リリカルBuddyStrikers   作:やまさんMK2

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ウルバトがサービス終了……だと……?




台詞が抜けている箇所があったので修正しました 本当に申し訳ありません


第二話 赤い靴の女の子 Bpart

「メモールちゃんは、何か食べたいのある?」

「……何でもいい」

 

 さて、そうなると何にしようか。時間的にもあまり重たい物は避けた方が良いだろうし、一階にある売店で軽食でも購入するとしようか。彼女の年齢――具体的には本人も解らないらしい――を考えると、飲み物はコーヒーよりミルクが良いだろうかと、考えるだけでもちょっと楽しくなってくる。

 

「じゃぁ、サンドイッチでも買って……天気も良いから外で食べよっか?」

「ん……お姉ちゃんと一緒なら、どこでもいいよ」

 

 本当に、なんでここまで懐かれたのか。自分でも不思議だが嫌な気はしない。妹が増えてむしろ嬉しいので問題ない。同僚達からシスコン呼ばわりされる頻度が増えそうだが、それに一体何の問題があろうか。言われなくても自覚はあるんですと開き直りつつ、二人連れだってエレベーターの前へ。ボタンを押して階下より上がってくるのを待つ。

 

「………」

 

 ぎゅうっとギンガの手を掴むメモールの手の力が強くなる。もしや、エレベーターが怖いのかなんて思い、しゃがみ込んで安心させようと声を掛ける。

 

「どうしたの?」

「……怖い」

「エレベーターが怖い? 大丈夫だよ、お姉ちゃんも一緒に乗るんだし」

「違う……」

 

 首を横に振り否定する。はて、なら何なのかと疑問を浮かべると共にギンガの鼻孔を生臭い何かが刺激する。一体どこから、何が漂ってきてるのか。どこかで嗅いだ事がある臭いなのは間違いない。それが、凄惨な事件現場で嗅いだことのある人血の物だと気付くのと背筋に悪寒が走ったのは同時。

 

「メモール!」

 

 少女を咄嗟に抱きしめ、その場を飛び退く。同時に到着したエレベーターの扉が左右に開くよりも前に内側から切断され、吹き飛ばされる。中から姿を現したのは病院関係者ではなく、全身を黒いボディスーツに包み、ピエロと王冠を足して二で割ったような顔をした異形の男。何よりも目を引くのは、腕に取り付けられた……否、一体化している二本の刃。一目見て明らかに人間ではなく、刃にこびり付いた赤いそれが臭いの元だと気付くのに一瞬もかからず――

 

「っ!」

 

 ――それが両腕の刃を振り下ろしてきた。

 咄嗟に防御魔法を展開して刃を受け止め、メモールを片手で抱いたまま後方へと飛び退く。異形はさして驚いた様子もなく、獲物を見据えたハンターのように、見せつけるように両腕の刃を擦り合わせていた。

 

【あいつは……ツルク星人か!】

「ツルク星人……? 知ってるの?」

【通り魔みたいにあちこちで殺戮を繰り返すヤバい奴だ。少なくとも、お前一人で敵う相手じゃない!】

 

 タイガの物言いに思わずカチンとくるが、メモールを抱いたまま勝てる相手ではないこと自体はギンガも理解している。その上、今の自分にはデバイスも無いのだ。魔法の発動自体はどうにでもなるが、武器も無しに勝てる相手ではない事は明白。

 

「しっかり捕まってて」

 

 メモールの耳元で囁き、力強く体にしがみついてきた感触を返事と受け取って、迷う事無く背を向けて一目散に廊下を駆け抜ける。当然のようにツルク星人はそれを追い、足の速さにはそれなりに自信があり、実際に速い方であるギンガの背後へ一瞬で迫ってみせる。その俊足っぷりは、相手が両腕に刃を持って殺意を剥き出しに襲い来る宇宙人でなければ称賛したいぐらいだ。

 

「っ!」

 

