プリキュア5の世界に転生しました…悪役サイドだった者ですが。 作:クルミ割りフレンズ
アンケートの途中結果を見てみましたが王蛇とキックホッパーはある程度予想してましたけどアークも伸びるとは思ってもいませんでした。
パルミエ王国にてあの黒いローブの男のそのドーパントと戦い人間界に帰還して数日後。メルポさんを通して謎の手紙が来たりストーブさんが時計塔の鐘を奪いに来たりと色々ありましたが今回は私の出番はありませんでしたね。
手紙というか紙片と植物の蔓、お菓子の欠片の謎は彼女達が真相に辿り着けて居たようです。
私は極力エターナルの連中とは戦わない様にしています。理由は勿論彼女達の成長を阻害してしまうから。私が今しなくてはいけないのはローブの男、そして奴が作ったメモリによって生み出されるドーパントの対処でしょう。最初にストーブさんと戦ったのはその場のノリもありますが彼女達を守る為、そして新たなプリキュアの力に目覚めたばかりだった為。私の知っていた筋書きとは大きく乖離する事も覚悟の上で私は画面の中では無く今を生きる彼女達を支えられる大人として行動したから。このまま私もエターナルの連中と戦い合うかと思っていたら現れたのが奴。そのお陰というのは癪ですが物語りはドーパント以外は大きく変わってはいません。
私がナイトメアに居た時から今まである程度立ち回って来られたのも原作知識と強大な力を使って力づくでどうにか出来たから。私はいつか奴と真っ向から勝負する時が来るでしょう。その時は果たして私の知る知識でどうにか出来るのか。
そんな益体も無い事を考えながら私は一人作業台に向かって手を動かしています。何をしているのかと言うとまたメモリガジェットの製作をしています。ギジメモリの方はもう作っているので残りはハードの部分だけです。
私は自身が強い事を自覚しています、が汎用性も高い割に私自身が基本殴ってどうにかするタイプなので苦手分野の方が多いのも事実。特に索敵なんかは霧を街中に放つ事で行っていますが知覚能力を分散させる分精度自体はそこまで高く無いんです。今までのドーパントの発見だって運が良かったのが一番大きいんじゃないでしょうかね。人外化した事で明らかに処理能力は高くなりましたがそれ全てを索敵になんて回せません。なので苦手な部分は外部から補う事にしました。以前お披露目したヘラクレスビートルフォンはあくまでもプロトタイプ。そこから更に発展させれば私の負担を減らせます。
そして今完成させようとしているのは仮面ライダーWが使う蝙蝠型のガジェットである『バットショット』を参考にした物です。しかし参考にしたのは待機状態であるカメラの部分、ライブモードはまた別の物を参考にしています。
よし、後はこことこっちを接続させれば...完成です!動作確認は問題ありませんね、しっかりと撮影出来ています。写真と動画どちらも問題無く撮影出来ています。容量に空きがあったので試しで入れてみたサーモグラフィーも問題ありませんね。後はライブモードの確認ですが...
おや?そろそろ時間的にギリギリですね。結局少しずらして行われる事になったナッツハウスの新装開店祝いに私も呼ばれています。お土産も持ったし少し遅れるかもしれないと連絡もしておきましょう。
◇ ◇ ◇
雨が降りそうだったので雲の動きを制御しながら向かっていると懐かしい顔であるブンビーさんが抵抗虚しくキュアレモネードとキュアミントの連携で吹き飛んで行きました。あぁ、そういえば彼女達のケーキを食べたと間違えられたんでしたね。数年同じ職場で働いていましたのであんまり違和感無いですけど大分ギャグに寄っていってますねブンビーさん。
ナッツハウスに到着したので話を聞くとセレブ堂のホールケーキが丸々一個無くなって犯人だと思ってたブンビーさんは実は犯人でも無かった、と。まぁ全員が犯人にされかけてピリピリしていた時に口元にクリーム付けて「ケーキを食べた」等と発言すれば早とちりされても仕方ありませんね。乙女の甘いものに対する執念は凄まじいものがありますから。
そこで今回の犯人捜しに私の作ったメモリガジェットが使えると思ったので実行してみましょう。犯人が誰かは分かってるんですけどね、ライブモードのテストもしておきたかったので丁度良い機会です。
「それならば犯人捜しは私にお任せ下さい。」
「そんな事出来るんですか?さっきまでの雰囲気を思い出すとこれ以上犯人捜しはちょっと...。」
「私がするというよりかは、私の作ったこの新しいガジェットに探してもらおうと思いまして。」
「今回はカメラ型なんだ、何に変わるの?」
皆さんに見える様に机の上に待機状態のカメラ型ガジェットと置くと皆さん興味深げに見つめられていますね。特に男性3名はキラキラした目で見て来ますね、やっぱり男の子はこういった変形するアイテムって気になりますよね。
