リリカルBuddyStrikers   作:やまさんMK2

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パワードダダに六課が襲われる話でもやってみようかな なんて想った矢先にトリガーでパワードダダ登場して驚きました




第五話 ホテル・アグスタ Apart

 早朝のミッド郊外で対峙する二つの巨体。両腕が鎌のような形状をした大きなトサカのような頭部を持つ怪獣。宇宙戦闘獣、(スーパー)ゴッヴと今やクラナガンでその存在を知らない者はいない巨人、ウルトラマンタイガである。二体は真っ向からぶつかり合い、超ゴッヴの振りあげる両腕の一撃を受け止めてタイガはそのがら空きの胴体に蹴りを入れる。間合いを離した隙にスワローバレットを連射し、超ゴッヴを牽制。悲鳴を上げながら後退る宇宙戦闘獣を、横合いから放たれた青白い閃光が飲み込んだ。

 

『以上が、先日のウルトラマンと怪獣の戦闘です。レジアス中将主導で開発が進められていたアインヘリアルにより怪獣は撃破とはいかずも大きなダメージを与え……』

 

 空中に映し出したモニターでそのニュース映像を見ながら、はやては小さく息を漏らした。今朝がた出現した怪獣関連のニュースは、今日一日どの局にチャンネルを合わせても報道番組がこぞって取り上げていた。前々から開発、稼働準備が進められ対怪獣における切り札ともいえるアインヘリアル初運用が行われたのだから当然といえば当然だろう。

 

「アインヘリアルの初発射としては、十分すぎる結果って感じかな? 本局的にはどうなん?」

『別に僕は本局の代表って訳では無いんだが……まぁ、あまり面白くないといった風の空気は漂ってる感じだな』

 

 その横に展開される通信用モニターに映る黒髪を短く切りそろえ、身に着けている制服も黒と黒ずくしの男性はため息交じりに答えた。なのは、はやてと同じく幼馴染である彼はクロノ・ハラオウン。名前にまで黒が入っていると気付いた時は一日中笑ってしまったのは良き思い出だ。本人に言えば、今すぐ模擬戦(ガチで泣かす)な?と笑顔で脅されるので、絶対に言わないけど。

 

『本局ではレジアス中将の発言力の強さは危険視されていたし、アインヘリアル運用にも反対論や慎重論が根強かったが……ここ最近のクラナガンの情勢でそうも言ってられなくなった』

 

 数多の次元世界に目を光らせなければならないという立場上、どうしてもクラナガンへの対応は弱くなる本局に対して、元から少なからずはあった市民達の不満が爆発し始めている。元から起きていた違法魔導師等の犯罪者に加え、ヴィランギルドや怪獣と悪化の一途を辿る治安を守り、崩壊させまいと維持しているレジアス率いる地上本部に称賛が集まるのは当然と言えるかもしれない。

 ちなみに、本局も本局で他の次元世界に出現した怪獣や宇宙人の引き起こす犯罪、災害に対処しているので決してそれらを軽視している訳ではない。単純に手が回らないというだけなのである。むしろ、ウルトラマンが滅多に来てくれない分こっちのがハードだよと漏らす本局組も少なくない。

 

『目に見えて解りやすく働いている中将の支持がクラナガン市民の間で広がるのは、無理もない話だよ』

「上手い具合に流れに乗られたって感じやね……で、本局からミゼット・クローベル統幕議長がわざわざ出向いてくると」

『露骨なまでの牽制目的だ。全く、三提督の一人にここまでやらせるか』

 

 クロノの悪態は、どうにかレジアスを抑え込みたいとする勢力にいる上層部の局員に向けられたものだ。管理局黎明期の功労者である伝説の三提督を引っ張り出してまでする事なのかと。ミゼット統幕議長は若かりし頃のレジアスも世話になった相手故、強くは出れないだろうと言う狙いが露骨に見えている。こんな時に政治的なあれこれで現場を引っ掻き回さないでほしいというのは、はやてとクロノ両者の共通見解である。

 

「明日にホテル・アグスタで非公開の会談とか、ほんま急に決められてなぁ」

『君達には苦労を掛けるな』

 