 背後に迫る気配に怖気を感じながら、速度を落とすことなく正面の窓ガラス目掛けて駆け抜ける。一瞬でも躊躇えば、二振りの刃に切り刻まれるのは必至。最低限必要な個所、主にメモールを守るように防御障壁を展開した上で、自身の体で少女を庇うように窓ガラスに体当たり。ガラスを突き破って地上八階の空中へ文字通り飛び出した。

 

「ウイングロード!」

 

 自由落下で落ちていく体を受け止める為に生成する魔力の道。背中でその上を滑りながら立ち上がり、地面まで伸びていくそこを駆けおりようとして。

 

「がはっ!?」

 

 背中を、思いっきり蹴り飛ばされた。

 体制を崩し、ウイングロードの維持に使う分の集中力も乱れて魔力の道は解れた糸のように崩壊。地上に叩き落とされる最中でもメモールだけは庇おうと自身の体を盾にして、硬い地面へと激突した。

 

「ぐぅっ! ぅ……っ!」

「お姉ちゃん……」

「大丈夫……怪我、無い?」

「うん……」

 

 不安げに視線を投げてくるメモールを安心させる為、痛みを堪えて笑顔を見せる。そんな僅かな安心すらも与えぬと、ギンガを蹴り落としたツルク星人はまるで曲芸師の如く空中で何度も回転してみせてから音もなく着地。言葉を一切話せないからなのか、それとも単に話さないだけなのか。どちらにしろ、それ故の挑発的意図を込めた意思表示をしながら、ツルクは獲物たる二人を舐め回すような視線を向ける。

 

「……メモール、ちょっと離れてて。出来そうなら一人で逃げて」

 

 最早逃げる事は叶わないと察し、彼女を離してツルク星人相手に身構える。デバイス無しでどこまでやれるかはともかく、父が言っていた応援が来るまでの時間稼ぎ程度ならどうにかなるはずだ。応戦の意思を見せるギンガを嘲笑うように、肩を上下さえたツルクは軽い足取りで地面を蹴る。本当に軽く、少しばかり跳ねるだけのような動作で軽々とギンガの頭上へと舞い上がり、頭頂部から真っ二つにせんと凶刃が振り下ろされる。

 

「っ!?」

 

 すぐ様、身体を後方へずらして刃を避けるも、前髪と着用していた管理局の制服が切り裂かれる。着地後間を置かずに連続して刃を振り抜いてくるツルクの猛攻を必死に避けながら、どうにか反撃の隙を探すも。

 

(動きが速っ……避けるだけで!?)

 

 精一杯。否、正確に言えば避けきれてはいない。

 ツルクの刃が振るわれるたびに衣服は切り裂かれ、全身に切り傷が刻まれていく。デバイス抜きも何もなく、純粋な力量さからくる結果として自分が押されている。時間稼ぎならなんとかと思っていたが、このままではあと数分持たずに文字通りの意味でバラバラに切り刻まれるのは確実だ。

 

「ぐ、ぅあっ!」

 

 辛うじてとはいえ刃を避けるギンガに苛立ちを覚えたのか、単に嬲るのも飽きて来たのか、不意に繰り出された鋭い蹴りがギンガの腹部に突き刺さった。壁に叩き付けられ、その場に崩れ落ちるギンガ。

 

「お姉ちゃん……っ!」

 

 思わず駆け寄ったメモールがギンガに覆いかぶさる。幼いながらにギンガを守ろうとしているのか、ツルク星人にとっては関係ないとばかりに最早勝敗は決したと刃を擦り合わせながら、ゆっくりと二人へ歩み寄る。

 

「くっ!」

 

 このままでは、二人諸共に切り裂かれるのは間違いない。それでもメモールだけは守ろうとギンガはその幼い身を抱き寄せ、ツルク星人に背を向ける形で自身を盾にする。当然のように刃を振り上げ、容赦なく振り下ろされる命を断つ狂気。

 

「っ!!」

 

 数秒も経たず訪れる死に、思わず目を閉じる。

 

(スバル、お父さん……メモール……ごめん!)

