プリキュア5の世界に転生しました…悪役サイドだった者ですが。   作:クルミ割りフレンズ

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アンケートも結構投票されてる様で私笑顔です。やっぱり5GOGOが今のところ人気ですね。アンケートはまだまだ期間がございますので皆さんの希望を反映くだされば幸いです。


第9話 明日の夢と希望と掲げる腕

 玉座から立ち上がり我々を見下ろすデスパライア様、そして不意に視線が交差しました。その瞳は何処か安心している様で哀し気なもの。

 はっきり言って悪の組織を抜けたというのに罪悪感が凄まじい。勿論プリキュアの皆さんやココさん達にも感じていますがあの方にも感じてます。あの方がカワリーノ並みの極悪人なら裏切るのに後悔しないんですけどね、デスパライア様って悪人であっても悪党では無いですし非道ではあるものの外道では無いんですよねぇ。

 

 私がこの時期までナイトメアを辞めなかったのも原作との兼ね合いもあったとはいえデスパライア様の存在が大きかったのです。心を許した相手には割りと良くして下さるから中々辞め辛い。

 ナイトメアは勿論悪徳企業でしたけど、デスパライア様が悪徳経営者かと言われるとねぇ。寧ろその部下が暴走してたって感じですし。

 

「仮面を砕き、カワリーノを倒すとは恐るべき力だ。そして、まさかウェザートお主が其方側に行くとはな。カワリーノが絶望の闇に堕としたと言った時は本当に信じられなかった。」

 

 あああ!心が痛い!何ならカワリーノに背中刺された時の方がマシと思える位には滅茶苦茶痛い!

 戦う前から精神攻撃ですか!そうですか!それならこっちだって実力を行使しますよ!

 

「しかし私とて信頼していたお前と戦うのは本望ではない。出来る事なら下がっておれ、ウェザート。」

 

良いでしょう。私にも貴女を裏切った事に対する罪の意識を感じています。

 

 ちょっと私ぃ!?何あっさり言う事聞いてるんですか!?こんな所で前世と今世の社畜魂発揮しなくて良いんですよぉ!!

 仕方ありません、こうなったらそれらしい事言って皆さんには納得してもらうしかありません。 今世の私誤魔化してばっかりですね。

 

皆さん、聞いての通り私は今から戦力になりません。あの方はお強い、しかし私は貴女達の希望が勝ると信じています。

 

ウェザートさん...うん!私たちに任せて!絶望なんかに負けないんだから!

 

お気を付けて、その代わりパルミエ王国の皆さんに何かあった場合は私が責任を持ってお守りします。

さぁ、皆さんは此方に。

 

 パルミエ王国の皆さんを避難させつつ内心ガッツポーズです。

 とにもかくにも私の舌先三寸にかかればこの通りです。

 しかし、この見た目の所為かココさん達以外には怖がられている様子。個人的には格好いいと思うのですがやっぱり厳ついのでしょうか?

 人間態に戻っても良いのですが、それだと不測の事態に行動が遅れてしまいます。その所為でカワリーノの奴に絶望の闇に堕とされたのですし。

 どうしたものでしょうか、既にプリキュア5とデスパライア様のコワイナーが戦闘を始めてしまいました。しかしこのまま最後まで怯えていられるのも可哀想です。

 

「みんな、大丈夫ココ!ウェザートは少し前まで敵対してたけど今は心強い味方ココ!」

 

「そうナツ!皆だって見てた筈ナツ、ウェザートがプリキュア達の為に一緒に戦っていたナツ!」

 

「ミル!この人のくれた花のお陰でミルクたちは此処に来る事が出来たし、さっきはプリキュアに大きな力をくれたミル!」

 

「「「だから怖がらなくても大丈夫ココ(ナツ)(ミル)!」」」

 

 ココさん達のお陰でパルミエ王国の皆さんの警戒心が薄れて行きました。

 こんな私の為に皆さんに私を味方なのだと言って下さるとはありがたい限りです。

 

 私が感動していると一人の方が歩み出て来ました。たしかパパイヤさんでしたか。

 

