リリカルBuddyStrikers   作:やまさんMK2

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言い訳させてください
バイオヴィレッジとモンハンライズが楽しかったんです……っ!!

更に言うとCpartへ雪崩れ込みますので終わりません


第四話 賢者の帰還 Bpart

 オーリスの運転する車の助手席で、窓の外を流れる光景を眺めながらギンガは思わぬところで繋がった母を失った事件について考えを巡らせていた。八年前、母が殉職し帰らぬ人となった事件の事を忘れた事は無い。

 

 ――ギンガ、スバルの事よろしくね――

 

 そういって仕事に出たのを見送ったのが、最後の会話。帰ってきた時、母は物言わぬ冷たい体になっていた。縋りついて泣きじゃくる妹と、必死に涙をこらえながらも、全身を振るわせて悲しんでいる父。妹に寄り添って、大粒の涙を流していた自分。思い出すだけで憂鬱な気分になる。管理局地上本部所属の捜査官だった母、クイントが最後に関わっていた事件の詳細は知らされていない。機密事項扱いだそうで、親子関係であろうとも何の情報も降りてこないのだ。

 

(なんで、あの事件の関係者がレジアス中将を……?)

 

 それでも、何の捜査をしていたのかだけは知っている。それだけに解せない。クジョウ・レントが、全滅した筈のグランガイツ隊の隊員で、母の同僚だったであろう彼が何故レジアスを狙うのか。復讐と言っていたが、単純に考えれば八年前の一件の事に違いない。それにレジアスが何らかの形で関わっているという、子供でも描けそうな単純な絵。素直に受け止めれば、そういう事なのだろう。

 

(……もし、そうなら)

 

 横目でチラリとオーリスを見やる。レジアスの実娘であり、副官でもある彼女も八年前の事件について何か知っているのだろうか。本当にレジアスが関わっているのなら、それを知った上で蓋をしているのか。嫌な考えが脳内をひたすらにループする。もしも、万が一にでも母の死にレジアスが絡んでいるのなら、一時躍起になって捜査をしていた父が急にそれを止めた事も説明がつく。

 

(父さんは母さんとの約束が理由だって言ってたけど……中将レベルの人が絡んでるなら……)

 

 実際、捜査官として現場に赴く事も多いかった母は、万が一があったら家庭を優先して欲しいと口を酸っぱくして父に言っていたのは覚えている。それでも、父は母の死の真相が知りたいと手を尽くしていたのを、急にすっぱり止めてしまったのだ。相手が相当な権力者だと感づいたのなら……父がそちらを中断したのも納得できる。下手をすれば、自分とスバルにまで危険が及ぶと考えたのだろう。

 

「……ナカジマ陸曹、どうかしたのか?」

「いえ、なんでも……ありません……」

 

 いくらなんでも単純な構図だとは思うし、状況証拠だけで確証はない。それでも、本当に母の死にレジアスが絡んでるなら、自分はどう動くのだろうかと考えずにはいられない。嫌でも脳裏に浮かぶのだ。棺に入って帰ってきた母の亡骸と、亡骸すら残らぬ程に焼き尽くされた(メモール)。大切な家族を二人も失った喪失感が、心の中に生まれたどす黒い感情を強く強く刺激していくのを、彼女は自覚していた。

 

(もし、母さんを殺した事件に本当に関わっているなら)

 

 果たして自分は、隣にいる彼女とその父親に対して、冷静でいられるのだろうか。

 それだけは、何度自問しても解らなかった。

 

 

 

 

 周囲に人家はおろか、建造物の類も一切無い人の手が一切入っていない森林地帯。その奥にひっそりと存在する洞窟が彼、ジェイル・スカリエッティの本拠地であった。元よりそこにあった天然の洞窟を主たるスカリエッティによる一見無秩序でいて緻密に計算された拡張工事により、迷宮のように複雑に入り組んでいながらも各部屋が効率的に配置されるという住みやすさと外敵の潜入を許した際の迎撃のし易さを両立させた要塞。自画自賛だなと思いながらも、スカリエッティは実に数年がかりで完成させた我が城は鉄壁だと自負していた。