 

 守る事も叶わず、無惨に殺されてしまう事を心の中で詫びながらギンガはその瞬間を待つのみ……だったのだが、自身を切り裂く刃の感触は訪れず、何かがぶつかり合うような音が響いた。何事かと目を開くと、見慣れた金の長髪と執務官の証である黒い管理局の制服に身を包んだ女性の背中があった。

 

「フェイト……さん?」

「ごめん。遅くなった!」

 

 ツルクの斬撃を受け止めた魔力の刃。バリアジャケットは展開せず、バルデッシュだけを鎌型へ変形させ構えたフェイトが、ツルク星人を真っ向から睨みつけ―――

 

「はぁっ!」

 

 ―――そのまま刃を弾き返し、がら空きになったツルクの腹部へ左手を押し付ける。

 

「プラスマスマッシャー!」

「!?」

 

 零距離から放たれた魔法は流石にどうしようもなく、大きく吹き飛ばされるツルク星人。背後から地面に叩き付けられ、無様にバウンドして転がっていく様を油断なく睨みながら、フェイトはバルデッシュを突きつける。

 

「殺人未遂の現行犯ってだけでも問答無用だけど、一応聞いておく。裏の駐車場で死んでいた局員とこの病院の警備員、計三名殺害……犯人はお前だな?」

 

 この病院に到着した矢先にフェイトの目に飛び込んできたのは、真っ二つにされた男女三名の無残な姿だった。人体をああも綺麗に切り裂くなんて早々出来る業では無いだろうが、人間の常識を超える力を持つなんて珍しくもない宇宙人が犯人であれば合点はいく。今まさにギンガの命を両断せんとしてた宇宙人は、両腕の刃にこびり付いた血痕という物的証拠付き。確認などせずともほぼ確定と見ていいだろう。

 

「大人しく逮捕されるなら、ここまでにしておく。抵抗するなら……」

 

 時空管理局の宇宙人に対する方針は解りやすい。大人しく社会的ルールを守って暮すなら基本的に見逃すが、犯罪を犯した者に対しては下手な違法魔導師以上に厳格に対応する。このツルク星人のような凶暴凶悪な者であれば、いかなる場合であっても現場の判断が優先されるのだ。フェイトから発せられる殺気の如き憤怒。普段の優しさからは考えられないそれに、思わずゾッとするギンガ。ツルク星人もフェイトのそれを感じ、先の短い攻防で実力を理解したとばかりに全身をワナワナと震わせて。

 

【不味い! ギンガ、俺と変われ!】

「へっ!?」

 

 突然のタイガの警告。何事かと間抜けな声を上げれば、ツルク星人の体が光に包まれたかと思うとその場を離脱。病院の敷地外へ飛び出したかと思えば光が破裂し、全長は約50メートル以上の二足歩行のトカゲ。そうとしか言いようのない巨体へと、その姿を変えていた。

 

「巨大化!? だからって!?」

 

 だからって、あの姿は先までの物と変わりすぎてはしないか。宇宙人というより怪獣と言う方が正しくはないか。そんな突っ込みが思わず出そうになったのを堪えて、フェイトはギンガとメモールを守るように前へ立ち、バリアジャケットを展開する。

 

「二人とも、この場を急いで離れ……っ!?」

 

 激しい破壊音と共に、ツルク星人の巨大化した両腕が周囲のビルを吹き飛ばし、瓦礫がその場へ降り注ぐ。咄嗟にフェイトが魔法を放ち、病院の施設へ直撃しそうな瓦礫を迎撃する。それでも落としきれない瓦礫が三人の周囲へ降り注ぐ。

 

「っ!? フェイトさん! この子を!」

「ちょっ!? ギンガ!?」

 

 咄嗟にメモールをフェイトへ渡すようにして二人を突き飛ばすと、ギンガと彼女達の間に瓦礫が落下する。道を完全に塞がれ、互いの姿の確認すらも阻む壁がそこに出来上がった。