「ウェザート殿、先程は怖がってしまい申し訳ありませんでしたパパ。皆を代表して謝罪しますパパ。」

 

そんな、謝らないで下さい。私はつい最近までナイトメアの幹部でした、怖れられてもしかたない。

 

 まさか謝罪されるとは、ココさん達に目を向けてもニコニコされるだけですしどうしましょう。

 

「いえ、しかしそういう訳にはパパ...。」

 

私はただプリキュア5(彼女達)に心動かされただけなのです。彼女達が魅せる希望の光が無ければ私は今でもナイトメアだったかもしれない。

 

「パパ...。」

 

だからこそ私に貴方達を守らせていただけませんか?

 

 私の言葉に彼らは自分達の謝罪を受け取る代わりが何故自分達を守る事になるのか首を傾げてしまう。

 こういうのは立て続きに言って有耶無耶にするのが一番です。

 

私はプリキュア5(彼女達)と約束したのです。戦力になれない代わりに貴方達を必ず守ってみせると。

 

 私の言葉に彼らは頷き「お願いします。」と言って来られた。

 良かったです。彼らのような心の優しい人達が態々私に謝罪で頭を下げる事はありません。彼らはもう散々苦しんだのですからね。

 

 そうと決まれば話は早い。私は彼ら全員を覆い隠せる程の巨大なカマクラを作り出します。

 そして私の横には5体の1.5mの雪だるま型のゴーレム。彼らは再生能力を持つコワイナーから着想を得て考えた私の私兵です。戦闘力は皆無ですが守る事に掛けてはピカイチです。

 例え砕かれようとも私が雪を降らすだけで再生・復活、破片から増殖していきます。総評すると弱い癖にやけにしぶとくどんどん増えて行く、という完全に妨害特化のゴーレムです。

 彼らが足止めしてくれる間に私が敵を倒すという作戦です。

 

皆さん、今から雪を降らせますのであのドームの中に入って下さい。ご安心をあの中は頑丈で温かくなっています。

 

 私の言葉に一斉に皆さんカマクラの中へと入っていきます。ココさん達は残るようで、どうやらプリキュアの皆さんを見守るようです。

 取り敢えず寒くないように小型の多重層カマクラを作ったのでその中から応援してもらう事にしました。幾層にも重なった層によってかなり頑丈なカマクラは100人乗っても大丈夫です。

 

 っと案の定プリキュアを絶望させようとこちらにコワイナーが襲ってきました。

 さぁ!出番ですよ、スノー・ガーディアンズ(今命名)!

 

『コワイナー!』

 

ユッキー!

 

 当初の予定通りかなりのスピードでどんどん砕かれて行きますが私の超局所的な暴雪によって直ぐに再生・増殖していきます。

 そして実は彼ら最大で3m程まで大きくなります。いくら戦闘力皆無とはいえ体が大きくなれば単純に投げ飛ばすだけの力ぐらいは得る事が出来ます。

 

 そして後は私がそこに攻撃を加えるだけです。

 

光あれ!!!

 

『コワイナー...』

 

 やはりあのコワイナーは影から作られているのか日光に弱いようです。

 勿論スノー・ガーディアンズには当てませんよ。流石に解けたら再生できませんからね。

 しかし増殖できるのは向こうも同じ様です。何か更に差し向けられたんですけど。あの、デスパライア様?もしかして怒ってます?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 や、やっと終わりましたか。最後あたりプリキュア達に向かう同量のコワイナーが押し寄せて来たんですけど!

 私基本的にオフェンス向きなんですよ。タワーディフェンスのゲームとかも苦手ですし。とはいえ凄いですね。

 

 のぞみちゃん の言葉はデスパライア様の心にもしっかり届いた様です。しかしこうしては居られません、ココさんたちには夢原のぞみ さん達の所に行ってきます。と言って近づいて行きます。

 だって のぞみちゃん がデスパライア様に手を差し出した良いところで...。

 

「無礼者が!デスパライア様は貴様如きが気安く手を触れて良い相手では無いわ!消え失せろぉ!」

 

「「「「のぞみ(さん)!」」」」

 

 

 

 

 