それにしても、はて?こまち さんは少し元気が無さそうですね。私の記憶通りならばノリノリで探偵ごっこをされていた筈ですが、何かいつもより消極的のような気が...?気のせいでしょうか。
「それでは早速、よろしく頼みますよ『ウルフショット』」
『ウルフ』ギュイン
「小さなワンちゃんだ。」
「のぞみ さん、ウルフは犬じゃなくて狼ですよ。」
「アレそうだっけ?」
ズバリ今回作ったメモリガジェットの名前が先程言った様に『ウルフショット』です。ライブモードは『バットショット』が蝙蝠なのに対して『ウルフショット』は狼です。狼型のライブモードはガジェットでは無く小説『Zを継ぐ者』に登場した『ズーメモリ』のライブモードを参考にしています。飛行能力こそ持ちませんが嗅覚による索敵能力は上回っている筈です。
「ウルフショット、ケーキナイフに付着しているクリームと同じ匂いを辿りなさい。」
『アオーン!......!グルル、アオーン!』クンクン
「メ、メェ~!」ポイッ
よし、索敵能力も問題無さそうですね。クリームの匂いを覚えた後に直ぐにケーキを隠しているメルポさんの前で立ち止まって吠えています。あっ、自分が犯人だと吠えられた所為で驚いて手紙を出しました。確かこの手紙の封筒に...。
「あれ?この手紙クリームが付いてますよ!」
「お、おいメルポ?まさかお前がケーキを?」
「メェ...メェ~。」コク
「なんでだよメルポ。お前食べたり飲んだり出来ないだろ?」
やはりケーキはメルポさんが食べたのでは無く隠していたようです。隠した理由は原作と同じ様にメルポさん自身が食べる事は出来ないとはいえ数えられなかった為に仲間外れにされたと思ったようです。
ん?おや、『ウルフショット』はしっかり機能していますね。ケーキを食べた人の所にもちゃんと向かっています。
『......!アオーン!』クンクン
「うぇえっ!え~っと、アレレ。」
「何故のぞみ の方にも反応してるナツ?」
「メェー!」
メルポさんがケーキを返してくれましたが私が加わった事で9等分になっている筈ですが、その内の1つが無くなっていました。そして のぞみ さんの前で未だに吠えている『ウルフショット』という証拠も相まって彼女を見る皆さんの目がジト目に変わりました。
「あーいや、あのねつい味見したくなっちゃって~。」
『『のーぞーみー?』』
「えーっとそのー、ごめんなさい。」
手元に帰って来た『ウルフショット』を一撫でして待機状態に戻しました。皆さん本気で怒っている訳では無さそうですけど、まぁここらで助け船でも出しましょうか。
「まぁまぁ皆さん、のぞみ さんも反省されている様ですしもう水に流してはいかがでしょうか。」
「うぅ~、ありがとうウェザートさん!」
「それにほら、私もセレブ堂で被ってしまいましたがシュークリームを持ち寄りましたので一緒に食べましょう。」
よし何名かキラキラした目で反応されましたね。それに のぞみ さんのつまみ食いはいつもの事ですし、彼女達もそこは分かってるみたいですから許す雰囲気になっていますね。
それにさっきから気になっていた事もありますのでおやつを食べながらなら聞きやすいかもしれません。
ふぅ、ケーキとシュークリームで舌鼓を打ちナッツハウスに到着してから気になっていた事を口にする事にしました。
そう、何を隠そう こまち さんの事です。アニメでは全シリーズを通してもプリキュア界の変人として名が挙がる事もある彼女。天然な部分もあって割と突飛な行動を起こす事もある彼女は確か今回の話は以前読んだ推理モノ小説の影響でホームズの様な鹿撃ち帽とコートまで用意していた筈です。
かれん さん達程一緒に居た訳ではないので確証はありませんが常に明るく皆を元気づけようとしている彼女が何処となく暗い雰囲気を漂わせている様に見えます。何なら此処に着いた時にコスプレ衣装すら見当たりませんでした。
こまち さんはどうにか隠そうとしている様ですが私を始め付き合いの長い かれん さんやリーダーの のぞみ さんにナッツさん達も気付いているようですね。シロップさんはあまり分かっていないという感じが見受けられますがそれでも全体の雰囲気から何かを感じ取っているご様子。今は誰が切り出すか窺っているようですね。いつもなら何気なく誰かが切り込んで行く感じですが仲間内にさえ隠そうとしている事が原因か皆さん足踏みしている、と言った所でしょうか。
本来ならばうら若き乙女の苦悩という事で存分に悩む事を勧める私ですが今までの事も手伝って何が原作から大きく離れてしまう原因か分からない手前、切り出さなくてなりません。
