終了した後、会場で観戦していた観客達は既に解散することとなっていた。

それは決勝に残った参加者達の疲労を考慮したものであり、特に今回は戦闘色が強かったため半数近くの参加者が気絶している状態で表彰式などできるはずもない。治療も含めて回復に当てられる期間は二日。つまり表彰式は三日後となっており、同時に一週間続いた“魔遊演闘祭”の閉会式を行う手筈になっている。

そのことをサタンが全員に伝え終え、解散が告げられるとともに審判業からも解放された黒ウサギは一目散に控え室へと駆け出していった。ギフトゲームを盛り上げるために振りまいていた笑顔は鳴りを潜め、一転して心配そうな表情を隠し切れていない。

控え室が見えると黒ウサギは駆ける勢いそのままに扉を開け放った。

 

「皆さん‼︎ お怪我の方は大丈夫ですか⁉︎」

 

いきなり飛び込んできた黒ウサギに、部屋に残っていた飛鳥と耀、葵は目を丸くしている。

試合後には控え室に残っていたベヘモットとプルソンはギフトゲームが終了すると部屋から出ていったためおらず、氷狼は変わらずフルーレティに寄り添って寝ていたが目線だけ向けるとまたすぐに寝てしまった。少し前に運ばれてきたレティシアも未だ眠ったままである。

 

「あぁ、飛鳥さんに耀さん、それに葵さんもお揃いで……っと、それよりもーーーあぁ、いえ。決して飛鳥さん達をそれより扱いするわけではないのですが……‼︎」

 

「あぁもう、一旦落ち着きなさい黒ウサギ。はい、深呼吸。吸ってー、吐いてー」

 

慌ただしい黒ウサギを落ち着けるべく、有無を言わさずに深呼吸を促す飛鳥。黒ウサギも素直に掛け声に合わせて深呼吸を繰り返しており、耀と葵は子供を見守るような思いで彼女を眺めていた。

 

「黒ウサギさん、落ち着きましたか?」

 

「は、はい。お見苦しい姿をお見せして申し訳ありませんでした……。ところで、辰巳さん達は?」

 

「まだ治療中じゃないかな?特に最後まで戦ってた二人は重症だろうから、長引いていても仕方ないと思うよ」

 

審判役としてギフトゲームの解説をしていた黒ウサギには、誰がどの程度の怪我を負ったのかがリアルタイムで分かっていた。そして耀の言う通り、一番怪我を負っていたのは男鹿、次いで十六夜と最後まで勝ち残っていた二人であることも理解している。

 

「まったくもう……辰巳さんも十六夜さんも、ギフトゲームとはいえやり過ぎなのですよ。特に辰巳さんは脚を負傷されていたというのに、十六夜さんはわざわざその脚を狙うように攻撃して……」

 

「脚の怪我を押してまで戦場に来てんだ。その弱点を狙わねぇってのはただの驕り……寧ろ男鹿なら“手ぇ抜いてんじゃねぇ”って怒ると思うがな」

 

突然割り込んできた声に一同が振り返れば、部屋の入り口には治療を終えて所々に包帯を巻かれた十六夜が立っていた。

彼は口元に笑みを浮かべながら軽い足取りで部屋に入ってくる。どうやら身体を動かすのに怪我は何も問題ないようだ。

 

「十六夜さん‼︎ よかった、意外とお元気そう……というよりご機嫌が良さそうですね?」

 

「まぁな。これまでの人生でここまで怪我を負ったのは初めてだが、それ以上に歯応えのある戦いができて楽しかったぜ」

 

十六夜が満身創痍になるまで戦いを楽しめる相手など下層ではそうそういない。そんな中で実力が拮抗する相手と巡り会い、限界まで力を振り絞って得た勝利が嬉しくないわけがなかった。それはギフトゲーム後、勝利の余韻を噛み締めて腕を突き上げるという傲岸不遜とも言える彼らしからぬ行動が物語っている。

 

「それはそうと逆廻君、優勝おめでとう。……そういえば古市君とレヴィさんはどうしたの?一緒のチームでしょ?」

 