少しは空気というものを読んだらどうですか?今完全にいいところでしたよ。

 

 首から下を氷漬けにしてやりましたよ。

 アイツああやって黒い紙に自分が完全に倒される寸前に隠れてましたね。それで動けるようになったから出てきて見るからに感動の場面を邪魔しやがりましたね。

 ちょっと威圧感を与えながら奴に近づきます。

 

「ウェザート!貴様またしても私の邪魔を!」

 

邪魔なのはお前ですよ、カワリーノ。この際だから言ってやりましょう、お前なんざ唯の金メッキです。

 

 奴の顔が激しく歪む。

 あともう少しで本当にお別れでしょうしこの際今まで言えなかった事ぶちまけてやります。

 

本当の事でしょう?幾ら綺麗に着飾り丁寧な口調で覆っても、その実他者を見下し踏みにじり駒にしか思わない。

 

「黙れぇ!!!」

 

極めつけは自身の主にすら己の理想を押し付けようとする。そんな醜い怪物を金メッキと言わず何と言いますか?

 

黙れと言っているだろう!!!

 

 怒りが有頂天に達したのか私の氷を砕いて襲い掛かってこようとしたので圧縮した風の衝撃波で壁まで吹き飛ばしました。

 手加減しましたがそれでも立ち上がって来るとは執念深いですねぇ。

 

「わた、しは私はぁ、デスパライア様の為に尽くして来たのだ!お前の様に私は裏切っては」

 

「もう良い、カワリーノ。」

 

「デスパライア様?何故ですか?」

 

 私に向けられようとした罵倒をデスパライア様は遮ってくれました。

 決して私の方には向かれていないその表情。窺う事は出来ませんが怒気を感じます。

 

「私はウェザートが裏切ったとは思っておらん。」

 

「何故ですか!確かに奴はナイトメアを辞めたと申しました!」

 

「それは私が許した事だ。そもそも最初からナイトメアに貢献してくれれば何時辞めてくれても良いという契約だったのだ。」

「それに、今はそれよりも」

 

 デスパライア様は一旦区切ると のぞみちゃん そして他のメンバーの方へ顔を向けられる。

 のぞみちゃん に対しては若干微笑んいる様に見えたのは私の勘違いではないでしょう。

 

「この者達の話をもっと聞きたいのだ。」

 

「なぁっ!?」

 

「どうすれば希望を持てるのか知りたいのだ。不老不死を得てはみたもののこのまま世界を絶望に堕としても空しいだけではないか...。」

 

 そして漸く私の方に向けられたその顔は興味を持っていると言ったものでしょうか。

 

「同じくナイトメアに居ながらウェザートもこの者達の希望に惹かれたのだ。故に私は希望について知りたいのだ」

 

「そ、そんな...。」

 

 その言葉がトドメになったのでしょう、奴は膝から崩れ落ちました、そしてその足元には私を堕とした時の絶望の闇が。

 

「お前は、ブラッディ!!!」

 

カワリーノォ!

 

 中からは巨大な手がカワリーノを掴みます。執念のみで今か今かとブラッディさんはカワリーノが絶望する瞬間を待っていたのでしょう。

 

「あぁ!カワリーノ!」ガシ

「ウェザート...?」

 

...。フルフル

 

 奴はブラッディさんに引きずりこまれている時に往生際悪くデスパライア様に助けを求めた。

 デスパライア様も心を許していた相手です、咄嗟に手を伸ばそうとした彼女を私は掴んで引き止め首を横に振る。

 奴はそのまま絶望の闇へと呑み込まれました。奴は結局他者を蔑み利用する事しか知らなかった。これは奴が招いた自業自得、自分で生み出した絶望です永遠に嘗ての上司と共に彷徨い続ける事でしょう。

 

 あの時言ったでしょう?罪を数えないのなら...地獄を楽しみなさい、とね。

 

 そしてこの世界ももうじき、

 

「これは、何が起きてるの!?」

 

「私の所為だ、私はもう絶望の力が制御出来ない。」

 

