リリカルBuddyStrikers   作:やまさんMK2

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ティアナ目線のちょっとした小話です


幕間

 機動六課の任務は、主に聖遺物(ロストロギア)の確保回収である。スバルを初めとしたフォワードメンバーも幾度かの実戦を経験し、今夜もまたクラナガン郊外の湾岸地域の倉庫街にて極秘裏に輸送されていたロストロギア、レリックの護送任務中に襲来したガジェット・ドローンとの遭遇戦と相成った……だけではなく。

 

「なんで、こういう時に限ってヴィランギルドまで出てくんのよ!」

 

 両手に構えた拳銃型デバイス、クロスミラージュの銃口から矢継ぎ早に魔力の弾丸を撃ちながら、ティアナ・ランスターは悪態をついた。油断ならないとはいえ、普段の訓練や何度か経験した実戦で嫌というほど相手にしたガジェット相手ならまだどうにでもなるが、ヴィランギルドの宇宙人が相手となると話は別だ。

 

「っ!」

 

 物陰から飛び出してきた軍服姿に白い気味の悪いマスクで顔を覆った宇宙人、ヴァイロ星人の攻撃をよけ、返り討ちにとクロスミラージュの一撃を見舞う。一応非殺傷設定のままだが、それでも派手に吹っ飛んで、無数に立ち並ぶ倉庫の壁に叩き付けられてピクリとも動かなくなるのを見ると、殺してしまったかと一瞬不安になるが、即座に頭を切り替えて物陰に隠れ、残りの敵を確認する。

 

(残りは……視認出来る範囲で二人、か)

 

 全部で八人程度のヴァイロ星人が襲撃を仕掛けてきた筈。一人はさっき倒して残り七人。視認出来ない五人はどこへ消えたのか。遠くから戦闘の音も聞こえてくるから、きっとスバル達とそれぞれ戦闘になっているのだろう。

 

(一度離れてスバル達と合流する……?)

 

 一応レベルで体術の心得もあるが、自分の得意魔法や相棒のデバイスたるクロスミラージュが近接戦に向かない拳銃型である以上、単独戦闘となると心許ないのは事実。ここは中距離、後衛タイプの自分一人で動くより、前衛であるスバルかエリオと合流するのがベストなのは間違いない。

 

(……たった二人。私一人でやってやれないはずはない!)

 

 だが、ティアナは単独で動く事を選択した。さっき不意打ちを掛けてきたヴァイロ星人を返り討ちにして気が大きくなったのもあるだろう。それ以上に、彼女の強すぎる向上心がそうさせた。

 

「アンタ等なんかに、イチイチ構ってるつもりはないのよ!」

 

 自分が見ているのはこのずっと先。亡き兄の夢だった管理局の執務官になる事。こんなところで、宇宙人などにかまけて、躓いている暇などない。潜んでいた物陰から飛び出し、視認した二体のヴァイロ星人へクロスミラージュの銃口を向け、予期せぬ方向から放たれた銃弾にそれを弾かれた。

 

「うあっ!?」

 

 痛みに呻きながら何事かと視線を向ければ、少し離れた位置にあるビルの屋上に狙撃銃を構えたヴァイロ星人の姿。確認していなかった九人目が最初からあそこに潜んでいたのか、バレないようにあそこで移動していたのか、そんな事はどっちでも良い。この場で隙を晒すという致命的な失態。自身が獲物と狙っていた二体のヴァイロ星人は――人間を殺傷するに十分な出力に設定した――電磁警棒を構え、ティアナにトドメを刺さんと駆け寄ってきている。

 

「くっ!」

 

 弾かれたクロスミラージュを手に取ろうとするも、狙撃手がそれを見越してクロスミラージュを撃ち、更に距離を離してしまう。最早打つ手はない。欲を出さずにスバル達と合流を急ぐべきだったと後悔してももう遅い。夢半ばどころの話ではない段階で人生の終焉を迎えるのかという絶望に支配されかかった彼女の耳に届いたのは、地面を高速で駆けるローラー音。聞きなれたスバルの物とは少し違うそれは一瞬で彼女の頭上へ移動し、力強い雄叫びと共にヴァイロ星人の一人をのめした。

 

「はぁあああああっ!」

 