葵は十六夜に優勝を祝う言葉を贈るとともに、此処にはいない古市とレヴィについて訊いてみた。古市は重症というほどの怪我は負っておらず、レヴィに至っては無傷であるため治療が終わるのは十六夜よりも早いはずなのだ。

 

「あぁ、古市なら来る途中でベヘモットの爺さんに呼ばれて何処(どっ)かに行ったぞ。レヴィも一緒に着いていってる」

 

「ベヘモットさんに……?いったい何の話をしてるのかしら」

 

「さぁな。それより駄弁るんなら場所移しといた方がいいぞ?休んでる奴らを起こしちまうからな」

 

注意された女性陣は口を閉じて眠ったままの一同に視線を向ける。特に黒ウサギが来てからは少し声量が上がっていたかもしれない。周囲を明るくするのは彼女の良さだが、病室を兼ねている控え室では声量を抑えるべきだろう。

 

「じゃ、俺は宿に帰って寝るとするわ。流石に今からはしゃぐ元気は俺にもねぇからよ」

 

十六夜は女性陣に注意をするとそのまま身体を翻して控え室から出ていってしまった。やはり精神的な疲労はともかく、肉体的な疲労は半端ではないのだろう。

珍しく十六夜の疲れたような発言に釣られ、飛鳥達も顔を見合わせる。一応眠っているレティシアや赤星が起きるのを待つ意味も含めて控え室で休んでいたのだが、当然ながらギフトゲームに参加していた彼女達にも疲労は溜まっているのだ。

 

「……私達も疲れていることだし、このまま帰りましょうか」

 

「そうだね。温泉に浸かって怪我も治しておきたいところだし」

 

飛鳥と耀の場合は十六夜とは異なり、肉体的な疲労よりも精神的な疲労の方が大きかった。怪我自体は耀の言う通り、温泉に浸かれば次の日には全快しているだろう。

 

「私は一度、帰る前に白夜叉さんを探してみるわ。多分まだ会場内にいると思うし」

 

「でしたら黒ウサギもお付き合いしますよ。ついでに辰巳さんの様子も見ておきたいですから」

 

ということで飛鳥と耀は十六夜に続いて宿に帰ることにし、黒ウサギと葵は控え室を出て男鹿の容態確認と白夜叉の捜索に繰り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

黒ウサギと葵が男鹿の容態を確認したところ、男鹿は両脚にヒビが入っているため治療を施されて控え室で眠っている参加者達とは異なり継続的な治療を施しているとのことだった。他の参加者は目覚めれば好きにしていいことになっているが、男鹿だけは目覚めても一晩は治療に充てるというので明日まで運営本部で過ごすことになるらしい。

それから二人は白夜叉捜索を開始したのだが、苦労することなくあっさりとギフトゲーム会場となった広場の端で話し込んでいる姿を見つけることができた。

 

「あ。葵さん、いましたよ‼︎ 白夜叉様と英虎さんに……忍さん?」

 

「なんで鷹宮が白夜叉さんや東条と一緒に……?」

 

黒ウサギと葵が白夜叉を見つけた時、その隣には東条と何故か鷹宮も一緒にいて何やら話をしていた。

東条はともかく鷹宮がいることを不思議に思いながら二人が近付くと、接近に気付いた白夜叉が手を挙げて二人に呼び掛ける。

 

「おぉ、二人ともギフトゲームお疲れさん。二人してどうしたんじゃ?私に何か用かの?」

 

「用と言うほどではないんですけど、この後はどうされるのかを確認に来ました。勝手に帰るのはどうかと思いましたので」

 

「本当におんしはクソ真面目だのう。祭り中は好きにしてくれて構わんぞ」

 

白夜叉は葵の真面目な性格につい苦笑を浮かべてしまう。細かいところまで気が利くあたり、同じく生真面目な女性店員とも短い付き合いながら仲良くやっている。

葵の話……というより確認が終わったところで、黒ウサギは気になっていたことを訊いてみた。

 