 ホテル・アグスタはクラナガン南東にある周囲を森林に囲まれた宿泊施設だ。所謂高級ホテルに分類され、政財界や芸能界の大物の会談会見に使われる事も珍しくはない。はやて率いる機動六課は、そこで明日行われるオークションの警備任務を請け負っていた。オークションに出品される品々の中には管理局の厳しい査定を受けた上で危険性無しと判断されたロストロギア――とは名ばかりの骨董品――も出品される。転売目的で盗み出そうとするコソ泥、違法取引の隠れ蓑と規模相応に犯罪の可能性もある為、管理局の部隊が警備にあたる事は珍しくない。六課が請け負う事となったのは出展されるロストロギアをレリックと誤認したガジェット・ドローンの襲来を警戒しての事である。

 

「六課以外の陸士部隊と、本局からも統幕議長の護衛来るんやろ?」

『あぁ、流石に一部隊送り込むって訳じゃないが腕の立つ局員が数名程という話だ』

 

 お陰でホテル側との打ち合わせし直しになりましたと言いたそうなはやての八つ当たりに、自分に言われてもという態度を隠そうともしないクロノ。十年もの付き合いともなれば、この程度のやり取りでお互いに気分を害するなんて事は無い。それに、立場が逆なら自分も八つ当たりはしたくなるしなと思わなくもないクロノであった。

 

『さて、僕もこの後の予定があるんでそろそろ失礼するよ。いい加減、溜まった有休を消化しないとだ』

「うん。久々に奥さんと子供の顔も見たいんやろ?」

『その通りだ。このタイミングで僕に仕事を持ってくるヤツがいたら、果たして八つ当たりせずに言われるか自信はない』

 

 と冗談交じりの言葉を言って、最後にと付け加えてクロノは真顔で切り出した。

 

『はやて、君個人としてはアインヘリアルについてどう思ってるんだ?』

 

 本局組とはいえ、実際に地上で動く事も多い彼女個人の意見はクロノも気になる処なのだろう。ふむと一瞬考える素振りを見せて、はやては素直に口にした。

 

「せやねぇ……所詮道具やし、使い方次第とちゃうかな?」

 

 どこか自分の事のように、自嘲気味にはやては笑った。

 

 

 

 

 ホテル・アグスタ一階エントランス。急に決まったレジアスとミゼットの会談を警備する任務を請け負った局員が例年以上の人数で動員されていた。それでいてオークション目的や純粋にリゾートに訪れた宿泊客に必要以上のプレッシャーを与えない為、何名かは宿泊客に紛れ込むという名目で私服姿で警備にあたる為、実際に何日か前から宿泊している者もいるらしい。ギンガは前日入りした制服組で、駐車場に停めているトレーラーの寝心地は決して良くはない簡易ベットで仮眠をとる程度と、その恩恵にあやかれなかったのだが。

 

【へぇ~……この星の高級ホテルってこんな感じになってんだな】

【ホテルの、内装一つで、その星の、文化の違いが、わかる。実に、興味、深い!】

 

 故に隅々まで掃除の行き届いた、その辺に突っ立っているだけでも居心地が良いロビーの豪華かつ嫌味にも成金にも感じない適度に遠慮された装飾を見て目の保養をする事ぐらいは許されるだろうと思う。空中で胡坐をかくタイガと、妙なタイミングで息継ぎをするタイタスも同様だ。

 

【ギンガは来たことあるのか?】

「まさか。ここ結構高いのよ? そこそこ貰ってるけど、下っ端局員の給料じゃちょっとねぇ」

 

 オークション開始まで後三時間前後といった処で、ロビーにはそれ目当ての客もチラホラ現れており談笑に興じていて相応ににぎやかだ。故にタイガとタイタス(自分にしか見えない相手)と雑談していたところで、誰も気に留めはしない。流石に目立たぬよう、エントランスの壁に寄り掛かる形で陣取っているのだが。

 

【だが、本当に、いい雰囲気の、場所だな。いつか、肉体を、取り戻した後、少しばかり、バカンスというのも、悪くはない、かもな!】

 