「コホン、1つ此処に着いてから少し気になっていた事があります。勘違いならばよろしいのですがね...こまち さん、私は貴女が何か思い悩んでいる様に見えたのですが如何ですか?」
「えっ、あの私そんな悩んでなんて...。」
「そうですか、しかし此処にいる皆さんは私と同様に何かあったと思っていらっしゃる様ですが。」
私の言葉につられて周囲を見渡し驚いた こまち さん。私が切り込んだ事で皆さんも後に続くように心配する様な真剣な瞳を向けました。彼女が一瞬驚いたのは自分なりに隠せていると思っていたからでしょうか。
そして一度目を伏せ、意を決した様に彼女も凛とした目で返す。
「私ってそんなに分かり易かったかしら...。」
「そうね、最初は少し違和感を感じる程度だったわ。でも段々その違和感が積み重なって確信に変わったの。こう言うとアレだけど こまち は今日みたいな事態が起こればいつもなら楽しもうとすると思ったのよ。この前推理小説を読んでいたし、こまち なら悪ふざけも兼ねて探偵みたいな事をしそうだって思ったの。」
「...私ってそんな事しそうって思われてるの?」
『『えぇ(うん)(はい)』』コクッ
私も含めて皆さん一斉に頷くものだから若干むくれながら「そんな事無い」みたいな目で訴えて来てますがアニメではやっていたので かれん さんに同意せざるを得ませんでした。
若干拗ねながらも段々いつもの調子が戻って来て場の空気も幾分か和らいだので こまち さんも悩みの原因を打ち明けやすいでしょう。
私のただの杞憂ならそれで良い。思春期にありがちな悩み事ならば大人としても教師としてもアドバイスくらいなら出来ますから。
しかし私の希望的観測は彼女の口から放たれた現実によって吹き飛ぶ事になった。
「お姉ちゃんがね、少し前から家に戻って来ないの。」
◇ ◇ ◇
何処かの廃工場にて暗躍する黒い影が拘束されている異形の怪物に何らかの機械に繋いでいた。
機械に繋がれた怪物は体中を植物の根が覆い尽くした様な姿をしており苦しみからか絶叫を上げ続ける。
「グゥウッ!ガアァァァアア!アアアアアアア!!!」
手足の動きを封じられている為のたうち回る事すら出来ず、体から根を生やし続け振り回す事しか出来ない。
「ふむ...実験は成功か。これまでは唯メモリの出力を高くすれば良いと思っていたが、それでは使用者に負担がかかりすぎた。だから理性を無くしメモリの力を十分に引き出せなかった訳か。」
怪物...ドーパントに繋がれたコードの大元である機械を操作しながらブツブツ呟くローブを纏った男は興味深そうに画面に映し出される数値を見やる。
ドーパントが暴れ過ぎれば強烈な電撃を流す事で大人しくさせる。
「アアアアア!アァ...ぐ、うっあ...。」
「はっ、人間ってのはつくづく脆え。いくら肉体を強化されても内側から毒素に食われりゃ奴をどうこうする前に弱るってか。だが出力を低くする事である程度理性を保ったままメモリの力を引き出す事が可能、か。」
ガシガシと頭を掻く仕草をした後コードに繋がれ、高圧電流によって弱り切ったドーパントを見やりほくそ笑む。これから起こす事が楽しみで仕方無い、そう言い表す様に僅かに肩が揺れ動く。
「ククク。メモリと引き合うレベルの実験体を捕獲したが、面白くなりそうだな。プリキュア、だったか?奴とよく一緒にいる奴らの身内が過剰適合者だとは思わなかったが、良い拾い物をしたな。」
「アァァア...うっグォ、ギ...アああぁ。」
根に覆われた顔から覗く二つの眼からポロポロと涙が流れ落ちて行く。そんな事は気にも留めずローブの男は機械を操作し続ける。
「あっアア...ああああ
最愛の妹の名を呟くもその響きは広がる事なく周囲の空気に溶けて消えて行くしか無かった。
5000字ちょっとなんでやっぱり短いですね。
それとやっつけ感マシマシで新たなガジェットも出してしまいました。
【ウルフショット】
ウェザートがバットショットの待機状態とズーメモリのライブモードを参考に作ったデジカメ型のメモリガジェット。ウルフメモリを装填する事で狼型のライブモードへと変形する。
飛行能力こそ持たないが鋭い嗅覚を使った索敵や追跡を可能とし、その範囲は2kmにまで達する。噛みついて攻撃する事も可能。写真撮影・映像の録画、余った容量にサーモグラフィー機能まで追加されている。撮影したデータはヘラクレスビートルフォンに転送可能。
【ウルフメモリ】
ウルフショットを待機状態からライブモードへ変形させるのに必要なギジメモリ。
直感で選んで下さい。
-
G4
-
王蛇
-
オーガ
-
グレイブ
-
歌舞鬼
-
キックホッパー
-
コーカサス
-
牙王
-
ネガ電王
-
レイ
-
アーク