 永遠の命と若さと嘗ての力を手に入れてしまったデスパライア様。このままでは文字通り全ての世界を永遠の絶望に堕としてしまうだろう。

 故にデスパライア様は彼女達に頼みます。プリキュアの力で自分が全ての世界を蝕む前に己を封印して欲しいと。

 のぞみちゃん はとても悲しそうにその提案を躊躇っています。それは他のメンバー達も同様。

 やはりこんなにも優しい彼女達が悲しむ顔は見たくない。貴女もですよ、デスパライア様。折角希望について知りたいと思えたのです。 

 せめて最後くらいは悔いの無いように。

 

デスパライア様、それならば最後に彼女達に貴女が知りたがっていた希望について話し合われてみればいかがですか。

 

「しかし、そんな事をしている時間は...。」

 

時間が無いのなら作れば良い。私が暫くの間暴走する絶望の力をこの空間ごと凍結させます。

 

「出来るのか!その様な事が!?」

 

私一人では無理でしょう。私の力はあくまでも気象現象を操る力。しかし、

 

 そう言って のぞみちゃん が持っている再び一つに戻ったプリキュア5ウォッチに目を向ける。

 

夢原のぞみさん、ウォッチを渡して頂けますか?

 

「はい!」

 

彼女達の夢と希望の詰まった奇跡の力を使えば出来るでしょう。

 

「ウェザート...。」

 

折角出来た貴女の夢です。さぁ、お早く!あくまでも時間を遅らせるだけで止める事はできませんので!

 

 私の言葉が一押しになった様で良かったです。彼女は のぞみちゃん達の方に向かいます。

 ウォッチを左手に持ち、右手は上空に掲げる構えをとります。

 私は貴女を裏切った身だ、せめて貴女が満足出来るまでは時間を稼いで見せましょう!これで罪が清算出来なくとも!

 

 プリキュア5! 】

 

 世界を蝕む絶望の力、望む所です!私の愛する希望の力!どちらが勝つか勝負と行きましょう!

 氷の巨大な蝶が飛び立ち、世界を優しく包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう良いウェザート、良くぞ時間を稼いでくれた。」

 

 その言葉を聞き終えると変身が解かれる。

 体中が痛い、意識が朦朧とする。僅かな挙動のみで頭が割れるようだ。慣れない事はするものではありませんね。

 視界が揺れる、体が傾く。このままでは1秒と掛からず硬い地面に倒れるだろうと無駄に未だ働く頭で考える。

 

 

 いつまで経っても衝撃は来ない。それどころかフワリと誰かに包まれる様にキャッチされたようだ。

 霞む目を精一杯開けて見てみる。デスパライア様だ。

 

「私の為にここまで体を酷使させてしまった、すまない。そして、ありがとう。」

 

 何を仰るのですか。そんな事を最後に言われては寂しくなるではないですか。

 

「お礼を...言いたいの、は私の...ほうです。あな、た...にはとても良く、していただいた。これで...少しは、お返し...出来、ましたか...?」

 

「ああ、お主は十分返してくれたよ。」

 

 こんなに朗らかに笑うこの人を見た事はあっただろうか。ある訳ないか、素顔を隠されていたのだから。

 喋るだけでも全身が軋む様だ。知った事か、唯意識が朦朧としているだけ唯体が死ぬほど痛いだけだ。

 足腰に力を入れてどうにか自力で立つ。

 

「だったら、良かった...!」

 

 私のやるべき事出来る事はもうやった。ならば私にもう出番は無い、後は彼女達に任せよましょう。

 せめて、せめて最後だけは精一杯の笑顔でこの方をお見送りしたい。

 

 デスパライア様はパルミエ王国の皆さんに謝罪を受け入れられたようだった。

 プリキュアの持つ奇跡の力によってこの世界はデスパライア様と共に封印された。

 

 

 私の目に映っていた彼女達の表情は双方共満ち足りたモノだった。




取り敢えずこの作品も残す所あと1話になります。
時期は決まっていませんが今作が終わった後にまた作品を書くという意欲は湧いてまいりましたので「俺達の戦いはこれからだ!」みたいな終わり方はしませんからご安心下さい。

主人公が最後ボロボロなのはゲイツリバイブの副作用的なアレだと思って下さい。

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