「あの〜、ところで忍さんは白夜叉様といったい何を話されていたのですか?」

 

「別に。お前が気にするような内容じゃない」

 

普段の鷹宮は相変わらずディスコミュニケーションの塊のような性格だが、その素っ気ない態度にも慣れてきた黒ウサギはめげずに視線で疑問を訴え続ける。

そして鷹宮もその程度の視線で揺らぐわけもなく、隣で聞いていた東条が黙り込んだ鷹宮の代わって勝手に答えた。

 

「コイツは“サウザンドア(ウチ)イズ”にいるチビッ子の様子を訊きに来たみてぇだぞ」

 

「ペストちゃんの様子を……?」

 

東条の回答に対して何気なく呟いた葵だったが、その呟きを聞いた黒ウサギは一瞬だけ呆然とし、その意味を理解して驚いた。

 

「ペストちゃん……って、まさか“黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)”のことですか⁉︎」

 

“黒死斑の魔王”・ペストーーー三週間ほど前に“火龍誕生祭”で死闘を繰り広げた“グリムグリモワール・ハーメルン”のリーダーである魔王の名だ。加えて当時は鷹宮も魔王陣営として参戦しており、ペストは第一の王臣でもある。

“ノーネーム”が“打倒魔王のコミュニティ”として本格始動した初めての相手であり、激闘の末に倒されて箱庭から姿を消した……のだが、

 

「おんしらは“The PIED PIPER of HAMELIN”の勝利条件を全て満たしておったからな。ペストの隷属に成功したことで消滅後に箱庭へと再召喚され、今は“サウザンドアイズ”でその身を預かっておる。これについては依頼の報酬と合わせて“魔遊演闘祭”の後にでもジンを呼び出して話をするつもりだったのだ」

 

「そうだったんですか……アレ?ではどうして忍さんはそのことを知っていたのですか?」

 

“魔遊演闘祭”の後に話す予定だったのならば、王臣紋の繋がりがあるとはいえ鷹宮にだけ話すとは思えなかった。かと言って東条や葵の反応を見る限りでは二人がペストの話を鷹宮に振っていたとも思えない。

そういう意味を込めた黒ウサギの質問は、やはり鷹宮ではなく白夜叉が代わりに続けて答える。

 

「私もペストから聞いたんだがの。王臣紋が魔力を供給するパスの役割を果たすという性質上、供給先である王臣への魔力の流れから大まかな位置が分かるらしい。その逆もまた然り、だそうだ」

 

もちろん魔力の扱いに精通していなければ平常時の魔力など離れた距離からでは捉えることもできないが、鷹宮は十二歳の時点で紋章術の基礎を半日で習得できるほど魔力の扱いに長けていたのだ。ごく僅かな魔力であっても自らの魔力が流れ出ていれば鷹宮はその先を特定することができる。

しかし鷹宮が白夜叉を訪ねた理由はその安否を確認するためではなかった。

 

「ギフトゲームで消されたはずのペストへの魔力供給が続いている事に疑問を感じていたが、まさか魂まで砕かれた存在を再召喚できるとは思わなかったな」

 

そう、鷹宮がわざわざ白夜叉を訪ねて訊きたかったのは殺されたはずのペストが何故生きているのかを確認するためである。そこには明確な理由があったものの、その方法は予想外で非常識極まりない代物であった。

ペストは魔王と箱庭の制約により、隷属に成功したことで木端微塵に砕かれた魂さえも再構築して箱庭へと呼び戻されたのだという。つまり箱庭のルールは本人の意思すら関係なく、死の概念すらも飛び越えて適用されるということだ。

 

「とまぁ、そういうわけでおんしら二人には話したが、この事は暫く内密に頼みたい。実は“グリムグリモワール・ハーメルン”は本拠を持たないコミュニティであったことから、規定報酬の判断は“黒死斑の魔王”の推定桁数の認定待ちでな。推定桁数が認定され次第、規定報酬含めまとめて報告しようと思っておる」

 

「なるほど。そういうことでしたら、皆さんには伏せておきますね」

 