 

「ギンガ!?」

「大丈夫です! フェイトさんは、メモールをお願いします!」

「あっ……お姉、ちゃん!」

「大丈夫だから! 今はフェイトさんと一緒にいて!」

 

 瓦礫で阻まれた上、巨大化したツルク星人がこちらへ向かってきている最中ではフェイトにもギンガを助けに行く余裕は流石に無い。悔し気に唇を噛みしめ、今にもギンガの元へ駆けだしそうなメモールをなんとか抱き抱えたフェイトはその場を離れる。足音でそれを確認したギンガは、とりあえずメモールの安全を確保できたことに胸を撫で下ろして、忌々し気に巨大化したツルク星人を見上げながら、タイガスパークを装着した右腕を胸の前まで持ち上げた。

 

「タイガ……力を貸して」

【あぁ、任せろ!】

 

 左手をタイガスパーク下部のレバーを作動させ、その機能を開放する。

 

《カモン》

 

 機能開放を告げる音声が響き、腰のホルダーに下げたタイガキーホルダーを掴み取り、タイガの胸にある宝玉を模った部分に右手を翳し、キーホルダーの中で眠るその力を呼び起こす。

 

【叫べギンガ! バディゴー!】

「バディ……ゴー!」

 

 右手で握りしめたタイガキーホルダーを天に掲げ、ギンガの体が光に包まれた。

 

《ウルトラマンタイガ》

 

 タイガスパークからの電子音声と共にギンガの体が粒子状に分解され、タイガスパークを起点に再構成。意志と肉体をギンガからタイガの物へと切り替え、その体を等身大から50メートル級へと巨大化させた。

 

〖シェェアッ!〗

 

 病院をツルク星人から庇うように立ちはだかり、気合の入った叫びと共に構えを取る。それと共にタイガの体内。精神体となったギンガの意識も精神世界(インナースペース)にて実体を持った形で覚醒する。

 

「……あれ? なんで、バリアジャケット?」

 

 ついさっきまで管理局の制服姿だったはずで、デバイスも手元になく着用できるはずもないバリアジャケットを纏っている事に戸惑う。やはりというか、リボルバーナックルもブーツも未装備で、自身をこの空間に定着させているタイガスパークのみが右腕に装着されている。

 

〖お前の戦う為の姿って事なんじゃないか? そこは精神世界だからな〗

「成程……」

 

 確かに、そう言われてみれば納得できる。タイガに変身する事自体、戦う為なのだから精神体たる今の自分がそちらの姿で形取られるのは道理かもしれない。

 

〖お喋りはここまでだ。行くぞ!〗

「ええ!」

 

 

 

「あれは……!?」

 

 メモールと共にツルク星人の巨体から逃れんと駆けていたフェイトは、後方へ突如発生した強い光と地面を揺らす振動に思わず足をとめ、振り向いてその巨体を視認した。

 

「ウルトラマン……なんで、ここに」

 

 なんというタイミングの良さか。あまりにも都合が良すぎやしないかと野暮な事すら考えてしまう程の絶妙さで姿を見せたウルトラマンに、驚きを隠せない。

 

 

 

     ――ウルトラマンは現地の人間に擬態。または一体化して活動するらしい――

 

 

 

 ユーノからもたらされた情報と、あの場で別れた少女の姿が脳裏を過る。

 

「……いや、でも。まさか、ね……」

 

 いくらなんでも突拍子が無さすぎる発想に、いやいやと首を振る。ウルトラマンが現れた時、その全てに彼女がいるなとも思うがそれを言うなら自分だってそうじゃないか。馬鹿な発想を頭から放り棄て、腕の中にいるメモールへ視線を落とす。

 

「…………」

 

 ついさっきまで暴れていたのとは打って変わって、大人しくじぃっとウルトラマンの姿を見やっている。そうして、ボソッとフェイトにも聞こえないような小声でつぶやいた。

 

