子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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皆さんお待ちかねの白夜叉とのギフトゲーム‼︎
果たしてどういう結果になるのか・・・

それではどうぞ‼︎


“挑戦”か“決闘”か

刹那、五人の視界が爆発的に変化し、投げ出された場所は白い雪原と凍る湖畔ーーーそして、太陽が水平に廻る世界だった。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”ーーー太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」

 

白夜叉の問いかけに十六夜達は息を呑む。あの男鹿でさえも冷や汗をかいている。転送でどこかへ移動したわけではなく、文字通り世界を作り出したようなものだ。

 

「水平に廻る太陽と・・・そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、お前を表現してるってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原、永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の一つだ」

 

「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤・・・⁉︎」

 

「して、おんしらの返答は?“挑戦”であるならば、手慰み程度に遊んでやる。だが“決闘”を望むならば、魔王として命と誇りの限り戦おうではないか」

 

勝ち目がないのは一目瞭然だが、自分達が売った喧嘩を取り下げるにはプライドが邪魔をした。

 

しばしの静寂の後、

 

「参った、やられたよ。さすがにこれだけのゲーム盤を用意されたらな。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

“試されてやる”とは随分と可愛らしい意地の張り方だと笑い、他の三人にも問う。

 

「く、くく・・・して、他の童達も同じか?」

 

「・・・ええ。私も試されてあげていいわ」

 

「右に同じ」

 

苦虫を噛み潰したような表情で返事をする二人に対し、男鹿は、

 

()る前から逃げるってのは俺のポリシーに反するんだが・・・」

 

この言葉を聞いて黒ウサギは慌てて止めに入る。

 

「だ、駄目ですよ‼︎ いくら辰巳さんが強くても白夜叉様には勝てません‼︎ 無謀すぎます‼︎」

 

「分かってるっての。それに殺し合いをするつもりもねぇよ。だからよ白夜叉、俺とは喧嘩しようぜ?」

 

それを聞いた白夜叉は魔王としての笑みを浮かべる。白夜叉にとっても予想外の反応だったようだ。

 

「なかなかに面白い提案じゃの。決闘として殺し合うのではなく殴り合いをしたいと。よかろう、魔王の力を少しばかり教えてやるとするかの。だが、その前に他の三人の試練を先に終わらせるぞ」

 

そう言って湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと手招きをする白夜叉。

すると、鷲の翼と獅子の下半身を持つ五m程の巨大な獣が現れた。

 

「グリフォン・・・嘘、本物⁉︎」

 

「うむ、あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力” “知恵” “勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

そういうと、虚空から輝く羊皮紙が現れて試練の内容を記述していく。

 

 

【ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

・プレイヤー一覧:逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀

 

・クリア条件:グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

・クリア方法:“力” “知恵” “勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

 

・敗北条件:降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印】

 

 

「私がやる」

 

読み終わるや否や、グリフォンを羨望の眼差しで見つめている耀が挙手した。

 

「ふむ。自信があるようじゃが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我では済まんが」

 

「大丈夫、問題ない」

 

白夜叉も今の段階では耀の実力を確認していないため警告するが、耀は不安を感じさせない声で白夜叉に返す。

 

「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ」

 

「気を付けてね、春日部さん」

 

「次は俺の番だからな。一発で決めろよ」

 

「ダッ‼︎」

 

「うん。頑張る」

 

 

 

 

 

 

ギフトゲームの結果は、耀の勝利である。

グリフォンは誇りを、耀は命を賭けてゲームを行い、見事勝利を収めた。ゲーム終了時にグリフォンの背から落下したが、友達の証として新しく手に入れたグリフォンの“旋風を操るギフト”で飛翔して降りてきた。耀の木彫りのギフトについて盛り上がったが今日のメインイベントはこれからである。

 

男鹿と白夜叉は十mくらいの距離で対峙していた。

 

「それじゃあ次は俺だな。魔王の力を見せてもらうぜ」

 

「そう急かすでない。見物料はそれなりに高いぞ?」

 

そう言って不敵な笑みを浮かべて、輝く羊皮紙に同じように内容を記述していく。

 

 

【ギフトゲーム名 “太陽と悪魔の一撃”

・プレイヤー一覧:男鹿辰巳、ベル坊

 

・クリア条件:白夜叉と戦い、勝利する。

 

・クリア方法:白夜叉に一撃を加える。

 

・敗北条件:降参か、白夜叉に一撃を加えられる。

 

宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印】

 

 

「骨は拾ってやる。頑張れよ」

 

「貴方のことは忘れないわ。頑張って」

 

「グッドラック。頑張れ」

 

「お前ら負ける前提で話すんじゃねぇよ‼︎」

 

問題児三人の頼りにならない声援に男鹿はついツッコんでしまう。

 

「どうした、早くこんのか?もうゲームは始まっておるぞ」

 

「じゃあ、遠慮無く行かせてもらうぜ‼︎」

 

白夜叉が言った時には既に銃弾に迫る速さで動き出していた。

男鹿も白夜叉の実力がわからないわけではない。対峙した迫力は敵意がないにも関わらず、ベヘモット34柱師団団長のジャバウォックより上である。

だから此方の実力が分かっていないうちに先手を仕掛けたのだ。だが、

 

「人間の脚力にしてはなかなかのダッシュ力だの」

 