 

「やはり興味深いねぇ。一体ぐらいは是非とも欲しい物だが」

「現状、収容する施設がありませんので。工事完了までもう少しかかるかと」

 

 その最奥に位置するこの研究所の中央管制室。スカリエッティは自身の娘兼助手のウーノと共にデータ検証、解析の真っ最中だった。空中に展開される複数のモニターに映し出されるのは全て怪獣。これまでに現れた怪獣、宇宙人こそが今の彼の興味の対象だった。

 

「ふむ。そうなると、例の個体を手に入れそびれたのは悔やまれるね」

「とは言いましても、あれも時限性でしたので……結果的には、あの扱いで良かったのでは?」

 

 ウーノの言葉に、確かにねと頷いてスカリエッティは目線だけその個体が表示されるモニターへ向けた。そこに映っているのは全身を青い鱗に覆われた怪獣。人間の少女に擬態できるというそれを、決して安くはない値段で購入したのだが、予期せぬトラブルで結局届かなかった。

 

「確かに、ラボの中で巨大化されちゃたまったもんじゃないけどね。生きた怪獣というサンプルが手に入らなかったのは残念だよ。最も……十分すぎる程のお釣りはきたけどね」

 

 手元のコンソールを操作し、新たなモニターを表示する。そこに映し出されているのは、一人の少女が光に包まれた後に一瞬にして巨人へと変貌する様。怪獣少女の観察の為に送り込んでいた娘の一人が偶然撮影に成功したそれは、スカリエッティの知的好奇心を大きく刺激した。

 

「いや、まさか彼女がウルトラマンとは」

「タイプゼロ・ファーストの方ですね。例の怪獣人間の保護をしていたそうですが」

「それだけでも面白いと思って、見物がてらにセインにお使いを頼んでいて正解だったよ」

 

 すでに三十半ばに差し掛かろうとするスカリエッティではあるが、その瞳をまるで子供のようにキラキラと輝かせて、モニターでリピート再生される映像。ギンガがウルトラマンへと変身する瞬間を食い入るように見やる。

 

「前々から欲しいとは思っていたが、ますます欲しくなった。最早、単なるプロトタイプの枠を超えたよ」

「では、早速回収を?」

「……いや、それはまだいい。せっかくだから、彼女達には怪獣退治を続けてもらおうじゃないか」

 

 怪獣は、人生全てを研究に捧げてきたといっても過言ではない程に根っからの研究者気質たるスカリエッティからみても、興味深い研究対象であると同時に厄介な危険生物でもあった。上手く使えば利用価値は生まれるだろうけれど、それを成す為の準備が自分達にはない。ヴィランギルドとは何度か取引をさせてもらっているが、それを差し引いても彼らが無秩序に暴れさせるそれらに何時こっちが巻き込まれるか解らないと思うと、本当に厄介が過ぎる。

 

「私達には対怪獣の用意がまだ無いからね。それが整うまで、彼女達に頑張ってもらうとしよう」

 

 そういって更にもう一つ画面を追加。公共の放送電波で流されるニュース映像には、ウルトラマンと機械竜の戦う様が映し出されていた。今日一日、どこのチャンネルを回そうともこの話題で持ちきりだ。なにせ、犯行声明付きというオマケつきなのだから。

 

「こっちの案件は、私達としてもあまり放置は出来ないしね」

「犯人はレント・クジョウ。騎士ゼストのかつての部下だった男だそうですが……我々が回収した魔導士のリストにはありません」

「だろうね。あの事件で回収したのは騎士ゼストと彼女の二人だけ……他は、興味深いレアスキル持ちの魔導士の血液サンプル程度だったと記憶している」

「えぇ、その通りです」

 