頑張って

 

 

 

 地面を蹴り、タイガはツルク星人へと突貫。それに対し、ツルクも正面から地面を踏み荒らしながら突撃。牽制代わりにとタイガが放った跳び蹴りを難なく躱すと、ツルク星人は興奮したかのように両腕の刃を振り回す。背後から迫る刃を地面に伏せる形で回避し、お返しにそのままツルク星人の胴体へ蹴りを決め、怯ませた隙に体制を立て直して突撃を仕掛けた。

 

〖デェヤ!〗

 

 突撃の勢いを乗せた拳がツルク星人の顔面へと迫る。だが、星人の両腕から伸びる刃。そのリーチの長さは接近戦に置いて有利に働き、先にその斬撃がタイガの体を切り裂いた。悲鳴と共に怯んだタイガの隙を逃すまいと、立て続けに両腕の刃を振るい続ける。

 

〖グッ!〗

 

 接近戦は不利だと悟り、後ろへ飛び退けばツルク星人は二足歩行のトカゲのような外見からは想像もつかないような跳躍力を見せ、一瞬でタイガの背へと回り込んで二刀を振り抜いた。

 

「巨大化しても、動きが……速っ! ぐぅっ!」

 

 背中を斬りつけられ反撃の為に振り向けば即座に斬撃を受け、胸に斬撃の鋭い痛みが走る。失われているタイガの肉体。それを一時的に実体化させる為の要石のような役割を果たすギンガにも、連動してダメージが蓄積していく。

 

「この……調子に!」

〖乗るな!〗

 

 どうにか隙をついてツルクの腹に拳を連続で叩き込んで距離を取り、垂直に立てた左手に右手を水平にして重ねた十字を構え、それを星人へ向ける。

 

〖スワローバレット!〗

 

 青白い光線。光弾と呼んだ方が正しいであろうそれが、連続して放たれツルク星人へ吸い込まれる。最初の数発こそ直撃を受け怯んだ物の、それをもって見切ったとでもいうのか、次第に両腕の刃をもってしてバレットを弾き、切り裂きながら突貫するツルク星人。

 

〖何!?〗

 

 咄嗟に背後へ飛び退きながら、スワローバレットを連射する。それすら全て弾き飛ばしながら迫るツルク星人は、余裕とでも言いたげな笑みを浮かべているようにも見え、懐に飛び込んでタイガの体を切り裂いた。

 

〖ウワァアアッ!〗

  

 たまらず吹き飛ばされ、地面に仰向けへと叩き付けられる。光線をこうも弾かれるとは流石に予想していなかったのか、身体を起こしながらもタイガの動きには動揺があった。それに影響したのか、彼の体に異変が起きる。タイガの胸にある青い宝玉が赤く変色したかと思えば、一定のリズムを刻みながら点滅をし始めたのだ。一体何の音なのかと思った矢先、ギンガの身にも異変が起きた。

 

「ぐっ! 何……これ……っ!?」

 

 急に胸が苦しく、重くなる。まるで限界を超えて全力疾走した直後のような、一切の休憩なしで体を酷使し続けているような、そんな締め付けるような痛みが胸に走る。ランプの点滅音に連動するように心臓が鼓動し、秒単位で全身に苦痛にも似た疲労が溜まっていく。

 

〖くそっ、そろそろ限界か!〗

「限界……?」

〖お前が俺に変身してられる限界って事だよ! そもそも、俺達ウルトラマンは他の惑星じゃ三分しか活動できない!〗

「もっと早く言ってよ! そういう大切な事は!」

 

 つまり、このピコンピコン鳴ってる点滅音はタイムリミットを知らせる警告音。限界を迎えれば死ぬなんて事は無いと思いたいが、そうなったら自分もフェイトも、メモールもこの宇宙人に殺されるのは間違いない。そんな最悪な結末なんて、こっちから願い下げだ。

 

(あの両腕の刃さえ、どうにか出来れば……)

 