「うむ、よろしく頼む」

 

ついでに話の流れでペストが鷹宮の王臣だと知った東条と葵にも口止めをしておく白夜叉。

それから少し話した後、白夜叉は“罪源の魔王”達と話をしてくると言ってその場は解散することとなった。

 

 

 

 

 

 

黒ウサギ達女性陣が控え室から出ていく少し前。

治療後すぐにベヘモットから声を掛けられ連れていかれた古市とレヴィであったが、ベヘモットは歩くばかりで肝心の用件を話そうとしない。

 

「なぁ、いったい何処まで行くんだよ?」

 

「いや、ぶっちゃけ話自体は何処でしてもいいんじゃがの。落ち着いて話せる場所で話したいと思ってな」

 

「なになに?なんか面白そうな話?」

 

「それは当人の受け取り方次第じゃな」

 

ベヘモットの何か含むような言い方にレヴィが反応してきた。面白い事に目がないレヴィが食いついてしまったが、ベヘモットは軽くあしらいながら人気の少ない場所に着くと古市に向き合う。

 

「さて、こんな所でいいかの……ところで少年。一応なんじゃが、お前さんのギフトカードがあれば見せてくれんか?」

 

「ギフトカード?別にいいけど……」

 

ベヘモットに言われて古市は自身のギフトカードを手渡した。記されているのは“適応者(アダプテーション)”と、使い切った“召喚憑依紙”の代わりにレヴィとの契約紋である“海竜紋(ナハシュスペル)”が追加されている。

そのうちの“適応者”についてベヘモットが質問してきたので以前に十六夜が述べていた仮説をそのまま説明したのだが、それを聞いたベヘモットは少し考え込んでから言葉を発した。

 

「確かにその仮説を聞く限り毒物耐性と魔力耐性はあるんじゃろうが、お前さんが適応したのはそれだけではないと思うぞ」

 

「……は?いったい何のことだよ?」

 

唐突に言われた自覚していない適応に古市は意味が分からないといった表情を浮かべるが、ベヘモットはレヴィにもその適応の有無を確認する。

 

「レヴィ。おぬしも気付いておるのではないか?」

 

「ん、まぁね。ギフトゲーム中に発覚したら古市君のリアクションが面白いかなぁ、と思って黙ってたけど……問題なくて私も楽しめたから結果オーライってところ」

 

「ちょっと待ってちょっと待って。もしかして俺、知らないうちに危ない橋渡ってた?」

 

レヴィの告白に冷や汗を流しながら確認する古市だったが、彼女はそれに対して首を横に振って否定する。

 

「それは大丈夫。()()()()()()()()()()()()()()()()()今は私と契約してるからね。戦闘力は低くなっただろうけど戦えてはいたよ」

 

「簡易契約できなかったとしても、って……まさかとは思いますが、契約するとあのティッシュって普通は使えなかったり?」

 

「その通りじゃ。通常、人間と魔界の悪魔の契約は互いに一人しかできん。それは契約も簡易契約も同じじゃわい」

 

その異常を可能にしているのが古市のギフト、“適応者”である。箱庭に来る前のティッシュ騒動で毒を吸い続けたことによる毒物耐性、魔力を送られ続けたことによる魔力耐性、そして複数の悪魔と簡易的とはいえ連続して契約し続けたことにより並列契約を可能とする憑依体質へと肉体が適応していたのだ。

 

「儂はてっきり複数の悪魔と契約できる天稟の才と思っておったんじゃが……それ以上の代物が出てきたのぉ」

 

「そ、そうみたいだな。……それよりも結局呼び出した用件ってのは何なんだよ?」

 

「おお、そうじゃった。ちょっと待っておれ」

 

ベヘモットは懐から通信機を取り出すと、古市をおいて何処かへと通信し始めた。箱庭に電波の通信基地があるなどとは思えないが、魔界の電波は次元を超越すると聞いたことのある古市はベヘモットの話し相手が魔界の住人であると予想する。