 さて、そうなると彼は何者なのだろう。あの時に襲撃した魔導士達は確実に全滅させた筈。だのに、こうして犯行声明を堂々と流している。整形手術か変身魔法でも使って、顔を変えた遺族が何らかの形で真相を知って復讐を企てたのか。それとも、本人が生き返ってみせたのか。そもそも、なぜ今になって動き出したのか。

 

「興味深い案件ではありますが……騎士ゼストが彼と接触しかねない、となると少し不味いのでは?」

「あぁ、不味いね。だが……それに関してはある程度仕方ないと思うよ? どうせ、いつかは知られる話だ」

 

 意外な返答に、ウーノは目を見開いた。八年前、ゼストの部隊が何故全滅したのか。その犯人である自分達が、なぜ彼らを返り討ちに出来たのか。それをまだ知られるわけにはいかないと思っていたからだ。

 

「仮に今知られたとしても、だ。騎士ゼストは私達を裏切れないさ。彼女の為にもね」

 

 

 

『……と、ドクターはおっしゃったけど』

「あなたは不安でたまらない、と?」

 

 誰もいないロッカールームでウーノからの通信を受けるのは、緑髪の女性管理局員。オーリスに頼まれた雑用で丁度今日のシフトが終わったのでさっさと帰ろうとした時に、まさかの人物から通信が入ってきたのだ。

 

『えぇ。正直、ドクターは面白さ優先で楽観が過ぎるところがあるわ。こっちとしては不安で仕方なくて……相手は騎士ゼストよ?』

「怒らせたらヤバい相手よね……はぁ、仕方ない。心配性の姉の代わりに一肌脱いであげるわ」

 

 そういって、女性局員の緑色の髪が金色へと変色していく。瞳も金色へと変わり、優し気なたれ目気味の目つきも鋭い釣り眼へと変わっていく。これこそが本性。彼女の名はドゥーエ。スカリエッティが密かに送り込んだスパイであり、娘であり、ウーノの妹にあたる存在だ。

 

『助かるわ。チンクとセインが丁度クラナガンに出ているし、必要なら二人に手伝ってもらって』

「セイン……って、あぁ六番目? 丁度いいじゃない! なら、手伝ってもらいましょうか!」

『言うと思った。すでに連絡はしてるから、今送ったポイントで合流して』

 

 苦笑交じりにそう言って通信を切るウーノ。スカリエッティの指示で地上本部にスパイをするのは別に文句は無いのだが、今もなお生み出されているという妹達にろくに会えないのは数少ない不満だった。特に六番目以降に関しては顔すら見たことが無いのだ。姉の気遣いに心から感謝し、ウーノは鼻歌混じりにロッカーを開けてさっさと着替えを済ませる。今からはオーリスの部下として働く管理局員ではなく、ナンバーズの次女ドゥーエの時間だ。

 

 

 

 突然の長女(ウーノ)からの指示に戸惑いながらも、銀色の長髪に右目を隠す眼帯をした十歳前後であろう少女という特徴的な見た目をした彼女、チンクは指示された街外れの公園のベンチに腰かけていた。

 

「急に仕事追加なんて、ウーノ姉も人使い荒いよねぇ」

「そういうな。急な案件のようだからな」

 

 傍らにてベンチに腰掛けず、木に背中を預けている水色の短髪をした少女の名はセイン。我見的には十代後半といったところの彼女の方が年上に見えるだろうが、実際の処チンクの方が年上で、れっきとした姉である。

 

「でさ、合流しろって言われたドゥーエ姉ってどんな人なの?」

「そうか……そういえば、お前は会うのは初めてだったか」

 

 セインの言葉にそう呟き、少しだけ考えてからチンクは口にした。

 

「クアットロの教育担当だった……といえばだいたいわからないか?」

「あ~……………はいはい、そういう事」

 

 あの性悪な姉の教育担当と言われると、だいたいどういう人かは理解できた。客観的に見て、決して褒められた性格じゃないのは確かだろう。

 