 問題はツルク星人の両腕。そこから伸びる刃による斬撃さえ止められれば、確実に勝機はある。まともに止めようにもあの鋭い動きを捉える事が出来ていない。目では追えているのに、身体が追いついていないのだ。軽快なリズムを刻んでいるようにすら聞こえるタイマー音が、彼女から次第に冷静さを奪っていった。

 

 

 

「おいおいおいおい。その程度のヤツ(ツルク星人)如きにてこずってくれるなよ」

 

 病院の屋上。紙パックのジュースを片手に白黒の衣服に身を包んだ青年がつまらなさそうな声を上げる。目の前で行われる巨人と巨大怪獣化した宇宙人の戦いを観戦しながら、青年は落胆以外の感情を見いだせなかった。

 

「全く、手間を掛けさせる奴だ」

 

 ジュースの紙パックを放り棄て、指をパチンと鳴らす。

 こういう手助けは、これが最初で最後になって欲しい物だ。

 

 

 

 

《カモン!》

 

 突如、タイガスパークが作動し手の甲の位置にある宝石から光が飛び出してギンガの左中指で形を作る。それは指輪だった。獰猛な表情を浮かべる怪獣の顔をあしらった銀と赤の指輪。

 

「これは……?」

〖昨日倒した怪獣が持ってた奴か。とりあえず回収してたんだが……〗

 

 そういえば、倒した後に何か回収していたのをギンガも思い出す、あの時は始めての変身だったり、その後の諸々で完全に忘れていた。何故突然、ツルク星人への反撃のチャンスを探るこのタイミングで現れたのか。

 

「……使えって、事?」

 

 見るからに禍々しい気配と力を感じる指輪。不安が無いと言えば嘘だが、他に手が無いのも確かだった。果たして、使っていい物なのか。

 

〖理由は解らないが、その指輪からウルトラマンの力を感じる。タイガスパークを介して使える筈だ!〗

「そうね……他に手も無いし、一か八かよ!」

 

 毒を喰らわば皿まで。右手の指輪をタイガスパークに掲げる。

 

《ヘルベロスリング。エンゲージ》

 

 タイガスパークに読み込まれたヘルベロスリングがその力を発動。インナースペース内にヘルベロスの雄叫びが響き渡り、タイガの両腕に赤黒い光が纏わりついて刃となる。それをどう使えばいいのか、どういう力なのかは自然と理解出来た。

 

〖ヘルスラァッシュ!〗

 

 両腕を振り上げ放たれた赤黒い光刃が唸りをあげ、大気を切り裂きながらツルク星人へ襲い掛かる。それを当然の如く両腕の刃で受け止める星人。ほんの一瞬の鍔迫り合いの後、右の刃が粉砕された。

 

〖!?〗

 

 一言も発する事の無かったツルクが驚きの悲鳴を上げる。立て続け、懐に飛び込んだタイガの両腕には先ほどと同じくヘルスラッシュが解き放たれる瞬間を今か今かと待ちわびており―――

 

〖「もう一発!」〗

 

 ―――振りあげられた凶獣の刃が、ツルクの残った左の刃諸共にその両腕を切り捨てた。

 

〖ギャァアアアアアアアッ!〗

「散々いたぶってくれた、お返しよ!」

 

 今度こそ悲鳴を上げる星人。そこ目掛け、ギンガの怒号と共に左の拳が顔面へと叩き付けられた。無様な悲鳴をあげ、大きくよろめく星人。勝敗は決し、トドメの一撃を放つ準備。右腕を突き上げ、それに重ねるように左腕を頭上で交差。脇を締めるように両腕を腰まで下ろし、右手の甲を正面に向けた状態で拳を握り、それに左の掌を重ね、T字型に構えた両腕から放つは必殺の光線。

 

〖ストリウムブラスター!〗

 