 タイタスの妙な言葉遣いに、若干苛立ちを覚え始めてだいたい三十分ぐらいだろうか。彼の姿は自分にしか見えないのが救い……いや、この場合そのせいで逆にストレスが溜まりにたまってきている気がする。そもそも、その姿でバカンスにくるつもりですか?と突っ込みたくなったが、そういえば彼は彼で人間態があると聞かされていたのを思い出す。タイガと同じく自分の肉体を失っている状態かつギンガと一体化した今ではそちらの姿になる事は出来ないそうだ。

 

「うん……ところで、ね?」

 

 それはそれとして、我慢にも限度という物がある。

 

【タイタス、お前さぁ……】

 

 いい加減、我慢の限界だったのはタイガも同様だった。

 

「【雑談しながら筋トレするの、止めてくれない!?】」

 

 想像してみてほしい。視界の片隅で――しかも高級な骨董品の上で――腹筋しながら雑談に興じるボディビルダーの如き筋肉ムキムキの半透明な手のひらサイズのマッチョマンがいる光景を。ものすっごい気が散る事は間違いなく、場所が一面強化ガラス張りの壁で周囲の綺麗に整えられた木々を初めとした美しい自然を堪能できる高級ホテルのフロントであり、もう色々と風情とかそういうのが台無しだ。

 

【む? そうか。なら小休止してと】

 

 そして、本人にはその辺が一切伝わってないのである。言えば筋トレ止めてくれるだけ、まだマシだとは思うとはギンガとタイガ両者の共通見解である。初対面の印象から見た目以上に理性的知性的な印象を抱いていたギンガとしても、評価を筋肉馬鹿(見た目通り)に変更するには十分すぎた。

 

(なんかもう、ドッと疲れた……)

 

 心の中で盛大にため息をついて、ギンガはそれとなく周囲を見渡す。少しばかり人も増えて来たかと思いだしたところで「おーい」と声を掛けられた。

 

「ギン姉!」

「スバル!」

 

 元気よく手を振りながら小走りに近づいてくるスバルと、遅れてやってくるティアナの姿があった。そういえば、オークションの警備任務で機動六課も来ると父が言っていたのを思い出す。

 

「ギンガさん。この間はお世話になりました」

 

 深々と頭を下げるティアナに苦笑交じりに手を振る事でもういいよと告げながら、それとなく彼女の様子を探る。目に見える形ではないが、それでもどこか全身を緊張させてるというか、不必要に気負っているように見える。単なるオークションの警備に加え、地上本部と本局の大物が会談をするのでその警備も追加されれば、そうもなるかもしれない。

 

「私達は外の警備担当なんだけど、ギン姉も?」

「私は中……っていうか」

「すまない陸曹。待たせたな」

 

 姉妹の会話を遮るような声の主、オーリスが足早に近づいてきた。つい先ほどまでオークション目的で来ていた見知った相手との事務的な挨拶に奔走していたのを、ようやく片付けたといった風だった。思わぬ人物がギンガに声を掛けてきたという光景にスバルもティアナも呆然となって、少し遅れて敬礼をする。基本的に付き合いどころか顔を見る事すらない相手だが、上官なのだから当然だ。

 

「ん? その二人は……」

「機動六課所属、ティアナ・ランスター二等陸士です」

「同じく、スバル・ナカジマ二等陸士です」

 

 機動六課という部隊名を聞いて、一瞬間を置いてオーリスも「あぁ……」と声を漏らす。本局所属の陸士部隊として創設された部隊だったはずだ。運用期間は一年ほどの実験部隊。正式に地上本部に届け出が成された部隊ではないとはいえ、クラナガンで活動するのだからとオーリスの耳にもその存在は届いていた。

 

「お前達も警備任務か。ご苦労……陸曹、そろそろ時間だ」

「はい。じゃ、また後でね」

 

 軽く手を振ってからオーリスに続いて奥にあるエレベーターホールへ向かうギンガの背を見ながら、一体どういう理由でギンガとオーリスが一緒にいるのかと思案して。

 

「……そういえば、中将が襲われた事件で二人を助けたのギンガさんだっけ」

「そのおかげで、オーリス秘書官から気に入られたとかお父さん言ってたよ」

 