「そういう説明の仕方、無いんじゃないかなぁ? お姉ちゃん悲しいわぁ」

 

 そんな二人のやり取りに対し、まるで感情のこもってないような声を発しながら現れたのはスーツ姿の一人の女性。ぱっと見の印象は仕事の出来そうなOLといった風貌の彼女を見やり、チンクはため息交じりに言葉を返した。

 

「そうかそうか。悲しいなら慰めてやろうか?」

「チンクさぁ……その口調もうちょっとどうにかならない? 見た目はちっこくて愛らしいのに」

「見た目の事は言うな……っ!!」

 

 懐から獲物を取り出そうとするチンクをどうどうと宥めるセイン。そんな様子をクスクス笑いながら見やるドゥーエは、チンクに嵌めもくれずセインに声を掛ける。

 

「初めまして、私はドゥーエ。二番目のナンバーズよ」

「あ、ども。ナンバーズ六番セインです。えと、初めましてドゥーエ姉……でいいんだよね?」

「えぇ、そうよ。あ~! やっとチンクより後に生まれた妹と会えたわぁ! ずっとクラナガンだったから顔も見た事無かったのよね!」

 

 満面の笑みを浮かべるドゥーエに、思ってたより親しみやすそうな人だなと呑気に思うセインと、やれやれと言わんばかりにため息をつくチンク。さてとばかりに息を吐いて、チンクが仕切り直しとばかりに声を上げた。

 

「さて、さっさと仕事にとりかかろう。ウーノから話は聞いているな?」

「えぇ。騎士ゼストの監視。必要なら彼を止めろ……ってホント無茶ふりしてくれるわよね」

 

 やれやれと言わんばかりに肩を落とし、ドゥーエは懐から端末を取り出す。

 

「とりあえず、彼が現れそうな場所は目星がついてるから行きましょ」

「目星……? 一体どうやって」

「まぁ、これでも管理局でそこそこの役職ですし? 情報網はいくらでもあるのよ」

 

 

 

 

 クラナガン市外の駐車スペース。運転続きで軽い休憩の為に停車した車から降りてベンチに腰かけているギンガに、オーリスが缶コーヒーを差し出す。

 

「飲むか?」

「……いただきます」

 

 受け取って線を開けて一口。

 

「ぶっ!? あっまっ!?」

「甘いの、駄目だったか?」

「いや、甘いの好きですけど! いくらなんでもこれは甘すぎですよ!?」

 

 殆ど砂糖水レベルの甘さに思わずむせた。こんな物を飲むのは絶対に健康に悪いと思うのだが、同じものをオーリスは「そうか?」とでも言いたげに首を傾げつつ、普通に飲んで見せて。

 

「っっ………すまん、これは確かに甘すぎた」

 

 やっぱり駄目だった。それでも捨てずにちびちび飲んでいるのは、意地なのかどうなのか。

 

「とりあえず、少しは気が紛れたか? 妙に考え込んでいたようだったからな」

「……すいません。気を使わせてしまって」

 

 しかも、それは自分を気遣っての事だったようだ。正解だったかどうかは疑問ではあるというか、こんな甘いヤツを寄こして気は紛れたかとか、不器用というかなんというか、人付き合い慣れてないのかこの人と、色々突っ込みしたくなってくる。

 

「それで、私に何か聞きたい事でもあるのか?」

 

 それぐらいは察せるぞと言わんばかりの視線。伊達にレジアスの側近として、政治的なやり取り等を行ってはいないという事だろう。これは誤魔化しきれるものでもなく、下手な言い逃れはしない方が良いと観念して、せっかく向こうから振ってくれたのだから直球勝負を仕掛けるべきだろうと判断した。

 

「単刀直入に聞きます。八年前の事件……レジアス中将と何か関係が?」

「……まぁ、それを聞くだろうとは思っていた。だが、陸曹がそこまで思い悩む事だったか?」

「私の母も、グランガイツ隊に所属していました」

 