通信相手と軽く挨拶を交わしたベヘモットは、その通信機を古市へと差し出してきた。思わず通信機とベヘモットの顔を見てしまう古市であったが、ベヘモットに促されて通信機を手に取り耳に当てて話し掛ける。

 

「……もしもし?」

 

『ーーー古市か?』

 

「その声は……ヒルダさん‼︎」

 

通信機から聞こえてきた声は、十日ほど前に箱庭から魔界に帰ったヒルダのものであった。

 

『ベヘモットに聞いたぞ、箱庭でも色々と起こっているようだな。ティッシュの補充と簡単な情報収集を済ませてすぐに戻るつもりだったのだが……事情が変わった』

 

ヒルダが言うには、“ソロモン商会”の一員であるヨハンから教えられた研究施設の捜査が始まり、その情報を得るために彼女も暫く残ることにしたのだという。

“ソロモン商会”が箱庭で活動していることが明確になった今、情報は少しでも持ち帰った方がいい。その研究内容ともなればかなり核心に近付けるのではないか、とヒルダは考えたのだ。

 

『とは言っても研究が引き払われた後では、あまり有益な情報は期待できないと思うがな。……そちらは祭りの最中だったか?お前達が本拠に戻る頃には私も戻れるだろう、皆にもそう伝えておいてくれ』

 

「あ、はい。分かりました」

 

そう言って通話を切られた通信機をベヘモットに返しながら古市は確認する。

 

「ヒルダさんとの連絡が用件だったのか?」

 

「そうじゃよ。序でに年寄りの好奇心を満たそうと思ってな、お前さんのギフトの話を聞こうと人気のない場所を選んでいたんじゃ」

 

ギフトはその人の生命線だ。知られても問題がないギフトもあれば、知られれば対策を打たれるギフトもある。その事を考慮したベヘモットは、盗み聞きされないように見晴らしがよく人通りの少ない場所を選んだのだ。

 

(ーーー尤も、好奇心だけが理由ではないがの)

 

ベヘモットには危惧している事柄が一つあったが、それは確証も何もないただの推測であり、その事を話しても不安を無駄に煽るだけだろう。

そう心の中で結論付けたベヘモットは、用件は済んだと別れの言葉を告げてその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

 

“魔遊演闘祭”最終日。メインのギフトゲームが終了し、決勝で敗れて気を失っていた参加者も翌日には全員回復して各々が残りの期間を楽しんでいた。

しかしそれもあっという間に過ぎ去り、今はギフトゲームの表彰式を兼ねた閉会式の最中である。舞台の上には“罪源の魔王”達に加えて白夜叉も立っており、これまで通りにサタンが代表として言葉を発する。

 

「ではこれより、“魔遊演闘祭”の閉会式を始める。とはいっても表彰式がメインなので畏る必要はないがな。最後なので東側の“階層支配者”である白夜叉殿にも舞台に上がってもらった」

 

“罪源の魔王”が白夜叉を舞台に上げたのは“階層支配者”だからという事にしているが、実際には“サウザンドアイズ”との商談により少しでも参加者達が望む景品を揃えようという主催者としての意識の表れである。東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティである“サウザンドアイズ”が裏にいる以上、余程の理不尽な要望でない限りはほぼ叶えることができるというわけだ。

 

「それでは優勝した“ノーネーム”の逆廻十六夜・古市貴之チーム、準優勝した同じく“ノーネーム”の男鹿辰巳・レティシア=ドラクレアチーム、三位である“サウザンドアイズ”の赤星貫九郎・ベヒモスチームは舞台の上へ」

 

舞台下の最前列で待機していた決勝参加者のうち、呼ばれたチームの人達が舞台へと上がっていく。

優勝・準優勝は雌雄を決する形で勝敗を決めたので明白だが、三位の決定はサバイバルであるため本当に僅差であった。それこそ戦闘を始める時間が遅かったり戦闘が長引いたりといった、偶然や運の要素が大きい。