 レジアスを名指しで狙った事件は当然ながら六課の面々も、というかクラナガン全市民がしる物で、その凶行から見事に地上本部トップの命を救ってみせたギンガも結構な有名人となった。レジアス本人からはそうでもないが、オーリスからはそこそこ気に入られたようでちょくちょくプライベートで会うようになったり、個人的に仕事を任されたりしているらしいとスバルはゲンヤから聞かされていた。

 

「そりゃ、大物の命を救うなんて大手柄を上げればね」

 

 どこか投げやりに呟きながらティアナはスバルに目線をやる。陸士部隊隊長を父に持ち、姉であるギンガは大手柄を上げたのを抜きにしても、対ヴィランギルドの検挙率が高い優秀な捜査官。スバル自身も、経験自体は自分と差はないが保有魔力と体力は自分と比べるまでもない桁違いときて、六課に配属されてからはメキメキと実力をあげている。

 ここにはいない年少組のエリオとキャロも、それぞれがフェイトの秘蔵っ子と言える存在で十歳前後という年齢を考えれば破格の実力の持ち主と言っていい。キャロに至っては、レアスキルである竜召喚の使い手なのだから。

 

(やっぱり、六課で凡人なのは私だけか)

 

 隊長陣は、最早比べるとかそういう領域にいない。直属の上官であるなのはは勿論、はやてもフェイトも九歳という幼少の頃から一線級の魔導士として活躍していたというし、副隊長であるヴィータ、シグナムもまた負けず劣らずの実力者。その他、後方支援担当のメンバーすら将来有望な若手を揃えに揃えている。一方で、ティアナはそんな優秀な人材をかき集められるだけかき集めた部隊に自分が呼ばれたのか疑問に思っていた。

 

(なんで私なんかが……)

 

 ティアナはどこにでもあるごくごく普通の一般家庭の出だ。両親を早くに亡くし、親代わりに育ててくれた年の離れた兄も、管理局地上本部の首都防衛隊に所属していたエリートではあったが任務中に殉職。天涯孤独となった後、自身も局員を志したが結果は今の通り。訓練校ではそれなりに優秀だったがその程度。六課に配属されてからは、自分の身の程という物を嫌と言うほどに教え込まれている感覚に襲われていた。毎日行われる訓練にはついていけているが、基本中の基本をとにかく反復しまくって、それの応用を兼ねた実戦形式をやっての繰り返しで、どうにも身につく何かがあるようにも思えなかった。それを明確に感じたのは先日の出動。他三人はヴィランギルドの襲撃という突発的な事態にも対応してみせたのに、自分はほぼ何も成せなかったも同然だ。

 

(私みたいな凡人を、なんでなのはさんは部下に選んだんだろ)

「ティア、どうかした?」

「なんでもない。さて、私達もそろそろ配置につくわよ」

 

 ホテルのフロントにまで足を延ばしたのは地理を頭に叩き込む為。少なくとも自分達の担当する箇所は完全に把握したのだから長居する必要はないとばかりに、ティアナは外へと足早に足を進める。後ろから聞こえてくるスバルの声は、耳に入ってこなかった。

 

 

 

 

 エレベーターホールはエントランスからみて少し奥にあり、それを挟んだ反対側にオークション会場となる大ホール。レジアスとミゼットの会談はエレベーターホールを抜けた先にある階段をあがった先。二階にある会議室で行われる手筈となっていた。当然ながらオークション目的の人々とはすれ違うだけのギンガとオーリスだったが、途中でその足は止まる事となった。

 

「オーリス三佐、お疲れ様です」

 

 穏やかな口調で頭を下げる六課部隊長、八神はやてと高町なのはにばったり鉢合わせとなったからである。制服ではなくドレスコートに合わせた正装なのは、会場内で直接警備を行うという事なのだろうと、二人のドレス姿に一瞬呆気に取られたギンガとオーリスは理解する。最も、呆気に取られた理由はそれぞれ見惚れたのと眉をしかめたの真っ二つに分かれるのだが。

 

「八神部隊長もご苦労。会場内の警備に隊長自らか」

「ええ。優秀な部下達がホテル周辺はしっかり護ってますので」

 

 嫌味混じりのそれを軽く聞き流す。会場の中にまで(隊長陣自らが)動かねばならない事態にはなり得ません答えてみせた上でだ。嫌味には相応の言葉で返すのがはやてという少女である。静かに始まろうとしていたはやてVSオーリスの空気になのはとギンガは目線を合わせて共に苦笑いである。いや、この場合は最初に喧嘩を売ったオーリスが悪いのだが。