 それを聞いて、オーリスは驚きの余りに目を見開いて、すぐ様納得したかのように頷きながら眉間に手を当てる。まるで、自分の迂闊さを責めるような表情を浮かべて。

 

「そうか、そういう事か……ギンガ・ナカジマ。ナカジマ……お前の母は」

「クイント・ナカジマ。当時は準陸尉だった筈です」

「そうだな。全く……珍しい苗字だというのに、気付かなかった自分の間抜けさが嫌になる」

 

 大きくため息をついて、オーリスはギンガへ視線を向けた。

 

「ちなみに、お前はどこまで知っているんだ?」

「当時報道された事、説明された事以上は何も。父は色々調べていたようですが、その話だけはいくら聞いても教えてくれませんでした」

 

 それを聞いて、オーリスはもう一度ため息をついた。

 そういう事ならまだどうにでも出来るという意味なのそれなのか、最早観念するしかないなという意味なのか、そこまでは解らなかった。だが、オーリスの表情からはやましい物は感じられないというのが、ギンガの印象だった。

 

「成程……なら」

 

 意を決した様子でギンガへ顔を向けるオーリス。その背後、何かが一瞬光ったのをギンガは見逃さず、直感的に感じた嫌な予感に従ってオーリスを抱き寄せる形で自分毎地面に引き倒す。直後、魔力の弾丸がさっきまで二人がいた場所を駆け抜けていった。明らかにオーリスを狙った一撃だ。

 

「ブリッツキャリバー!」

《了解しました》

 

 仕事復帰前に送られてきた新デバイス、ブリッツキャリバーに指示。即座にバリアジャケットを纏い、両足にブリッツキャリバーの本体たるローラーブーツ型デバイスを装着。オーリスを背に庇い、魔力弾が飛んできた方を睨みつける。その方角、木々の影からゆっくりと姿を現したのはやはりというべきか、今まさに話題に上がっていた人物だった。

 

「レント・クジョウ……」

 

 管理局の制服を崩して着用した彼の目には、素人にも解る程の憎悪の色と共に驚愕も浮かんでいた。

 

「なんだお前は……? クイント? いや、そんな筈は……っ!?」

「母を知ってるんですね。なら、やっぱりクジョウ一等空尉……本人なのですね」

「母……? そうか、君がクイントが引き取ったって言ってた。成程、話には聞いていたが……()()()()()()()()()

 

 なら納得だと、小さく息を吐いてレントは右手に持つ拳銃型デバイスを向ける。それは、オーリスへと真っ直ぐに狙いを定めていた。

 

「そこをどいてくれ。クイントの子を傷つけたくはない……用があるのは、ソイツだけだ」

「どきません。目の前で殺人が行われようとしてるのに、見逃す管理局員がいると思いますか?」

 

 真っ直ぐにレントを睨みつけ、リボルバーナックルを装着した左腕を構える。その姿に無き同僚の面影が嫌でも重なり、レントは少々複雑そうな表情を浮かべる。困惑と怒りと悲しみがない交ぜになった、形容しがたい表情だ。

 

「何故その女を守る? 君が守る必要なんてない筈だ」

「さっきも言った筈です! あなたこそ、母さんの同僚だった人が何で!?」

「君のお母さんを殺したのがそいつらだからだよ!」

「…………は?」

 

 予想だにしていなかった言葉に、ギンガの思考が停止した。

 

「どういう……事……ですか?」

「そのままの意味さ。八年前、ある事件を追っていた俺達は犯人の拠点らしき場所に踏み込んだ。だが、そこで待ち伏せを受けたせいで全滅した。解るだろ? 誰かが情報流さなきゃ待ち伏せなんてされるはずないんだよ!」

 

 レントはオーリスへ視線を向け、憎悪のままに叫んだ。

 

「出撃前、俺はたまたま聞いてたんだよ! レジアスが隊長に捜査を止めるよう圧力掛けてるのをな! なら、誰が情報流したかなんて解りきってるだろ?」

 

 頭がぐちゃぐちゃになる。それでも決して見捨てるような真似はしてはいけない。現在進行形の犯罪を見逃してはいけない。母のかつての仲間に、これ以上の罪を重ねさせてはいけない。そんな使命感にも似た感情と共に、決して無視はできない内容のそれがギンガの心をかき乱す。

 

「オーリス三佐……さっきの、話は……?