それぞれのチームで固まって呼ばれた順番に舞台上で並んでいき、サタンの前に整列する。

ーーーと、そこで上空から二枚の“契約書類”が舞い落ちてきた。

それを何かの演出だと勘違いした参加者の多くはいったい何が始まるのかと見守っていたが、大祭関係者や“罪源の魔王”達は訝しげな視線で“契約書類”の行方を追っていく。

その“契約書類”は迷いなく舞台上の二人ーーー男鹿と古市の手元に収まった。

 

「あん?なんだこれ……?」

 

「え、俺に……?」

 

男鹿と古市も不思議に思いながら“契約書類”に目を通し、二人の傍にいた十六夜とレヴィ、レティシアも覗き込んで内容を確認する。

 

 

 

【ギフトゲーム名 “天地創造の化生達”

男鹿辰巳・古市貴之により“天地創造の化生達”はクリアされました】

 

 

 

「……?」

 

「あぁ……そういえば私、こんなギフトゲーム考えて二人とやってたなぁ」

 

レヴィは思いっきり他人事のように感慨深く思い返しており、男鹿に関しては“契約書類”を見てもまだ頭を捻っていた。ギフトゲームの主催者と参加者の双方がその存在をすっかり忘れていたようだ。

 

「いやいやいや‼︎ 確かに二十話近くこの事に触れなかったから誰も覚えてないかもしれませんけど、レヴィさんは忘れてちゃ駄目でしょう⁉︎ ていうかどのタイミングでゲームクリア⁉︎ 何がどうなってゲームクリアになったの⁉︎」

 

そんな二人に怒涛のツッコミを入れている古市であるが、彼自身も軽く忘れていたことは秘密だ。

そこで“契約書類”から顔を上げて周囲を見回したレティシアが一人納得したように頷いた。

 

「……なるほど。“捧げる神”とは白夜叉のことだったのか。いや、これは神霊であれば誰でも良かったのか?」

 

「さぁな。少なくとも白夜叉を想定して作られたってのは間違いないと思うぜ。そうだろ?」

 

「うん、その通りだよ〜」

 

レティシアの言葉を拾った十六夜は、自分の考えも合わせて“契約書類”を作った本人であるレヴィに確認を取る。流石にゲームを開催していることを忘れてはいてもその内容自体は覚えていたようだ。十六夜の疑問に淀むことなくレヴィは答えた。

 

「といっても景品は私との契約を想定してたからなぁ……“ノーネーム”にも入るし、クリア報酬は前払いだったってことでいい?」

 

レヴィは既に自分との契約を交わしている古市に問い掛ける。

 

「俺は別に構いませんけど……なんか釈然としないというかなんというか、こんなクリアで良いのか?色々な意味で」

 

「いいんじゃないか?どうでも」

 

“どうでもいいんかい”、と心の中で思いながら十六夜の言葉に溜め息を吐く古市。まぁ確かに十六夜の言うように此処で言い合う話ではないのだろう。それはどうしてかと言えば、

 

「……そろそろ表彰式の続きを進めてもいいだろうか?」

 

今まで成り行きを見守っていたサタンが話の区切りが付いたであろうタイミングで割って入った。

そう、今は表彰式の真っ只中。個人的な問題で中断させてしまっているところなのである。

 

「あ、すいません。ご迷惑をお掛けしました、どうぞ続けてください」

 

古市が謝罪して“契約書類”を仕舞い、男鹿も同じように“契約書類”を仕舞って集まっていた三人も元に戻る。

それからの表彰式・閉会式は恙無(つつがな)く終了し、一週間続いた“魔遊演闘祭”の幕を閉じたのだった。




終わったー!!! “原作での空白期間でオリジナルの話を挟もうかなぁ”と軽い気持ちで考えていた過去の自分も、まさかここまでの長編になるとは思っていませんでした。
第四章からは原作の流れに戻らせてもらいますので、これまでと変わらず気長にお待ちいただけると嬉しいです。

あと小説情報にも新しく記載していますが、pixivで軽いリメイク版というか改訂版の投稿も開始しました。いつか区切りのいいところでハーメルンにも反映させようと思っております。
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