 

「……ギンガも久しぶり。スバル達には会った?」

「はい。スバル、上手くやってますか?」

「うん。危なっかしいところはまだまだ目立つけど、優秀なフロントアタッカーだよ」

 

 教導官として新人育成にもあたっているなのはの太鼓判があるのなら、つまりそういう事。不安要素が一つ消えた事に思わず笑みを浮かべて、すぐ様浮かび上がる別の懸念。

 

「それとその……ティアナは? この間、現場で顔合わせてからちょっと気になって」

 

 湾岸地域での一件。ギンガはタイタスに変身してバドリュード撃滅後すぐに到着した108部隊と共に事後処理に追われた。故に頭の片隅に引っかかったままだったティアナの事が少しばかり気になっていたのだ。一応レベルのアドバイスはしたと言えばしたのだが、彼女の中で上手く処理できているのかどうかは別の話だ。

 

「ティアナ、か。確かにちょっと思い詰めてる感じはするかな……訓練や普段の業務に支障が出る程じゃないんだけど……そっか、ギンガから見ても気になっちゃうレベルか」

 

 やはり気付いていたようで、なのはも思い出すような素振りを見せながら僅かな不安を口にする。

 

「この任務が終わったらティアナとちょっと話してみるよ。教導官とか抜きにしても、私の直属の部下だしね」

「はい、お願いします」

 

 はやてとオーリスの静かな戦いに関わりたくないという建前の元、二人にとって共通の不安要素について意見交換がスムーズに行われた。なのはもギンガも、政治的やり取りには絶対に深入りしたくないのである。そういうのはもっと上の人にぶん投げるのが吉、だ。

 

「全く、こんなタイミングで会談なんて本局は何を考えているのか」

「ですよねぇ。振り回される側の人間としてはええ迷惑ですよ」

 

 そして、その上の人間二人は何時の間にか愚痴りあっていた。喧嘩されるよりよっぽどいいけれど、まさか愚痴の言い合いに発展するとは。案外、この二人は馬が合うのかもしれない。

 

「さて、そろそろ時間か」

「あっと、そうですね。それじゃ、ギンガも担当は違うけど頑張ろな」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 最後にギンガに手を振って、二人は会場へと向かっていった。少しばかりその背を見送って、ギンガもオーリスと共に会談会場である二階へ続く階段へ足を進める。

 

「そういえば、陸曹は六課の隊長陣とも交流があったんだったな?」

「はい。交流と言っても、基本的に父や妹を介しての付き合いですし……フェイトさ、テスタロッサ執務官には個人的にお世話になった事もありますけど」

「そうか……いや、私と一緒にいたらお前の立場が微妙な事になりはしないか、とな? 108もどちらかといえば六課(あっち)よりだろう?」

 

 少し恥ずかしそうにそう呟くオーリスの様子に、思わず吹き出しそうになるのを必死に堪える。確かに部隊長の父がはやてと懇意にしていたりと家族ぐるみの付き合いがあるような物だし、近々合同捜査をするだとか自分を出向させると言った風の話を詰めている真っ最中だと聞いている。その辺含めて、彼女なりに気を使ってくれているようだ。

 

「……何がおかしい?」

「いえ、別に……」

 

 ちょっと怖い顔で――赤面しつつ――睨んでくるオーリスから目を逸らす。いざ付き合いが増えると思ってたより可愛い処が多い人というのが、嘘偽りのないギンガが抱いた印象である。

 

「全く……会談会場の警備、気を抜くなよ」

「了解です」

 

 ふんとそっぽを向いて足早に階段をあがっていく様子に、遂に少し吹き出してしまいながらギンガはその後を追った。

 

 

 

 

 ホテル・アグスタ周辺の森の中。ゼストは一人の少女を連れ立って歩いていた。正確には、少女がここに来たいと言い出したので付き添っているである。少女の名はルーテシア・アルビーノ。紫色の長髪と瞳を持った少女は、何かに気付いたようにゼストのコートの袖を強く握った。

 