世間話のような口振りのまま男鹿のラッシュを躱している。防御もせずに、余裕すら感じさせる動きだ。

反撃してくる拳は速く、防御することはできたが勢いは殺せずに元の位置に戻される。

 

「クソッ、ただの肉弾戦じゃ勝ち目がねぇな。いくぞ、ベル坊‼︎」

 

「ダァッ‼︎」

 

ただの徒手格闘で一撃を加えるのは不可能に等しい。

男鹿は雷撃を手に纏わせてゼブルブラストの構えを取る。蛇神をも一撃で追い込んだが、今回はさらに力を上げている。

 

「ほう、悪魔の力を完全に使いこなしておるな。まだまだ楽しめそうだの」

 

放たれた一撃は白夜叉に片手で弾かれる。

だが、それは陽動である。ゼブルブラストを目くらましに今度は紋章術も駆使して速度を倍加させて横から殴りにかかる。

それでも白夜叉の余裕は崩れずに笑みを浮かべたままだ。

 

「ククク。見た目によらず戦闘面では頭が回るようだな」

 

今度は避けずに拳を受け止める。男鹿はそこで止まらずに、掴まれている拳を支点にして裏拳気味に肘打ちを放つ。

白夜叉はそれを回転運動で躱し、男鹿を真似るようにその勢いを利用して回し蹴りを放つ。

 

「ーーーッ、ベル坊!!!」

 

体勢も悪くて避けれないと判断した男鹿はベル坊に雷撃を放たせて不意打ちを食らわせる。今回の試練にはベル坊も参加者として認められている。ベル坊の一撃でも勝利条件を満たすことができるのだ。

だが、白夜叉は回し蹴りの軌道を修正して雷撃を弾く。その一瞬で今度は自ら跳んで距離を取る。

 

「マジかよ。今のをゼロ距離で反応するって・・・どんだけだよ」

 

「いやいや、今のは少し危なかったぞ。こちらも決めるつもりだったからな」

 

白夜叉はそう言うがまだまだ余裕そうである。二回の攻防は白夜叉の力の一端を見るには十分だった。

それを見ていた四人はそれぞれ感想を話し合っている。

 

「ヤハハ、こいつは見応えのある内容だな」

 

「確かにね。辰巳君がここまで強いとは思ってなかったわ」

 

「うん。白夜叉とのやり取りでそれは分かる・・・けど」

 

「ああ、男鹿はギフトを使っているが、白夜叉はギフトを使っていない。実力の差は歴然だ」

 

「じゃあ、辰巳君はやっぱり勝てないのかしら?」

 

「そうとは限らない。白夜叉に勝つこととゲームに勝つことは違うからな」

 

「Yes。十六夜さんの言う通りです。勝敗はまだ分かりません」

 

問題児達は好きに感想を言っているだけだが、黒ウサギは男鹿が心配でしょうがないといった感じで不安そうだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・チッ、仕方ねぇか」

 

そう言って男鹿は懐からスキットルのような水筒を取り出す。

 

「なんじゃ、喉でも渇いたのか?」

 

「そんなところだ」

 

白夜叉の質問を流して水筒ーーーミルクを飲む。

できれば使いたくはなかった。何故ならこのミルクは魔界のミルクで、異世界に来てミルクの補充ができるかどうかが分からなかったからだ。

しかし、このままでは絶対に勝てないので三割だけ使うことにしたのだ。

 

暗黒武闘(スーパーミルクタイム)・・・一八〇CC‼︎」

 

飲み終わるや否や跳び出す男鹿。先程よりも圧倒的に速い踏み込みに白夜叉も慌てて防御する。

しかし力も先程より上がっているので、一回目の攻防とは逆に白夜叉を吹き飛ばした。

 

「・・・いきなり力が増大したの。その水筒に秘密があるのか?」

 

水筒の中身をを飲んだ後に力が増大したことを考えれば白夜叉の指摘は当然のことである。しかし、

 

「だが惜しかったの。この場面で出したということは切り札の一つなのであろう。そして力も見させてもらった。もう油断することはーーー」

 

白夜叉の分析は途中で止まってしまう。

男鹿から紋章が伸びており、白夜叉の全方位を囲んでいるのだ。

 

「くらえ・・・魔王大爆殺ッ!!!」

 

紋章を殴りつけて爆発させ、そこから連鎖的に爆発を起こして威力を上げていく。

このゲームは一撃を加えるだけで勝てる。極論デコピンでも食らえば負けなのだ。全方位から爆発を食らえば、怪我は負わずとも勝利条件を達成できる。さすがの白夜叉でも初見の技を素早く完璧に防御しきるのは無理だろう。

しかしそれを見ても白夜叉は落ち着いており、懐からここに来る時にも出したカードを取りだして言う。

 

「大したものだ。私にギフトを使わせたこと、誇ってよいぞ」

 

すると、白夜叉の足には水でできたような靴が履かれている。

次の瞬間には白夜叉は視界から消えて男鹿の後ろに立っており、かなりの衝撃を伴って凍る湖へと叩き込まれた。

 

ギフトゲームで男鹿の負けが決定した瞬間であった。




今回はここまで‼︎
いや〜、初めての戦闘描写はどうでしたか?
皆さんの満足のいく内容かどうかは不安ですが、感想待ってます。

後、ギアスロールの名前がベル坊になっているのは仕様ですので。
だって誰もベル坊の名前知らないですし・・・。

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