 顔面のマスクをたたき割る一撃。昏倒する仲間とそれを成した相手に動揺しながらも電磁警棒を振り上げた途端、がら空きになった胴体目掛けて繰り出されたローラーブーツの蹴り。ただの蹴りではなく、決まったと同時にローラーの高速回転まで付けられ派手に蹴り飛ばされた星人は倉庫のシャッターにめり込んで、そのまま動かなくなった。

 

「ギリギリ間に合ったわね。ティアナ、大丈夫?」

 

 対して息を見出しもせず、それをやってのけ、少し乱れた紫色の長髪を軽く整えてみせる余裕すら見せた少女、ギンガは尻もちをついた体勢となっているティアナへと手を差し出し、彼女もそれを取って立ち上がる。

 

「ギンガ……さん? なんで」

「六課から応援要請があってね。私は別件でたまたま近くにいたから」

 

 遅れて108の本隊も来る手筈だという彼女の言葉通り、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。宇宙人犯罪の取り扱いなら、自分達新人ばかりのフォワードや本局からの出向組ばかりで固まっている六課より、常日頃かた対処している陸士部隊の方が経験は上。そう考えれば、納得のいく話だった。

 

「っ! そうだ、狙撃手がいるんです!」

「そっちはもう対処済み」

 

 その言葉に驚き、狙撃手がいたビルの屋上へ視線を移すと「おーい!」と元気よく手を振るスバルの姿があった。近くにはヴィータが鉄槌型デバイス、グラーフアイゼンを肩に担いで宙に浮いている。恐らく、ヴィータが狙撃手を牽制してウイングロードで一気に間合いを詰めたスバルがぶん殴って沈黙させたという所だろう。スバルを見るヴィータの視線は、不満な処はあれとまぁ褒めてやらんでもないといった感じだ。

 

「いつの間に……きゃっ!?」

 

 不意に聞こえた爆発音に思わず悲鳴を上げる。何事かと見てみれば、夜空を飛翔するなのはと六課最年少にしてフォワード四人の後方支援担当かつ竜召喚というティアナ視点で見れば反則技みたいな切り札を持つ少女、キャロ・ル・ルシエが普段から傍に置いている白竜フリードリヒの本来の力を開放した4~5メートル程の巨体に跨って、ある一点を見やっている。

 

『こちらスターズ1。ライトニング4と共に敵宇宙船のエンジン破壊に成功。残りはフェイト隊長達が掃討中』

 

 全体通信で聞こえてくるなのはの報告。敵宇宙船の沈黙に成功と大手柄ではないか。恨めしいとか羨ましいとかよりも凄いという感情が先に湧き上がる。やはり、あの人は凄いんだと改めて実感して、ただ一人だけ何も成せていない自分が情けなくなってくる。

 

「結局、私は一人倒しただけ……か」

「それでも上出来。宇宙人相手って、下手な犯罪者相手より危険なんだからね」

 

 普段から相手をする事が多いだけに、ティアナの言葉に思う処があったのかやや厳しめな口調でギンガが諭す。

 

「同じミッド人だったりすれば、なんとなくでも思考とか読めなくもないけど……宇宙人相手だと、その辺から全然違うなんて事もあるんだから。今回のティアナに悪いとこがあるとすれば、一人でやろうとしてた事ぐらい、かな」

 

 実際に宇宙人犯罪者を相手にするだけあって、ギンガの言葉には重みがあるとティアナも感じる。それだけでなく、現在進行形で二人の宇宙人(ウルトラマン)と同居中だからこそなのだが。

 

「その辺り、後からなのはさん達からも色々言われるかもだけどちょっと考えてみてね。一人で何でもできる、なんて事は無いんだから」

「……はい」

 

 素直に頷きつつも、ティアナの表情は晴れない。まぁ、殺されかけた直後で説教されればそうもなるかなとギンガは思って、視界の隅でシャッターにめり込んだままのヴァイロ星人が意識を取り戻した事に気が付いた。懐から何かを取り出そうとする動作を確認し、即座に間合いを詰めてリボルバーナックルを装備した左の拳を叩き付ける。シャッターを破壊し、倉庫の床に転がったヴァイロ星人が最後の力を振り絞り懐から取り出したリモコンのスイッチを入れる。すると宇宙船から紅い光が飛び出し、空中で鈍い銀色をした巨大ロボへと姿を変える。ヴァイロ星人の生物機械兵器、バドリュードである。