「……どうした?」

「ドクターの玩具が、近くまで来てる」

 

 偵察及び探索に用いている小型の羽虫、インゼクトの一匹がルーテシアの左の指の上に止まっている。ゼストには理解できないが、召喚魔法を用いて虫系統の召喚獣を操る事に長けている彼女には、インゼクトの発する言葉――というよりも思念だろうか――が理解出来るようだった。

 

「……あのホテルで行われるオークションで、ロストロギアが競りに出される。それをレリックと誤認したのだろう」

 

 木々の隙間から見えるホテル・アグスタを見やる。かつて、管理局の新人局員だった頃に何度か警備任務に駆り出されたなと一瞬過去を懐かしむように頬を緩め、それをルーテシアが気付く前に引き締める。

 

「だが、あそこで競り出される物にお前の探し物は無いだろう?」

「うん。インゼクト達に確認してもらったから間違いないよ」

『そう、レリックと誤認しただけの話だ。いやはや、簡単なプログラムだけで動く自立兵器は、こういう事がままあるものさ』

 

 何の前触れもなく、二人の前に開かれる通信ウインド。そこに映し出された青みがかった髪と金色の目をした白衣の男、スカリエッティのニヤケ面に対して露骨に不機嫌そうに表情を歪ませるゼストに、スカリエッティは気にも留めていないといった様子である。

 

「何の用だ? レリックが絡まぬ以上、互いに不干渉という話の筈だが」

『あぁ、それについては謝罪するよ。だが、君達が丁度アグスタ近くにいると知ってね。少しばかりお願いが』

「断る」

 

 その間0.1秒にも満たない即答であった。ゼストからの返答は予想通りであったか、ショックを受けた様子もなくスカリエッティはルーテシアへ目線を向ける。

 

『ルーテシアはどうかな?』

「いいよ」

『ありがとう。今度遊びに来てくれた時には、美味しいケーキをご馳走するよ。今回出品される品物の中に、実験に使いたい物があってね。それを手に入れてほしい。詳細は、君のアスクレピオスにすでに転送済みだ』

「解った。ドクターの玩具、ちょっと使わせてもらうね」

『構わないよ。どうせ使い捨ての量産型だからね。では、吉報を待っているよ』

 

 ルーテシアの両腕にあるグローブ型デバイス、アスクレピオスのコアが淡く光る。データ転送を完了したという合図だ。スカリエッティは通信を切り、ルーテシアは纏っていたローブを脱いでゼストに手渡し、その下に来ていたやや露出度の高いバリアジャケットを露わにする。

 

「良いのか?」

「うん。ゼストやアギトはドクターの事嫌ってるけど、私はそんなに嫌いじゃないし」

「……そうか」

 

 あの男にあまり心を許すべきではないが、ルーテシアはスカリエッティに対して悪感情を抱く事は無いだろう。ある意味で彼女にとっては親代わりであり、彼女が()()()()()()()を持っているのは、あの男なのだから。

 

「じゃぁ、インゼクト達と……ガリュー、お願いできる?」

 

 アスクレピオスを介し、己の召喚獣へ呼びかける。無数に存在する小型虫インゼクトにルーテシアが最も信を置く召喚獣が彼女にしか理解できない思念で了承を示して、はたとルーテシアは何かに気付いたように顔を上げた。

 

「……ドクターの玩具以外に、何かいる」

「何?」

 

 オークションの品目的でやってきたコソ泥か、それとも別の勢力か。別勢力ならヴィランギルドもあり得るかとゼストが思案しているのを察したように、ルーテシアは続ける。

 

「宇宙人もいるみたいだけど……なんだか、解らないのもいる」

 

 

 

 

 

 アグスタ敷地内。普段は使わない、またはもう使えなくなった物を閉まっておく為の倉庫にそれはいた。一部が透明に透けているように見える真っ白なそれは、ふわふわと空に浮かび上がる。

 その様子は、まるで円盤のようでもあった。

 

「よし、仕込みは万全。我々も行くぞ」

 

 それを見送った三人組の男女。ホテルの従業員の制服に身を包んだ彼らは静かに、当たり前のようにホテルの中に身を潜めたのだった。




次回はアクション盛り沢山でお送りする予定です
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