 右手の甲、タイガスパークを起点に放たれた光線がツルク星人の体を貫き、内側から粉砕。爆炎に包まれながら、星人はこの世から消滅した。それを見届け、タイガは両腕を突き出すような姿勢で空へと飛翔。当然のように管理局の各種追跡をあっという間に振り切って、その姿は青空の彼方へと消えていった。

 

 

 

「はぁ……ほんと、制限時間あるなら先に言ってくれないと困るんですけど?」

【すまん。悪かった】

 

 病院敷地内の人気の無い場所へ粒子化して着地し、自分の体へと戻ったギンガは疲労からその場に腰を下ろしてタイガへぼやく。変身を解除すればやはりというべきか、胸を締め付けるような負担は消え去っていた。制限時間が無い体は素晴らしいと実感する。

 

「他に何か忘れてる重要な事無いわよね?」

【多分無い……と思う】

「しっかりしてよ……」

 

 一度本格的に尋問した方が良いのではないかと考えながら、疲労が蓄積した体に鞭打って腰を上げようとすると、不意に何かが体当たりをしてきた。

 

「えっ?」

 

 何事かと見やれば、ギンガの体にぎゅぅっとしがみ付くメモールの姿。

 

「ギンガ、ここにいたんだ」

「フェイトさん。すいません、心配おかけして……」

「うん。その事については、無事だったからもういいよ」

 

 優しく笑みを浮かべるフェイトに申し訳なさそうに頭を下げ、ギンガはメモールへもう一度視線を落とす。ギンガの体に顔を押し付け、一向に離れようとしない幼い姿に思わず笑みがこぼれた。

 

「ごめんね、心配かけちゃって」

 

 ぎゅぅっと抱き着いてくるメモールの頭を優しくなでる。フェイトはそんな二人を微笑ましく見守って、二人の時間を邪魔しないようにと面倒な事後処理をある程度引き受けにようやく駆けつけた局員達の元へと歩いていく。その様子に小さく頭をさげ、ギンガはメモールの体を抱き抱える。

 

「あとで、メモールからもフェイトさんにもお礼言わないとね?」

「……ヤダ」

「やだじゃない。フェイトさんだって、メモールの事をちゃんと守ってくれたんだから……ね?」

 

 軽くお説教。目に見えて落ち込む様子のメモールだったが、ギンガの言っている事を理解はしているのか小さく頷いた。そんな様も可愛いなと思いながら立ち上がると、不意にタイガの言葉が聞こえてきた。

 

【そういえば、まだ答えて無かったな。なんでお前を選んだのか】

 

 キーホルダーへ向いたギンガの視線を返事と受け取り、タイガは続けた。

 

【その子を命懸けで守ろうとしたように、四年前もお前は自分が今にも死にそうだってのに妹を助ける事ばっか考えてた。俺はお前の、誰かの為に自分の命を懸けられるところに惹かれたんだ。それが、お前を選んだ理由だ】

 

 そう言われると、少しばかり照れるというかちょっとばかり気恥ずかしいというか。四年前はスバルの事しか考えてなかっただけだし、今日もメモールを守るどころかフェイトに危ないところを助けてもらっただけなのだから。

 

(買い被りすぎだって、それ……)

 

 照れくさそうに視線を泳がせながら、腕の中のメモールをぎゅっと抱きしめる。それに反応するように、メモールもギンガの体をぎゅっと掴む。とりあえず、今日はこの子を守れたのだから良しとしよう。こうまで自分を姉として慕い、懐いてくれるこの子はもう保護した事件被害者ではなく、自分にとって大切な妹も同然なのだから。

 

(タイガと一緒なら、どんな事からでも……きっと)

 

 母を永遠に奪い去ったような理不尽を跳ね返せる。

 

 自分の大切な物を一人残らず守りきれる。

 

 今日だって苦戦こそしたものの最終的には勝利し、守り抜けた。

 

 自分一人では決して叶わぬ相手を下す事が出来た。

 

 きっと、これからも同じように守り抜く事が出来るに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              この時はまだ、そう思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 




次回リリカルBuddyStrikers

第三話 トレギア
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