 

「っ! 巨大ロボットまで持ってたの!?」

 

 バドリュードの頭部に当たる部分にある球体からビームが放たれ、湾岸の倉庫街を破壊していく。ティアナは咄嗟に飛び退いでビームによる破壊の余波を免れたが、衝撃で全身を強く地面に打ち付ける。

 

「あ、ぐっ……!?」

 

 顔を上げれば、そこにはゆっくりと足を振り上げるバドリュードの姿。50メートルに迫ろう巨体を相手取る等、ティアナに出来よう筈もない。なのは達の救援も間に合わないだろう。最早、これに踏み潰される以外の選択肢は無いのかと、ティアナの心を絶望が押し潰さんとして、突如として視界を覆う眩い光と共に、それは現れた。

 

「ウルトラマン……っ!?」

 

 激しい地響きを起こしながら現れた巨人。先日、レジアス中将の定例記者会見時にそれぞれタイガ、タイタスと呼称する事が正式に認定された未知なる巨人。赤と黒の二色を持った巌の如き逞しい肉体を持った巨人、タイタスが両手の拳を握りしめ、バドリュードと対峙する。

 

『ムゥン!』

 

 二つの巨体がぶつかり合う。衝撃で地面が抉れ、今にも崩れそうであった倉庫がいくつか崩壊。防御フィールドを展開して飛んでくる瓦礫等から身を守りながら、ティアナはその巨体の激突を黙って見上げるほかない。

 

『ドォォリャア!』

 

 決着は一瞬だった。大気全体を震わせる剛腕が、バドリュードのボディを粉砕、貫通する。恐らくセンサーの役目を果たしているであろう頭部の球体が消える寸前の蛍光灯が如く点滅を繰り返し、ふらふらと後退る巨体が、最早立て直す事すら出来ない致命傷を受けている事を物語る。

 

『アストロビーム!』

 

 トドメとばかりにタイタスの額にある星状の装飾から放たれた光線が、バドリュードの頭部センサーを貫き、今度こそ沈黙した巨体は背中から倒れて海へ落下。海中で爆散し、文字通りの意味で海の藻屑と化した。戦いを終えたタイタスは自らの筋肉美を見せつけるようなポーズを取りながら、光の粒子となってその場から消え失せた。

 

「………最後の最後で、美味しいとこだけ持って行かないでよ」

 

 バドリュード爆散で起きた派手な水飛沫を浴び、びしょ濡れとなったティアナは、それを見やりながら吐き捨てるように呟いた。スバルは上手くやってみせた。キャロも使いこなせるようになった竜召喚を持って、ヴァイロ星人の宇宙船を航行不能にするという大手柄を上げた。エリオは報告を聞いていないが、フェイト達と共に敵残存勢力を相当していただろう。だというに、自分がやったのはたった一体のヴァイロ星人を倒しただけだ。ヴィランギルド相手だからと隊舎でオペレートを担当しているロングアーチの面々が応援を要請した108部隊の、ギンガの助けが無ければ今頃はきっと死んでいた。

 

「もっと、もっと強くならないと……」

 

 なのは達はきっとこう言うだろう。ヴィランギルド襲撃は予想外の事だったし、対宇宙人の経験不足の中でむしろ良くやったと。だから気にするなと。そんなフォローなど、貰っても虚しいだけだ。悔しさという傷に塩を塗るだけだと、ウルトラマンを見事に援護して見せたエース、エリート揃いの隊長陣にはきっと解らない。凡人の自分の見ている世界なんて、天才には想像すら出来やしないのだから。

 

「私は、もっと……っ!」

 

 こうして、ティアナの中に少しずつ溜まっていく。単なる不満、焦りという感情が闇へと形を変えて。

 

 

 

 

 

「タイタス……いちいちああいうポージングするの、やめてくれない? ちょっと恥ずかしんだけど……」

【む? 別に君がポーズ取ってる訳では無いのだからいいのでは?】

「お前、ああいうポーズ取るの? って目でオーリス三佐とかレジアス中将に見られてる私の気持ちにもなってよ!?」

 

 そんな事とはつゆ知らず、一人の少女がちょっと恥ずかしい思いをしているのは、正直どうでもいい話である。




オチはこう、正体知ってる人から見ればそう思われるだろうなと思ったので
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