 

 本当なのですかと、改めて視線で訴えると、オーリスは辛そうに視線を逸らした。それが肯定を意味するのは明らかであり、ギンガの中にあるどす黒い何かが一気に吐き出されそうになる。

 

 ――なら、別に守る必要なんてないんじゃない?――

 

 そんな殺意にも似た感情がギンガの脳内で、声となって響く。

 

「そ、うですか……。なら……なら、後でちゃんと話。きかせて、ください……」

 

 それでも、膝を折らずに彼女をレントから守るべきだと思った。

 管理局員としての意地なのか、使命感なのか、それともどす黒い感情に由来するそれらと真逆の感情による物か。ギンガには解らなかった。ただ、高ぶった感情を示すように彼女の瞳は金色に変色して、それに睨まれたレントも一瞬だけ怖気を感じた。

 

「これは君のお母さんの、クイントの敵討ちでもある。邪魔をしないでもらえないか?」

「一つだけ、聞かせてください」

 

 淡々と言葉を紡ぐ。

 

「アインヘリアルを破壊した怪獣……あれはあなたが?」

「そうだ。俺が仲間達の復讐の為に手に入れた力。ある人から与えられた力だ! この力で、クイントや他の皆の無念を晴らす!」

 

 その言葉を聞いて、ギンガの中で何かが音を立てて切れた。

 怪獣を使って無関係な人達を何人も殺しておいて、何をほざいているのだこの犯罪者は。

 

「…………これ以上、母さんの名前を、出さないで」

 

 アンタみたいな犯罪者がと吐き捨てたくなる衝動をリボルバーナックルのシリンダーを高速回転させて発散。魔力をブーストさせるカードリッジを数発装填する。自分は管理局員として、どんな理由があっても目の前で行われようとしている殺人を止めなければならない。いや、そんな理屈はどうでもいい。

 

「ブリッツキャリバー……非殺傷設定、解除」

《よろしいのですか?》

「いいから、解除しろって言ってんのよ」

 

 今は誰でもいいから、このぐちゃぐちゃになった思考と湧き上がってくるどす黒い衝動をぶつけたくてたまらない。そうだ。母さんの名前を持ち出して自分の犯罪を正当化しようとする目の前のコイツに、容赦なく叩きつけてやったらいいじゃないか。

 

「そうか、残念だ」

 

 あぁ、もう。この男の声も聴きたくない。視界に入れたくない。

 無言でナックルを構え、魔力を込めながらブリッツキャリバーに地面を走らせ、間合いを詰める。レントも拳銃の銃口をギンガに向け、お互いに殺傷設定の攻撃魔法を叩き付けんとして。

 

「すまんが、お前達に殺しあいをさせるわけにはいかん」

 

 鈍い輝きを放つ槍が、ギンガのナックルとレントの銃の間に割って入り、一振りで二人とも蹴散らした。たっだ一振りで実力の差を嫌でも感じさせるそれと共に現れた大柄の男性。厚手のコートの下にあってもハッキリと解る鍛え抜かれた肉体の持ち主。顔を隠していたフードが風で外れ、露わになった顔を見て、驚愕したのはオーリスとレントだった。

 

「な……あ、なたは……っ!?」

「ゼスト……おじさん?」

 

 男、ゼスト・グランガイツは二人をそれぞれ見やって静かに口を開いた。

 

「久しいな、二人とも」

 




次回は皆さまご一緒にウルトラマッスル!!
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